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.第2章 猫かぶり紳士の苦悩
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白い肌に、ほんのりと灯った赤み。
柔らかそうな丸い頬。
今にも泣き出しそうに揺れる瞳。
ぷっくりとした桃色の唇は、震えながら開き、またためらいがちに閉じられる。
何を言われても言われなくても、その熱を帯びた目を見れば伝えたいことは一目瞭然で。
それでも、言葉で伝えようとしてくれる健気さに、嵐志は直感的に確信した。
――泥沼だ。
彼女の一挙一度が、嵐志の心のツボを刺激してくる。
こんな風に心を揺さぶられたのは、いつぶりだろう。
いや、そもそもここまで短期間で心を奪われた経験は、今までなかったのではないか。
好きです、とたぶん、彼女は言ったのだと思う。
正直、何を言われたか覚えていない。
言葉が途切れ途切れだったこともあるし、声が震えて小さかったせいもある。
けれど、彼女の姿に気を取られていたから、というのが一番の理由だ。
とにかく、かわいかった。
ものすごく。
守りたいと思った。大事にしたいと思った。
大切に育んでいきたい、と思った。
ふたりの関係を。愛情を。
だから、少しずつ……あえて少しずつ、距離を縮めようと、そう思っていたのに。
柔らかそうな丸い頬。
今にも泣き出しそうに揺れる瞳。
ぷっくりとした桃色の唇は、震えながら開き、またためらいがちに閉じられる。
何を言われても言われなくても、その熱を帯びた目を見れば伝えたいことは一目瞭然で。
それでも、言葉で伝えようとしてくれる健気さに、嵐志は直感的に確信した。
――泥沼だ。
彼女の一挙一度が、嵐志の心のツボを刺激してくる。
こんな風に心を揺さぶられたのは、いつぶりだろう。
いや、そもそもここまで短期間で心を奪われた経験は、今までなかったのではないか。
好きです、とたぶん、彼女は言ったのだと思う。
正直、何を言われたか覚えていない。
言葉が途切れ途切れだったこともあるし、声が震えて小さかったせいもある。
けれど、彼女の姿に気を取られていたから、というのが一番の理由だ。
とにかく、かわいかった。
ものすごく。
守りたいと思った。大事にしたいと思った。
大切に育んでいきたい、と思った。
ふたりの関係を。愛情を。
だから、少しずつ……あえて少しずつ、距離を縮めようと、そう思っていたのに。
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