乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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114.腹が減っては……!!

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 寮の敷地内へと戻るといつもの風景が流れていた。
 カフェで話が弾んでいるグループ、どこかへ移動中の子、ベンチで座って語り合っているカップル、勉強中の子。そしてこっちを見て顔を赤らめる子。

 少しホッと安心して肩から少し力が抜けた。

 
 「──リリィ~ッ!!」


 そんな時に元気な声で話しかけてきたのはエリーだった。


 「エリー、どうしたの?」
 「いやいや、それはこっちのセリフよ! あの我儘王女と対決したらしいじゃない? どうなったの?」

 
 おお、直球!!
 

 「あ……一応誓約魔法で話せる事が限られているから……」
 「そっかぁ……そうだよね。でもまあ、ここに居るって事は安心って所かな?」
 「ふふ、そういう事かな」
 「あれ? そのペンダントって……」
 

 エリーが指差したのはレオから貰ったペンダント。


 「あ……これ」

 ボッと顔が熱くなった。

 
 「なになに~? 大事なやつ~?」

 
 エリーはウリウリとご令嬢とは思えない仕草と表情で茶化してくる。

 
 「もうっ!」
 「アハッ。やっと笑った。あんな顔してたら綺麗な顔が台無しだぞ~! ていうかあのイケメン達って誰?? リリィの会いたかったっていう人?」


 コロコロ変わる話題に若干ドギマギしながらエリーの視線の先を見るとロウ達。


 「ん? 違う違う彼等は……」
 『リリィのお目付役みたいなもんだな』


 ロウはそう言って肩に腕を乗せて来た。
 離れた所からキャーッという悲鳴が聞こえた。


 「ロウ!」
 「お目付役かぁ。こんなイケメン達に囲まれてさ~リリィって凄いよねぇ」
 
 「ん? 凄いって?」
 「なんていうのかさ~普通だったら王子様達とかこのイケメンさん達とかと一緒に居たら、羨ましがられるのは勿論なんだけどさ嫌味にならないからさ~」
 
 『あー、それはリリィに色気が無いからだろ?』


 そう言ってセルが頭に手をポンと乗せて来た。
 遠くでまたキャーッという悲鳴が聞こえた。

 
 「あははっ!! 確かに綺麗で可愛くて皆が羨ましく思うけど本人が色んな意味で気付いてないって所がいいよね~」
 『『そういう事だな』』
 「ちょっ!! 何よ? 気付いてないって!!」
 「自分自身の事、他人からどう見られているかって事だよ」
 「?」


 他人から? 少し意味が分からなくて眉間に皺が寄ってしまう。
 
 
 「フフッ。そういう所。自然体でいいよね!」
 「え? 普通……でしょ?」


 え? 普通じゃない?

 
 「普通が素敵って事よ。私……ってさ街で生まれ育ったじゃない? それに……」
 「?」

 「まぁそれはいいや。この世界の貴族の事って全く分からなくてさ、皆気取ってるんだろうなって思ってたし……なんていうか……自分はこう……使命があると思ってたし空回っていたんだよね」
 「エリー?」
 
 「それをさ~何ていうのかなぁ……周りの事見えてなかったから、皆が私の事どういう風に思っていたのかとか分かってなくて友達も出来なかったし……寂しかったんだけど、リリィがさ! 普通に声かけてくれたじゃん!! それからだよ私……変われた」
 「変われた?」
 
 「うん。冷静に周りを見れるようになった。そしたら……自分の知ってるのと違ってたんだよね。それで気付いた。違う世界なんだな……って」
 「違う世界……?」

 
 どういう意味だろうと思ってエリーを見ると、少しだけ寂しそうに笑っていた。

 
 「そ。だから……受け入れるまでは時間がかかったけどね、受け入れちゃえば何だろう……楽しくなった」
 「受け入れるって……?」
 「うーん、自分らしくしようって思えたって事かな」
 

 エリーはエヘッと笑うと時計に目をやった。


 「あっ!! 話しかけておいてごめんね、今からちょっと用事があって行かなくちゃだから……またリリィの話も聞かせてね!!」
 「あ……うん分かった」
 「じゃあねっ!!」
 

 ブンブンと手を振ってエリーは楽しそうに走って行った。


 「……エリーなんか楽しそう」
 『一皮剥けた感じだな』
 「ロウ?」
 『あるがままの姿に戻ったって感じだなぁ』
 「セルまで、急によく分からない事言わないでよ」
 『……なんとなくいい方向に進んでるって事だ』
 「……何か皆で企んでる?」
 『企んでない。さ、戻るか』
 

 何だろ。
 皆のモノの言い方、含みがあるように聞こえて仕方ないわ。
 でも、まあヴィータは少しいつもと違った感じだったけどエリーは楽しそうだったし。
 普段通りに戻れたのかな?
 
