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113.ハッキリしないからスッキリしない!!
しおりを挟む「結婚はしない。王位継承権を返上して臣下に下る」
ヴィータの爆弾発言を聞かされた私はヴィータの腕を掴んだまま固まってしまった。
「───リリィ?」
「あっ!! ご、ごめん」
と言っても腕を離す事ができない。
「な、なんで?」
「ん?」
「なんで……そんな……」
「あぁ、王位継承権の返上? それは昔からそう思っていたからね。兄上に任せておけば問題無いと思うし、この国は精霊王様の加護もあるから兄上に何か起こるって事も考えにくいし……」
精霊王ってオベロンだよね? マルタン王国に加護……あ、精霊の森のあるマルタン王国が本拠地だもんね。
「……外の世界へ冒険に出たいっていう気持ちも昔からあるしね」
「……そう……なんだ」
知らなかった。
ヴィータとは昔から一緒に居たけどそんな事思っていたなんて……。
「……それに心に決めた人が居るから、その人以外との結婚は考えられない」
「───えっっ!? ヴィータ好きな人居るの!? 誰? 私の知ってる人!?」
ヴィータはハハッと笑った。そしてヴィータの腕を握り締めていた私の手にそっと自分の手を添えた。
「リリィは幸せ?」
「え? 何? 急に……」
ヴィータの真剣な金色の瞳にジッと見つめられ、どう答えたらいいのかわからなくなってしまう。
「レオ様と……婚約するんでしょ?」
「え!? なっ何で知ってるの?」
ふとヴィータは表情を和らげて笑ってくれたのでホッとする。
「精霊達がね、騒いでいたしオレアドも喜んでいたからね」
精霊……。確かにあの時精霊達は喜んでピカピカ光っていたもんね。
うわ……って事は皆の精霊達にはバレてるって事だよね……。
うわーっっ!! 恥ずかしいんですけど……。
恥ずかしさで顔が熱くなってパタパタと手で扇いでしまう。
「……おめでとう」
「あ、ありがとっ!!」
ヴィータは手を離すと私の首に掛かっているペンダントに視線を落として、ジッと見つめてからフワリと抱きしめてきた。
「───? ヴィータ?」
「うん。……少しだけこのままで」
どうしたんだろう。何かあったのかな?
「ヴィータ、辛い事とかあったら言って? 相談に乗るし。ね?」
「──フッ。クックック」
肩を揺らしてヴィータが笑っている。
「ヴィータ?」
「フフ、ごめんごめん。うん。ありがとう」
抱きしめていた腕を離すとヴィータは少しだけ淋しげな瞳で笑っていた。
「ヴィータ……」
「うん。僕は大丈夫。リリィこそ、もし辛かったりしたら言ってくれていいよ? 僕で良かったら何でもするし」
「───」
「あ、じゃあ僕行かなくちゃ。今ロウ様達呼んで? 来てくれたら僕は行くから」
「あ、うん。分かった。けど……ヴィータも辛い事とか嫌な事とかちゃんと言うんだよ? ……それにその……心に決めている人にも! ちゃんと伝えた方がいいよ!!」
ヴィータは少しだけ何かを考えているような顔になっていた。
「ロウ達、来──っっ」
ロウ達に来てもらおうと声をかけた瞬間に再度ヴィータの腕の中に閉じ込められていた。
「───っっ!! ヴィー……タ……?」
ヴィータの額が私の肩に乗っている。ヴィータの柔らかい髪が首筋に当たって少しむず痒い。知らなかった、こんなに背が伸びていたなんて。
「───リリィ」
「な……何? ヴィータ?」
耳元でふぅ──っっと大きく息を吐く音が聞こえた。
「───何でもない。リリィ、ロウ様達来てくれたから気を付けて帰りなね。じゃ」
フワリと抱きしめられていた腕から解放されるとクルリと体を回転させられ人型で現れたロウ達の前にトンと背中を押された。
「ヴィータッ!?」
振り返ると、既にヴィータは王宮の方へ足を進めており、背を向けたまま手をヒラリと振っていた。
「──ヴィータ?」
『アイツも辛い立場だな……』
「ロウ? どういう意味?」
『……さあな。帰るぞ』
なんだろう。なんとなく……ムズムズする。
ヴィータは何がしたかったんだろう。
ロウ達と一緒に玄関を出て門を出る。今度は警備隊の人達もそのまま通してくれた。
「──さっきのヴィータ、いつものヴィータじゃなかったよね……」
『なんだなんだぁ? いきなり浮気かぁ?』
「──なっ、セル! 何を言っているのよ!」
『ククク……言うかと思ったけどな。アイツよく堪えたよなぁ』
「? 何?」
『別にぃ?』
何なのよ。ヴィータもだけどロウもセルも何かハッキリしないわね!!
『ハッキリさせない方がいい事もあるってやつだよ』
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