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27話 ガーデンパーティ②
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「アルセナ様、ただいまよろしいでしょうか?」
声を掛けた相手はリーナ子爵令嬢だ。童顔で可愛らしい顔をしている。茶色の瞳はリスのようだ。
「ビスクドールを集めていると聞いたのですが……」
「ええ。幼い頃から少しづつ集めているのです。よかったらご覧になられますか?」
前世の記憶がある私は、子供らしくない子供で友達と呼べるほど親しい子もいなかった。その為、なんとか馴染もうと子供らしく更に令嬢らしい趣味を模索した結果、ビスクドールを集めていた。女の子らしいし、骨董的価値もあり、集めていても無駄にならないので……こういうところが子供らしくないと言われる所以だろう。だって仕方がない、中身が子供じゃないのだから。
「ええ、是非」
リーナさんに嬉しそうに言われ、私も嬉しくて顔が綻ぶ。だって初めて令嬢に披露できる機会が訪れたのだから。結局、人形を集めたが令嬢の友達は出来なかった。それから、ビスクドールを好きだと思っているお父様とアリスによって更に収集された私のビスクドールコレクションは圧巻ものだろう。
私はご一緒したいという他の令嬢と一緒にコレクションしている部屋へ向かった。その中にブレンダ侯爵令嬢も居た。彼女は興味無さそうなのに、着いてくるなんて意外だった。
「どうぞ」
ドアを開けると劣化を避けるため薄暗くした部屋に沢山の人形が並んでいる。実はさほど好きではない私にはちょっと怖かった。
明かりを付ければ、ガラスケース内に美しい人形が並んでいる。そのどれもがとても愛らしい目をしており、綺麗なドレスに身を包んでいる。一番奥には、先日手にいれた、ものすごく大変貴重なアンティークのビスクドールが飾ってある。白く透き通るおうな白磁の肌にガラス製の青い瞳が印象的でとても愛らしい顔をしている。数千万ピピンはするだろうか?ちなみに乙女ゲーだからか、通貨はピピンで1ピピン=1円である。
「わぁー凄いですね……」
令嬢達が感嘆の声を上げた。ブレンダ侯爵令嬢一人を除いて。
「半分以上、お父様やアリスフォード殿下がくださったんです」
「アリスフォード殿下が!?」
アリスの名前を出すとご令嬢達の目が光った。それを見て私は失言したと思った。何故なら、王族の事を話すのは、例え些細な事でも、誰にどんな情報を渡すかわからないからだ。普段なら言わないので、初めて人形を披露できる機会を得て浮かれていたのかもしれない。
私は微苦笑を浮かべ曖昧に頷くが、逃して貰えなかった。
「アリスフォード殿下と仲がよろしいですよね」
「ええ、まぁ」
「あの天使のような相貌……はぁー素敵です」
「もしかして恋仲とか……」
発言したクラスメイトの令嬢がゴクリと唾を飲んで、私の返答を待っている。さっきまで姦しかったのに、誰もが私の顔を興味深々とした目で凝視していた。
「いいえ、幼馴染なんです。だから距離も近く見えるのかもしれないですね」
「それだけではないように思えるんです。毎朝一緒に登校してますし……」
他のご令嬢が肯定するように頷いた。
「私はアリスフォード殿下の私室にも出入りしているとお聞きしました。もしかして婚約予定とかですか……」
「いえいえ、私なんかがとんでもないことですわ」
「まぁアルセナ様以外に誰がアリスフォード殿下釣り合うと言うのですか?」
「んん゛っ! はぁー、あんた馬鹿ね。そんなことあるわけないじゃない」
ブレンダ侯爵令嬢が咳払いをして、不愉快そうな顔で私を睨んでいた。場の雰囲気が一気に悪くなる。然し、私はアリスの話から逃れてホッとしていた。
「あぁ……そういえば、ロココ王朝時代に作られたジュモー社製のアンティークドールが手に入ったんです。とても状態も良くて……あれ、さっきまでここにあったんですけど……誰かご存知ないですか?」
部屋に入った時、確かに一番奥に青い目のビスクドールがあったのを確認している。
「まさか誰かが取ったとでも?」
「そんなこと申してません」
――バシッ
