ワンナイトラブの相手は彼氏の弟でした

羽月咲羅

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「ここで抱かれたら、俺を思い出さずにはいられないだろ?」

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「水、飲む?」

 行為を終えてぐったりしている紗奈に、羽琉は優しくそう聞いた。
 ん、とひとつ頷くと、彼は水を取りに一旦部屋を出ていった。

 いつものことだけど、セックスの後はなかなか動く気になれない。
 体にはまだ抱かれた感覚が残りすぎて、その余韻でまた熱く疼く。
 なんでこんなにイイんだろう、と思うほどに羽琉との行為は紗奈にピッタリと嵌る。
 1回で済まないことに文句を言ったりもするけど、本当はそれもまたいい。
 何度も欲しくなるのは彼だけじゃない、自分も同じだ。

「紗奈、大丈夫?」

 羽琉はベッドの端に腰掛けて、優しい声でそう聞いてくる。
 なにか言うより先に彼はコップの水を口に含み、そのまま口移しで飲ませてくれる。
 流れてくるそれを飲むと、喉が潤っていく。

「……水、もっと」

 そう求めると羽琉は笑って、紗奈が欲しがるだけ水をくれた。

「悪い。ちょっと啼かせすぎたな」

 からかうように言い、サラッと頭を撫でられる。
 その手が優しくて心地よくて、気を抜けば寝てしまいそうになる。
 ただでさえセックスの後は疲れて、激しい眠気に襲われるのに。

「紗奈の体が良すぎるから、ついヤりすぎちゃうんだよな」
「……また人のせいにする」
「だって本当のことだし。こんなにイイのに、なんで兄貴は抱かねえの?」

 そんなの、こっちが知りたい。
 キスをするのに、『好き』って言うのに、どうして抱いてくれないのか。
 もし悪いところがあるなら言ってくれれば、ちゃんと直すのに。
 それでも、なんで、なんてことはやっぱり言えない。
 だから、琉生に抱いてもらえない不満をぶつけるように羽琉に身を委ねるんだ。

「ま、紗奈を好きな時に抱けるなら俺はなんだっていいけどね」

 羽琉はそう言って、軽くキスを落とした。

「いつも思うけど、私を抱いて琉生に罪悪感とかないの?」

 どれだけセックスがよくても、羽琉との関係は不貞だ。
 いくら琉生が抱いてくれないからって、そんなのは言い訳にならない。
 快楽に逃げて羽琉を求める自分もどうかしてるけど、琉生の彼女だと知って関係を続ける羽琉もどうかしてる。
 たとえそこに兄弟として以外の底知れない感情があるとしても。

「ない。抱きたい女を抱いてなにが悪い?」
「…なに、って」
「たまたま兄貴のほうが先に出会っただけだろ? 俺のほうが先に出会ってたら、付き合ってなかったと思わない?」
「………」
「ってか、同棲してるのにセックスしないって男女の関係として終わってんだろ。そんなんに縋りついてどうすんの?」

 そんなこと、ない。
 セックスがなくてもお互いを想う気持ちはあるし、体の繋がりだけがすべてじゃない。
 そう思うのに、琉生といると抱かれない不満も相まって不安になってしまう。

「そんなに嫌? 兄貴と過ごした時間が無駄になるのが」

 付き合ってからの2年半ーーそこにはたくさんの思い出、数え切れない時間が存在している。
 琉生との関係が終わっても、それらが消えてなくなってしまうわけじゃない。
 ただ、二人で一緒に過ごした日々はなんだったんだろうと思うだけ。
 それらが無駄だと思いたくない。

 琉生を想う気持ちはあるのに、羽琉にそう言われて即答できなかった。
 無駄にしたくないから、琉生に縋ってるわけじゃないのに。

「俺は無駄になんかさせない。紗奈の体の中にちゃんと跡を残す。間違っても兄貴に抱かれないようにね」
「え」
「俺がこの部屋で紗奈を抱くのはそういう理由。ここで抱かれたら、俺を思い出さずにはいられないだろ?」

 それは、どういう意味?
 欲しいのは体だけのくせして、それ以上を欲しがるような口ぶりで。
 こんなことを言うから、わかっているのに勘違いしてしまいそうになるんだ。
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