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70.無理したら行けますか?
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あれからスライムを数十匹無詠唱で倒しました。
「リリィ魔力はどう?減った感じはある?」
「うーん…ちっとも減った感じは無いかな…」
爪の先にも減った感じはしません。
因みにこの数十回の先頭で無詠唱+視線での攻撃という物を覚えました。
「リリィは魔力量多いんだもんね。実際にどれくらいなのかは調べた事ある?」
「え?無いけど…」
「まあ、女の子だしそこまで拘らなくてもいいのかな?それと…リリィの戦い方はソロだといいと思うけどチームだとよほどの手練れかリリィの動きが読める人じゃ無いと無理かも。それかリリィが後衛で全てをジャッジして行く形かな」
「え?そうなの?」
「うーん。無詠唱で視線だけでの攻撃が繰り広げられるわけでしょう?下手したらリリィの攻撃対象にチームの誰かが切り込んだり魔法攻撃したりしてぶつかったりチームの人に攻撃が当たったりする可能性があるからね。始めは大変かも…」
確かに…誰が誰にっていうのがしっかり分かってるなら大丈夫だろうけど…その辺りはしっかり考えてみた方が良さそうなのかな?
「チームとして慣れてしまえばいいとは思うけどね、それに属性魔法もどれが飛び出してくるのかもわからなかったらより難しいかな…。あとはロウ様達との兼ね合いもあるから…」
「??」
「ロウ様達……伝説級の方々だからね。普通の契約獣とは……格差がね」
ああ、そうか。
規格外の子達が3(4?)匹居て、公表していないけど精霊王が契約精霊しかも5属性持ちなんて地雷も地雷。
事故物件並みよね!!
実際は隠して光属性って言ってるけど、いつ違う魔法ぶっ放してバレるか分かった物じゃないし……全部知っている人じゃないと困るかも。
「バランスも大切だもんね…授業でも何回も聞いた話…パワーバランスが違いすぎると結果が悪いって……」
「そうだね、だからこの学生時代の間にチームを組むなら同学年ならリュドは絶対に一緒になった方がいいよ。他にもって思うならヴィータかアディかくらいかな。メルとレティは少し力不足」
「レオは?組んでくれない?」
「ん?オレ?大歓迎だよ!オレとの時だったら好きなようにやってくれて構わないし」
「さっすが!!レオ!頼りになる!!」
「ふふ、いつでも誘って。時間が合えば必ず参加するから」
レオとだったらロウ達は凄くても私自身はまだまだポンコツなのも全部知られているから楽チンよね。
ちょっと気が楽になったので戦闘もスライム相手にスムーズに?サクサク進めていけた。
進んでいくうちにスライムではない個体……狼?が出てきた。
「ウルフだ。属性とかはないから魔法は無いけど通常攻撃してくるよ。近寄ってくる前に倒していくのがベストだね。爪攻撃で毒をもらう可能性があるからね」
ゴクリ。
……さっきまでのスライムはなんていうのか完全に物体って感じで生命体っぽさが無かったからなんとかなったけど……この子は……見た目が狼、生き物すぎる……。
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……リリィ?」
「……。」
「ウルフ来ちゃうよ?どうする?」
動けない私に変わってレオが魔法でウルフを消し去った。
「リリィ?急にどうしたの?」
「……うん、私……」
「ん?ゆっくりでいいよ?どうした?」
「あの……生き物って感じ……の」
「……うん。そっか……魔物と言っても姿はね…いきなり倒せって言われても難しいよね」
「……うん」
ここは仮想ダンジョン。
偽物の魔物だったとしても…なんとなく……無理な気がする。
それはやっぱり自分が違う世界の記憶を持っているからなのだろうか。
生き物を殺すという行為がどうしても……出来ない。
じゃあスライムは出来て何故?と聞かれたらやはり姿形だと思う。
じゃあ自分の命が晒されたら?大切な人達が危険に晒されたら?
……その時は出来ると思う。
でもそれくらいの覚悟がないと……
「リリィ?顔が真っ青だよ。今日はもう出ようか?」
「……レオ、ごめんなさい。さっきまで調子いい事ばかり言っていたわ…。チーム組んだりダンジョン何回か潜ったりしたいなんて……まだまだわたしには無理だ…」
何故かジワリと涙が出てきてしまった。
この世界で初めて感じた厳しさ……そして恐ろしさ……。
身体が一気にゾクリと震えて小刻みに震える。
「リリィ」
優しいレオの声が聞こえてフワリと抱きしめてくれた。
背中をトントンと叩いてくれてレオの体温が気持ちを落ち着かせてくれる。
「……子供じゃ…ないわよ?」
「ん?分かってるよ?でもね…」
トントンと叩いていた手が背中を優しく撫でてくれる。
「レオありがとう。ここにいるのがレオじゃなかったら私……」
どうなってしまってたかな?お兄様やリュドの前だったら?もしかしたら無理してもっと嫌な気持ちになってしまっていたかも……。
「ふふ、いくらでも頼ってくれていいよ。その為にオレは……」
強く優しいレオ…。
いつでもそばにいてくれる…。
『オイ、いつまでそうしているのだ?出るならもう出なさい』
バッとレオの胸から顔を上げるとフワフワとオベロンが飛んでいた。
「オベロン…オベロンもごめんね……私弱っちくて…」
『ん?いいのだよ?だから私が付いているんだから』
「?」
『あ奴らも出たくて仕方ないようだが、ここはまだ出れないようになってるのだな』
「…うん、そうみたい」
あぁ、そうか。
いつもは皆が近くにいてくれるから完全に安心してたんだ。
「リリィどうする?もう出る?」
「……うん、本当にごめんね」
「大丈夫だよ?先生も言っていたでしょ?すぐに出ても問題ないって。今日はシステムさえ分かればいいんだから」
「……ん。ごめん」
「謝らなくっていいって。また一緒に考えよう?」
「うん……」
そうして、私の初めての実戦訓練は終わったのでした……。
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