亡国の王、幼なじみDomと癒され再会ラブ

切羽未依

文字の大きさ
21 / 34
暗殺者

宰相

しおりを挟む
 扉が開いていなければ、広間に声は聞こえないだろうが、充分、離れるまで、我慢して廊下を歩いていたドニは、やっと声を上げた。
いてえって!離して!」

 腕を強く掴んで引っ張り続けるビズーイの手を、びたびた、ドニは叩く。

 ビズーイは、立ち止まり、ドニの腕を離した。ドニは腕をさする。
「お前、力、強いんだからさぁ」


 ビズーイが小肥こぶとりに見えるのは、実は筋肉だった。


「俺が会議を終わらせてなかったら、お前、ウェリスに5区を治めさせてただろ…」
 そう言うビズーイの綿毛のような金髪を見下ろして、ドニは、とても答えられなかった。


――ビズーイが会議を終了していなければ、ウェリスを円卓に引きずり上げて、


 幻惑魔術が発動してしまいそうで、ドニは続きを考えることもめた。



 ドニの沈黙に、ビズーイは、それ以上、何も言えなかった。



 ビズーイが『宰相』と呼ばれているのは、仇名あだなだ。

 世の中で、ドニが『僭王せんおう』と呼ばれ始めて、
「ドニが王様なら、ビズーイは『宰相』だ」
 仲間たちが、ふざけて呼び始めたのだ。


 ドニは、クウィム王国の商店の倉庫で、いっしょに働いていた仲間だった。
 学校を出て、16歳から働いていたビズーイは、ドニの年下の先輩だった。


 その頃から、ドニは「幼なじみが、故郷の王国の王太子で、もう王様になっちゃってるかも。」と言っていた。
 ビズーイは、全く信じていなかった。


 クウィム王国では、国王や王妃や王太子は、新年に宮殿の高く遠いバルコニーにお出ましになるのを見上げるだけの存在だ。
 王太子が、同じ学校で勉強するとか、遊ぶとか、イタズラがバレて、いっしょに怒られるとか、有り得なかった。


 でも、本当にドニの故郷の王国の王様が、幼なじみだった。


 幼なじみに王国を奪われたショックで、ウェリスは、ひどく落ち込んで、見るからに、ドニに対して「お前なんか、幼なじみなんじゃない」と拒絶の態度だった。
 それでも、あれこれ、ドニは世話を焼きまくっていた。
「逆効果だから、やめとけよ」
 ビズーイは言っていたのだが、半月はんつきほど前に、二人は、いきなり仲直りしていた。


 ドニに、どうやって仲直りしたのか、ビズーイが聞くと、やたらと、もじもじして、
「カニ、食って、海、見て、――…………そんだけだよ」
 でたカニのように真っ赤になってた。

 最終的には、二人の問題なので、ビズーイは、それ以上、何も聞かなかった。



「あの~、ビズーイ、」
 ずっと沈黙していたドニが、突然、言い出した。
 ビズーイは、ドニを見上げることができずに、前を向いていた。
 背が低いビズーイが見上げない限り、背が高いドニとは、目を合わせずに済む。

「………………」
 ドニは言い出したのに、沈黙してしまう。最近、こんなことが、何度も繰り返されていた。


「ウェリスを宰相にしたいんだろ」
 ビズーイは、自分から言ってしまおうとして、言えなかった。


 仇名あだなじゃない、本物の宰相。


 何の魔力もない、Domドムでもない、Subサブでもない、Normalノーマルの自分なんかより、ドニにふさわしいのは、強い魔力を持ち、Domドムで、王様で、幼なじみのウェリスだと、わかっていても。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~

Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい 俺だけに命令して欲しい 俺の全てをあげるから 俺以外を見ないで欲しい 俺だけを愛して……… Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、 でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ 俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です! Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。 こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...