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「なにかあったら、俺んとこに来いよ」
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ふはぁ、と羽琉は小さくあくびをすると、ゴロンと横になって頭を紗奈の膝に乗せた。
図らずも膝枕をする形になってしまって、それが落ち着かない。
「ち、ちょっと!」
「なに?」
「なに、じゃなくて! なんなのこれ!」
「膝枕」
「そういうこと聞いてるんじゃなくて!」
「いいじゃん、ちょっとくらい。紗奈の太股、柔らかくて気持ちいー」
どうしてか羽琉のすることに抵抗しきれない自分がいて、それ以上はなにも言えなかった。
上から見ても羽琉の顔はやっぱり綺麗で、つい見惚れてしまう。
年下のくせに、いつも振り回されてばかりいるのがなんだか悔しい。
無意識に羽琉の頭を撫でた。
たったそれだけでなんとも言えない気持ちになって、無防備な彼が可愛く見えた。
「それ、気持ちいい。もっと撫でて」
変なの、羽琉はセフレなのに。
こんな恋人に対して感じるような気持ちになってしまうなんて。
「紗奈、つらい?」
膝枕をした体勢のまま、羽琉はそっと手を伸ばして頬に触れる。
そう聞いてくる彼の声はとても優しくて、涙が出そうになった。
つらくない、大丈夫――強がりでもなんでもそう言えたらいいのに。
なぜか羽琉の前だと言えなくて、代わりに瞳が潤んでいくだけ。
そんな声で優しい言葉をかけてくるから、つい甘えてしまいそうになるんだ。
羽琉は少し体を起こすと、紗奈の後頭部を軽く掴んで唇を重ねた。
一瞬触れるだけの、とても優しいキス。
まるで慰めるようなもので、このまま彼に縋ってしまいたくなる。
「つらいなら俺が慰めてあげる。大人の慰め方で、ね」
「…っ」
「紗奈がいつもどおりに笑えるまで側にいてやるから、そんな顔すんなよ」
紗奈には笑っててほしいんだよーーと羽琉は続けて言って、またそっとなぞるように唇を優しく重ねた。
勘違いしたくないのに、そんなことを言われたら……。
繰り返されるキスは舌を絡めるような激しいものじゃなくて、本当に触れ合う程度の優しくて甘いものだった。
紗奈はただそれを受け入れ、羽琉を感じるしかできなかった。
たったそれだけで、自分の中の不安や不満が少しずつ薄れていく。
この時、羽琉が与えてくれるキスに確かに救われた気がした。
「……羽琉」
そっと名前を呼び、スーツの裾を遠慮がちに掴む。
ん、と返事をする声は柔らかくて、向けてくる瞳までも優しい。
「今日、なにか予定ある?」
その言葉の意味を汲み取って、彼は笑って「ないよ」と答えた。
頬を撫でるように触り、吐息を感じるほどの距離でまっすぐ見つめてくる。
「紗奈をたくさん気持ちよくしてやれるから、帰ったら覚悟しろよ?」
どうして羽琉を求めたくなるのか、それは自分でもわからない。
それでも、彼が与えてくれる優しさや温もりは癖になってしまう。
紗奈は小さく笑って頷き、羽琉に抱き着くだけだった。
図らずも膝枕をする形になってしまって、それが落ち着かない。
「ち、ちょっと!」
「なに?」
「なに、じゃなくて! なんなのこれ!」
「膝枕」
「そういうこと聞いてるんじゃなくて!」
「いいじゃん、ちょっとくらい。紗奈の太股、柔らかくて気持ちいー」
どうしてか羽琉のすることに抵抗しきれない自分がいて、それ以上はなにも言えなかった。
上から見ても羽琉の顔はやっぱり綺麗で、つい見惚れてしまう。
年下のくせに、いつも振り回されてばかりいるのがなんだか悔しい。
無意識に羽琉の頭を撫でた。
たったそれだけでなんとも言えない気持ちになって、無防備な彼が可愛く見えた。
「それ、気持ちいい。もっと撫でて」
変なの、羽琉はセフレなのに。
こんな恋人に対して感じるような気持ちになってしまうなんて。
「紗奈、つらい?」
膝枕をした体勢のまま、羽琉はそっと手を伸ばして頬に触れる。
そう聞いてくる彼の声はとても優しくて、涙が出そうになった。
つらくない、大丈夫――強がりでもなんでもそう言えたらいいのに。
なぜか羽琉の前だと言えなくて、代わりに瞳が潤んでいくだけ。
そんな声で優しい言葉をかけてくるから、つい甘えてしまいそうになるんだ。
羽琉は少し体を起こすと、紗奈の後頭部を軽く掴んで唇を重ねた。
一瞬触れるだけの、とても優しいキス。
まるで慰めるようなもので、このまま彼に縋ってしまいたくなる。
「つらいなら俺が慰めてあげる。大人の慰め方で、ね」
「…っ」
「紗奈がいつもどおりに笑えるまで側にいてやるから、そんな顔すんなよ」
紗奈には笑っててほしいんだよーーと羽琉は続けて言って、またそっとなぞるように唇を優しく重ねた。
勘違いしたくないのに、そんなことを言われたら……。
繰り返されるキスは舌を絡めるような激しいものじゃなくて、本当に触れ合う程度の優しくて甘いものだった。
紗奈はただそれを受け入れ、羽琉を感じるしかできなかった。
たったそれだけで、自分の中の不安や不満が少しずつ薄れていく。
この時、羽琉が与えてくれるキスに確かに救われた気がした。
「……羽琉」
そっと名前を呼び、スーツの裾を遠慮がちに掴む。
ん、と返事をする声は柔らかくて、向けてくる瞳までも優しい。
「今日、なにか予定ある?」
その言葉の意味を汲み取って、彼は笑って「ないよ」と答えた。
頬を撫でるように触り、吐息を感じるほどの距離でまっすぐ見つめてくる。
「紗奈をたくさん気持ちよくしてやれるから、帰ったら覚悟しろよ?」
どうして羽琉を求めたくなるのか、それは自分でもわからない。
それでも、彼が与えてくれる優しさや温もりは癖になってしまう。
紗奈は小さく笑って頷き、羽琉に抱き着くだけだった。
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**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
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