百合厨な私は『悪役令嬢×クール令嬢』を成就させたいのに攻略男子が邪魔してくる~シンメトリカル・ロマンス

裏乃つむぐ

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ヘタレ王子

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 近くに公爵令嬢ヴェネッサとクール令嬢ノエルがいる。それだけで、その事実だけで、私の頭は彼女たちへの想いで満たされ無意識に身体が動く。

 とっさに立ち上がり彼女たちのご尊顔そんがんを拝見しようとするが……

「(アユミ! 俺は彼女たちに追われているんだ! 見つかるのは良くない!)」

 オレンジ王子ことアルフレッドにグッと肩を掴まれて私はベンチに戻される。王子は私の肩を正面から押さえていたようで、目の前に彼の顔が近づいていた。

 ……彼の髪を、美貌びぼうを、吐息を、焦りを、至近距離で感じる。

 少しだけ気まずくなったが、アルフレッド王子は気にすることなくベンチに座り直した。乙女ゲームだったらこれはドキドキイベントだろうけど、私はときめくことはなく、むしろ悪い印象を彼に持っていた。

(彼女たちをちょこっと見ようとしただけなのに……)

 それを邪魔するこの王子に、そんなかわいい彼女たちに追われて逃げるようなこんな王子に、怒りがふつふつと沸き上がる。

(これはいかん! 我慢!)

 どうにかこらえて、私は平静な装いを保つ。

「追われているってどういうことですか? 彼女たちは?」

 ちょっとだけ苛立ちを込めつつ王子に質問した。

「さっきの子はヴェネッサ。この国の公爵令嬢で……俺の許嫁だ」
「なら、なんで逃げる必要があるんですか? 許嫁なんですし」

 私はあごに人差し指を当てながら、なんて羨ましいのと思いつつ、率直な疑問を王子に投げかけた。一呼吸置いて、ため息を付いて、アルフレッド王子は言いづらそうに言葉をつむぐ。

「女の子にグイグイと来られると……困るというか……苦手というか……どうしたらいいのかわからないんだ」

 そう、そうなのだ。

 この王子は恋愛に対しては控えめというか、億劫おっくうというか、

 つまるところ『ヘタレ』なのだ。

 このことを私は知っていたし、主人公と仲良くなるにつれてその苦手意識が薄れるけれど、面と向かって言われるとなんて情けないのかと思ってしまう。それに、王子のこの性格が許嫁のヴェネッサにどれだけ『心労』を与えているのかわかっていない。

 ……ここで説教してはいけない。

 これはアルフレッド王子との出会いイベントだ。今後彼と仲良くなり、『恋愛レベル1』のイベントでヴェネッサに初めて遭遇そうぐうする。クール令嬢ノエルは、ヴェネッサのお付きのような立ち位置で、いつも側にいるから二人同時に出会える。だからこそ、二人に会うためには、知り合いになるためには、このオレンジヘタレ野郎と仲良くならなければいけない。

「そうなんですね。なら、私で良ければお話しませんか? 少しずつでも女の子と話していれば苦手意識がなくなるかもしれませんよ?」
「……いいのか?」
「ええ、お昼でしたら私はここにいます。それに、まだ友達ができてなくて寂しいので」

 友達がいなくて寂しいのは事実だし、しばらくはぼっち飯決めようと思っていた。

「わかった。昼だな……また来る」

 そう言い残し、ヘタレ王子はその場からいなくなった。
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