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第二章 オルビス大陸
第9話 小さな英雄①
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そこにはガリウスが密かに作った屋敷である。屋敷に広い部屋を作り、ガリウスとその部下、意識の無いジェイデンがそこにいる。そこで彼の部下が報告に来た。それを聞いたガリウスは思わず叫んだ。
「何! グッドマンが捕まっただとぉ!」
「はい……」
「あの馬鹿が……っ。今どこに!?」
「分かりません……捜索しています……」
「早く探せ!」
いつの間にか意識を取り戻したジェイデンは不敵な笑みを浮かべていた。気分が悪そうだったが、必死に言葉を絞り出す。
「ガリウス……もう諦めたらどうですか?」
「これはこれは、お早いお目覚めですな。ジェイデンお坊ちゃん」
「こことは別の大陸、闇に生きる者達。彼等に全ての罪をなすりつけようとしたみたいだけど。残念だったね……
あの二人は強い。上手くは行かないだろうね。今降参するなら……」
「確かに予想外……彼等は恐ろしく強いようですな。しかし、方法は幾らでもある。例えば何週間も飲まず食わず、睡眠もとらずに動ける者などいるだろうか? どんな怪物でも弱点はあり、必ず倒す事が出来るのだよっ」
「彼等も馬鹿じゃ無い。対策だってするさ」
「無理だよ。それが群の力というものさ。逃げ場などない。奴等はカスト卿暗殺の犯人だ。指名手配にして諸侯に呼びかければ良い。と言うよりも……もう、そういう風に動いている」
「……くっ」
「それにな、あの兵器があればそれすらも必要ない……ッ。私こそが国を統べるに相応しいのだ!」
「僕は絶対に起動しない!」
「やはり家族ですな……この上なく愚かっ」
「何?」
「どいつもこいつも無知の大馬鹿!? 真実から目を背け、善の部分しか見ようとはしない! それが正しいと信じて疑わないっ」
「何だと!?」
「語っても分かるまいよ。それよりも姉を何のために生かしてあると思ってる? こういう時の為だろうがッ!?」
「……ッ。やめろぉぉおお! 姉様に手を出すな!? 絶対に許さないぞ!」
「くくくく、何時まで子爵の嫡男を演じているつもりだ? お前は、俺に命令する事は出来ないんだよ……くそガキがっ」
「……何故だ! 何故なんだ!? 何故お前は奪うッ!? 僕たちはただ平穏に暮らし、皆で楽しく生きたかった!? 何故平気な顔でそれを壊せるんだ!?」
「ふ、ふふふふ。くはははは! ……なぁ、本当にその答えは必要か?」
彼は優しく微笑んでいた。ジェイデンから目を反らさずにじっと見つめていた。
「外道が……っ」
「そいつは間違えだ。俺が作った道からは外れてない」
「黙れガリウス! お前は絶対に許さないぞ!」
「さあて、楽しいお喋りは終わりだ。ラーラを連れて来い」
「承知いたしました」
「待て!?」
「家族を助けたければ言う事を聞くんだな」
しばらくするとボロの囚人服を着たラーラーが現れた。首には鎖が付いており、引っ張られていた。体中が傷ついており、その表情からは生気が薄れていた。
「……」
「ラーラー姉様!?」
「くく、感動の再開だな……」
「ガリウスぅ! 姉様に何をした!?」
その時、ガリウスがラーラーを蹴り飛ばす。少し声が出たが悲鳴では無く唸り声だった。彼女は叫ぶことをやめたのだ。
「寛大な心で見てやっていたが……そろそろ口の聞き方に気を付けろ。くそがき」
「ッ……や、止めてください……ラーラ姉様にそれ以上は……」
「あ~。良い瞳だ……怯えたその感じの方が私は好きだ」
その時、ラーラがガリウスとその近くにいた側近を巻き込んで体当たりをした。そして、剣をジェイデンの方に蹴り飛ばした。同時に彼の方へ走る。ジェイデンはそれを拾って抜いた。
「こいつらに好きにさせては駄目! ジェイデン、私を殺して逃げてっ」
「え? む、無理だ! 一緒に逃げよう!」
