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王子との出会い
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お昼休み、私は中庭のベンチで昼食を取っていた。お弁当というか……ただのおにぎりなんだけれど。ガスコンロなんて便利なものはなかったからお米を炊くのも一苦労だった。火の調節は難しいし気を抜くと焦げちゃう。火の魔法が使えるようになると楽できるかな。
平民用の学食もあるんだけれど一人では行きにくいし、友達がまだできていなくてぼっち飯するしかなかった。
「それは何ていう食べ物ペポ?」
どこからか青い精霊が出てきた。
「おにぎりよ。っていうか何で知らないの?」
「僕は食事しないから食べ物には詳しくないペポ。わかるのは魔法くらいペポ」
この精霊は食事しないけれど、魔石を与えれば成長してくれる。見つけたら渡してみようかな。
「なるほどね。魔法に関しては頼りにしようかな」
「任せるペポ!」
「……ところであんた、どこに行ってたの?」
「お散歩してたペポ」
ずっと私の傍にいるわけではないらしい。自由気ままだな、おいっ。
「精霊の姿って周りから見えるの?」
「見えないペポ。僕が見えるのはご主人だけペポ」
「ふーん。声は?」
「声もご主人しか聞こえないペポ」
ということは、今は独り言を言っているように見えるわけか。気を付けないと。
精霊について思い出すと名前は自由につけられたはずだ。私は百合漫画で気に入った子の名前を風の精霊ちゃんに付けてムフフしていた。
「たしか名前はなかったよね。付けてあげようか」
「そうペポ! 付けてほしいペポ!」
ペポペポ精霊は目をキラキラさせて両手を握りながら今か今かと待ち出した。精霊に性別があるのかわからないけれど、見た目は男の子だ。男の子っぽい名前をつけることにする。
「そうね…………ペポ太郎……ペポ助…………決めた! あなたはペポ丸よ!」
とっても安直に決めるとペポ丸は、
「……ペポ」
としょんぼりしだし、なんか不服そうにしている。ペポペポ言っているのに、ペポが入った名前がなぜ嫌なのかわからない、ぺぽ。
水の精霊を命名したところで、私は再びおにぎりを手に取る。というのも、わざわざ中庭でおにぎりもぐもぐするのにも訳がある。そう、ある攻略キャラとの出会いイベントが起きるからだ。
ササッ……
近くのモサモサとしたツツジみたいな植物から音がした。そして、中からオレンジ髪の男子が出てきた。
――アルフレッド=ヴォン=ハートフィールド
この国の第二王子で攻略キャラの一人。髪はミディアムくらいの橙色でカッコよく決まっている。制服のラインは青色で二年生だ。家柄特有魔法は『絶対命令』で全ての人にどんな命令でも従わせる王子らしい能力を持っている。ただ本人はこの能力を良く思っていないみたい。
「君は……」
もぐもぐ、もぐもぐ、ハッ!?
(そ、そうだ。会話しないと)
初対面で声をかけてくるなんて大体は怪しい奴だけれど、無視するわけにもいかない。
「こんなところで一体どうしたんですか?」
「ちょっと追われていて……こんな不格好な姿を見せて申し訳ない」
「いえいえ」
「少しここにいさせてくれないか?」
そう言うとオレンジ王子は私の横に座わった。ずけずけと女の子の隣に座るなんて元の世界じゃ通報されてもおかしくないだろう。攻略キャラだから一応許すけど。
(もぐもぐ、何話そう?)
「君の名前は?」
考えていたら先に話しかけてきた。
「私は、アユミ=エンジェルです。今年入学しました」
「アユミか。俺は二年生のアルフレッド=ヴォン=ハートフィールドだ」
「ハートフィールドってもしかして……」
「ああ、これでもこの国の第二王子だ」
平民って王子の顔のことを知っているのかな。無礼かもと少し不安になったけれど問題なさそうだ。
当たり障りのない自己紹介を終えると、遠くから足音と声が聞こえる。
『アルフレッド様はどこに行かれたのでしょう?』
『あちらでは?』
(この声はヴェネッサとノエル!?)
