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6.悪役令嬢?ナニソレおいしいんですか?

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 「…とりあえず、もどりましょうか」
「リリィ!今は口約束だけでもいいからオレと婚約して!」

「レオ!君、そんな大事な事勝手に決めたらダメだよ!」
「ベルナー家の方には後で…」

「ちょっと!君も候補の女の子いたでしょ?」
「それは、さっき全て断った!母にはもう伝えてある!」


…カオス。


なんだか置いてけぼりを喰らった気分になるのはなぜだろうか…。
ちなみにまだ手は取られたままです。
はぁ、離してほしい。
そりゃあ、レオはイケメンで好みのタイプだけど、中身大人の私としてはショタ趣味はないし…。

ーーあ!

でも自分好みの男に育てるってのはアリかも!
ふむ。
いいんじゃない?
逆《紫の上》的な?
ヨシ、その方向で…でも自分がそう言う感情になれるのかが不安だな…。


前の世界では顔はまあ見れる程には…
って感じだったから、恋愛は何となくしてきた。

でも毎日忙しくて会おうって言われてもムリだったり、遊ぼうって言われてもそんなムダなお金ないし…って付き合ってもすぐに振られたんだよな…
だから恋愛経験はあるようでそんなに無い…
虚しい事思い出しちゃった。


チラリとレオを見てみる。
あら目が真剣ね。
うん、イケメン。
これからも心優しくレディファーストならぬ、リリィファースト貫いてくれるなら考えてもいいかな?なんて?
あ、でも辺境伯ってどんな立場なのかな?
ベルナー家ウチとの釣り合い的な物って?
うーん。
ちょっと調べて勉強してからにしましょうか。


「…ごじぶんが、しんしだとおもうなら手をはなしてくださる?」

「ーーリリィ」

名残惜しそうに手の甲に唇を寄せてから離れていく。


「このおはなしは、わたくしのどくだんではどうにもできないのでほりゅう、ということで」

「リリィ…」

「ふふ、レオのこれからのかつやくしだいよ?」


レオの頬に頬を寄せてから離れると、お兄様が顔を赤くして震えている。
あら?大丈夫かしら?
熱中症?大変!早く日陰に連れて行かなくちゃ!


「おにいさま!もどりましょう。レオ、ごきげんよう」

「あ…うん。リリィ…」


グイグイとお兄様を引っ張って日陰に向かう事にした。


「リリィ…絶対にあきらめないからな…」

後に残されたレオポルトは頬を押さえてポーッとリリィの後ろ姿を見つめていた。



そんなやり取りを木の影から見ていた人物がもう1人いた。

ジャン・ヴィクトル・マルタン。
この国の第二王子である。
彼もまたリリィに一目惚れしてしまった1人だが、生来内気で人見知りな彼はリリィの後を付いて見ている事しかできなかった。

レオがリリィを口説いた瞬間、飛び出して行こうとしたがクリスが来た為出るタイミングを逃してしまい結局そのままずっと隠れている事しかできなかった。

リリィのセリフ「これからの活躍次第」を心に刻んで、自分も頑張ろうと決めたのだった。




◇◇◇◇◇◇



「おにいさま?だいじょうぶですか?」

「………」

「おにいさま?」

「……あ、ごめんね。リリィ」

「どうかなさったの?」


お兄様に声を掛けても無反応なんて事未だかつてなかったんだけど、やっぱり調子が悪いのかな?

 
「リリィ、さっきのレオの話だけど…」

「こんやくのおはなしですか?」

「そう。リリィはどう思う?レオの事」

どうって言われてもね、今日初めて会ってさっき初めて話した人だからなんとも言えないけど…

「そうですね、かっこよくてしょうらいゆうぼう?」

「将来ゆうぼう…」

あれ?そういう意味で聞いたんじゃないのかな?


「えっと、やさしそうだけどうらがありそう?」

「裏が…」
 
あれれ?違う?


「えーと?」

「あ、リリィがお嫁に行ってもいいかな?と思うかどうかを…」

あ、そういう事ね!

「そうですね…。わたしをたいせつにしてくれるのはもちろん、わたしのかぞくもたいせつにしてくださるなら…かんがえてもいいかもしれませんね」

「家族…」


そう。
前の世界でで家族愛に飢えていた私は今の家族をものすごく大切に思っている。
そりゃあ、施設の先生達や友達も仲良くしてくれて他所に比べたら格段に良い所だったけど、やっぱり家族の愛情って違うじゃん。

無償の愛っていうのかな?
それが欲しくて欲しくて…
今、私はその欲しかった物が両手にある。
手放すつもりは全くない!!


