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第二十六話
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エルネスト先生との昼食を終えた後は、属性学Iの授業だった。
属性学の先生は白いお髭のお爺さんだった。
僕は楽しく授業を受けた。
その次は呪術学の授業だった。
教室に入った途端、妙な雰囲気だった。
学生たちがざわざわしている。
それもエルネスト先生の古代語の時とは違い、学生たちの恐怖のようなものを感じる。
どうしたんだろうと思っていると、シャルルくんの姿を見つけたので話しかけに行く。
「やあ、シャルルくん」
「あ、ルインハイトくん。午前中ぶりだね」
僕は彼の隣の席を確保する。
「なんか落ち着かない雰囲気だけど、何かあったのかな」
「ああ……多分、この授業の担当教師がある意味エルネスト先生よりも有名人だからだと思う」
「エルネスト先生よりも有名人?」
どういうことかと首を捻る。
「呪術学の担当教師はね、学生たちの間ではもっぱら『超越卿』って呼ばれてるらしいんだ」
「超越卿……?」
なんだか怖そうなあだ名だ。
「なんでも超越卿は学院の学生時代には魔力測定の魔法陣を一つしか光らせることができなかったんだって。でも、創意工夫で魔法陣を組み合わせたりして魔力の消費を抑えてハンデを乗り越えて、今では次々と新しい魔法陣を開発したりしてるんだって。人の枠を超えた者……ってことで『超越卿』ってことらしいよ」
「へええ」
どんな人なんだろう、厳しそうな先生だなと不安になった。
騒めきがぴたりと止まる。
件の教師が姿を現したからだ。
「呪術学を担当するニーリアス・イッシュクロフトだ」
「あ……」
超越卿は見覚えのある人だった。
紺色の真っ直ぐな長髪、黒い色眼鏡。
不機嫌そうに眉が寄せられた美しい顔立ち。
入学式の時に学院の入口で出会った人だった。
(あの人、すごい人だったんだ……)
「それでは、講義を開始する」
超越卿は淡々と授業を始めた。
「まず、呪術とは何か。世間一般では呪いを扱い、人を害する魔術のことと思われているが、それが大きな誤りであることは諸君らもよくご存じだろう」
彼はやたらと不機嫌そうに教室に居並ぶ学生たちを見回す。
「呪術とは呪いの術……言葉通り、呪文や魔法陣を組み合わせることによってさらに複雑で高度な魔術を扱うための学問だ。魔術学校で習ってきた魔術は無詠唱で行使できる些細なものが大半であっただろう。魔導学院では諸君らにはその一歩も二歩も先に行ってもらうことになる」
色眼鏡の向こうの切れ長の瞳がキラリと光った気がした。
超越卿の授業はスパルタだった。
初日だからまずはゆっくりとかそんなことはまったくない。
初っ端から呪文の構成や魔法陣の基礎についてガンガンに詰め込まれた。
後で知ったことだが、超越卿のもう一つのあだ名は『落第卿』らしい。
教室に詰める学生たちが戦々恐々としていたわけだ。
「ふう……」
ハードな時計一回り半の授業を終え、ようやく解放の時だと僕は伸びをする。ノートや教科書を仕舞って立ち上がりかけたその時だった。
「ルインハイト・ロイヒヴィッツハイム、君は今から特別講義だ」
不機嫌そうな超越卿に手招きを受けてしまったのだった。
特別講義!?
