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貴女のいる時間の中で
⑨
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師長と話してると、後ろから、淳子さんはウインクをして、また悪戯っぽい顔をしていた。なんか仕返しをしてあげなきゃと思うけど、どんなことをしてやろう…。
「そうですよね。この時間にいらっしゃることが最近なかったですもんね。プロ野球もシーズン終わってしまいましたし。タイガースの話もストーブリーグですし。」
「師長は、藤浪くんが好きでしたよね。シーズン最後は投げれてましたし。来年はやりますよー。」
プロ野球の話をしながら盛り上がることが山本師長とは多々これまでもあったが、今そんな話で盛り上がっていると、さっき悪戯っぽい顔をしていたが、今はなんかふてくされている様子の表情が見えた。表情が豊かだなぁ。こりゃ後で、LINEでなんか言うんだろうなぁ。『あー。ウチの孝子と楽しげに話してたなあ。わたしの前で』とかいうんだろうなぁ。
「藤浪くんは、来年どうなるんでしょうか。来年は先発ローテーションの中の1人として入って欲しいよね。」
「やると思いますよ。大阪桐蔭時代のエースですから」
「そうだよねー。あ、淳子さんは後ろにいたのかぁ。成田さんと昼ごはんを食べに行くから、ランチセット一式持ってきてくれるかしら。」
「あ、はい。わかりました。」
不意打ちで、後ろを振り返られたものだから、淳子さんはびっくりしていた。またその表情も淳子さんそのものの表情なんだなぁ。ほんと表情が豊かな人だな。
職員用の食堂で昼食を食べた。今日は豚の生姜焼きがメイン食となり、あと汁物と、副食として小松菜の煮浸しが小鉢で入っていた。
4人席のテーブルに座った僕たちは、ぼくの目の前に師長と淳子さんが座る配置になった。
「さて、じゃあいただきましょうかしら。あら、淳子さん。今日は白米少なめですね。いつも大盛りにするのに。」
「そうなんですか?成田さん。結構食べるんですね。そういえば昼ごはんをご一緒するのは初めてですよね。師長とは何回かご一緒させていただくことはありましたが…。」
そういいながら、ぼくは手を合わせて『いただきます』をしてお味噌汁を口にした。そしたら、今まで見たことのない様子で淳子さんは、上司である師長の腕を軽くパンと叩いて焦っていた。
「師長何を言うんですか。いつもこれくらいですよ。成田さん。わたしいつもこんな感じです。もう。そんなに大喰らいじゃないですよぉ。」
「あらそうかしら。成田さん。いつもはね、これの1.5倍くらいご飯をよそってたべているんですよ。今日はなんか控えめにしてるみたい。」
「あはは。でも、成田さん。なんでそんなにアタフタしてるんですか。いつもの成田さんじゃない感じがしますよ。きょうは僕の好きな豚の生姜焼きで良かったです。ご飯をお代わりしなきゃです。」
淳子さんの顔を見るとなんかアタフタしていて、耳が少し赤くなっていた。でも、よく師長の腕にツッコミをいれるなぁ。
3人でご飯を食べながら、松岡さんのことを色々聞いた。どうやら、松岡さんと同期の違う病棟の看護師のことでどうやら悩んでいたみたいであるこたが、わかった。どうしていいのか、どのようにしてあげるのがいいのかに本人が悩み、そんな時に、自分が日常の業務の中で、ケアレスミスを起こしそうになり、インシデントになるところであったそう。
そんな自分にしんどくなったとのことであった。先日、この1A病棟でインシデントがあったばかりであった。大事にはならずに済んだが、それを目の当たりにしたこともあり、怖くなったそう。自信がなくなったとのこと。看護師の仕事が嫌になったわけでもなく、人間関係に悩んでいるのでもないことがわかり、師長も胸を撫で下ろしたと話を聞くことができた。
なので昼からヒアリングを行うが、その不安なところを拭ってあげられることができれば、また自信を持って日常の業務に戻ることができる。
一緒に入職した同じ看護学校で学んだ親友が辞めようと自信を無くしてたことで胸を痛めるなんて、これほどの素晴らしい人財はない。この人財は死守すべきであるし、その親友の看護師もまたヒアリングをしてその人財も死守しないといけない。離職率を減らす。これもまた人事の大事な仕事内容のひとつである。
それを改めてかんじされられた昼時間であった。
その間の淳子さんは、師長の話に相槌を打ちながら、ぼくの目を見て自分の気持ちを話していた。そこにはプロの看護師としての顔があり、ぼくがリスペクトしている表情であった。
松岡さんのヒアリングは、昼食後しばらくして実施された。松岡さんが話しやすい環境を作るために、病棟の休憩室が使われた。また表情は硬くならないようにニコニコしながら。大袈裟にするのではなくごく自然に。
「ねぇ。ちょっと。」
そう言いながら体当たりしてきたのは、淳子さん。まだ休憩室にだれもいないことをいい事に、長椅子の座っている場所を近づいてきた。
「淳子さん。何なんですか?詰所の休憩室ですよ。もうすぐ師長さんが来ますよ。」
「なんでもないけど。今日一日は、若葉病院に張り付きの一日になってるね。こんなにずっと遥人くんを見れるなんて思ってもみなかった。昼ごはんも一緒に食べたし。今日の遥人くんかっこよかったです。」
「何言ってるんですか。照れるじゃないですか。」
「そんなに照れなくてもいいじゃない。ホントのことなんですから。」