 あれ、待ってよ? アディも何となく様子がおかしかったよね……。
 何なんだろう……自分だけがレオとの事で浮かれてて周りが見えてない?


 パチンッと頬を叩いて気合を入れ直す。

 
 「ふぅ……」


 今日はこの後レオとお父様の時間が合う時に一緒に話をして……。アディから連絡があれば話を聞く。
 
 今、自分に出来る事は……待つ事か。

 
 ……つまんない。

 待つだけっていうのは楽しくないよなぁ……。


 『……リリィ、何を考えている?』
 「え? 別に。ただ待ってるだけってつまらないなぁって思っただけよ」
 『そこから突飛な考えに飛ぶのがリリィだろぉ?』
 「何それ。私そんなぶっ飛んだ感じじゃないよ?」
 『……』
 『……』
 「ちょっと……そこでの沈黙やめて」
 

 どうしようかなぁ……。おとなしく部屋で待つか、どこかに行って気を紛らそうか……。
 あの魔のモノの事も気になるけどそれは私が踏み込むべき場所じゃないと思うし……。
 王女様トレファス妹の発言にも気になる所はあったけど、それも私には何も出来る事は無いだろうし……。


 師匠の所に行って魔法の勉強時間潰しでもしに行こうか……
 
  
 ぐーっ!!


 あら、大変。お腹が空いたわ……そういえばもういい時間過ぎてるもんなぁ……。

 「……よし、月の雫亭かな」
 『……何て?』
 「食事! 腹が減っては戦はできぬ!! よ!!」
 『リリィはたまにおかしな言葉を使うよなぁ……』
 「そう? ロウ達も一緒なら問題ないわよね?」
 『……外出届けは?』
 「っっ!! くっ!! そうだった……なんで素直に戻って来ちゃったんだろう……」

 
 冷静なロウのツッコミにクッと唇を噛み締める。

 「出して無いものは仕方ない。自炊……かカフェかな」
 
 はぁ。せっかく久しぶりにルーファスさんにも会えるかなって思ったんだけどな……。


 「リリィ? 何やってるんだい?」

 
 後ろから声をかけられて振り返ると、お久しぶりのライル先生だった。

 
 「ライル先生!!」
 「百面相してどうしたの?」
 「そんなのしてないですよ……」
 「ふふ、冗談だよ。それにしてもどうしたの? の結果はさっき聞いたけど。王宮に行っていたのではないの?」
 「あ、私が居てもやる事もないのでとりあえず先に戻って来たんです。で、色々考えてお腹が空いたので月の雫亭に行こうと思ったのですけど……」
 「ああ、成程。戻って来たばかりって事は外出届けが出されてないって事だ」


 さすが先生。ご名答です。


 コクリと頷くとライル先生はフフッと笑った。


 「じゃあ一緒に出る?」
 「え?」
 「私も今からリンリンの所魔導具屋に寄ってから食事でもしようかと思っててね。一緒に行くかい?」


 わぁ!! ラッキーってやつじゃない?
 ……でも、レオ以外の男性と2人きりってあんまり良くない気がするけど……。  
 でもライル先生だし。私の主治医でもあるし。お父様の親友だし。うん。


 「じゃあお願いします!!」
 「はい了解です。ロウ様達も一緒に行かれるでしょう?」
 『ライルが共なら我らは少し行く所があるから任せるぞ』
 「えー!! ロウ達は来ないの?」
 『鉄の魔女からの呼び出しだ』
 「師匠から?」
 『たいした話ではないと思うがな。行かないと何されるか分かったものじゃない』
 『めんどくせぇけどなぁ』
 「分かりました。ではリリィは私が責任を持って預かりますのでご安心ください」
 「先生!! 私もう子供じゃないわよ!」
 「ハハッ。そうだね、もう立派なレディだよ。」
 
 
 ライル先生となんて久しぶりな気がする!!
 楽しみ~!!リンリンさんにも久しぶりに会えるし!!

 そして……

 待っててー!! 月の雫亭!!



─────────────────

長い間更新が止まってしまいすみませんでした。
また読んで頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。
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