蒼い月に照らされて 〜この先ずっと愛し続けたい〜

颯斗

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何気ない日々の中で

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エレベーターを降りて、少し右側に歩けば成田淳子の自宅がある。少し千鳥足ではあるが、なんとか自分で歩いてエレベーターから、自宅まで歩くことができていた。先程、エントランスのところで、鍵を成田淳子から預かっていたこともあり、自宅の所有者ではないものが鍵を開けた。
玄関に入ると、良い香りがする。おそらく、成田淳子からした、先ほどの甘い香りだと思われる。
玄関からリビングに向かう廊下は綺麗にされており、玄関の付近には、アジアンテイストの置き物などが飾られていて、カエルの置物がお出迎えしている。
リビングからカタカタと音を立てて走ってくる足跡が聞こえると、白いチワワのわんこが尻尾を振ってお出迎えしてくれた。
「わんこが居たんですね。だから、部屋が明るいのかぁ。さっき、淳子さん部屋にはお子さんたち居ないって言ってたのに、リビング電気ついてるから僕大丈夫なのかなぁってドキドキしました。」
「どうぞお上がりください。ポポって言います。人懐こいので、多分ポポも遥人さんのこと、気に入ると思います。リビング散らかってると思いますが、気にしないでくださいね。おそらく子どもたちがそのままで出かけてるはずなので。どうぞ。リビングへ。ソファに座ってくつろいでいてください。」
言われるがままにソファに座ると、目の前にちょこんとポポちゃんが行儀良く座り、尻尾を振りながら待てをして、じっと見つめてきていた。
頭を撫でると、クゥーンと鳴き、喜んでいるように感じた。
「ポポちゃんは女のコですね。ついてないですもんね。」
たわいない話を切り出して、なんか静かな空気を無くそうとしたが、上着を脱いできた成田淳子は、ソファに座っている自分のコートを脱がせて、ハンガーに掛けてくれた。スーツの上着も、ハンガーにかけられたが、そのあと何をするわけでもなく、自分の横に近づいてきて座ってきた。酔いは少しマシになってるようにも感じた。

勢いよくソファの隣に座ってきたので、少しびっくりして、後ろへ退いたが、それをしっかり見られていて、ワイシャツの袖を引っ張って成田淳子は、引き寄せた。その表情は、少し怒っているかのように見えて、口を膨らませて、顔を覗き込んできた。
「遥人さん。なんで、後ろに下がるんですか?あー。私に魅力がないからかぁ。綺麗でもないですもんね。私は、可愛くないですもんねー。でもでも、後ろへ下がらなくてもいいじゃないですかー。私がイヤですか?」
「そんなことないですよ。イヤなことなんて何一つないですよ。笑顔は素敵だし、親しみやすいし。淳子さんのそんな優しい笑顔にどれだけ救われてきたか。淳子さんの笑顔はね。周りを元気付けてくれるんですよ。その元気を分けてもらってた1人です。淳子さんが魅力ないなんてないですよ。むしろ僕には、めっちゃ魅力的ですよ…」
話を続けて話そうとしたら、成田淳子は、自分の顔の間近に顔を近づけて、唇を重ねようとしてきた。その1秒後には、キスをしてきた。

最初は少し唇を重ねるようなキスであったが、それが2、3度続いた…。
その後は、自分は男であったからか、今最大の理性というものが、決壊しそうになっている。紳士たること、同じ法人の職員で看護師の成田淳子の方が、イチ女性として見えつつある。彼女には子どもがいて、自分にも、子どもが居てる。職場の同僚…。このまま理性を決壊させてもいいのだろうか…。
「遥人…」
「はい。淳子さん。どうしたんですか?」
「遥人。私のこと、そんなに魅力的?」
そう淳子さんは、僕の目をじっと見つめて、ボソッと呟いた後、もう1回僕の唇に重ねてきた。キスをしたその流れのまま、淳子さんは僕をギュッと抱きしめてきた。僕は、いま僕の目をじっと見つめた淳子さんの仕草と、ギュッと抱きしめてきたことで、抑えていた気持ちが僕の気持ちの許容範囲を超えてしまって、淳子さんがただただ愛おしくて仕方がなくなった。淳子さんを僕の方から強く強く抱きしめてしまった。
「淳子さん。それ聞きますか?」
それ以上言わなくても、僕の想いは察したのか、それ以上は聞くこともなく、言葉もなくなり、ソファでどれくらいだろうか…。ただ抱きしめて、時が止まったかのような状態になった。
聞こえるのは、2人の吐息と、時計の音、部屋に入ってきてすぐに付けたガスファンヒーターの音、そして目の前に伏せているポポの吐く息の音。僕の方から、今度は淳子さんの唇に重ねてキスをした。次第に唇に重ねるキスではなく、熱い熱いキスになり、僕が今度は淳子さんの目を見て、溢れ出たものを淳子さんにぶつけてみた。
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