淳子さんは、ぼくの顔を覗き込み、ぼくの顔を物色している。どんな顔をしているのか、何か聞き出したいそんな表情に見えた。
「そうですよね。この時間にいらっしゃることが最近なかったですもんね。プロ野球もシーズン終わってしまいましたし。タイガースの話もストーブリーグですし。」
「師長は、藤浪くんが好きでしたよね。シーズン最後は投げれてましたし。来年はやりますよー。」
プロ野球の話をしながら盛り上がることが山本師長とは多々これまでもあったが、今そんな話で盛り上がっていると、さっき悪戯っぽい顔をしていたが、今はなんかふてくされている様子の表情が見えた。表情が豊かだなぁ。こりゃ後で、LINEでなんか言うんだろうなぁ。『あー。ウチの孝子と楽しげに話してたなあ。わたしの前で』とかいうんだろうなぁ。
「藤浪くんは、来年どうなるんでしょうか。来年は先発ローテーションの中の1人として入って欲しいよね。」
「やると思いますよ。大阪桐蔭時代のエースですから」
「そうだよねー。あ、淳子さんは後ろにいたのかぁ。成田さんと昼ごはんを食べに行くから、ランチセット一式持ってきてくれるかしら。」
「あ、はい。わかりました。」
不意打ちで、後ろを振り返られたものだから、淳子さんはびっくりしていた。またその表情も淳子さんそのものの表情なんだなぁ。ほんと表情が豊かな人だな。
職員用の食堂で昼食を食べた。今日は豚の生姜焼きがメイン食となり、あと汁物と、副食として小松菜の煮浸しが小鉢で入っていた。
4人席のテーブルに座った僕たちは、ぼくの目の前に師長と淳子さんが座る配置になった。
「さて、じゃあいただきましょうかしら。あら、淳子さん。今日は白米少なめですね。いつも大盛りにするのに。」
「そうなんですか?成田さん。結構食べるんですね。そういえば昼ごはんをご一緒するのは初めてですよね。師長とは何回かご一緒させていただくことはありましたが…。」
そういいながら、ぼくは手を合わせて『いただきます』をしてお味噌汁を口にした。そしたら、今まで見たことのない様子で淳子さんは、上司である師長の腕を軽くパンと叩いて焦っていた。
「師長何を言うんですか。いつもこれくらいですよ。成田さん。わたしいつもこんな感じです。もう。そんなに大喰らいじゃないですよぉ。」
「あらそうかしら。成田さん。いつもはね、これの1.5倍くらいご飯をよそってたべているんですよ。今日はなんか控えめにしてるみたい。」
「あはは。でも、成田さん。なんでそんなにアタフタしてるんですか。いつもの成田さんじゃない感じがしますよ。きょうは僕の好きな豚の生姜焼きで良かったです。ご飯をお代わりしなきゃです。」
淳子さんの顔を見るとなんかアタフタしていて、耳が少し赤くなっていた。でも、よく師長の腕にツッコミをいれるなぁ。
3人でご飯を食べながら、松岡さんのことを色々聞いた。どうやら、松岡さんと同期の違う病棟の看護師のことでどうやら悩んでいたみたいであるこたが、わかった。どうしていいのか、どのようにしてあげるのがいいのかに本人が悩み、そんな時に、自分が日常の業務の中で、ケアレスミスを起こしそうになり、インシデントになるところであったそう。
そんな自分にしんどくなったとのことであった。先日、この1A病棟でインシデントがあったばかりであった。大事にはならずに済んだが、それを目の当たりにしたこともあり、怖くなったそう。自信がなくなったとのこと。看護師の仕事が嫌になったわけでもなく、人間関係に悩んでいるのでもないことがわかり、師長も胸を撫で下ろしたと話を聞くことができた。
なので昼からヒアリングを行うが、その不安なところを拭ってあげられることができれば、また自信を持って日常の業務に戻ることができる。
一緒に入職した同じ看護学校で学んだ親友が辞めようと自信を無くしてたことで胸を痛めるなんて、これほどの素晴らしい人財はない。この人財は死守すべきであるし、その親友の看護師もまたヒアリングをしてその人財も死守しないといけない。離職率を減らす。これもまた人事の大事な仕事内容のひとつである。
それを改めてかんじされられた昼時間であった。
その間の淳子さんは、師長の話に相槌を打ちながら、ぼくの目を見て自分の気持ちを話していた。そこにはプロの看護師としての顔があり、ぼくがリスペクトしている表情であった。
松岡さんのヒアリングは、昼食後しばらくして実施された。松岡さんが話しやすい環境を作るために、病棟の休憩室が使われた。また表情は硬くならないようにニコニコしながら。大袈裟にするのではなくごく自然に。
「ねぇ。ちょっと。」
そう言いながら体当たりしてきたのは、淳子さん。まだ休憩室にだれもいないことをいい事に、長椅子の座っている場所を近づいてきた。
「淳子さん。何なんですか?詰所の休憩室ですよ。もうすぐ師長さんが来ますよ。」
「なんでもないけど。今日一日は、若葉病院に張り付きの一日になってるね。こんなにずっと遥人くんを見れるなんて思ってもみなかった。昼ごはんも一緒に食べたし。今日の遥人くんかっこよかったです。」
「何言ってるんですか。照れるじゃないですか。」
「そんなに照れなくてもいいじゃない。ホントのことなんですから。」
淳子さんは、ぼくの顔を覗き込み、ぼくの顔を物色している。どんな顔をしているのか、何か聞き出したいそんな表情に見えた。
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