110 / 122
2章
108:《魔闘士》の弟子
しおりを挟む獣の鳴き声が夜の森に木霊する
日は沈みきり、真上に上った月が淡い光で世界を照らす
月明かりの綺麗な夜の中、ある男が1人、城のテラスにて外を眺めながらワイングラスを傾けていた
綺麗な銀の髪、真紅の瞳、僅かに見える歯は数本が鋭く尖っている
男はただ静かに、ワインを飲みながら
空を見上げる
その端整な顔立ちや怜悧な瞳からはなんの感情も読み取ることは叶わないだろう
空を仰ぎ見るその男の瞳には
暗い夜空に浮かぶ
3つの小さな月が映るだけだった
~~~~~~
あの女の頭の中を見て、捕まっている人達を助けに行ったのが深夜
俺たちは今、馬車に揺られ王都に向かっていた
生きたいと願う人は居なかった。誰もが殺してくれと、そう願った。瞳に光は無く、体は痩せこけ、汚れていた。せめて、痛みが無いようにと俺は一瞬で終わらせた
守るべき者達を俺は、自ら手に掛けたのだ。仲間をこの手で殺したのだ
あの時から、彼を殺した時から、自問が止まらない
あれは本当に最善だったのか、本当に助けられなかったのか、殺す必要なんて無かったんじゃないのか、後悔と悔恨の渦に捕まってしまった
それに、覚悟はしていたんだ。けど、そんな物は何の役にもたっていない
「酔ったの?」
「酔ってないよ、イヴ。大丈夫だから」
「そう」
そんな悲しそうな顔しないでくれよ胸がもっと痛くなる
「クウガはラキアに会えなくて寂しいだけだぞ~」
ソウマの何時もの悪ノリ
「ヒューヒュー! アッツアツ!」
乗っかるイヴ
「あっ、あっつあつ?」
フレッドまで……
でも
「そうかもしれないね」
賑やかさは拡散し、王都に到着するまで、馬車の中では車輪と蹄の音のみが聞こえていた
王都に到着するとフレッドやイヴが少しばかり元気になって馬車の中も明るくなった
馬車の乗り合い場所にて降り、徒歩で王城に向かった。門は顔パス、と言っても正式なものではないので裏口からだ。連絡は既にしてあるのでキルトさんの待つ部屋へ向かう
「い、今から、お、王様と会うんだよね? 緊張してきたんだけど」
「もう、ウチの彼氏なんだからしゃんとしてよね!」
フレッドが緊張した様子を見せるとイヴが言葉はいっちょまえな様子で返す。けれどイヴ、手と足の動きが一緒になってるよ
そんな2人を連れ添って俺とソウマは慣れた足取りで進んで行く
王城の廊下なので絵画やら壷やらが一定の間隔で並べられている。正直な話、そちら方面の知識や興味はない為価値は分からないが、前に値段を聞いたときはびっくりしたものだ
向かう部屋は8階にあるので、魔力で動く昇降箱に乗り込む
この昇降箱。とても便利で階段を上る労力と手間が省ける。実はこれを作ったのは弟のリンガであったりする。聞けば、アイデアは師匠が出して作成された様なので師匠の前の世界にあったものなのだろう
「「おお~」」
この箱が移動する時に感じるふわふわっとしたものを感じたのだらう。フレッドとイヴが驚きと戸惑いの混じったような声を出す。イヴは「エレベーター……」だなんて小さい声で呟いていた
昇降箱が8階に到着し、箱から出て廊下をまた進めば目的の場所だ
コンコン 「入れ」
「「「「失礼します」」」」
「おう、来たな2人とも。それちらの2人は初めましてか、俺が国王のキルトディア・アルメキアだ」
座っていた執務机から立ち上がり自己紹介をするキルトさん
「フレッドです!」
「イヴです!」
「そう緊張するな、今は公式の場ではないからな。では移動するぞ」
そうキルトさんは言うとせっせと歩き出した
「え? ちょっ、キルトさん報告は? それにどこに行くんですか」
報告の為に早く戻ってこいって言われたから来たのに。いや、報告なら魔道具で十分したんだけど
「それはもう魔道具で十分受けた。あいつが練兵場で待っとる」
うわ、嘘つかれた。この人、師匠と同じで平気で嘘つくからな~。それと練兵場?
