58 / 137
第四章 ハンター
4-1 白いもふもふ
しおりを挟む
翌朝、見たこともないものがそこにあった。
「え、なにこれ……」
小さなサイドテーブルには、ほかほかと湯気をあげる丸い桶と、不思議なものが置いてあった。お湯の入った桶はサキが用意したものだろう。
「おはようございます、ご主人様。お湯、それ用意したです。女将さんに食事の準備、お願い言ってくる」
セインが起きたのを見ると、サキは手ぬぐいをセインに手渡して、部屋を出て行った。彼女はすでに準備万端で身支度も済ませているようだ。最近では、セインが言うまでもなく、何事もてきぱきと身の回りの世話を焼いてくれる。
どこかのお付きの召使いとは、雲泥の差である。
――でも、なんだろう。桶を置くときに、この不思議な物体を何とも思わなかったのか? 明らかに昨日とは違うものがここにあるんだが。
白くて丸いモフモフの上に、赤いモフメラなものが乗っている。
昨夜、同じ構図の物は見た。その時は、石の上にコウキが乗っていただけだ。まさかタマゴが孵ったとか? とか考えて、セインはバカバカしい想像に額を押さえた。
「ぴよ」
目が覚めたのか、セインに気が付くとコウキがすっくと立ちあがり、モフモフの上で胸を反らした。すごいドヤぶりである。
「ゆらは、なにか知ってるのか?」
『はい、ですが、その目で見た方が早いかと』
白いモフモフの上からぴょんと飛び降りて、その周りを跳ねるように一周した。そして、またもやドヤッとこっちを見る。すごく褒めてほしそうだったので頭をなでてやったが、セインはそのモフモフの方にくぎ付けになっていた。
小さなモフ山は、と言ってもコウキよりは二倍以上大きいが、ゆっくりと上下している。まるで呼吸しているように。
「生きてるのか……というか、これまさか昨日の鉱石とか言わないよな」
なにしろセインは何かした覚えはない。
指でツンと押すと、ぴくっと反応する。何度か触って、手のひらでふわっと撫でると、ほんのりと体温を感じた。少なくとも、ただの毛玉ではなさそうだ。
すると、丸まっていた毛玉から、モフッとした小さな盛り上がりが現れた。まるで雪だるまのようなそれに、大きくてくりくりの黄色い目が二つ、ゆっくりと瞬きする。
「……毛玉のオバケかな」
セインはいささか引き気味で呟いた。もちろん、わかっている。状況からして、コレは白虎なのだと。
特別なことは何もしていないので初めは驚いたが、それが金鉱石だった時点で形代としての条件はすでに整っていたのだろう。そして、セインの妖力によって蘇ったコウキに導かれて、その用意された形代に宿ったと思われた。
『彼らは封印された私達とちがって、セイン様が転生なされた時には、いつでも解放できる準備はできているのでしょう』
条件の合う形代と、なにかきっかけがあれば復活できるということだ。コウキの場合も、セインが初めて使った狐火が形代となった。とはいえ、彼らが気に入る形代であることは絶対条件で、それがどんなものであるかは実際に復活してみないとわからないのである。
「ようするに、あのいびつな金鉱石を白虎は気に入ったということか」
セインは、毛玉を手のひらで掬い上げた。
「にー……」
「え、それ鳴き声なの? 声ちっさ」
白虎というくらいなんだから、普通はりりしくも勇猛な白い虎を想像するけど、これは仔猫というにも怪しい。
小さな耳が、異様に大きな顔にちょんとついている。見ようによっては毛に埋もれた丸いだけの頭である。見事な二頭身の身体には、これまた恐ろしいほど短い足が四本見える。
こんなぬいぐるみを作ったら、まちがいなく頭が重くて前に倒れるだろう。
あえて言うなら、黒い線の入った模様がなんとなく虎柄ではある。
もし円グラフで能力を見たら、ほぼカワイイ要素で構成されており、戦闘能力は隙間に「その他」とかなってそうな見た目だった。
「え、なにこれ……」
小さなサイドテーブルには、ほかほかと湯気をあげる丸い桶と、不思議なものが置いてあった。お湯の入った桶はサキが用意したものだろう。
「おはようございます、ご主人様。お湯、それ用意したです。女将さんに食事の準備、お願い言ってくる」
セインが起きたのを見ると、サキは手ぬぐいをセインに手渡して、部屋を出て行った。彼女はすでに準備万端で身支度も済ませているようだ。最近では、セインが言うまでもなく、何事もてきぱきと身の回りの世話を焼いてくれる。
どこかのお付きの召使いとは、雲泥の差である。
