32 / 72
二章 御伽の国
62 武闘会(4)
しおりを挟む
1回戦のうち、残っているのはヤニム 対 アラエル。そしてナオキ 対 バレンタインの戦いですね。
どっちも楽しみですね。
ヤニムは逃げるのは神がかった上手さがありますが、どうやって攻撃に転じるのかが気になるところです。
「さぁ! 1回戦も残る2試合。ノアの村が誇る逃げ上手ヤニムは、一体どんな面白い逃げ方を見せてくれるんだー?!」
観客に笑いが起きます。たしかに、ヤニムの逃げ方はめちゃくちゃで思ってもみない逃げ方をするので面白いんですよね。
本人も、最近はパフォーマンスみたいに思ってるのか、観客に手を振って応えてます。
だんだんと人気者になってきてますね、ヤニム。モテる日も近いかもしれません……多分ですけど。
「よっしゃ、やってやるぜアラエル! 覚悟しろよ!」
「……ちっ」
アラエルは相変わらず冷たいですね。ヤニムがしょぼんとしています。
「では……ヤニム 対 アラエルの試合、初めっ!」
「うおっ?!」
開始と同時に、アラエルの怒涛の攻撃です。
アラエルの大きく綺麗な翼が羽ばたく度に、魔法で威力の増した羽根がヤニムに向かって飛んでいきます。
おおお、ヤニムが逃げ上手なのを知って、逃げ場がないほどの高密度の攻撃ですか!
「あ、あぶねぇ」
ヤニム、何とか生き残りました。服はボロボロですし、髪もきれてます。
「おま、髪きるなよ!」
「かわせないお前が悪い。それに……せっかくだから坊主にしてやる」
アラエルが少し笑います。昔のバレンタインみたいな感じで、戦いが生き様って感じですね。
「ぬぉぉぉぉ?! 生き残れ俺の髪!」
ヤニムは怒涛の攻撃をかわし続けます。あれ、簡単に避けてるように見えますがとんでもない技術なんですよね……なぜかヤニムがやると達人感がないのが謎です。
「ちょろちょろと……めんどくせぇな!」
「それが俺の戦い方なんだよ! ほら、隙がありすぎだぜ!」
おお! ヤニムがついに攻撃に移ります。
「うおおおおお、《黒炎》!」
とてつもなく壮大な技名ですが、放たれたのは手のひらに乗るほどの小さな炎。
……。
「……」
「……ふざやがって!」
アラエルを怒らせるだけでした。本当に攻めの才能がないですねヤニム。
「本物の炎を見せてやる。《聖炎》、《黒炎》」
両手に浮かべられた巨大な白い炎と黒い炎。凄まじい魔力ですね。
結界は大丈夫でしょうが、ヤニムが消し炭になるかもしれません。
「死ね!」
「へっ、かわしてやるぜ!」
おお、初撃はかわしました! 防御魔法の使い方が完璧です。
ですが、そこで調子に乗るのがヤニム。
「あっ」
ヤニムの足がもつれて、助ける間もなく次の瞬間には真っ黒な炎に包まれました。
ヤ、ヤニム?! 生きてますか?! 煙をいそいで晴らして、ヤニムの状況を確認します。
「……あちぃ」
「大丈夫ですかヤニム!」
「マーガレット様……俺、もうダメかもしれねぇ」
傷は……そこまで深くないです。というかかなり軽傷です。燃えた瞬間に上着を脱いだんでしょうか、なんにせよさすがです。
……ただ、その、髪が。
魔法でヤニムの前に鏡を作ります。
「え? 俺の髪の毛、焼けてなくなった?」
「……」
「ええええええええええ」
ヤニムが壊れました。大丈夫ですよ、きっとまた生えてきます!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ヤニムは精神的にダウンしたため、そのまま負けが決まりました。マトン君が看病しています。
「マーガレットさん、これをあの男の子に……」
「ラムさん、これは?」
「魔界で大人気の育毛剤です」
思わずラムさんの頭を見てしまいます。ふっさふさですね。
「私は不要なものですから、ぜひ」
「なるほど……ヤニムに渡しておきます。ありがとうございます」
いい人ですね、ラムさん。そろそろ会場の清掃も終わったので、一回戦最後の試合ですね。
「ナオキと全力で戦うの、初めてだな」
「手加減はしないよ、バレンタイン」
2人ともやる気です。どっちにも頑張って欲しいですね!
