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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百二十九話 勉強難しいよう
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「うーん、うーん」
授業が終わった後、僕は自室で木札を睨みながら唸っていた。
木札に書かれているのはもちろん古代語二十六文字とその読み方、そしてどの属性の精霊が元になっているかの一覧表である。
古代語は象形文字であり表音文字だ。日本で言うところのひらがな・カタカナにあたるだろうか。
どの文字がどの発音になるかを覚えなければ呪文も読めない。
コンコン、とドアがノックされ「殿下、失礼します」とドアの向こうから声が。
お兄ちゃんの声だ。
僕は弾んだ声で「どうぞ」と返事した。
「お兄ちゃーん!!」
お兄ちゃんが部屋の戸を閉めるなり、僕はひしとしがみついた。
「どうしたカレン、何があった。ケイスに苛められたのか?」
お兄ちゃんの顔色がさっと変わる。
この前は自分一人の力で上下関係を叩き込んでみせろとか言ってた気がするのに、今にもお兄ちゃん自らケイスの所に乗り込んでいきそうな勢いだ。
僕は慌てて否定した。
「ううん、ケイスくんのことはどうにかなったよ。それよりも勉強が難しいの!」
「勉強?」
僕は古代語の文字をまず暗記しなければならないことを話した。
「そうか、古代語。ということは検査の結果は……」
「うん! 属性は相変わらず判明しなかったけど、魔力があるのは確かだって言われたよ!」
「そうか、良かったな!」
検査の結果を聞いたお兄ちゃんは本当に嬉しそうにくしゃりと微笑む。
兄の手が優しく頭を撫でてくれた。
お兄ちゃんが自分のことのように喜んでくれるのが僕には嬉しかった。
「それで辺境伯の息子のことはもうどうにかしたのか、早いな」
「あくまで平和的に解決しました」
えっへん、と胸を張る。
「よしよし、頼もしいことで何よりだ。どんな手を使ったのかは聞かないでおくとしよう」
平和的に解決したって言ってるのに。
お兄ちゃんの悪い微笑みから察するに、僕がケイスくんを脅したか何かしたと思っているようだった。
僕はお兄ちゃんみたいな悪役思考じゃないのにな。
そりゃあちょっと自分の不憫さを強調する為に話を盛ったけど。
そもそも自分のこと不憫な身の上だなんて本当はちっとも思ってないけど。
でもそれでお互いに嫌な思いをしたりせずに済むなら、それに越したことはないよね!
「それにしてもカレンが勉強のことで弱音を吐くなんて珍しいな。いつも集中して頑張ってるじゃないか」
「ええ、僕勉強なんて嫌いだよー」
僕が唇を尖らせると、お兄ちゃんは驚いたように目を丸くした。
「えっ、そうだったのか……!? てっきり勉強が好きなんだと思っていた。オレが部屋に来るといつも勉強している気がするから」
「だってそれは、勉強ぐらいしかやることないし……」
あと早くお兄ちゃんの役に立ちたくって早く文字が読めるようになりたかったから、とは言わない。
だって何だか気恥ずかしいもん。
授業が終わった後、僕は自室で木札を睨みながら唸っていた。
木札に書かれているのはもちろん古代語二十六文字とその読み方、そしてどの属性の精霊が元になっているかの一覧表である。
古代語は象形文字であり表音文字だ。日本で言うところのひらがな・カタカナにあたるだろうか。
どの文字がどの発音になるかを覚えなければ呪文も読めない。
コンコン、とドアがノックされ「殿下、失礼します」とドアの向こうから声が。
お兄ちゃんの声だ。
僕は弾んだ声で「どうぞ」と返事した。
「お兄ちゃーん!!」
お兄ちゃんが部屋の戸を閉めるなり、僕はひしとしがみついた。
「どうしたカレン、何があった。ケイスに苛められたのか?」
お兄ちゃんの顔色がさっと変わる。
この前は自分一人の力で上下関係を叩き込んでみせろとか言ってた気がするのに、今にもお兄ちゃん自らケイスの所に乗り込んでいきそうな勢いだ。
僕は慌てて否定した。
「ううん、ケイスくんのことはどうにかなったよ。それよりも勉強が難しいの!」
「勉強?」
僕は古代語の文字をまず暗記しなければならないことを話した。
「そうか、古代語。ということは検査の結果は……」
「うん! 属性は相変わらず判明しなかったけど、魔力があるのは確かだって言われたよ!」
「そうか、良かったな!」
検査の結果を聞いたお兄ちゃんは本当に嬉しそうにくしゃりと微笑む。
兄の手が優しく頭を撫でてくれた。
お兄ちゃんが自分のことのように喜んでくれるのが僕には嬉しかった。
「それで辺境伯の息子のことはもうどうにかしたのか、早いな」
「あくまで平和的に解決しました」
えっへん、と胸を張る。
「よしよし、頼もしいことで何よりだ。どんな手を使ったのかは聞かないでおくとしよう」
平和的に解決したって言ってるのに。
お兄ちゃんの悪い微笑みから察するに、僕がケイスくんを脅したか何かしたと思っているようだった。
僕はお兄ちゃんみたいな悪役思考じゃないのにな。
そりゃあちょっと自分の不憫さを強調する為に話を盛ったけど。
そもそも自分のこと不憫な身の上だなんて本当はちっとも思ってないけど。
でもそれでお互いに嫌な思いをしたりせずに済むなら、それに越したことはないよね!
「それにしてもカレンが勉強のことで弱音を吐くなんて珍しいな。いつも集中して頑張ってるじゃないか」
「ええ、僕勉強なんて嫌いだよー」
僕が唇を尖らせると、お兄ちゃんは驚いたように目を丸くした。
「えっ、そうだったのか……!? てっきり勉強が好きなんだと思っていた。オレが部屋に来るといつも勉強している気がするから」
「だってそれは、勉強ぐらいしかやることないし……」
あと早くお兄ちゃんの役に立ちたくって早く文字が読めるようになりたかったから、とは言わない。
だって何だか気恥ずかしいもん。
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