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王都~学園入学前
14.ジャック視点
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私はジャック・アストナ
アストナ伯爵家の次男だ。
私の魔法属性は聖属性という希少な属性。
その属性を生かし、学園卒業後は国の近衛騎士団の治癒班に所属している。
兄は私より3歳年上で、すでに結婚し伯爵家を継いでいるため、私は自由に暮らしていた。
騎士団の治癒班に所属と言っても、今は平和な世で他国との戦争もしておらず、訓練中に怪我をした騎士を治すだけの簡単な仕事。
時間を持て余していた私に、ある時、ベルイヤ侯爵から声を掛けられた。
何でも聖属性魔法が使える人を、娘の家庭教師として探していたとの事。
騎士団から許可が貰えたら受けてもいいと返答したら、即効で侯爵は騎士団から許可をもらってきた。
12歳の侯爵の娘は、魔力35の聖属性と判定が出たらしい。
学園に上がるまでに、基礎知識を身につけさせようという事だろう。
魔力35と聞いて、断然興味を持った。
そして、家庭教師として初めての授業の日。
紹介された侯爵の娘に出会った時、あまりの美しさにびっくりした。
腰近くまである長さのラベンダーピンク色の髪は、緩やかに後ろに流し、アメジスト色の目は大きくてやや切れ長。小さくてぷっくりとした口唇は桃色。
12歳にしては、スラリと伸びた白い腕や、細い腰、胸もやや膨らみを帯びており、これからの成長がより一層楽しみな……
って、いやいや。
私は12歳の子供に何を考えている。
どうせ侯爵令嬢として大切に扱われ、我儘になっているに決まっている。
そもそも、私は貴族令嬢が嫌いだ。
どいつもこいつも、淑女の仮面を被った悪魔か、男を品定めして狙うハンター。
学生時代、私は散々その悪魔達に追い回され、女嫌いに拍車がかかったため、両親は私に婚約者を作れと煩く言わなくなった。
これ幸いと、ようやく自由をもぎ取り、今は気ままに毎日を楽しんで過ごしている。
そんな私が12歳の子供に惑わされてなるものか。
これはきちんと始めに上下関係をはっきりさせておいた方がいいだろう。
侯爵家だといっても、私は師として迎えられているのだから。
だから私は、脅しの意味も込めて始めに治癒魔法の実践をして見せた。
聖属性魔法は人を助ける魔法だ。
傲慢な人間に人を助ける事は出来ない。
人の痛みを知り、心から助けたいと思う気持ちを持つ。
それには自分に置き換えるのが一番だ。
大切に育てられてきた我儘令嬢には、自分が傷つく事など想像もつかないだろう。
そう思って、少し意地悪な気持ちで、次は自分の指先に傷をつけて実践で治癒するように言った。
なのにあんなに躊躇なく自分の指先を切りつけるとは。
それを見た私の心臓が止まるかと思った。
焦ってすぐに治癒してから、思わず令嬢に当たってしまった。
怒る権利など私にはなかったのに。
それからは自分に傷を付けて練習する事を禁じ、絶対にわざと傷つけることのないよう言い聞かせた。
分かっている。
めちゃくちゃ理不尽な事を言っているのはちゃんと自覚している。
でも、何故か二度とあの娘が傷つくところなど見たくないのだ。
それからは週二回ペースで侯爵家に通い、授業を行なった。
侯爵家に通うようになってから気付いたが、どうも令嬢は家族からあまり大切に扱われていないようだ。
表面的には私にも愛想良く振る舞う侯爵や、侯爵夫人だが、特に侯爵夫人は令嬢に冷たいように感じる。
少し気になって調べてみると、令嬢に聖属性があると分かるまでは、令嬢は領地に追いやられていたらしい。
ちゃんとした実子らしいのだが、貴族家庭には子供を道具としてしか見ない事もよくあるので、多分この侯爵家も跡取り以外は大切にするつもりがなかったのだろう。
でも、令嬢は健気にこの環境にも腐らず、素直でいい子だ。
勉強熱心だし、それに見合った能力もある。
学園に入ったらますます能力が伸びて、卒業する頃にはこの美貌に加え、希少な聖属性持ちだからと引く手数多となる事だろう。
中には、この素晴らしい令嬢を利用しようとする者だって現れるかもしれない。
そんな時にこの家族では、この令嬢を守る事など出来ない、いや、しないだろう。
だから私は決めた。
この令嬢を悪意を持つ者から守ろうと。
この令嬢は幸せになるべき人だ。
こんな家族から早く離れて、自由を掴むべきだ。
その為に私は力になろう。
令嬢が学園に入学する時期に、私は一旦騎士団の救護班から離れ、聖属性魔法の教員として王立学園に勤める手続きをした。
幸い、聖属性持ちは少ないので、教員もいつも不足している。
教会関係者の聖属性持ちが臨時教員として通って来ていたらしいことは知っていたから、正職員としてすぐに採用が決定した。
学園に入学して私を見た時、令嬢は驚くだろうな。
その驚いた顔を想像するだけで思わず顔がにやけてしまう。
入学まであと数ヶ月。
