【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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誕生~幼少期

8.誕生日会

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「じゃ、グレイ。まずは作戦会議と行きましょう」
 
 私がそう言うと、グレイは半目になって私を見る。
 
「だ、だって。物語が開始されるのは、王立学園に入学して17歳の年になってからなんだよね? でも私はまだ11歳だよ? 王立学園の入学は13歳からだし、12歳になったら受ける魔力検査もまだだもの」
 
 それを聞いて、グレイはため息を吐きながら頷いた。
 
『確かにまだ時間はあるニャ。それまでに適正魔法を知っておくのは重要だニャ。まぁお前はラケシス様の加護を受けているから聖属性魔法が使えるのは確実だがニャ』
 
 それを聞いてびっくりする。
 
「えっ? そうなの? 悪役令嬢も聖属性魔法が使えるんだ!」
 
 その私の言葉にグレイは首を横に振る。
 
『本来の物語を完全になぞるなら、悪役令嬢は闇属性で聖属性魔法は使えないニャ。だから、すでにそこから本来の物語から逸脱しているのニャ。ラケシス様もその事を承知の上でお前に加護を授けたのニャ』
 
「そうなのね。ちゃんと物語を壊してもいいようにしてくれたんだ。ラケシス様」
 
 設定が違ってくるなら、あとは主人公の邪魔をしないようにしていればいいはず。
 
「じゃあ、あとは強制力をなくすために宝玉を取り戻す方法ね。でもそれも学園に入って、主人公とまずは出会わないと無理そう……」
 
『そうだニャ。それまでに適正魔法を確実に自分のものとして扱えるようにすることニャ。でないと何かあった時に対処出来なくなるからニャ』
 
「あ、宝玉は、どんな物なの?」
 
『手の中で握れるくらいの小指の先程の大きさで、光る虹色の球体だニャ』
 
 それを聞いて、私は虹色のビー玉を想像した。
 
「なんで主人公は、その宝玉を持っていったのかな? 強制力の事、教えてなかったんでしょ?」
 
『なんでも、“綺麗なビー玉ね、これちょうだいね”って言って、持って行かれたんだそうだニャ』
 
 
 あぁ。もう、本当にどうしようもないな。
 
 
「まぁ、宝玉については何となく想像ついたわ。
 2年後の王立学園入学までに、どうやって近づいて取り戻すか、ゆっくり考えましょう」
 
 
 こうして、王立学園入学までにしっかりと下準備をしておく事となった。
 
 
 
 
 
 
 ベルイヤ侯爵領にて、ケット・シーのグレイと共に生活をするようになって半年が経った。
 領地の皆もグレイの存在に慣れてきた様子で、始めの頃の仰々しい扱いは収まり、落ち着いた生活に戻っている。
 まぁそれでもグレイへの扱いは、格上だが。
 
 
「エマ、もうすぐ12歳の誕生日だな。
 領内で盛大に祝おう!」
 
「ええ、もちろんですよ! グレイ様もぜひ参加なさって下さいね」
 
 祖父母の言葉にグレイは頷く。
 
「そんなに盛大にしなくてもいいですよ。お祖父様やお祖母様がお祝いして下さるだけで、とても嬉しいのですから」
 
 私は父母の形だけのパーティより、祖父母の気持ちだけで十分嬉しかった。
 しかし、祖父母はそんな私を遠慮していると思ったのか、より強く言ってくる。
 
「駄目よ! 領地挙げての記念日にしなきゃ!」
 
「それはいいな! その日はエマの誕生記念祭として、町中でお祝いをしないと!」
 
 昨年の11歳の誕生日も祖父母は暴走して、びっくりするほどの盛大なパーティを開いてくれた。
 でも、それ以上の暴走はさすがに恥ずかしいので、必死に説得し、今年は屋敷内で使用人達みんなを交えてのパーティにしてもらう事で、何とか了承してもらった。
 
 
 そして、パーティ当日、屋敷で祖父母やメイドのマリー、屋敷で働く使用人達に祝ってもらいながら楽しいパーティを開いていた。
 
 そんな時、鉱山の採掘現場から緊急の通信が屋敷に届いた。
 通信機より執事が内容を聞くと、サッと顔色を変えて、慌てて祖父に報告する。
 
「旦那様、大変です! 鉱山の採掘場で土砂崩れが発生したそうです!」
 
「何だと! 分かった、今すぐ現場に向かう!
 魔力に長けている者、数名着いてきてくれ!
 あと、救護班の準備と、ポーションの準備もしておくように!」
 
 そう言って祖父は私に振り向き、申し訳なさそうに言う。
 
「すまんな、エマ。せっかくの誕生日パーティだったのに、中止になりそうだ」
 
「いえ、気にしないで下さい。早くお祖父様は現場へ」
 
 私の言葉に祖父は頷き、数名のお供を連れて鉱山に向かった。
 
 私達はすぐにパーティ会場の後片付けをし、負傷者の受け入れが出来るように準備をする。
 
 鉱山から町に向かうより、この屋敷の方が近くて受け入れ場所もある為、何かあったらここで対処する事が決められていた。
 
 
 パーティ会場のあった場所には、負傷者を受け入れる為の救護テントを張り、常備してあったポーションや、負傷者を寝かせる簡易ベッド、手当が出来る救急道具などを一揃え準備し、町にいる医師を呼びに行く。
 普段から緊急時にすぐに対応出来るように役割を割り当てされている為、皆、迷いなく動く事が出来るのは流石であった。
 
 
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