――でも、なんだろう。桶を置くときに、この不思議な物体を何とも思わなかったのか? 明らかに昨日とは違うものがここにあるんだが。
白くて丸いモフモフの上に、赤いモフメラなものが乗っている。
昨夜、同じ構図の物は見た。その時は、石の上にコウキが乗っていただけだ。まさかタマゴが孵ったとか? とか考えて、セインはバカバカしい想像に額を押さえた。
「ぴよ」
目が覚めたのか、セインに気が付くとコウキがすっくと立ちあがり、モフモフの上で胸を反らした。すごいドヤぶりである。
「ゆらは、なにか知ってるのか?」
『はい、ですが、その目で見た方が早いかと』
白いモフモフの上からぴょんと飛び降りて、その周りを跳ねるように一周した。そして、またもやドヤッとこっちを見る。すごく褒めてほしそうだったので頭をなでてやったが、セインはそのモフモフの方にくぎ付けになっていた。
小さなモフ山は、と言ってもコウキよりは二倍以上大きいが、ゆっくりと上下している。まるで呼吸しているように。
「生きてるのか……というか、これまさか昨日の鉱石とか言わないよな」
なにしろセインは何かした覚えはない。
指でツンと押すと、ぴくっと反応する。何度か触って、手のひらでふわっと撫でると、ほんのりと体温を感じた。少なくとも、ただの毛玉ではなさそうだ。
すると、丸まっていた毛玉から、モフッとした小さな盛り上がりが現れた。まるで雪だるまのようなそれに、大きくてくりくりの黄色い目が二つ、ゆっくりと瞬きする。
「……毛玉のオバケかな」
セインはいささか引き気味で呟いた。もちろん、わかっている。状況からして、コレは白虎なのだと。
特別なことは何もしていないので初めは驚いたが、それが金鉱石だった時点で形代としての条件はすでに整っていたのだろう。そして、セインの妖力によって蘇ったコウキに導かれて、その用意された形代に宿ったと思われた。
『彼らは封印された私達とちがって、セイン様が転生なされた時には、いつでも解放できる準備はできているのでしょう』
条件の合う形代と、なにかきっかけがあれば復活できるということだ。コウキの場合も、セインが初めて使った狐火が形代となった。とはいえ、彼らが気に入る形代であることは絶対条件で、それがどんなものであるかは実際に復活してみないとわからないのである。
「ようするに、あのいびつな金鉱石を白虎は気に入ったということか」
セインは、毛玉を手のひらで掬い上げた。
「にー……」
「え、それ鳴き声なの? 声ちっさ」
白虎というくらいなんだから、普通はりりしくも勇猛な白い虎を想像するけど、これは仔猫というにも怪しい。
小さな耳が、異様に大きな顔にちょんとついている。見ようによっては毛に埋もれた丸いだけの頭である。見事な二頭身の身体には、これまた恐ろしいほど短い足が四本見える。
こんなぬいぐるみを作ったら、まちがいなく頭が重くて前に倒れるだろう。
あえて言うなら、黒い線の入った模様がなんとなく虎柄ではある。
もし円グラフで能力を見たら、ほぼカワイイ要素で構成されており、戦闘能力は隙間に「その他」とかなってそうな見た目だった。
0
あなたにおすすめの小説
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
超能力者なので、特別なスキルはいりません!
ごぢう だい
ファンタジー
十歳の頃に落雷の直撃を受けた不遇の薫子は、超能力に目覚める。その後十六歳の時に二度目の落雷により、女神テテュースの導きにより、異世界へ転移してしまう。ソード&マジックの世界で、薫子が使えるのは超能力だけ。
剣も魔法も全く使えない薫子の冒険譚が始まる……。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~
九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。
ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。
そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。
しかも精霊の力に満たされた異世界。
さて…主人公の人生はどうなることやら。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる