嫌われ忌み子は聖女の生まれ変わりでした

野良猫のらん

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第四十五話

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 呪術学の講義が終わり、ざわざわとした大教室を出る。

 僕のレポートを破った犯人が誰なのか気になっている素振りの学生もまだ幾人かいた。だが大多数はイッシュクロフト先生の魔術によって僕のレポートが無事復元されたことと、自分のレポートを無事提出し終えた達成感でどうでも良くなった雰囲気であった。

 呪術学のレポートを提出し終えてもまだいくつかの科目のテストが残っている。まだいくつか不安なところがあるため、今日の授業が終わると僕は図書室に直行した。
 混んでいる図書室の中で、なんとか空いている席を見つけると鞄を下ろして腰掛けた。

「あ」
「あっ」

 僕が腰掛けたのは長テーブルの一席だが、なんと目の前に座っている相手がマルステンだった。
 空いた席を見つけて夢中で飛びついたので、気が付かなかった。

「……」

 マルステンは僕を前にバツが悪そうに視線を泳がせる。
 それから彼はおもむろにゴソゴソと鞄の中を探り出した。
 彼が鞄の中から取り出したのは一冊のノートだった。

「母方の親戚にだいぶ年の離れた従兄弟がいるんだがな」
「は?」

 彼は出し抜けに自分の従兄弟の話をし出した。

「その従兄弟は学院の卒業生で、彼の残したノートは大層勉強の役に立ったのだ。だから貸してやる」
「え……」

 彼の言葉に目が点になる。

「彼の受けた教科の傾向と対策も載っている。私はもう覚えた、だから貴様に貸すと言っているのだ」

 ずい、と彼がノートを押し付けてくる。

「えっ、なんで?」
「それは……貴様も一応私の親戚だから、だ」

 ふい、と顔を逸らした彼からノートを受け取る。
 どうやら彼なりに僕との距離を縮めてくれようとしているらしいと理解できたからだ。

 パラパラとノートをめくってみる。
 ノートの作成者は生真面目な性格のようだ。
 テストに出そうな箇所には印が付けられていたり、受けたテストで間違えた箇所の反省や振り返りも記入されていた。

「その……すまなかったな」

 ノートを見ている時、マルステンがぽつりと呟いた。

「え?」
「貴様……いや君に無礼な物言いをしてしまったことだ。私が、愚かだった」

 ノートから顔を上げると、彼は真っ赤な顔をして俯いていた。
 まさか彼から謝罪の言葉が聞けるとは思わなかった。
 彼の本気の反省が感じられた。
 だから僕は彼を許すことにした。

「いいよ、気にしてないから」
「……っ!」

 マルステンは今の言葉が信じられないとばかりに顔を上げた。
 ツリ目の彼が目を丸くさせたその表情は妙に少年っぽく見えた。

「ほ、本当に……?」
「うん、もういいよ」

 しっかりと彼の目を見て頷くと、やっと彼はほっとしたようにゆるゆると息を吐いた。

「そうか、それは……あ、ありがとう」

 今まで素直に謝って許してもらった経験がないのか、彼の言葉はたどたどしかった。
 なんだか彼と仲良くなれそうだと感じた瞬間だった。

 結局僕のレポートを破いたのが誰だったのかは判明しなかった。
 だがマルステンが貸してくれたノートのおかげか、筆記テストがある科目では全教科ほぼ満点を取ることができて大満足の結果に終わった。
 後でノートを返しに行った時にお礼にお菓子も一緒に持っていったら、マルステンは照れ臭そうに受け取ってくれた。

 そして全教科のテストが終わったということは……ついに冬休みの到来だ!
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