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第三部
Wデートがしたい
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「どうです? このタピオカジュースが人気なんですよ?」
「…………はぁ、あの数珠みたいなやつか」
「あ、この遊園地なんて王道じゃありませんか? 観覧車とか……」
「いや、俺らの所だけガンガン揺れたらロマンチックなムード台無しやろ」
「この水族館なんて──」
「暗闇なんてムラムラして我慢できへんやん、自分。子供の魚への好奇心邪魔するだけや」
心が頰を膨らませて拗ね出す。
二人はカフェでデート中だ。ただ、今は心の前には多くのデート情報雑誌が広げられている。
どうやら以前言っていた〈Wデート〉というものをやってみたいらしい……。
光田は窓の外を見ながらアイスコーヒーをストローで吸い上げる。間違いなく、心はWデートに向いてない。ただのデートさえ途中で脱線して襲われる。
組長や先生がいてはるのに途中でいなくなるなんてあかんに決まってる。
「諦めたら? 心、途中で俺の事襲わへん自信あるん?」
「ん……それは、細い路地があれば……。綿棒を見れば耳掃除したくなるのと同じですわ!」
「あかんやん、高確率やん。路地通るたびにそれやったら全然目的地着かへんやん」
光田は呆れたように言うと。ため息をつく。
心はみるみる落ち込み出した。目の前の雑誌を捲る動作が弱々しくなる。
「夢なんですの……Wデートとか乙女の夢ですわ……初々しいじゃありません?」
「かなり今の俺らに縁遠くない?」
心は聞く耳持たない。指を組んでうっとりと妄想に浸っている。こんなにも女豹なのに変なところだけ乙女だ。
……まぁ、そこが可愛いんやけど。
光田は心の頰に手を伸ばすとぷにっとつねる。
「ええか? 心、二人っきりの方がええに決まってるやないか。組長がまずWデートしたいって言うと思うか?」
「思い、ませんわ……以前お誘いしたら幸さんを狙ってる男の個人データを抽出するならやると言われましたの……困りましたわ。警察へのハッキングは労力がいりますのに──」
「いや、うん……ひどいなソレ」
自分の仕えている組長のダークサイドを垣間見て光田は寒気がした。
「幸さんもWデートをしてみたいっておっしゃるんですけどね……黒嶺会が嗅ぎつけるかもしれませんしね」
「それはあかんぞ! 絶対にまずい!」
性の魔導師がもし遊園地に現れたら間違いなく多くのカップルの破局原因になる。デートの王道を潰すわけにはいかない。
こうなったら組長と幸のためにもWデートは実現しないようにしなければならないと心に決めた光田だった。
心は諦めたようにデート情報雑誌を閉じていく。光田は半笑いでそれを見つめる。
「光田様……光田様の気持ちはよく分かりました──光田様は、私たち二人っきりがよろしいんですわね」
「はい?」
「私としたことが、光田様の、わて二人っきりがええねんアピールを感じ取れませんでしたわ……」
「いらんとこ関西弁使わんとってくれるか」
心はまだ関西弁の勉強中らしい。依然として上達は見えない。
「さ、光田様──デートの続きに参りましょう?」
心が頰を赤らめ俺の前に手を差し出す。小さな白い手を取ると俺は歩き出した。
もちろん、細い路地のないルートは調べてある。
「…………はぁ、あの数珠みたいなやつか」
「あ、この遊園地なんて王道じゃありませんか? 観覧車とか……」
「いや、俺らの所だけガンガン揺れたらロマンチックなムード台無しやろ」
「この水族館なんて──」
「暗闇なんてムラムラして我慢できへんやん、自分。子供の魚への好奇心邪魔するだけや」
心が頰を膨らませて拗ね出す。
二人はカフェでデート中だ。ただ、今は心の前には多くのデート情報雑誌が広げられている。
どうやら以前言っていた〈Wデート〉というものをやってみたいらしい……。
光田は窓の外を見ながらアイスコーヒーをストローで吸い上げる。間違いなく、心はWデートに向いてない。ただのデートさえ途中で脱線して襲われる。
組長や先生がいてはるのに途中でいなくなるなんてあかんに決まってる。
「諦めたら? 心、途中で俺の事襲わへん自信あるん?」
「ん……それは、細い路地があれば……。綿棒を見れば耳掃除したくなるのと同じですわ!」
「あかんやん、高確率やん。路地通るたびにそれやったら全然目的地着かへんやん」
光田は呆れたように言うと。ため息をつく。
心はみるみる落ち込み出した。目の前の雑誌を捲る動作が弱々しくなる。
「夢なんですの……Wデートとか乙女の夢ですわ……初々しいじゃありません?」
「かなり今の俺らに縁遠くない?」
心は聞く耳持たない。指を組んでうっとりと妄想に浸っている。こんなにも女豹なのに変なところだけ乙女だ。
……まぁ、そこが可愛いんやけど。
光田は心の頰に手を伸ばすとぷにっとつねる。
「ええか? 心、二人っきりの方がええに決まってるやないか。組長がまずWデートしたいって言うと思うか?」
「思い、ませんわ……以前お誘いしたら幸さんを狙ってる男の個人データを抽出するならやると言われましたの……困りましたわ。警察へのハッキングは労力がいりますのに──」
「いや、うん……ひどいなソレ」
自分の仕えている組長のダークサイドを垣間見て光田は寒気がした。
「幸さんもWデートをしてみたいっておっしゃるんですけどね……黒嶺会が嗅ぎつけるかもしれませんしね」
「それはあかんぞ! 絶対にまずい!」
性の魔導師がもし遊園地に現れたら間違いなく多くのカップルの破局原因になる。デートの王道を潰すわけにはいかない。
こうなったら組長と幸のためにもWデートは実現しないようにしなければならないと心に決めた光田だった。
心は諦めたようにデート情報雑誌を閉じていく。光田は半笑いでそれを見つめる。
「光田様……光田様の気持ちはよく分かりました──光田様は、私たち二人っきりがよろしいんですわね」
「はい?」
「私としたことが、光田様の、わて二人っきりがええねんアピールを感じ取れませんでしたわ……」
「いらんとこ関西弁使わんとってくれるか」
心はまだ関西弁の勉強中らしい。依然として上達は見えない。
「さ、光田様──デートの続きに参りましょう?」
心が頰を赤らめ俺の前に手を差し出す。小さな白い手を取ると俺は歩き出した。
もちろん、細い路地のないルートは調べてある。
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