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どよめきが起きる会場で、アリシアは緊張しつつも隣に立つファリス王子の腕をそっと掴んでいる。
婚約破棄されたばかりの令嬢が、王子にエスコートされてやってくる。そんな有り得ない事態に会場の貴族は状況が呑み込めない。だが、そんな中で二人を呆然と見つめるふたつの視線があった。
ライアと、メリッサだ。
ファリス王子とアリシアは、騒然とする人混みをぬけ、まっすぐに2人の元へと進んでいく。
少し歩けばライアとメリッサも自分たちのところに向かって来ているのだと気づき慌てて王子に向かって膝をついた。
「こ、これは殿下。ご機嫌うるわしゅーー」
「麗しくはないね、ライア。それにその婚約者泥棒の娘はメリッサだったかな?」
是非もないファリス王子の言い方に会場は静まり返る。ライアの侯爵家の現状を知るものであれば、いまから行われるのがどんなものなのかを理解しているからだ。
「こ、婚約者泥棒などではありません! 私とメリッサは互いに愛し合っているのです!」
「互いに愛し合っているべきはライア、君とアリシアではなかったのか?」
「そ、それは……」
ライアは言葉につまり額からだらだらと汗を流し始める。
「君は、婚約関係にある相手を差し置き、別の相手と隠し部屋まで使って不倫関係を続けていたというわけだ。そうだよね?」
「い、いえ。違うのです……! もともと、アリシアに興味はなく……」
その言葉に、アリシアは胸が詰まる思いをする。興味がないとは言っているが、メリッサとの関係はそこまで長いものでは無いはず。そしてその前は自分に対して愛情を持っていてくれた事をアリシアはわかっていた。なのに、その過去すら言い訳のために無かったことにしてしまうのがとてつもなく悲しく、怒りを覚える。
「興味がなければ婚約関係はどうでもいいと思ってるのかな? それは貴族の家同士の契約を甘く見すぎだね。そういう貴族が増えると困るんだよ」
「も、申し訳ございません……」
ライアは自分が置かれている状況の不味さに気づいたのか、頭を深深と下げる。メリッサは何が何だか分からないと言った様子で慌てふためいている。
「謝って済むと……本当にそう思っているのですか?」
「ア、アリシア……」
アリシアがライアに話しかけると、ライアは目に涙を浮かべながらアリシアの名前を呼ぶ。
「その目……まだ私があなたを助けるかもしれないと思ってますね」
「アリシア、いままでの日々を覚えているだろう……?」
ライアはよれよれとアリシアに手を伸ばそうとする。アリシアはその手を汚物でも見るような目で睨みつける。
「……たしかに、あなたとの日々は幸せな時間もありました」
「だ、だったら……」
「ですがそれはもう終わりました。貴方がそこの女と浮気をしたせいで。よくもまぁ婚約者との茶会の日にわざわざ隠し部屋まで用意して会う気になりましたね? なんですか、あなた方は発情期の獣か何かですか?」
まくし立てるようなアリシアの攻撃にライアは呆然とし、ファリス王子は遠慮のないアリシアのものいいに大声で笑う。
婚約破棄されたばかりの令嬢が、王子にエスコートされてやってくる。そんな有り得ない事態に会場の貴族は状況が呑み込めない。だが、そんな中で二人を呆然と見つめるふたつの視線があった。
ライアと、メリッサだ。
ファリス王子とアリシアは、騒然とする人混みをぬけ、まっすぐに2人の元へと進んでいく。
少し歩けばライアとメリッサも自分たちのところに向かって来ているのだと気づき慌てて王子に向かって膝をついた。
「こ、これは殿下。ご機嫌うるわしゅーー」
「麗しくはないね、ライア。それにその婚約者泥棒の娘はメリッサだったかな?」
是非もないファリス王子の言い方に会場は静まり返る。ライアの侯爵家の現状を知るものであれば、いまから行われるのがどんなものなのかを理解しているからだ。
「こ、婚約者泥棒などではありません! 私とメリッサは互いに愛し合っているのです!」
「互いに愛し合っているべきはライア、君とアリシアではなかったのか?」
「そ、それは……」
ライアは言葉につまり額からだらだらと汗を流し始める。
「君は、婚約関係にある相手を差し置き、別の相手と隠し部屋まで使って不倫関係を続けていたというわけだ。そうだよね?」
「い、いえ。違うのです……! もともと、アリシアに興味はなく……」
その言葉に、アリシアは胸が詰まる思いをする。興味がないとは言っているが、メリッサとの関係はそこまで長いものでは無いはず。そしてその前は自分に対して愛情を持っていてくれた事をアリシアはわかっていた。なのに、その過去すら言い訳のために無かったことにしてしまうのがとてつもなく悲しく、怒りを覚える。
「興味がなければ婚約関係はどうでもいいと思ってるのかな? それは貴族の家同士の契約を甘く見すぎだね。そういう貴族が増えると困るんだよ」
「も、申し訳ございません……」
ライアは自分が置かれている状況の不味さに気づいたのか、頭を深深と下げる。メリッサは何が何だか分からないと言った様子で慌てふためいている。
「謝って済むと……本当にそう思っているのですか?」
「ア、アリシア……」
アリシアがライアに話しかけると、ライアは目に涙を浮かべながらアリシアの名前を呼ぶ。
「その目……まだ私があなたを助けるかもしれないと思ってますね」
「アリシア、いままでの日々を覚えているだろう……?」
ライアはよれよれとアリシアに手を伸ばそうとする。アリシアはその手を汚物でも見るような目で睨みつける。
「……たしかに、あなたとの日々は幸せな時間もありました」
「だ、だったら……」
「ですがそれはもう終わりました。貴方がそこの女と浮気をしたせいで。よくもまぁ婚約者との茶会の日にわざわざ隠し部屋まで用意して会う気になりましたね? なんですか、あなた方は発情期の獣か何かですか?」
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