それまでしっかりと家庭教師として、令嬢と向き合っていこう。
私はそう固く決心した。
アストナ伯爵家の次男だ。
私の魔法属性は聖属性という希少な属性。
その属性を生かし、学園卒業後は国の近衛騎士団の治癒班に所属している。
兄は私より3歳年上で、すでに結婚し伯爵家を継いでいるため、私は自由に暮らしていた。
騎士団の治癒班に所属と言っても、今は平和な世で他国との戦争もしておらず、訓練中に怪我をした騎士を治すだけの簡単な仕事。
時間を持て余していた私に、ある時、ベルイヤ侯爵から声を掛けられた。
何でも聖属性魔法が使える人を、娘の家庭教師として探していたとの事。
騎士団から許可が貰えたら受けてもいいと返答したら、即効で侯爵は騎士団から許可をもらってきた。
12歳の侯爵の娘は、魔力35の聖属性と判定が出たらしい。
学園に上がるまでに、基礎知識を身につけさせようという事だろう。
魔力35と聞いて、断然興味を持った。
そして、家庭教師として初めての授業の日。
紹介された侯爵の娘に出会った時、あまりの美しさにびっくりした。
腰近くまである長さのラベンダーピンク色の髪は、緩やかに後ろに流し、アメジスト色の目は大きくてやや切れ長。小さくてぷっくりとした口唇は桃色。
12歳にしては、スラリと伸びた白い腕や、細い腰、胸もやや膨らみを帯びており、これからの成長がより一層楽しみな……
って、いやいや。
私は12歳の子供に何を考えている。
どうせ侯爵令嬢として大切に扱われ、我儘になっているに決まっている。
そもそも、私は貴族令嬢が嫌いだ。
どいつもこいつも、淑女の仮面を被った悪魔か、男を品定めして狙うハンター。
学生時代、私は散々その悪魔達に追い回され、女嫌いに拍車がかかったため、両親は私に婚約者を作れと煩く言わなくなった。
これ幸いと、ようやく自由をもぎ取り、今は気ままに毎日を楽しんで過ごしている。
そんな私が12歳の子供に惑わされてなるものか。
これはきちんと始めに上下関係をはっきりさせておいた方がいいだろう。
侯爵家だといっても、私は師として迎えられているのだから。
だから私は、脅しの意味も込めて始めに治癒魔法の実践をして見せた。
聖属性魔法は人を助ける魔法だ。
傲慢な人間に人を助ける事は出来ない。
人の痛みを知り、心から助けたいと思う気持ちを持つ。
それには自分に置き換えるのが一番だ。
大切に育てられてきた我儘令嬢には、自分が傷つく事など想像もつかないだろう。
そう思って、少し意地悪な気持ちで、次は自分の指先に傷をつけて実践で治癒するように言った。
なのにあんなに躊躇なく自分の指先を切りつけるとは。
それを見た私の心臓が止まるかと思った。
焦ってすぐに治癒してから、思わず令嬢に当たってしまった。
怒る権利など私にはなかったのに。
それからは自分に傷を付けて練習する事を禁じ、絶対にわざと傷つけることのないよう言い聞かせた。
分かっている。
めちゃくちゃ理不尽な事を言っているのはちゃんと自覚している。
でも、何故か二度とあの娘が傷つくところなど見たくないのだ。
それからは週二回ペースで侯爵家に通い、授業を行なった。
侯爵家に通うようになってから気付いたが、どうも令嬢は家族からあまり大切に扱われていないようだ。
表面的には私にも愛想良く振る舞う侯爵や、侯爵夫人だが、特に侯爵夫人は令嬢に冷たいように感じる。
少し気になって調べてみると、令嬢に聖属性があると分かるまでは、令嬢は領地に追いやられていたらしい。
ちゃんとした実子らしいのだが、貴族家庭には子供を道具としてしか見ない事もよくあるので、多分この侯爵家も跡取り以外は大切にするつもりがなかったのだろう。
でも、令嬢は健気にこの環境にも腐らず、素直でいい子だ。
勉強熱心だし、それに見合った能力もある。
学園に入ったらますます能力が伸びて、卒業する頃にはこの美貌に加え、希少な聖属性持ちだからと引く手数多となる事だろう。
中には、この素晴らしい令嬢を利用しようとする者だって現れるかもしれない。
そんな時にこの家族では、この令嬢を守る事など出来ない、いや、しないだろう。
だから私は決めた。
この令嬢を悪意を持つ者から守ろうと。
この令嬢は幸せになるべき人だ。
こんな家族から早く離れて、自由を掴むべきだ。
その為に私は力になろう。
令嬢が学園に入学する時期に、私は一旦騎士団の救護班から離れ、聖属性魔法の教員として王立学園に勤める手続きをした。
幸い、聖属性持ちは少ないので、教員もいつも不足している。
教会関係者の聖属性持ちが臨時教員として通って来ていたらしいことは知っていたから、正職員としてすぐに採用が決定した。
学園に入学して私を見た時、令嬢は驚くだろうな。
その驚いた顔を想像するだけで思わず顔がにやけてしまう。
入学まであと数ヶ月。
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私はそう固く決心した。
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