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「傷つけるすべてのもんから、俺が守ってやるよ」
(1)
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「今度の土曜日、デートしよっか」
それは羽琉がバイトとして来て数日が経ったある日のこと、いつもより早めに帰ってきた琉生はそう言った。
まさかそんなことを言うなんて思わなくて、パチパチと瞬きをさせた。
そんなふうに誘ってくることなんて、同棲を始めてから滅多になかったのに。
「最近あんまり出掛けてないし、たまには恋人っぽいことしよう」
「え、いいの?」
「いいよ。羽琉とも暮らすようになって、毎日大変だと思うし」
それは何気ない言葉で、羽琉との関係のことを言ってるわけじゃないのに。
琉生が羽琉とのことを知ってるわけがないのに、そのことを知ってる気がして。
動揺してしまいそうになるのを抑え、そんなことない、と言うように笑った。
このまま羽琉との関係を続けていれば、いつかきっとバレてしまう。
わかっているのにやめられなくて、……やめたくなくて。
つらい時や苦しい時、抱かれたいと思わずにはいられなくなる。
琉生と違って、羽琉はどんな時でも嫌がらずに抱いてくれるから。
「旅行も一緒に行けなかったからね、その時の埋め合わせも兼ねて」
ドキッとした。
琉生と一緒に行けなかった旅先で、羽琉と出会って初めて体を重ねた。
琉生の言葉の端々から羽琉とのことを言われてるふうに感じるのは、きっと後ろめたさや罪悪感があるからだ。
セックスをしてくれないからといって、その弟とすることがいいわけがない。
それでもやめられないんだから、羽琉とのことは隠し通すしかない。
始める前はすぐにやめられると思ったのに、今は羽琉との関係を失うのが怖い。
「…? 紗奈、どうした?」
「あ、ううん! 楽しみだなぁって思って」
「そか、よかった。そう思ってくれて」
「ん、ありがと」
琉生は優しい手で頭を撫でてから、いつもと同じように唇を重ねた。
それを受け入れながらも、頭の片隅では羽琉のことを考えていた。
琉生は唇を離すと、「手洗ってくる」と言って鞄を手渡した。
紗奈はそれを受け取り、洗面所のほうへと向かう彼の背中を見送った。
紗奈はリビングに入り、琉生の弁当箱を出そうと鞄をそっと開ける。
それを取り出そうとして、はたと見覚えのないものが入っているのに気付いた。
なんだろう、と興味本位で見たそれは、ジュエリーショップのロゴが入った箱だった。
もしかして私のために?
琉生は琉生なりにちゃんと私のことを大事に想ってくれているんだ。
そう思って嬉しくなった気持ちは、開けた瞬間に見事に打ち砕かれた。
「えっ…」
そこにあったのは――ガーネットのピアス。
紗奈もピアスはするけど、金属アレルギーだから樹脂製しかつけられない。
それは琉生も知ってるはずなのに、ここにあるのはチタン製のピアスだ。
ーーもしかしたらこれは……。
疑惑が消えなくて、紗奈は自分のスマートフォンを取り出すと紅音のSNSを見た。
そこに書かれてあった誕生日は1月で、やっぱり、と疑惑が確信に変わる。
ガーネットは1月の誕生石。
だとしたらこれは、彼女に向けたプレゼントなのかもしれない。
もうずっとプレゼントらしいものはくれないのに、彼女にはあげるんだ。
そう思ったら、怒りよりも悲しみのほうが大きくなっていく。
ひらり、と落ちたレシートの値段は、友達にあげるにしては高すぎるものだった。
やっぱり二人は、ただの同級生じゃない。
ここ最近、琉生はずっと優しかった。
家のこともたくさん手伝ってくれたし、早く帰ってきてくれた。
彼女の香水の匂いをさせてくることも、前ほどなくなっていた。