衝撃と共に頬が熱くなった。何が起きたか一瞬理解出来なかった。でも、熱さあとにきた痛みで叩かれたのだと解った。
声を掛けた相手はリーナ子爵令嬢だ。童顔で可愛らしい顔をしている。茶色の瞳はリスのようだ。
「ビスクドールを集めていると聞いたのですが……」
「ええ。幼い頃から少しづつ集めているのです。よかったらご覧になられますか?」
前世の記憶がある私は、子供らしくない子供で友達と呼べるほど親しい子もいなかった。その為、なんとか馴染もうと子供らしく更に令嬢らしい趣味を模索した結果、ビスクドールを集めていた。女の子らしいし、骨董的価値もあり、集めていても無駄にならないので……こういうところが子供らしくないと言われる所以だろう。だって仕方がない、中身が子供じゃないのだから。
「ええ、是非」
リーナさんに嬉しそうに言われ、私も嬉しくて顔が綻ぶ。だって初めて令嬢に披露できる機会が訪れたのだから。結局、人形を集めたが令嬢の友達は出来なかった。それから、ビスクドールを好きだと思っているお父様とアリスによって更に収集された私のビスクドールコレクションは圧巻ものだろう。
私はご一緒したいという他の令嬢と一緒にコレクションしている部屋へ向かった。その中にブレンダ侯爵令嬢も居た。彼女は興味無さそうなのに、着いてくるなんて意外だった。
「どうぞ」
ドアを開けると劣化を避けるため薄暗くした部屋に沢山の人形が並んでいる。実はさほど好きではない私にはちょっと怖かった。
明かりを付ければ、ガラスケース内に美しい人形が並んでいる。そのどれもがとても愛らしい目をしており、綺麗なドレスに身を包んでいる。一番奥には、先日手にいれた、ものすごく大変貴重なアンティークのビスクドールが飾ってある。白く透き通るおうな白磁の肌にガラス製の青い瞳が印象的でとても愛らしい顔をしている。数千万ピピンはするだろうか?ちなみに乙女ゲーだからか、通貨はピピンで1ピピン=1円である。
「わぁー凄いですね……」
令嬢達が感嘆の声を上げた。ブレンダ侯爵令嬢一人を除いて。
「半分以上、お父様やアリスフォード殿下がくださったんです」
「アリスフォード殿下が!?」
アリスの名前を出すとご令嬢達の目が光った。それを見て私は失言したと思った。何故なら、王族の事を話すのは、例え些細な事でも、誰にどんな情報を渡すかわからないからだ。普段なら言わないので、初めて人形を披露できる機会を得て浮かれていたのかもしれない。
私は微苦笑を浮かべ曖昧に頷くが、逃して貰えなかった。
「アリスフォード殿下と仲がよろしいですよね」
「ええ、まぁ」
「あの天使のような相貌……はぁー素敵です」
「もしかして恋仲とか……」
発言したクラスメイトの令嬢がゴクリと唾を飲んで、私の返答を待っている。さっきまで姦しかったのに、誰もが私の顔を興味深々とした目で凝視していた。
「いいえ、幼馴染なんです。だから距離も近く見えるのかもしれないですね」
「それだけではないように思えるんです。毎朝一緒に登校してますし……」
他のご令嬢が肯定するように頷いた。
「私はアリスフォード殿下の私室にも出入りしているとお聞きしました。もしかして婚約予定とかですか……」
「いえいえ、私なんかがとんでもないことですわ」
「まぁアルセナ様以外に誰がアリスフォード殿下釣り合うと言うのですか?」
「んん゛っ! はぁー、あんた馬鹿ね。そんなことあるわけないじゃない」
ブレンダ侯爵令嬢が咳払いをして、不愉快そうな顔で私を睨んでいた。場の雰囲気が一気に悪くなる。然し、私はアリスの話から逃れてホッとしていた。
「あぁ……そういえば、ロココ王朝時代に作られたジュモー社製のアンティークドールが手に入ったんです。とても状態も良くて……あれ、さっきまでここにあったんですけど……誰かご存知ないですか?」
部屋に入った時、確かに一番奥に青い目のビスクドールがあったのを確認している。
「まさか誰かが取ったとでも?」
「そんなこと申してません」
――バシッ
衝撃と共に頬が熱くなった。何が起きたか一瞬理解出来なかった。でも、熱さあとにきた痛みで叩かれたのだと解った。
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