乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

文字の大きさ
5 / 122

5.運命の出会いは必然ってやつですか?

しおりを挟む
 
 あの女の子を探してウロウロとお庭を歩いています。
3歳の身長の低さって本当に遠くを見渡せないし人に紛れちゃうと全く何も見えなくなる。
人探しには向かないわ。
仕方ないけどね。

サクサク歩いていると薔薇のアーチがあって、それを潜ると迷路みたいになっていた。

入ってもいいのかな?
まぁ、立入禁止とか書いてなかってし大丈夫でしょ。って事でゴー!


お花は綺麗に咲いていて、さっきまでの人工的な匂いと違って自然の良い匂いが鼻をくすぐる。
サクサク進んで歩いていると小さな噴水と椅子とテーブルが置いてある少し開けた場所に出た。


「すてきなばしょ!いいてんきだしこのままここにいるのもありかな…」


うーんと伸びをして思い切り深呼吸。
噴水の側で腰を下ろし水を触ってみたら、冷たくて気持ちが良かった。
さっきまでの気分の悪さが抜けて行くような感じ。
パシャパシャと手を水の中に入れて遊んでいると、ガサッと後ろの茂みが揺れて誰かが出てきていきなり怒鳴られた。


「ーーっ!!誰!?ってリリィか…」  


頭に葉っぱを付けて歩いてきたのは第一王子のテオドール殿下だった。
少なからず驚いた私は声がすぐ出せず、水の中に手を入れたまま固まってしまった。


「?リリィだったよね?」

「あ、そうです。すみませんこんなかっこで」


バシャッと水から手を出したらドレスに水が沢山かかってしまった。


「あっ!ッ」


瞬時にお母様の鬼の行相が頭に浮かんで顔が青ざめる。
ドレスの裾の濡れている場所を摘んで唖然としていると

「ぬれてしまった?乾かしてあげる。風よ」

テオドール殿下が指をクルリと回して呟くと緑色の光がチカチカし足元を風が通り抜けて行った。
魔法だ。

「ーーすごい!かわいた!」

濡れたドレスの裾が乾いてフワフワと風に揺れている。

「テオドールでんか、ありがとうございます」

「いや、ボクがおどろかしてしまったから」

フフッとはにかむ顔は可愛らしかった。
フム、優しいし将来超絶イケメンになりそうな予感がします!


「テオドールでんかはなんでここに?」

「名前呼びにくいだろ?テオでいいよ」

いいのかな?ま、いっか。

「テオはなんでここにいるの?おちゃかいのしゅやくでしょ?」

「あー、匂いが…。コホン。リリィは?こんな所で1人でいたらクリスが心配するよ?」

匂い…あぁ。
そうね。確かに凄かったもんね。

「おとなになれば、へいきになりますよ。あたま、さげてください」

「え?こう?」

テオの頭に付いた葉っぱを取り除きながら言葉を掛ける。


「はい。あのにおいは、なれればおんなのこたちにかこまれてもへいきに…」


小学校の頃の授業参観の日とか、教室内に匂いが充満してマジで苦しかったけど、大人になったらあんまり気にならなくなるし。
あ、でも女性専用車両の満員電車は地獄だったな…と思ったら微妙かも?

「ハハ…そうだねいずれ慣れるとは思うけどね…」

テオと話をしていたらガサッとまた足音が聞こえた。


「…どなたかいらっしゃる?」


あ!あの可愛い女の子だ!
よほど心細かったのか恐る恐るといった表情でやって来た。


「アデライト嬢?どうしてここへ?」

「テオさま!おすがたがみえたので…」


テオを追って1人で来たのか。
なんて根性のある子なんだ!
ポッと頬を染めて話すアデライト嬢はめちゃくちゃ可愛いし。


「あ…リリアーヌ…さまも…」

急に表情が曇って、キッと見られた。
あ、お邪魔虫…かな?
ゴメンね、でも先に居たのは私なんですが…


「アデライト嬢、こんな所まで1人で来てはダメだよ?」

「ーー!でもリリアーヌさまだって」

「それはそうだけど、皆が心配するよ?」

ドレスをギュッと握ってワナワナと震えるアデライト様はチョット怖かった。
うーん、3歳なのにこんなに香水振りまいて…よく見たら白粉?も頬紅も?目元も…えー?アイライン?入れてる?