だけどやっぱり、琉生は彼女と関係を持ち続けていたんだ。
こんなプレゼントをあげようとするくらい。
それは羽琉がバイトとして来て数日が経ったある日のこと、いつもより早めに帰ってきた琉生はそう言った。
まさかそんなことを言うなんて思わなくて、パチパチと瞬きをさせた。
そんなふうに誘ってくることなんて、同棲を始めてから滅多になかったのに。
「最近あんまり出掛けてないし、たまには恋人っぽいことしよう」
「え、いいの?」
「いいよ。羽琉とも暮らすようになって、毎日大変だと思うし」
それは何気ない言葉で、羽琉との関係のことを言ってるわけじゃないのに。
琉生が羽琉とのことを知ってるわけがないのに、そのことを知ってる気がして。
動揺してしまいそうになるのを抑え、そんなことない、と言うように笑った。
このまま羽琉との関係を続けていれば、いつかきっとバレてしまう。
わかっているのにやめられなくて、……やめたくなくて。
つらい時や苦しい時、抱かれたいと思わずにはいられなくなる。
琉生と違って、羽琉はどんな時でも嫌がらずに抱いてくれるから。
「旅行も一緒に行けなかったからね、その時の埋め合わせも兼ねて」
ドキッとした。
琉生と一緒に行けなかった旅先で、羽琉と出会って初めて体を重ねた。
琉生の言葉の端々から羽琉とのことを言われてるふうに感じるのは、きっと後ろめたさや罪悪感があるからだ。
セックスをしてくれないからといって、その弟とすることがいいわけがない。
それでもやめられないんだから、羽琉とのことは隠し通すしかない。
始める前はすぐにやめられると思ったのに、今は羽琉との関係を失うのが怖い。
「…? 紗奈、どうした?」
「あ、ううん! 楽しみだなぁって思って」
「そか、よかった。そう思ってくれて」
「ん、ありがと」
琉生は優しい手で頭を撫でてから、いつもと同じように唇を重ねた。
それを受け入れながらも、頭の片隅では羽琉のことを考えていた。
琉生は唇を離すと、「手洗ってくる」と言って鞄を手渡した。
紗奈はそれを受け取り、洗面所のほうへと向かう彼の背中を見送った。
紗奈はリビングに入り、琉生の弁当箱を出そうと鞄をそっと開ける。
それを取り出そうとして、はたと見覚えのないものが入っているのに気付いた。
なんだろう、と興味本位で見たそれは、ジュエリーショップのロゴが入った箱だった。
もしかして私のために?
琉生は琉生なりにちゃんと私のことを大事に想ってくれているんだ。
そう思って嬉しくなった気持ちは、開けた瞬間に見事に打ち砕かれた。
「えっ…」
そこにあったのは――ガーネットのピアス。
紗奈もピアスはするけど、金属アレルギーだから樹脂製しかつけられない。
それは琉生も知ってるはずなのに、ここにあるのはチタン製のピアスだ。
ーーもしかしたらこれは……。
疑惑が消えなくて、紗奈は自分のスマートフォンを取り出すと紅音のSNSを見た。
そこに書かれてあった誕生日は1月で、やっぱり、と疑惑が確信に変わる。
ガーネットは1月の誕生石。
だとしたらこれは、彼女に向けたプレゼントなのかもしれない。
もうずっとプレゼントらしいものはくれないのに、彼女にはあげるんだ。
そう思ったら、怒りよりも悲しみのほうが大きくなっていく。
ひらり、と落ちたレシートの値段は、友達にあげるにしては高すぎるものだった。
やっぱり二人は、ただの同級生じゃない。
ここ最近、琉生はずっと優しかった。
家のこともたくさん手伝ってくれたし、早く帰ってきてくれた。
彼女の香水の匂いをさせてくることも、前ほどなくなっていた。
だけどやっぱり、琉生は彼女と関係を持ち続けていたんだ。
こんなプレゼントをあげようとするくらい。
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