平民用の学食もあるんだけれど一人では行きにくいし、友達がまだできていなくてぼっち飯するしかなかった。
「それは何ていう食べ物ペポ?」
どこからか青い精霊が出てきた。
「おにぎりよ。っていうか何で知らないの?」
「僕は食事しないから食べ物には詳しくないペポ。わかるのは魔法くらいペポ」
この精霊は食事しないけれど、魔石を与えれば成長してくれる。見つけたら渡してみようかな。
「なるほどね。魔法に関しては頼りにしようかな」
「任せるペポ!」
「……ところであんた、どこに行ってたの?」
「お散歩してたペポ」
ずっと私の傍にいるわけではないらしい。自由気ままだな、おいっ。
「精霊の姿って周りから見えるの?」
「見えないペポ。僕が見えるのはご主人だけペポ」
「ふーん。声は?」
「声もご主人しか聞こえないペポ」
ということは、今は独り言を言っているように見えるわけか。気を付けないと。
精霊について思い出すと名前は自由につけられたはずだ。私は百合漫画で気に入った子の名前を風の精霊ちゃんに付けてムフフしていた。
「たしか名前はなかったよね。付けてあげようか」
「そうペポ! 付けてほしいペポ!」
ペポペポ精霊は目をキラキラさせて両手を握りながら今か今かと待ち出した。精霊に性別があるのかわからないけれど、見た目は男の子だ。男の子っぽい名前をつけることにする。
「そうね…………ペポ太郎……ペポ助…………決めた! あなたはペポ丸よ!」
とっても安直に決めるとペポ丸は、
「……ペポ」
としょんぼりしだし、なんか不服そうにしている。ペポペポ言っているのに、ペポが入った名前がなぜ嫌なのかわからない、ぺぽ。
水の精霊を命名したところで、私は再びおにぎりを手に取る。というのも、わざわざ中庭でおにぎりもぐもぐするのにも訳がある。そう、ある攻略キャラとの出会いイベントが起きるからだ。
ササッ……
近くのモサモサとしたツツジみたいな植物から音がした。そして、中からオレンジ髪の男子が出てきた。
――アルフレッド=ヴォン=ハートフィールド
この国の第二王子で攻略キャラの一人。髪はミディアムくらいの橙色でカッコよく決まっている。制服のラインは青色で二年生だ。家柄特有魔法は『絶対命令』で全ての人にどんな命令でも従わせる王子らしい能力を持っている。ただ本人はこの能力を良く思っていないみたい。
「君は……」
もぐもぐ、もぐもぐ、ハッ!?
(そ、そうだ。会話しないと)
初対面で声をかけてくるなんて大体は怪しい奴だけれど、無視するわけにもいかない。
「こんなところで一体どうしたんですか?」
「ちょっと追われていて……こんな不格好な姿を見せて申し訳ない」
「いえいえ」
「少しここにいさせてくれないか?」
そう言うとオレンジ王子は私の横に座わった。ずけずけと女の子の隣に座るなんて元の世界じゃ通報されてもおかしくないだろう。攻略キャラだから一応許すけど。
(もぐもぐ、何話そう?)
「君の名前は?」
考えていたら先に話しかけてきた。
「私は、アユミ=エンジェルです。今年入学しました」
「アユミか。俺は二年生のアルフレッド=ヴォン=ハートフィールドだ」
「ハートフィールドってもしかして……」
「ああ、これでもこの国の第二王子だ」
平民って王子の顔のことを知っているのかな。無礼かもと少し不安になったけれど問題なさそうだ。
当たり障りのない自己紹介を終えると、遠くから足音と声が聞こえる。
『アルフレッド様はどこに行かれたのでしょう?』
『あちらでは?』
(この声はヴェネッサとノエル!?)
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