この世界恐ろしい!
3歳児に化粧なんて!
奥様は色白美人さんで優しそうだったんだけど…本人の意思なのかな…?


「テオドールでんかがもどるならもどります!」

「わかったわかった。戻るよ。一緒に行こう」

テオは溜息混じりにアデライト嬢をエスコート。
私を振り返って、ごめんねと口をぱくぱくした。


「…あらしのような子だわ」

「あの年でけっこうなわがまま放題らしいよ?」

「わっ!!びっくりした!!」

隣にいきなり立っていたのはさっき助けてくれた辺境伯の子息のレオポルトだった。


「あ、ごめんね。おどろかせた?」

「…おどろきました」

何でこんな所にいきなりいるの?
さっきまで居なかったじゃん!


「テオを追ってたらアデライト嬢も付いて行ったからね、どうなるかと思ってたらリリアーヌ嬢もここにいたってわけ」

「おにいさまは?」

「あー…ね?」

あ!コレは押し付けて来たな!
ジトーと見るけど、さっき助けてもらった恩がある。ちゃんとお礼言っておかないと、嫌な奴になっちゃうわ。


「さきほどはありがとうございました」

「ん?あぁ、あんな風に囲まれてたらおいしいお菓子もろくに食べれないしね」


ウィンクバッチーンとされ、赤面した。
赤面したのはウィンクのせいじゃないよ!お菓子頬張って食べてたのを見られたからよ!


「…ハハ。どうも」

…なんか、視線感じるなぁ。
見られてる?
横を向いたらバッチリ目が合いました。


「…なにか?」

「リリアーヌ嬢は3才だっけ?」

ちょっとドキッ!

「リリィでよろしくてよ。…」
  
「リリィ。オレはレオポルト、レオでいいよ」

「…レオ様、わたくしは3さいですがなにか?」


ちょっと訝しげな目で見ちゃうのは仕方ないと思うの。


「呼び捨てでいいよ?…3才にしては妙に大人っぽい仕草をするなぁと思って」

「え?」

「さっき、テオのかみの毛についた葉っぱを取った時とか。あ、でもお菓子を食べてる時は3才の顔だったけどね」

「ーー!からかってるのですか?」

カッと頬が熱くなった。
揶揄われてる!絶対に揶揄われてる!
お菓子頬張って食べてたのバカにされてるんだ!


「ごめんごめん!ちがうよ!素直においしそうにおかしを食べてた。そんなリリィがかわいいなと思って見てたんだ」

「ーー!やっぱりからかってる!!」 

レオの胸をポカポカ叩いてやった。
フンだ。
痛がればいい!


「アハハッ。からかってないって!かわいい」


レオは胸を叩いていた私の腕を取って、そのままスッと片膝を着いてジッと見上げてくる。


「オレは辺境伯フィリップ・ガルシアの息子レオポルト・ガルシアだ。リリィ、君を一目見て好きになった。オレと婚約してほしい」


え?え!?っえーーーーーーっっ!!!

なっ、何?え?私3歳だよ!?
この子大丈夫?

「えーと?」

「レオッ!リリィッ!」

ガサッとまた音がして振り向くとそこにはお兄様。


「おにいさま!」

助けてー!どうしたらいいのかわかんない!


「レオ、君って奴は人に押し付けといてリリィをくどきに行くなんて!」

「だって、一目惚れだったんだ。しかたないじゃん。他の男にかっさらわれる前に取りに行くってのが男ってもんだろ」

「そうかもしれないけど…はぁ…」


お兄様!溜息吐くのは後にしてこの状況を何とかして下さい!

それに、取りに行くって私は物じゃありません!


しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...