嫌われ忌み子は聖女の生まれ変わりでした

野良猫のらん

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第二十五話

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「ブルダリアス家の嫡男と仲良くなったのか」

 授業後、何故か当たり前のようにエルネスト先生と昼食を摂ることになっていた。流れるようにスムーズに誘われ、つい頷いてしまったのだ。
 教室で誘われたせいで周囲がざわざわとしていた。きっと今頃みんなに噂されているだろう。

「一緒に授業を受けていただろう」
「はい、同じ特殊属性持ちだからって」

 食堂だと目立つからという理由で、彼の私室で二人きりになっていた。
 二人きりになってもいいかなと思う程度には彼に心を許していた。

 この学院の教師はみんなこんな広い私室を与えられているのか、それともエルネスト先生が元宮廷魔術師だからなのかは分からないが、彼の私室は王侯貴族の寝室と比較しても遜色ないように見えた。
 これはきっと研究室も相当広いのだろう。

 今日の昼食のメニューは果実水と軽く衣のついた鶏肉に澄んだ色のスープ、そしていくつかの副菜だった。ソースがお皿というキャンバスをお洒落に彩っている。

「ブルダリアス家は魔術の名家だ。嫡男である彼は跡取りだ」
「へー、そうなんですか」

 スラム育ちの僕とは真逆だな、と心の中で自嘲しながら鶏肉を口に運ぶ。

「ブルダリアス家の現当主である彼の父親は占術学の担当教師をしているな」

 占術学は時間割の関係で取れなかった科目だ。
 いつか取れることもあるだろうか。

「早速知人ができて良かったな」
「はい」

 シャルルくんだって光属性になりたくて光属性になったわけではないだろう。決して妬みを表に出さないように気を付けようと心に決める。

 彼が上品な所作で琥珀色のスープを口に運ぶ。

「ところで初めての授業はどうだったかな? 既にある程度古代語を習得しているらしい君には退屈だったかもしれないが」

 確かに僕は本をいくつか読んで古代語について予習していた。
 それでも実際に授業を受けるのとは全然違う。

「いえ、大変勉強になりました。本だけでは発音やイントネーションなどは分からないので」

 それから、ふと僕は聞いてみたくなった。

「どうしてエルフの生き残りはエルネスト先生だけなんですか? 五百年前の戦争でエルフやドワーフや獣人がいなくなっちゃったのは知ってるんですけど、エルネスト先生みたいに他に生き残れたエルフはどうしていないんですか?」

 僕の質問に彼が食事の手を止める。
 もしかして踏み込んだ質問だったろうか。

「そうか……最近の魔術学校では歴史の大まかな流れしか教わらないのかな」

 僕は魔術学校じゃなくて執事のツォカティスに歴史を教わったんだけどね。
 五百年前に大きな戦があって、人間が勝った。
 負けた側である他種族の連合軍は滅んだということくらいしか知らない。

「私はな、自分の種族を裏切ったんだ」

 彼の言葉に息を呑んだ。

「大戦の時、私は人間の側に付いた。人間が滅びれば我が聖女の生まれ変わりがこの世に生まれて来なくなるからだ」
「…………」

 彼の愛の深さを思い知った気がした。
 同族を裏切るということは、家族や友人をも裏切ったということになる。
 そうまでして彼は想い人の魂が輪廻する世を守りたかったということだろう。

 いいな、と思った。
 そこまで愛されている聖女様のことが、羨ましかった。

「幻滅したかな?」

 彼は僕の沈黙の理由を違う風に受け取ったようだ。

「そんなことはありません。ただ、その……圧倒されてしまって」

 彼は熱烈に僕のことを見つめてくれるけれど、その瞳に映っているのは僕ではない。かつて過去に愛されていた聖女様なのだ。
 そのことを忘れてはならない。
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