雨上がる空見上げて

秋本シラキ

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3章

雨上がる空見上げて 3章

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朝から雨が降っていた。雨脚は土砂降りというわけでもなく、小降りでもなく、俺流に言えば普通降りだろうか?



「よう。高山からはどうだ?メール来たか?」

佐藤が席についたばかりの俺の肩を軽く叩く。



「いや、来てない。」

俺は佐藤の顔を見ずに即答した。



「ああ、そうか。面白くねぇなぁ。そう言えばさあ・・・・」



佐藤は一瞬苦笑いをして見せたが、すぐに別の話をし始めた。



久しぶりに嘘を吐いた。どうして嘘なんか吐いたのだろう。性格的に、嘘は嫌いなはずな俺が。しかも何の迷いもなく



「おい!誰だよ!俺のノートに落書きした奴!」



朝の教室にこだまする叫び声。教室にいた全ての人間が静まり返る。もちろん、くだらない話を喋り続けていた佐藤も。



そしてみんなの視線はその声の方へと集中する。



「高山、今日は朝からやけに元気だなあ。ああ、その腐ったノートか。どうして今ごろ言い出すんだよ?っていうか、お前にそんな自己主張するような権利があるの?人間のゴミが。」



教室の中央で輪になって五、六人と話していたクラスメイトの山本がゆっくりと高山に近寄る。



「ちなみにそのノートの落書き、俺もやったがな。」



そういって高山の顔に唾を吐く。高山の頬に山本の唾がべったりと付いた。



「僕はゴミなんかじゃない!」

ノートを握り締め、山本をギッと睨みつける高山。



「え?なんだって?」

山本はわざとらしく、高山に耳を近づけ聞き直す。



「ふざけるな!」



高山はそう叫び、山本の身体めがけて突進した。そして突進をされた山本は勢いで高山とともに後ろへ倒れる。



「イテーな!なにすんだよ!」



山本は自分の身体にのしかかっている高山を腕で突き飛ばした。華奢な体格の高山は、山本が倒れている反対側へ倒れた。



「コノヤロウ!」



山本は素早く立ち上がり、倒れている高山に馬乗りになって殴りかかろうとした。



キーンコーン カーンコーン



「クソ!」



山本は拳を下げ、制服のエリを正して立ち上がり自分の席に戻っていった。緊迫した空気がやっと解けた。



「なぁ、高山、どうしちゃったんだろ?急に山本にたて突くなんてさ。」



そう佐藤が耳元で囁いたが、俺は首を傾げることしかできなかった。



あいつ、本当にやりやがった。まさかあいつ、昨日のメールを鵜呑みにして・・・!?



この高山の行動にクラスで一番驚いたのはこの俺だっただろう。
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