「初めっ!」
開始の合図とともにふたりとも魔法を発動させます。
もちろん、バレンタインはお得意の魔槍を大量に作り出しています。
「行っけぇ! 《魔槍》!」
「くっ!」
バレンタインの魔槍には、金髪が爆会祭で使った魔法のように回転による貫徹力と、推進剤による速度の強化が行われているようです。
ナオキもかなり魔法の腕がありますが、全部を捌ききるのにはかなり苦戦していますね。
「さすがだねバレンタイン」
「私は魔槍姫だからな! まだまだいくぞ、ナオキ!」
バレンタインはとても楽しそうに戦っています。ナオキも少し困った顔をしながらも、バレンタインとの戦いを楽しんでいますね。
ナオキはお兄ちゃんって感じの性格です。普段からアダムともよく遊んでくれてますし、今度お礼をしましょう。
そのまま試合はバレンタインが攻め続ける展開になりましたが、次第に慣れてきたナオキが余裕を持って攻撃を受け流すようになってきました。
そして、油断したところに弱体化の魔法です。
私も初めてナオキと戦った時に使われた魔法ですね。
これでバレンタインは魔法に対しての抵抗力が無くなりました。そこにナオキの魔法が次々とかけられて行きます。
まずは体が重くなる魔法、そして五感が鈍くなっていって、最終的には何も感じず、動けなくなるように魔法が掛けられていきます。
……えげつないですね。あれが本来のナオキの戦い方なのでしょうが。
魔法が完全にかかる前に、バレンタインが判定負けします。
ナオキはすぐさま魔法を解除して、回復魔法をかけてますね。
「うー、やっぱそれ強すぎるぞナオキ」
「はっはっは、これでも元勇者の仲間だからね」
ナオキが勝ち誇ってます。悔しがるバレンタインがぽかぽか殴ってますね。
ナオキ、笑ってますが絶対痛いですよね? ぽかぽかっていうか、ボコボコって擬音が適切な威力です。
「これで2回戦出場選手がそろいましたね」
ちょっと試合が盛り上がってる分、時間は少し押してきてますが、余裕を持って企画が組まれているので大丈夫でしょう。
さぁ、2回戦いってみましょうか!
どっちも楽しみですね。
ヤニムは逃げるのは神がかった上手さがありますが、どうやって攻撃に転じるのかが気になるところです。
「さぁ! 1回戦も残る2試合。ノアの村が誇る逃げ上手ヤニムは、一体どんな面白い逃げ方を見せてくれるんだー?!」
観客に笑いが起きます。たしかに、ヤニムの逃げ方はめちゃくちゃで思ってもみない逃げ方をするので面白いんですよね。
本人も、最近はパフォーマンスみたいに思ってるのか、観客に手を振って応えてます。
だんだんと人気者になってきてますね、ヤニム。モテる日も近いかもしれません……多分ですけど。
「よっしゃ、やってやるぜアラエル! 覚悟しろよ!」
「……ちっ」
アラエルは相変わらず冷たいですね。ヤニムがしょぼんとしています。
「では……ヤニム 対 アラエルの試合、初めっ!」
「うおっ?!」
開始と同時に、アラエルの怒涛の攻撃です。
アラエルの大きく綺麗な翼が羽ばたく度に、魔法で威力の増した羽根がヤニムに向かって飛んでいきます。
おおお、ヤニムが逃げ上手なのを知って、逃げ場がないほどの高密度の攻撃ですか!
