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王都~学園入学前
13.アストナ先生
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王都に戻った私は、相変わらず素っ気ない両親と共にまた暮らす事になった。
9歳になった弟のエリオットも、より一層、私を見下した態度をとっている。
「姉様、本当に魔力が35の聖属性なの?
だったら僕が測定する時は、きっとそれ以上が出るな」
そのエリオットの発言に、母も同意する。
「もちろんよ、エリオット! 絶対あなたの方がいい判定が下されるはずだわ!」
何を根拠にそんな事を言っているのか分からないけど、言わせておこう。
3年後が楽しみだわ。
『お前の両親や弟は、何故お前を見下しているんだ?』
グレイが念話で話しかけてくる。
(生まれた時から私には関心がないのよ。
跡継ぎの男の子が欲しかったらしいから)
私の答えに、グレイは
『くだらんな』
と吐き捨てるように言った。
王都に戻ってからは、王立学園に向けての淑女教育と共に、魔法学の家庭教師も付けられた。
主に魔法学は学園で習うが、貴族はその前から家で学んでおくのが慣習だ。
属性に合わせた家庭教師を雇って、事前学習しておくのだが、どうやら聖属性魔法の教師は少ない為、なかなか見つけられなかったようだ。
ようやく見つかった事で、私を王都に連れ戻したみたいで、戻ってきてすぐにその家庭教師を紹介された。
「初めまして。エマ・ベルイヤと申します。
本日より宜しくお願い致します」
カーテシーをしながら挨拶をする。
「こちらこそ、よろしく。
私はジャック・アストナだ」
アストナ先生の挨拶の後、グレイから念話が飛んできた。
『こいつは、物語に出て来る恋愛対象者の内の1人だな』
マジですか。
アストナ先生は、もちろん聖属性魔法の使い手。
21歳にしては、とても落ち着いた雰囲気を持っている。
長身で、漆黒色のストレートの長髪。
ダークブルーの切れ長の目に、整った鼻筋と口元。
うん、確かに攻略対象になりそうな美形男性だ。
しかし、私には関係ない。
ただ、しっかりと教えて頂いて、好印象は残しておこう。
そう考えて、真面目に授業に取り組んだ。
授業では、聖属性魔法の基本的な使い方、主に治癒魔法について習う。
「1番早くこの魔法を習得するには、自分で自分を治す事だ」
そう言って、アストナ先生は素早く短剣で自分の腕に切り筋をつける。
「あっ!」
私は思わず目を見開いて叫んでしまったが、先生はなんて事はないといった風に平然と、
「ヒール」
と呪文を唱えて腕を治癒した。
「令嬢にここまでの傷をつけろとは言わない。
指先に少しだけ傷をつけろ。
そして、その痛みを感じながら魔力をもう片方の手に集中させて、呪文を唱えながら傷ついた指に魔力を放つ。
やってみろ」
何ともまぁ、即実践的な教え方なのですね。
ちなみに、領地では呪文なんて唱えなかったんだけどなぁ?
そう思っていると、グレイからの念話が。
『お前は女神の加護があるから呪文なしで使えたのだ。本来は呪文を使う』
あ、そうなのね。
納得しながら言われた通りに、指先に短剣で勢いよく切り傷をつける。
指先の切り傷から血が流れ出し、ジンジンとした痛みが伝わってきた。
「あっ!!」
それを見た先生が、顔色を真っ青にして私に駆け寄ってくる。
「ヒール!」
先生が私が呪文を唱える前に素早くヒールをかけるから、あっという間に傷口が治った。
「なんて馬鹿なことをするんだ!」
先生が私に焦りながら、そう怒ってきた。
えええ~。理不尽。
言われた通りにしただけなのに。
「本当にするとは思わなかった! 君は本当に侯爵令嬢か!? 全く躊躇わずに傷をつける令嬢がいるか!?」
「……先生が、そうおっしゃいましたので」
「それくらいの気概を持って、授業に臨んで欲しいと思っただけだ! 治癒魔法を教える度に自身に傷つけさせてると思われるなんて心外だぞ!」
うん、この人、めちゃくちゃ面倒な人だ。
これは好感度は増えないな。お互いに。
でも、自身の傷を治すのが手っ取り早い取得方法だって、実はこっそり同意したからこそ、何の躊躇いもなく傷をつけたのだ。
だから驚かせたのは私のせいでもある。
ここは素直に謝っておこう。
「申し訳ありませんでした」
「い、いや。こちらの説明の仕方も悪かったようだ。すまない」
あら、割と素直。
まぁ、12歳の少女相手にあの説明はないわね。
しっかりと反省して頂いて、ちゃんとした指導をお願いしますよ。
それからは、魔法全般の基礎をしっかりと説明してもらい、ちゃんとした基礎知識を身につけてから、聖属性の特徴を教えてもらう。
その後でゆっくりと実践で学ぶという教育計画となった。
もちろん、貴族令嬢の身は一切傷つけないという方針で。
9歳になった弟のエリオットも、より一層、私を見下した態度をとっている。
「姉様、本当に魔力が35の聖属性なの?