「そうです。おとうさま、おかあさま、おにいさまをおなじようにたいせつにしてくれて、
きちんとていきてきにじっかにかえらせてくれるかたなら」

考えてもいいかなーなんてね。
ふふふ。


「実家に…」

「まあ、でもおとうさまのゆるしがでないことには…でしょう?」


あの息子ラブ!娘ラブ!なお父様がちょっとやそっとの相手に許しを出すはずがない。
一体どんな相手だったらOKするのか知りたい所だわ。

「確かに。あのお父様の試練をクリアしないとムリだもんね」

明らかにホッとした表情になるお兄様。
?レオと仲悪いのかしら?
聞いといたほうが良さそうね。


「おにいさまはレオとなかわるいのですか?」

「え?あー悪友みたいなものかな?よく王宮で会ったりもするしね」


仲は悪くないんだ。
確かに愛称で呼び合ってたもんね。
気軽な関係って感じ?
いいよな~そういう友達。
あ、あの子…アデライトさん…仲良く…なりたかったけどなぁ。

ふぅ。


「あれ?アデライト嬢」


前方にはさっきテオと去って行ったはずのアデライトさんがドーンと腰に手を当てて通せんぼしていた。

「リリアーヌ…さま!ちょっとよろしいかしらっ
?」

お?私ですか??
お友達になって…って感じの雰囲気では無さそうだなぁ。

「はい。なにかごようですか?」

「ちょっとこちらにいらして!」


んーと、まあいいか。

「おにいさまはさきにもどってらして」

「リリィ…」

お兄様を置いて、アデライトさんの所へ向かう。
近寄るとスゴイ匂いが…香水ふりすぎだよう。
目もシパシパしてきた。

「なにかありましたか?」

近寄るとアデライトさんはジーッと見つめ…いや睨んできた。

「テオさまは、あたくしとこんやくするの!じゃまをしないでちょうだい!」


おっと!宣戦布告ってやつ?
ていうか、私別にテオの事なんてどうでもいいんだけど…従兄弟だしさ。

「…なんのことですか?」

「テオさまとふたりきりになって!いやらしい!」


3歳児のセリフかね?マセた子だな…。

「わたくし、テオさまのことなんて…」
「ーー!なんてなれなれしい!ちゃんとでんかとおよびなさい!」

すんげー。
話聞かないタイプ?
そういう子って嫌われるよ?
めんどくさくなってきちゃったなぁ…
遠い目でアデライトさんを眺めてたらふと気付いた。


「…あら、たれめさんなのね?」

アイラインを吊り目風に引いてるのか…

「ーーーー!なっ!!」


あら?なんか顔が真っ赤になってる!
アデライトさんも熱中症かしら?


「だいじょうぶ?」
「だっだいじょうぶですわっ!!」

「ん?ソバカス?」
「ーー!!」

白粉で誤魔化してるけどソバカスも浮いてるし、3歳なのにちょっと肌荒れしてる!!
かわいそうに…誤魔化そうとして悪化しちゃうパターンのやつだ。


「…おしろい、やめたほうがきれいになおりますよ?」

「ーーー!!!」

あ、余計なお世話だったかな…?
でも、知らないのなら教えてあげたい。


「ちょっとおしょくじにきをつけて、あさおきたらまずかおをおみずであらうだけで、かわりますよ?」

「…………」

「かおをあらったら、けしょうすいを…ヘチマのせいぶんのはいったものがあると、ソバカスも…」

ガシッと手を掴まれました。
今日は何だか色んな方に手を掴まれる日の様です。


「リリアーヌ…さま!わたくしのソバカス!きえますの!?」

「え?ええと、じっさいにどれくらいのしんとうかにもよりますが、うすくすることはかのうかと…」

あら、すごく真剣。
悩んでたのかなぁ?
それであの厚塗りだったのかな?
元がかわいいだけに肌荒れはかわいそうだよね。
よし、しっかりアドバイスさせてもらおう!


「アデライトさまは、おしろいをたくさんぬることで、おはだがちっそくしてるのです。それがよけいにおはだをいためてるのです」

「…ちっそく」

「まずは、おしろいをやめてそとへでるときは、かさをさすかぼうしをかぶること」

うんうん、と手を握ったままアデライトさんは頷いている。


「ほんとうはひやけどめがあるといいのだけど…ええと、さきほどもいいましたとおり、あさおきたらまずおみずでかおをあらいます。あとおみずをコップいっぱいのむのもいいです」


アデライトさん、握ってる手に力入り過ぎて痛いんですけど…。


「…あとはおしょくじですが、あぶらのおおいもの、あますぎるものはなるべくさけたほうがいいです、けんこうじょうひつようなえいようそ、いがいはとりすぎてもムダになるだけなので」

「………」

あれ?聞いてるかな?
難しく話過ぎたかな?


「リリアーヌさまっ!!ぜひわたくしにうつくしくなるアドバイスを!!」

「え?ええ。よろしくてよ?」

あら?仲良くなれるチャンスかしら?


「わたくしっ!ずっとなやんでて…ぐずっ」

あらら…泣いちゃった!
そうよね、何歳でも女は女よね。


「だいじょうぶですわ!わたくしがついてます!いっしょにきれいになれるようにがんばりましょう!」

「リリアーヌさま…」

「リリィとおよびになって?」

「リリィ…ありがとう!わたくしのこともアディとよんでくれる?」

「もちろんよ!アディ!」


この世界で初めてお友達ができました!
うれしい!


ここにまた1人、リリィの虜になった者が増えたのだった。

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