「あ、あぶねぇ」
ヤニム、何とか生き残りました。服はボロボロですし、髪もきれてます。
「おま、髪きるなよ!」
「かわせないお前が悪い。それに……せっかくだから坊主にしてやる」
アラエルが少し笑います。昔のバレンタインみたいな感じで、戦いが生き様って感じですね。
「ぬぉぉぉぉ?! 生き残れ俺の髪!」
ヤニムは怒涛の攻撃をかわし続けます。あれ、簡単に避けてるように見えますがとんでもない技術なんですよね……なぜかヤニムがやると達人感がないのが謎です。
「ちょろちょろと……めんどくせぇな!」
「それが俺の戦い方なんだよ! ほら、隙がありすぎだぜ!」
おお! ヤニムがついに攻撃に移ります。
「うおおおおお、《黒炎》!」
とてつもなく壮大な技名ですが、放たれたのは手のひらに乗るほどの小さな炎。
……。
「……」
「……ふざやがって!」
アラエルを怒らせるだけでした。本当に攻めの才能がないですねヤニム。
「本物の炎を見せてやる。《聖炎》、《黒炎》」
両手に浮かべられた巨大な白い炎と黒い炎。凄まじい魔力ですね。
結界は大丈夫でしょうが、ヤニムが消し炭になるかもしれません。
「死ね!」
「へっ、かわしてやるぜ!」
おお、初撃はかわしました! 防御魔法の使い方が完璧です。
ですが、そこで調子に乗るのがヤニム。
「あっ」
ヤニムの足がもつれて、助ける間もなく次の瞬間には真っ黒な炎に包まれました。
ヤ、ヤニム?! 生きてますか?! 煙をいそいで晴らして、ヤニムの状況を確認します。
「……あちぃ」
「大丈夫ですかヤニム!」
「マーガレット様……俺、もうダメかもしれねぇ」
傷は……そこまで深くないです。というかかなり軽傷です。燃えた瞬間に上着を脱いだんでしょうか、なんにせよさすがです。
……ただ、その、髪が。
魔法でヤニムの前に鏡を作ります。
「え? 俺の髪の毛、焼けてなくなった?」
「……」
「ええええええええええ」
ヤニムが壊れました。大丈夫ですよ、きっとまた生えてきます!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ヤニムは精神的にダウンしたため、そのまま負けが決まりました。マトン君が看病しています。
「マーガレットさん、これをあの男の子に……」
「ラムさん、これは?」
「魔界で大人気の育毛剤です」
思わずラムさんの頭を見てしまいます。ふっさふさですね。
「私は不要なものですから、ぜひ」
「なるほど……ヤニムに渡しておきます。ありがとうございます」
いい人ですね、ラムさん。そろそろ会場の清掃も終わったので、一回戦最後の試合ですね。
「ナオキと全力で戦うの、初めてだな」
「手加減はしないよ、バレンタイン」
2人ともやる気です。どっちにも頑張って欲しいですね!
「初めっ!」
開始の合図とともにふたりとも魔法を発動させます。
もちろん、バレンタインはお得意の魔槍を大量に作り出しています。
「行っけぇ! 《魔槍》!」
「くっ!」
バレンタインの魔槍には、金髪が爆会祭で使った魔法のように回転による貫徹力と、推進剤による速度の強化が行われているようです。
ナオキもかなり魔法の腕がありますが、全部を捌ききるのにはかなり苦戦していますね。
「さすがだねバレンタイン」
「私は魔槍姫だからな! まだまだいくぞ、ナオキ!」
バレンタインはとても楽しそうに戦っています。ナオキも少し困った顔をしながらも、バレンタインとの戦いを楽しんでいますね。
ナオキはお兄ちゃんって感じの性格です。普段からアダムともよく遊んでくれてますし、今度お礼をしましょう。
そのまま試合はバレンタインが攻め続ける展開になりましたが、次第に慣れてきたナオキが余裕を持って攻撃を受け流すようになってきました。
そして、油断したところに弱体化の魔法です。
私も初めてナオキと戦った時に使われた魔法ですね。
これでバレンタインは魔法に対しての抵抗力が無くなりました。そこにナオキの魔法が次々とかけられて行きます。
まずは体が重くなる魔法、そして五感が鈍くなっていって、最終的には何も感じず、動けなくなるように魔法が掛けられていきます。
……えげつないですね。あれが本来のナオキの戦い方なのでしょうが。
魔法が完全にかかる前に、バレンタインが判定負けします。
ナオキはすぐさま魔法を解除して、回復魔法をかけてますね。
「うー、やっぱそれ強すぎるぞナオキ」
「はっはっは、これでも元勇者の仲間だからね」
ナオキが勝ち誇ってます。悔しがるバレンタインがぽかぽか殴ってますね。
ナオキ、笑ってますが絶対痛いですよね? ぽかぽかっていうか、ボコボコって擬音が適切な威力です。
「これで2回戦出場選手がそろいましたね」
ちょっと試合が盛り上がってる分、時間は少し押してきてますが、余裕を持って企画が組まれているので大丈夫でしょう。
さぁ、2回戦いってみましょうか!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4,760
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。