【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

文字の大きさ
14 / 66
王都~学園入学前

13.アストナ先生

しおりを挟む
 王都に戻った私は、相変わらず素っ気ない両親と共にまた暮らす事になった。
 9歳になった弟のエリオットも、より一層、私を見下した態度をとっている。
 
「姉様、本当に魔力が35の聖属性なの?
 だったら僕が測定する時は、きっとそれ以上が出るな」
 
 そのエリオットの発言に、母も同意する。
 
「もちろんよ、エリオット! 絶対あなたの方がいい判定が下されるはずだわ!」
 
 何を根拠にそんな事を言っているのか分からないけど、言わせておこう。
 3年後が楽しみだわ。
 
『お前の両親や弟は、何故お前を見下しているんだ?』
 
 グレイが念話で話しかけてくる。
 
 (生まれた時から私には関心がないのよ。
 跡継ぎの男の子が欲しかったらしいから)
 
 私の答えに、グレイは
『くだらんな』
 と吐き捨てるように言った。
 
 
 
 王都に戻ってからは、王立学園に向けての淑女教育と共に、魔法学の家庭教師も付けられた。
 
 主に魔法学は学園で習うが、貴族はその前から家で学んでおくのが慣習だ。
 属性に合わせた家庭教師を雇って、事前学習しておくのだが、どうやら聖属性魔法の教師は少ない為、なかなか見つけられなかったようだ。
 
 ようやく見つかった事で、私を王都に連れ戻したみたいで、戻ってきてすぐにその家庭教師を紹介された。
 
 
「初めまして。エマ・ベルイヤと申します。
 本日より宜しくお願い致します」
 
 カーテシーをしながら挨拶をする。
 
「こちらこそ、よろしく。
 私はジャック・アストナだ」
 
 
 アストナ先生の挨拶の後、グレイから念話が飛んできた。
 
『こいつは、物語に出て来る恋愛対象者の内の1人だな』
 
 
 マジですか。
 
 
 アストナ先生は、もちろん聖属性魔法の使い手。
 21歳にしては、とても落ち着いた雰囲気を持っている。
 長身で、漆黒色のストレートの長髪。
 ダークブルーの切れ長の目に、整った鼻筋と口元。
 
 うん、確かに攻略対象になりそうな美形男性だ。
 
 しかし、私には関係ない。
 ただ、しっかりと教えて頂いて、好印象は残しておこう。
 
 そう考えて、真面目に授業に取り組んだ。
 
 
 授業では、聖属性魔法の基本的な使い方、主に治癒魔法について習う。
 
「1番早くこの魔法を習得するには、自分で自分を治す事だ」
 
 そう言って、アストナ先生は素早く短剣で自分の腕に切り筋をつける。
 
「あっ!」
 
 私は思わず目を見開いて叫んでしまったが、先生はなんて事はないといった風に平然と、
「ヒール」
 と呪文を唱えて腕を治癒した。
 
「令嬢にここまでの傷をつけろとは言わない。
 指先に少しだけ傷をつけろ。
 そして、その痛みを感じながら魔力をもう片方の手に集中させて、呪文を唱えながら傷ついた指に魔力を放つ。
 やってみろ」
 
 何ともまぁ、即実践的な教え方なのですね。
 ちなみに、領地では呪文なんて唱えなかったんだけどなぁ?
 
 そう思っていると、グレイからの念話が。
 
『お前は女神の加護があるから呪文なしで使えたのだ。本来は呪文を使う』
 
 あ、そうなのね。
 
 納得しながら言われた通りに、指先に短剣で勢いよく切り傷をつける。
 指先の切り傷から血が流れ出し、ジンジンとした痛みが伝わってきた。
 
「あっ!!」
 
 それを見た先生が、顔色を真っ青にして私に駆け寄ってくる。
 
「ヒール!」
 
 先生が私が呪文を唱える前に素早くヒールをかけるから、あっという間に傷口が治った。
 
「なんて馬鹿なことをするんだ!」
 
 先生が私に焦りながら、そう怒ってきた。
 
 えええ~。理不尽。
 言われた通りにしただけなのに。
 
「本当にするとは思わなかった! 君は本当に侯爵令嬢か!? 全く躊躇わずに傷をつける令嬢がいるか!?」
 
「……先生が、そうおっしゃいましたので」
 
「それくらいの気概を持って、授業に臨んで欲しいと思っただけだ! 治癒魔法を教える度に自身に傷つけさせてると思われるなんて心外だぞ!」
 
 
 うん、この人、めちゃくちゃ面倒な人だ。
 これは好感度は増えないな。お互いに。
 
 でも、自身の傷を治すのが手っ取り早い取得方法だって、実はこっそり同意したからこそ、何の躊躇いもなく傷をつけたのだ。
 だから驚かせたのは私のせいでもある。
 ここは素直に謝っておこう。
 
「申し訳ありませんでした」
 
「い、いや。こちらの説明の仕方も悪かったようだ。すまない」
 
 あら、割と素直。
 まぁ、12歳の少女相手にあの説明はないわね。
 しっかりと反省して頂いて、ちゃんとした指導をお願いしますよ。
 
 
 それからは、魔法全般の基礎をしっかりと説明してもらい、ちゃんとした基礎知識を身につけてから、聖属性の特徴を教えてもらう。
 その後でゆっくりと実践で学ぶという教育計画となった。
 
 もちろん、貴族令嬢の身は一切傷つけないという方針で。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...