「エルフの賢者様だけでは飽き足らず、超越卿まで……」
「姓がロイヒヴィッツハイムってことは王族の……」
「結局権力を持ってる奴がえこひいきされるってことか……」
ざわざわと妬み嫉みを含んだ囁きが聞こえてくる。
古代語の授業の時に僕がエルネスト先生から昼食に誘われてたのを見ていた学生たちだろうか。
エルネスト先生も超越卿も、もう少し目立たないように声をかけてくれればいいのにな。
「こちらへ来い」
騒めきから逃れるように、超越卿の後をついて教室を後にした。
属性学の先生は白いお髭のお爺さんだった。
僕は楽しく授業を受けた。
その次は呪術学の授業だった。
教室に入った途端、妙な雰囲気だった。
学生たちがざわざわしている。
それもエルネスト先生の古代語の時とは違い、学生たちの恐怖のようなものを感じる。
どうしたんだろうと思っていると、シャルルくんの姿を見つけたので話しかけに行く。
「やあ、シャルルくん」
「あ、ルインハイトくん。午前中ぶりだね」
僕は彼の隣の席を確保する。
「なんか落ち着かない雰囲気だけど、何かあったのかな」
「ああ……多分、この授業の担当教師がある意味エルネスト先生よりも有名人だからだと思う」
「エルネスト先生よりも有名人?」
どういうことかと首を捻る。
「呪術学の担当教師はね、学生たちの間ではもっぱら『超越卿』って呼ばれてるらしいんだ」
「超越卿……?」
なんだか怖そうなあだ名だ。
「なんでも超越卿は学院の学生時代には魔力測定の魔法陣を一つしか光らせることができなかったんだって。でも、創意工夫で魔法陣を組み合わせたりして魔力の消費を抑えてハンデを乗り越えて、今では次々と新しい魔法陣を開発したりしてるんだって。人の枠を超えた者……ってことで『超越卿』ってことらしいよ」
「へええ」
どんな人なんだろう、厳しそうな先生だなと不安になった。
騒めきがぴたりと止まる。
件の教師が姿を現したからだ。
「呪術学を担当するニーリアス・イッシュクロフトだ」
「あ……」
超越卿は見覚えのある人だった。
紺色の真っ直ぐな長髪、黒い色眼鏡。
不機嫌そうに眉が寄せられた美しい顔立ち。
入学式の時に学院の入口で出会った人だった。
(あの人、すごい人だったんだ……)
「それでは、講義を開始する」
超越卿は淡々と授業を始めた。
「まず、呪術とは何か。世間一般では呪いを扱い、人を害する魔術のことと思われているが、それが大きな誤りであることは諸君らもよくご存じだろう」
彼はやたらと不機嫌そうに教室に居並ぶ学生たちを見回す。
「呪術とは呪いの術……言葉通り、呪文や魔法陣を組み合わせることによってさらに複雑で高度な魔術を扱うための学問だ。魔術学校で習ってきた魔術は無詠唱で行使できる些細なものが大半であっただろう。魔導学院では諸君らにはその一歩も二歩も先に行ってもらうことになる」
色眼鏡の向こうの切れ長の瞳がキラリと光った気がした。
超越卿の授業はスパルタだった。
初日だからまずはゆっくりとかそんなことはまったくない。
初っ端から呪文の構成や魔法陣の基礎についてガンガンに詰め込まれた。
後で知ったことだが、超越卿のもう一つのあだ名は『落第卿』らしい。
教室に詰める学生たちが戦々恐々としていたわけだ。
「ふう……」
ハードな時計一回り半の授業を終え、ようやく解放の時だと僕は伸びをする。ノートや教科書を仕舞って立ち上がりかけたその時だった。
「ルインハイト・ロイヒヴィッツハイム、君は今から特別講義だ」
不機嫌そうな超越卿に手招きを受けてしまったのだった。
特別講義!?
「エルフの賢者様だけでは飽き足らず、超越卿まで……」
「姓がロイヒヴィッツハイムってことは王族の……」
「結局権力を持ってる奴がえこひいきされるってことか……」
ざわざわと妬み嫉みを含んだ囁きが聞こえてくる。
古代語の授業の時に僕がエルネスト先生から昼食に誘われてたのを見ていた学生たちだろうか。
エルネスト先生も超越卿も、もう少し目立たないように声をかけてくれればいいのにな。
「こちらへ来い」
騒めきから逃れるように、超越卿の後をついて教室を後にした。
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