百合厨な私は『悪役令嬢×クール令嬢』を成就させたいのに攻略男子が邪魔してくる~シンメトリカル・ロマンス

裏乃つむぐ

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駄々っ子

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 魔法演習の授業で私はグラウンドにいた。基礎から魔法を教えてくれるようになったので私的には嬉しい。隣では課題を終えたリック師匠とツンツンルームメイトが付いてくれている。

「なかなか上手くできないね。でも大丈夫だよ! 一生懸命練習すれば出来るようになるから!」
「はい! 師匠!」

 私は五〇〇ミリリットル程度の水の球を作る。本当はもっと大きい球を作りたいけれど全く安定しない。本来なら球から水を糸のように飛ばすんだけれどそれ以前の段階だった。

 魔法の感覚は球技に近い。

 別に私は運動が苦手というわけではなくテニスやバドミントンみたいな道具を使うスポーツはできた。でも、バレーやバスケットボールみたいな球を直接触るスポーツは苦手だった。魔法はどちらかというと後者だった。

「アユミ、平民で出来てないのあんただけよ。しっかりしなさい!」

 ツンツンルームメイトも私のことを見てくれていた。彼女も平民だけど十分な魔力を持っていて私と同じような理由で学園に入学した。私と違って魔法はそこそこできるようだ。

「わかってるんだけど……ああっ」

 水の球が崩れて、バシャっと地面に落ちた。

「……」
「惜しかったね。もう一回やってみようよ!」

 リック師匠はこうして何回も応援してくれている。魔力変換とやらには慣れてきたものの外に出してコントロールするのが慣れない。

 集中力が切れた私は他の生徒がどこまで魔法を使えるのか確認する。

 ドゴーンとか、ドバァとか、ビュワーとか、ボゴボゴとか、擬音まみれだけど私よりも強力な魔法を使っているのが一目瞭然だった。

(くそぅ、なんで私だけっ)

 悔しくなるができないものはできない。しょうがない。

(あれは……)

 緑頭ことドレッドが魔法の練習をしている。彼が手を前にかざすと竜巻が作られた。リック師匠はあの魔法について解説してくれる。

「んーと、あれは風の中級魔法・竜巻トルネードだね。しかも杖無しで使っている。僕でも杖がないと中級魔法は使えないからドレッドさんはすごいんだよ!」
「師匠にできないことなんてあるんですか?」
「あはは、できないことはたくさんあるよ」

 そんな難しいことをドレッドは軽々とやってのけるようだ。思ったよりもすごいやつなのでは?

「私も負けられない、見てて!」

 緑頭に対抗心を燃やして、体内の魔力を一気に変換する。

 水魔法を思い切り使うと、

 水がスプリンクラーのようにまき散らされた。

「「「わあああああああああああああああああ」」」

 近くにいた私とリック師匠とツンツンルームメイトはびしょ濡れになった。

「何やってるのよアユミ!」
「うう、ごめんなさい」
「あはは……」

 その後、ツンツンルームメイトの着替えを手伝おうとしたが拒否され、リック師匠に変身したら服を乾かすのが楽だろうと提案したけれど拒否された。なぜここまで警戒されるのだろうか?





 授業も終わり、今日も今日とて私は公爵令嬢ヴェネッサに付きまとっていた。最近では彼女たちの行動パターンを把握して先回りしている。

「なぜ貴方はいつも現れるのかしら……」
「ヴェネッサ様! 今日も麗しゅうございます! 是非そんなあなたの……」
「……派閥には入れませんわよ」

 シッシッとヴェネッサは手で私を追い払う。最近では彼女の茶髪縦カールの具合も覚えてきた。今日はふんわりしていなくて、心なしかくるくるの元気がないようだ。何かストレスでも抱えているのかな。

「どうしてですか! 私の、私の愛が足りないからですか!?」
「ち・が・い・ま・す・わ! そもそも派閥というのは、政治的な理由で集ったり、交流を深めて家の役に立ったりという大義名分があります。お遊びで入るものではありません! 平民の貴方が入って、わたくしに何の得がありますの?」
「それなら……一日中ヴェネッサ様のお世話をします。朝から晩まで着替えから入浴までグヘヘヘ……」

 自分で提案しておきながらぐへへしてしまった。どうやら派閥とは遊びで入るものではないらしい。だけど私の愛を否定しなくなっただけ進歩したと言えよう。

「わたくしには使用人がいますので必要ないですわ! ノエル、行きますわよ」
「はい」

 ひざまづいた私の隣をヴェネッサとクール令嬢ノエルが通り過ぎた。ふわっと彼女たちの良い匂いがする。ふむふむ、今日の香水はバラじゃなくてスズランかしら?

 におひマスターの私がくんかくんかしていると、正面から人が来たようだ。

「……何やってるんだアユミちゃん?」

 声をかけたのは緑頭のスポ根野郎(スポーツをやっているのかは知らないけれど)ことドレッドだ。同級生の彼は最近何かと話しかけてくる。

「えーと。麗しい女神たちに向けてお祈りをしてたんです」
「こんなところでか?」

 今いる場所は校舎をつなぐ一階の渡り廊下で、そのまま歩いて外に出られる。グリフィス先輩と出会った場所だ。

「場所なんて関係ないです。願う気持ちが強くなれば、こうしてすぐにお祈りを捧げるんです」
「そ、そうか。信仰心が高いんだな」

 若干ドレッドが引いているように見えたが問題はない。彼と仲良くなる必要なんてないのだから。

「そろそろグリフィス先輩との勉強会始まるぞ。早く行こう」

 そう、彼はいつもグリフィス先輩との勉強会に誘ってくる。さらにお昼休みはアルフレッド王子との昼食に付き合わされていた。

 彼らとの接触は避けたいのにドレッドがいつも『邪魔』してくるのだ。

「今日も用事があるので~~でわ~~~」

 私は風で舞い上がる木の葉のように去ろうとするが、

 ガシッ!

 こうして肩を掴まれると、

「グリフィス先輩も待っているんだ。アユミちゃんがいないと俺への当たりが強いんだよ。さっさと行くぞ」
「い~や~だ~おうちにかえる~~」

 駄々っ子な私は引きずられながら自習室に連れていかれた。


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