しかし、別の部下が素早く二人を制圧する。二人を引き剝がして地面に叩きつけて抑え込んだ。
「ぅぐ!」「あがぁ」
「まだ……気力を残していたか……このガキがぁ!」
ガリウスがラーラーを蹴り始めた。それも怒りをぶつける様に連続で。
「ぅぐ!」
「や、やめろ! やるなら僕をやれ!」
それを聞いて蹴るのを止めて腹部を踏みつぶす。
「ぁがっ!」
「ああ? 兵器の起動するためのパーツを無暗に傷つけるはずないだろうが……馬鹿かお前……」
「ッ……く、くそ! 何て、僕は無力なんだ……」
それを聞いて愉悦の表情を浮かべるガリウス。その時、扉が開いた。そして、開いたと同時に彼は言う。
「彼女から足を退けろ……」
「!?」
「誰だ!?」
部下はジェイデンを捕えたままガリウスの方に後退し始める。さらにガリウスを守るように部下達が壁となる。彼等はその二人に心当たりがあった。
「……はぁ……何で……お、お前等は……」
「瞳を取り出せないのなら、人質を大切に扱うのが普通だと思うがな……」
「ルディさん! ルーベンさん!」
「なっ、ぜっ……おい! 警備はどうしたッ!?」
「その小さな脳じゃ処理出来なかったか? もう一度言う……その足を退けろ」
「く、くそぉぉぉ! 他の者は何をしているっ」
ガリウスはラーラを無理やり起こして盾にするように持つ。次々と奥の部屋から人が集まって来る。
「早く控えているモノも集めろっ!? ルシアノを呼べ!」
「窓の無い部屋。広いこの場所の真ん中に陣取る……予想よりも臆病な性格だな……ガリウス」
「何故ここが分かったぁ……!?」
「簡単だ。ゴミを漁っていたら偶然見つけたんだよ」
「き、貴様ぁぁ……」
ルーベンが鉄の針を取り出して近づいて行く。
「取り合えず……その2人を返してもらう」
「く、来るなッ! この2人を殺すぞ! お前達ッやれ! 奴等を殺せ!」
「ジェイデン……目を反らすなよ……」
「え?」
その掛け声で部下が動く前に彼はその針をジェイデンの両目に投げた。一瞬驚いたがジェイデンはそれを理解した。
「バッ!? カッがぁぁぁ!!? 何をしているぅぅぅぅ!」
ガリウスがジェイデンを突き飛ばす。そして両腕で何とかそれを防いだ。激痛が走るが仕方なかった。
次の瞬間にルーベンがジェイデンを捕まえている男を引き剝がし、ガリウスに切りかかる。しかし、そこに男が割り込み、手持ちの剣で受け止めた。間入れずにルーベンが彼を蹴り飛ばすとジェイデンに言う。
「投げるぞ。上手く着地しろよ」
「え、は、はい!」
ジェイデンは抵抗せずに身をゆだねた。ルーベンはジェイデンの服を掴んで吹っ飛ばした。すぐにラーラを抱きかかえて自らも大きく跳んだ。
「くっ。今だッ奴を狙え!」
ラーラが意識が朦朧とするなか力を振り絞って言う。これ以上誰かが死んでしまうのは嫌だったのだ。
「ぁ、あぶな……ぃ」
それに彼は落ち着いた口調で返した。
「大丈夫だ。貴方はもう傷つくことは無い」
矢や魔法がルーベンとラーラに襲い掛かる。しかし、それは全て弾かれた。透明度の高い氷がそこにあったからだ。そしてそれは、トンネル付の滑り台のようになっており、足で上手くバランスを取ってルディの近くに向かっていく。
「こ、これは……」
「よく頑張った……ジェイデンも必ず助けるから安心して眠れ……」
彼女はそれを聞くと疑わずに目を閉じた。奇妙だったのは心身がボロボロのはずの少女は、初対面の人間に抱かれ優しい表情になっていた事だ。自然に口元も緩んでいた。何故かは分からなかったが、安心出来たのだ。
「ジェイデン。悪かったな」
「いえ、このくらい……助けてくれてありがとうございます」
「治療用の魔具だ。これでこの子の傷を多少は癒せるだろう。出来るか?」
「はい!」
「もう許さんぞぉぉ! う、撃て! ジェイデンを多少傷つけても構わん! 奴等を殺せ!」
ルーベンとルディはそれを全て打ち落とす。そして、ジェイデンとラーラの周りにはいつの間にか氷で作られた半球があり、攻撃を全て防いでいた。ジェイデンはそれに驚くが、すぐにラーラの治癒に集中する。
