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番外編① Shall we dance? ー田畑さんのお話
01
「カップル解消おめでとー」
笑って手を叩くのは、大学時代のサークルの友人、小牧香耶だ。田畑さおりはそれを半眼で見返して、唇を尖らせた。
「どうもお祝いいただきましてありがとう」
「いや、よかったじゃない。円満解消できて」
「円満なんだかどうなんだか……」
カップル、とは恋人の話ではない。社交ダンスの組の話だ。
さおりと相方は大学のサークルでカップルを結成し、卒業後も共に組んでいた。が、就職して三年が経つ頃、相方から言われたのだーー「やっぱり仕事しながら競技は続けられない。カップルを解消しよう」と。
確かに仕事しながら競技を続けるのが大変なのは身をもって分かっていたが、三年もったならこれからも大丈夫だろうという期待はあっさり裏切られた。
心の準備や次の相方探しのために、あと一年、せめて半年、時間をくれと申し出て受け入れられ、まさに昨日、その半年を迎えたところである。
さおりは窓の外に見える町並みを見ながら、机に肘をついた手に頬を預けた。
9月も下旬。ぎらぎらとした日差しは落ち着き、外はすっかり秋めいている。
「はー。せめてA級行きたかった」
「あれ。結局、B止まりだったっけ」
「残念ながら」
香耶は残念ねと言いながら、アイスコーヒーを口に含んだ。
社交ダンスのアマチュアランクは、A級をトップにD級まであり、それ以下に数字級がある。大学のサークル出身だとCかDからスタートし、実力勝負で上に上がる。細かい規定はあるが、ざっくり言うとB級の大会で二度入賞できればA級昇格。一度の入賞はできたのだが、二度目がなかなか取れなかった。
「あーあ、どうしよっかなぁ」
「人脈駆使して探してみる?」
「うーん。それも勇気がいるなぁ」
さおりは嘆息しながらアイスコーヒーをストローでぐるぐると掻き混ぜた。
「まあ、面倒だよね。色々すりあわせるのも」
「そうそう。そうなのよー」
頬杖をついて言うと、香耶は苦笑した。
「でもさ、さおりの夢ってあれでしょ。おじいちゃんおばあちゃんになっても夫婦でダンスしたいって」
さおりはちらりと香耶へ目を向け、先を促す。
「だったらちょうどいいかもよ。仕事しながら競技ダンスなんてやってたら、土日も練習とか大会で潰れて、相手に出会うきっかけもないでしょ」
「……つまり?」
「婚活」
その言葉に、さおりの表情が凍りついた。
「私たちももう25でしょ。そろそろそういう時期よー」
その言葉を聞くまいと、さおりは黙って耳を塞ぐ。香耶はその手を引っ張ると、耳元で言った。
「私のお母さん、もうこの歳には私を産んでたんだってー」
言われて言葉を失ったのは、自分の母のことを考えたからだ。さおりは長女、三つ下に弟がいる。確かに母が自分を産んだのは25だか26だか、そのくらいだった。
「香耶ぁ」
身を固める、なんて想像もできない。そもそも大学以降、ダンスに生きてしまったので、恋愛経験など高校時代のちょっとの間だけなのだ。
それも周りがカップルだらけになったから、惰性でつき合うことになり、大学に入ってしばらくする内、フェードアウトするように別れた。
「ま、お互いがんばろっ」
いい婚活パーティあったら教えるよ、私たちの年齢ならまだまだ売手市場だからさ。
そんな言葉を聞きながら、さおりは心底嘆息したのだった。
笑って手を叩くのは、大学時代のサークルの友人、小牧香耶だ。田畑さおりはそれを半眼で見返して、唇を尖らせた。
「どうもお祝いいただきましてありがとう」
「いや、よかったじゃない。円満解消できて」
「円満なんだかどうなんだか……」
カップル、とは恋人の話ではない。社交ダンスの組の話だ。
さおりと相方は大学のサークルでカップルを結成し、卒業後も共に組んでいた。が、就職して三年が経つ頃、相方から言われたのだーー「やっぱり仕事しながら競技は続けられない。カップルを解消しよう」と。
確かに仕事しながら競技を続けるのが大変なのは身をもって分かっていたが、三年もったならこれからも大丈夫だろうという期待はあっさり裏切られた。
心の準備や次の相方探しのために、あと一年、せめて半年、時間をくれと申し出て受け入れられ、まさに昨日、その半年を迎えたところである。
さおりは窓の外に見える町並みを見ながら、机に肘をついた手に頬を預けた。
9月も下旬。ぎらぎらとした日差しは落ち着き、外はすっかり秋めいている。
「はー。せめてA級行きたかった」
「あれ。結局、B止まりだったっけ」
「残念ながら」
香耶は残念ねと言いながら、アイスコーヒーを口に含んだ。
社交ダンスのアマチュアランクは、A級をトップにD級まであり、それ以下に数字級がある。大学のサークル出身だとCかDからスタートし、実力勝負で上に上がる。細かい規定はあるが、ざっくり言うとB級の大会で二度入賞できればA級昇格。一度の入賞はできたのだが、二度目がなかなか取れなかった。
「あーあ、どうしよっかなぁ」
「人脈駆使して探してみる?」
「うーん。それも勇気がいるなぁ」
さおりは嘆息しながらアイスコーヒーをストローでぐるぐると掻き混ぜた。
「まあ、面倒だよね。色々すりあわせるのも」
「そうそう。そうなのよー」
頬杖をついて言うと、香耶は苦笑した。
「でもさ、さおりの夢ってあれでしょ。おじいちゃんおばあちゃんになっても夫婦でダンスしたいって」
さおりはちらりと香耶へ目を向け、先を促す。
「だったらちょうどいいかもよ。仕事しながら競技ダンスなんてやってたら、土日も練習とか大会で潰れて、相手に出会うきっかけもないでしょ」
「……つまり?」
「婚活」
その言葉に、さおりの表情が凍りついた。
「私たちももう25でしょ。そろそろそういう時期よー」
その言葉を聞くまいと、さおりは黙って耳を塞ぐ。香耶はその手を引っ張ると、耳元で言った。
「私のお母さん、もうこの歳には私を産んでたんだってー」
言われて言葉を失ったのは、自分の母のことを考えたからだ。さおりは長女、三つ下に弟がいる。確かに母が自分を産んだのは25だか26だか、そのくらいだった。
「香耶ぁ」
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それも周りがカップルだらけになったから、惰性でつき合うことになり、大学に入ってしばらくする内、フェードアウトするように別れた。
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