だったら僕が測定する時は、きっとそれ以上が出るな」
そのエリオットの発言に、母も同意する。
「もちろんよ、エリオット! 絶対あなたの方がいい判定が下されるはずだわ!」
何を根拠にそんな事を言っているのか分からないけど、言わせておこう。
3年後が楽しみだわ。
『お前の両親や弟は、何故お前を見下しているんだ?』
グレイが念話で話しかけてくる。
(生まれた時から私には関心がないのよ。
跡継ぎの男の子が欲しかったらしいから)
私の答えに、グレイは
『くだらんな』
と吐き捨てるように言った。
王都に戻ってからは、王立学園に向けての淑女教育と共に、魔法学の家庭教師も付けられた。
主に魔法学は学園で習うが、貴族はその前から家で学んでおくのが慣習だ。
属性に合わせた家庭教師を雇って、事前学習しておくのだが、どうやら聖属性魔法の教師は少ない為、なかなか見つけられなかったようだ。
ようやく見つかった事で、私を王都に連れ戻したみたいで、戻ってきてすぐにその家庭教師を紹介された。
「初めまして。エマ・ベルイヤと申します。
本日より宜しくお願い致します」
カーテシーをしながら挨拶をする。
「こちらこそ、よろしく。
私はジャック・アストナだ」
アストナ先生の挨拶の後、グレイから念話が飛んできた。
『こいつは、物語に出て来る恋愛対象者の内の1人だな』
マジですか。
アストナ先生は、もちろん聖属性魔法の使い手。
21歳にしては、とても落ち着いた雰囲気を持っている。
長身で、漆黒色のストレートの長髪。
ダークブルーの切れ長の目に、整った鼻筋と口元。
うん、確かに攻略対象になりそうな美形男性だ。
しかし、私には関係ない。
ただ、しっかりと教えて頂いて、好印象は残しておこう。
そう考えて、真面目に授業に取り組んだ。
授業では、聖属性魔法の基本的な使い方、主に治癒魔法について習う。
「1番早くこの魔法を習得するには、自分で自分を治す事だ」
そう言って、アストナ先生は素早く短剣で自分の腕に切り筋をつける。
「あっ!」
私は思わず目を見開いて叫んでしまったが、先生はなんて事はないといった風に平然と、
「ヒール」
と呪文を唱えて腕を治癒した。
「令嬢にここまでの傷をつけろとは言わない。
指先に少しだけ傷をつけろ。
そして、その痛みを感じながら魔力をもう片方の手に集中させて、呪文を唱えながら傷ついた指に魔力を放つ。
やってみろ」
何ともまぁ、即実践的な教え方なのですね。
ちなみに、領地では呪文なんて唱えなかったんだけどなぁ?
そう思っていると、グレイからの念話が。
『お前は女神の加護があるから呪文なしで使えたのだ。本来は呪文を使う』
あ、そうなのね。
納得しながら言われた通りに、指先に短剣で勢いよく切り傷をつける。
指先の切り傷から血が流れ出し、ジンジンとした痛みが伝わってきた。
「あっ!!」
それを見た先生が、顔色を真っ青にして私に駆け寄ってくる。
「ヒール!」
先生が私が呪文を唱える前に素早くヒールをかけるから、あっという間に傷口が治った。
「なんて馬鹿なことをするんだ!」
先生が私に焦りながら、そう怒ってきた。
えええ~。理不尽。
言われた通りにしただけなのに。
「本当にするとは思わなかった! 君は本当に侯爵令嬢か!? 全く躊躇わずに傷をつける令嬢がいるか!?」
「……先生が、そうおっしゃいましたので」
「それくらいの気概を持って、授業に臨んで欲しいと思っただけだ! 治癒魔法を教える度に自身に傷つけさせてると思われるなんて心外だぞ!」
うん、この人、めちゃくちゃ面倒な人だ。
これは好感度は増えないな。お互いに。
でも、自身の傷を治すのが手っ取り早い取得方法だって、実はこっそり同意したからこそ、何の躊躇いもなく傷をつけたのだ。
だから驚かせたのは私のせいでもある。
ここは素直に謝っておこう。
「申し訳ありませんでした」
「い、いや。こちらの説明の仕方も悪かったようだ。すまない」
あら、割と素直。
まぁ、12歳の少女相手にあの説明はないわね。
しっかりと反省して頂いて、ちゃんとした指導をお願いしますよ。
それからは、魔法全般の基礎をしっかりと説明してもらい、ちゃんとした基礎知識を身につけてから、聖属性の特徴を教えてもらう。
その後でゆっくりと実践で学ぶという教育計画となった。
もちろん、貴族令嬢の身は一切傷つけないという方針で。
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