「か、囲め! 囲って攻撃しろ!」
「ルーベン、アレを頼む」
「りょーかい」
「何! グッドマンが捕まっただとぉ!」
「はい……」
「あの馬鹿が……っ。今どこに!?」
「分かりません……捜索しています……」
「早く探せ!」
いつの間にか意識を取り戻したジェイデンは不敵な笑みを浮かべていた。気分が悪そうだったが、必死に言葉を絞り出す。
「ガリウス……もう諦めたらどうですか?」
「これはこれは、お早いお目覚めですな。ジェイデンお坊ちゃん」
「こことは別の大陸、闇に生きる者達。彼等に全ての罪をなすりつけようとしたみたいだけど。残念だったね……
あの二人は強い。上手くは行かないだろうね。今降参するなら……」
「確かに予想外……彼等は恐ろしく強いようですな。しかし、方法は幾らでもある。例えば何週間も飲まず食わず、睡眠もとらずに動ける者などいるだろうか? どんな怪物でも弱点はあり、必ず倒す事が出来るのだよっ」
「彼等も馬鹿じゃ無い。対策だってするさ」
「無理だよ。それが群の力というものさ。逃げ場などない。奴等はカスト卿暗殺の犯人だ。指名手配にして諸侯に呼びかければ良い。と言うよりも……もう、そういう風に動いている」
「……くっ」
「それにな、あの兵器があればそれすらも必要ない……ッ。私こそが国を統べるに相応しいのだ!」
「僕は絶対に起動しない!」
「やはり家族ですな……この上なく愚かっ」
「何?」
「どいつもこいつも無知の大馬鹿!? 真実から目を背け、善の部分しか見ようとはしない! それが正しいと信じて疑わないっ」
「何だと!?」
「語っても分かるまいよ。それよりも姉を何のために生かしてあると思ってる? こういう時の為だろうがッ!?」
「……ッ。やめろぉぉおお! 姉様に手を出すな!? 絶対に許さないぞ!」
「くくくく、何時まで子爵の嫡男を演じているつもりだ? お前は、俺に命令する事は出来ないんだよ……くそガキがっ」
「……何故だ! 何故なんだ!? 何故お前は奪うッ!? 僕たちはただ平穏に暮らし、皆で楽しく生きたかった!? 何故平気な顔でそれを壊せるんだ!?」
「ふ、ふふふふ。くはははは! ……なぁ、本当にその答えは必要か?」
彼は優しく微笑んでいた。ジェイデンから目を反らさずにじっと見つめていた。
「外道が……っ」
「そいつは間違えだ。俺が作った道からは外れてない」
「黙れガリウス! お前は絶対に許さないぞ!」
「さあて、楽しいお喋りは終わりだ。ラーラを連れて来い」
「承知いたしました」
「待て!?」
「家族を助けたければ言う事を聞くんだな」
しばらくするとボロの囚人服を着たラーラーが現れた。首には鎖が付いており、引っ張られていた。体中が傷ついており、その表情からは生気が薄れていた。
「……」
「ラーラー姉様!?」
「くく、感動の再開だな……」
「ガリウスぅ! 姉様に何をした!?」
その時、ガリウスがラーラーを蹴り飛ばす。少し声が出たが悲鳴では無く唸り声だった。彼女は叫ぶことをやめたのだ。
「寛大な心で見てやっていたが……そろそろ口の聞き方に気を付けろ。くそがき」
「ッ……や、止めてください……ラーラ姉様にそれ以上は……」
「あ~。良い瞳だ……怯えたその感じの方が私は好きだ」
その時、ラーラがガリウスとその近くにいた側近を巻き込んで体当たりをした。そして、剣をジェイデンの方に蹴り飛ばした。同時に彼の方へ走る。ジェイデンはそれを拾って抜いた。
「こいつらに好きにさせては駄目! ジェイデン、私を殺して逃げてっ」
「え? む、無理だ! 一緒に逃げよう!」
しかし、別の部下が素早く二人を制圧する。二人を引き剝がして地面に叩きつけて抑え込んだ。
「ぅぐ!」「あがぁ」
「まだ……気力を残していたか……このガキがぁ!」
ガリウスがラーラーを蹴り始めた。それも怒りをぶつける様に連続で。
「ぅぐ!」