「あいつって?」
ソウマが聞く
「お前達の師匠だよ」
~~~~~~
冒険者ランク
それは強さを表す為の最も一般的な指標
その中でも最強を意味するランクSSS
1個人が1国家戦力を凌駕する戦闘能力を有している事を簡潔に表している
そんな化物達の中でも最強と呼ばれる人物がいる
それが、《魔闘士》アイト コウヅキ
彼の伝説や噂話は大量にある。その一撃は大地を割り、その速さは竜を上回る。その眼は真実を見抜き、悪事を暴く。魔王でさえ敵わぬ最強の男。誰もが一度はその名を耳にし、尊敬や畏怖を集める
そんな生きる伝説が王城の練兵場にて模擬戦を行うという。相手は彼の弟子。息子ではなく弟子だ
彼の数ある噂話のうちで、今最も注目されている事柄だ。彼の息子も弟子同然だが、息子とは別にもう1人存在するという噂が数面前から広まっていたのだ。やれ王都から居なくなったのは弟子をとったからだ、やれ世間に姿を現さなくなったのは弟子を鍛えているからだと。実際の所それは事実であったのだが、殆どの者は知らなかった。知っていたのは国王、各騎士団長のみ
何故、弟子を取ることにそこまで騒ぐのか。理由は単純な事だ。最強と言われるほどの男の弟子、それが弱い訳がない。それともう一つ、彼は弟子を取らない事でも有名であったのだ。それ故に世間は注目した
邪神が完全に復活を果たした事が確認されてから20年。邪神の完全な復活をもって魔王が増え、魔物が増え、堕神が天災の如くに力を行使する時代。誰もが苦しみ助けを求める。世界は英雄の誕生を望んでいるのだ
~~~~~~
練兵場の周り、それから練兵場を上から見ることの出来るテラスには人が大勢集まっていた
ふだんの訓練時にも此れだけの人は集まらない
何故、これだけの人が集まっているのか、此処で何があるというのか
それは練兵場の真ん中にて立つ男に関わりがあった。アイトである
アイトは中央で腕を組み入り口を見据えている
王城内の者達に王より通達があった
「これより《魔闘士》とその弟子の模擬戦を行う。見学したい者はテラスか練兵場の周りに集まるが良い。ただし、職務が有るものは職務を全うすること」
職務時間であった者は涙を流して悔しがり、職務時間外だった者はこれないものに嫌味を言うのも忘れて練兵場へ走り出した
勿論、アイトの戦いを見れるからであるのだが、その弟子であるクウガの戦いも見たいからだ
アイトの息子であるソウマの実力は王城内では知られ、認められている。ソウマは偶に訓練に付き合っていたり、ベドラグアとの戦いを見ていたからだ
だが、クウガはそうではない。勿論、クウガも王城にはそれなりに来ているし、仲良くなった兵士や騎士もいる。その為、クウガがアイトの弟子だということはこの王城内であればそれなりに知られているのだ。しかし、クウガはこの王城にて力を見せたことはない。それ故に皆気になっている。更に一部の者、ソウマと特に親しい者達はクウガのことをソウマから直接聞いていたりする
曰く。あいつは俺より強く、天才であると
彼等からすれば、ソウマも天才なのだ。そんな存在が天才だと、顔に憧れを浮かべながら言うのだ。気になる、気にならないはずがない
そして、クウガが王と共に練兵場に現れた
貫禄を見せつける王と共にいるというのにその存在感は微塵も薄れてなどいない
多く視線が注がれる中、師弟は言葉を交わし、距離を取る
両者が構えを取り、離れた場所に位置だった王が開始の合図を告げた
「始め!」
友が、王が、騎士が、兵士が見守る中、後に大きな話題となる戦いが
今、始まった
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる