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十一章
十一
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”氷申”の冷気の波動を避けるのに腐心していた青龍が、上空へ高々と身を翻した。その高度から、再び猛然と”氷申”に向かって滑空をはじめる。
それを待ち構えたように、”虚空の覇幻”の進路上に”氷申”の冷気が容赦なく吐き出される。しかし”虚空の覇幻”は今度は避けずに、その口から蒼き炎を吐き出した。炎は冷気と衝突し、辺り一面に蒸気が爆発する。
「気をつけろ! ”氷申”!」
贋仔弐阿弥が血相を変えて叫んだ。
それとほぼ同時。白き闇のように深い蒸気の狭間から、鋭い爪が突き出された。”氷申”が避ける間もなく、その鋭利に研ぎ澄まされた青龍の凶器は、鮮やかにその首下を切り裂いた。
”氷申”の傷口から血潮のように黒煙が吹き出した。咆哮するその口からも止め処なく、墨の血が溢れだしてくる。
「馬鹿な……馬鹿な……」
贋仔弐阿弥が崩れ落ちていた。断末魔の叫びを上げる”氷申”を見つめながら、呪詛のように言葉を紡ぐ。
「こんな馬鹿げたことがあるものか。魔扇が破られるものか。わたしが……、この仔弐阿弥が破られるものか……。わたしは創らねばならぬのだ。わたしの世を。わたしを受け入れてくれる世を。この手で、この力で創らねばならぬのだ。わたしが仔弐阿弥であるために……わたしが贋ではなく、この現で唯一の本物であるために」
贋仔弐阿弥は幽鬼のごとく立ち上がり両腕を掲げた。
「ここで朽ちるわけにはいかぬのだ、”氷申”!」
「無駄だ! やめろ!」
夢一が声を荒げたときには、”氷申”の銀の体が一際鮮やかに輝いていた。その銀の巨体が苦悶する。
「そいつはもう限界だ! 霊験なんて残っちゃいねえ! 形を保てねえぞ!」
”氷申”がのたうつように手足をばたつかせ、その巨体を仰け反らせた。しかしそれを見ても贋仔弐阿弥は、”氷申”を使役しようとする。
「動け、動け。わたしのために動いて見せろ”氷申”。わたしの大願のために命を懸けて舞い踊れ。この世のすべてを凍土と化すまで……――”氷申”!」
「やめろ!」
夢一の叫びが”氷申”の咆哮で掻き消えた。その氷の体が一瞬いびつに膨張したかと思うと、内部から溢れる黒煙に全身を食い破られるようにして、肉体が破裂した。
「伏せろ!」
夢一の指示に、すずめたちは慌てて、凍った川面に突っ伏した。
その頭上を、砕け散った”氷申”のおびただしい氷片が、矢のごとく飛び交っていく。
そしてそのとき、すずめは見た。
その魔思の残骸、氷の破片群に全身を貫かれ、黒い血潮を噴き出す贋仔弐阿弥の姿を。
自分の父が生み出した、欲望の化物の最期の姿を、すずめはその目に焼き付けることとなった。
それを待ち構えたように、”虚空の覇幻”の進路上に”氷申”の冷気が容赦なく吐き出される。しかし”虚空の覇幻”は今度は避けずに、その口から蒼き炎を吐き出した。炎は冷気と衝突し、辺り一面に蒸気が爆発する。
「気をつけろ! ”氷申”!」
贋仔弐阿弥が血相を変えて叫んだ。
それとほぼ同時。白き闇のように深い蒸気の狭間から、鋭い爪が突き出された。”氷申”が避ける間もなく、その鋭利に研ぎ澄まされた青龍の凶器は、鮮やかにその首下を切り裂いた。
”氷申”の傷口から血潮のように黒煙が吹き出した。咆哮するその口からも止め処なく、墨の血が溢れだしてくる。
「馬鹿な……馬鹿な……」
贋仔弐阿弥が崩れ落ちていた。断末魔の叫びを上げる”氷申”を見つめながら、呪詛のように言葉を紡ぐ。
「こんな馬鹿げたことがあるものか。魔扇が破られるものか。わたしが……、この仔弐阿弥が破られるものか……。わたしは創らねばならぬのだ。わたしの世を。わたしを受け入れてくれる世を。この手で、この力で創らねばならぬのだ。わたしが仔弐阿弥であるために……わたしが贋ではなく、この現で唯一の本物であるために」
贋仔弐阿弥は幽鬼のごとく立ち上がり両腕を掲げた。
「ここで朽ちるわけにはいかぬのだ、”氷申”!」
「無駄だ! やめろ!」
夢一が声を荒げたときには、”氷申”の銀の体が一際鮮やかに輝いていた。その銀の巨体が苦悶する。
「そいつはもう限界だ! 霊験なんて残っちゃいねえ! 形を保てねえぞ!」
”氷申”がのたうつように手足をばたつかせ、その巨体を仰け反らせた。しかしそれを見ても贋仔弐阿弥は、”氷申”を使役しようとする。
「動け、動け。わたしのために動いて見せろ”氷申”。わたしの大願のために命を懸けて舞い踊れ。この世のすべてを凍土と化すまで……――”氷申”!」
「やめろ!」
夢一の叫びが”氷申”の咆哮で掻き消えた。その氷の体が一瞬いびつに膨張したかと思うと、内部から溢れる黒煙に全身を食い破られるようにして、肉体が破裂した。
「伏せろ!」
夢一の指示に、すずめたちは慌てて、凍った川面に突っ伏した。
その頭上を、砕け散った”氷申”のおびただしい氷片が、矢のごとく飛び交っていく。
そしてそのとき、すずめは見た。
その魔思の残骸、氷の破片群に全身を貫かれ、黒い血潮を噴き出す贋仔弐阿弥の姿を。
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