「や、やめろ! やるなら僕をやれ!」
それを聞いて蹴るのを止めて腹部を踏みつぶす。
「ぁがっ!」
「ああ? 兵器の起動するためのパーツを無暗に傷つけるはずないだろうが……馬鹿かお前……」
「ッ……く、くそ! 何て、僕は無力なんだ……」
それを聞いて愉悦の表情を浮かべるガリウス。その時、扉が開いた。そして、開いたと同時に彼は言う。
「彼女から足を退けろ……」
「!?」
「誰だ!?」
部下はジェイデンを捕えたままガリウスの方に後退し始める。さらにガリウスを守るように部下達が壁となる。彼等はその二人に心当たりがあった。
「……はぁ……何で……お、お前等は……」
「瞳を取り出せないのなら、人質を大切に扱うのが普通だと思うがな……」
「ルディさん! ルーベンさん!」
「なっ、ぜっ……おい! 警備はどうしたッ!?」
「その小さな脳じゃ処理出来なかったか? もう一度言う……その足を退けろ」
「く、くそぉぉぉ! 他の者は何をしているっ」
ガリウスはラーラを無理やり起こして盾にするように持つ。次々と奥の部屋から人が集まって来る。
「早く控えているモノも集めろっ!? ルシアノを呼べ!」
「窓の無い部屋。広いこの場所の真ん中に陣取る……予想よりも臆病な性格だな……ガリウス」
「何故ここが分かったぁ……!?」
「簡単だ。ゴミを漁っていたら偶然見つけたんだよ」
「き、貴様ぁぁ……」
ルーベンが鉄の針を取り出して近づいて行く。
「取り合えず……その2人を返してもらう」
「く、来るなッ! この2人を殺すぞ! お前達ッやれ! 奴等を殺せ!」
「ジェイデン……目を反らすなよ……」
「え?」
その掛け声で部下が動く前に彼はその針をジェイデンの両目に投げた。一瞬驚いたがジェイデンはそれを理解した。
「バッ!? カッがぁぁぁ!!? 何をしているぅぅぅぅ!」
ガリウスがジェイデンを突き飛ばす。そして両腕で何とかそれを防いだ。激痛が走るが仕方なかった。
次の瞬間にルーベンがジェイデンを捕まえている男を引き剝がし、ガリウスに切りかかる。しかし、そこに男が割り込み、手持ちの剣で受け止めた。間入れずにルーベンが彼を蹴り飛ばすとジェイデンに言う。
「投げるぞ。上手く着地しろよ」
「え、は、はい!」
ジェイデンは抵抗せずに身をゆだねた。ルーベンはジェイデンの服を掴んで吹っ飛ばした。すぐにラーラを抱きかかえて自らも大きく跳んだ。
「くっ。今だッ奴を狙え!」
ラーラが意識が朦朧とするなか力を振り絞って言う。これ以上誰かが死んでしまうのは嫌だったのだ。
「ぁ、あぶな……ぃ」
それに彼は落ち着いた口調で返した。
「大丈夫だ。貴方はもう傷つくことは無い」
矢や魔法がルーベンとラーラに襲い掛かる。しかし、それは全て弾かれた。透明度の高い氷がそこにあったからだ。そしてそれは、トンネル付の滑り台のようになっており、足で上手くバランスを取ってルディの近くに向かっていく。
「こ、これは……」
「よく頑張った……ジェイデンも必ず助けるから安心して眠れ……」
彼女はそれを聞くと疑わずに目を閉じた。奇妙だったのは心身がボロボロのはずの少女は、初対面の人間に抱かれ優しい表情になっていた事だ。自然に口元も緩んでいた。何故かは分からなかったが、安心出来たのだ。
「ジェイデン。悪かったな」
「いえ、このくらい……助けてくれてありがとうございます」
「治療用の魔具だ。これでこの子の傷を多少は癒せるだろう。出来るか?」
「はい!」
「もう許さんぞぉぉ! う、撃て! ジェイデンを多少傷つけても構わん! 奴等を殺せ!」
ルーベンとルディはそれを全て打ち落とす。そして、ジェイデンとラーラの周りにはいつの間にか氷で作られた半球があり、攻撃を全て防いでいた。ジェイデンはそれに驚くが、すぐにラーラの治癒に集中する。
「か、囲め! 囲って攻撃しろ!」
「ルーベン、アレを頼む」
「りょーかい」
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