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暗殺者
宰相
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扉が開いていなければ、広間に声は聞こえないだろうが、充分、離れるまで、我慢して廊下を歩いていたドニは、やっと声を上げた。
「痛えって!離して!」
腕を強く掴んで引っ張り続けるビズーイの手を、びたびた、ドニは叩く。
ビズーイは、立ち止まり、ドニの腕を離した。ドニは腕をさする。
「お前、力、強いんだからさぁ」
ビズーイが小肥りに見えるのは、実は筋肉だった。
「俺が会議を終わらせてなかったら、お前、ウェリスに5区を治めさせてただろ…」
そう言うビズーイの綿毛のような金髪を見下ろして、ドニは、とても答えられなかった。
――ビズーイが会議を終了していなければ、ウェリスを円卓に引きずり上げて、
幻惑魔術が発動してしまいそうで、ドニは続きを考えることも止めた。
ドニの沈黙に、ビズーイは、それ以上、何も言えなかった。
ビズーイが『宰相』と呼ばれているのは、仇名だ。
世の中で、ドニが『僭王』と呼ばれ始めて、
「ドニが王様なら、ビズーイは『宰相』だ」
仲間たちが、ふざけて呼び始めたのだ。
ドニは、クウィム王国の商店の倉庫で、いっしょに働いていた仲間だった。
学校を出て、16歳から働いていたビズーイは、ドニの年下の先輩だった。
その頃から、ドニは「幼なじみが、故郷の王国の王太子で、もう王様になっちゃってるかも。」と言っていた。
ビズーイは、全く信じていなかった。
クウィム王国では、国王や王妃や王太子は、新年に宮殿の高く遠いバルコニーにお出ましになるのを見上げるだけの存在だ。
王太子が、同じ学校で勉強するとか、遊ぶとか、イタズラがバレて、いっしょに怒られるとか、有り得なかった。
でも、本当にドニの故郷の王国の王様が、幼なじみだった。
幼なじみに王国を奪われたショックで、ウェリスは、ひどく落ち込んで、見るからに、ドニに対して「お前なんか、幼なじみなんじゃない」と拒絶の態度だった。
それでも、あれこれ、ドニは世話を焼きまくっていた。
「逆効果だから、やめとけよ」
ビズーイは言っていたのだが、半月ほど前に、二人は、いきなり仲直りしていた。
ドニに、どうやって仲直りしたのか、ビズーイが聞くと、やたらと、もじもじして、
「カニ、食って、海、見て、――…………そんだけだよ」
茹でたカニのように真っ赤になってた。
最終的には、二人の問題なので、ビズーイは、それ以上、何も聞かなかった。
「あの~、ビズーイ、」
ずっと沈黙していたドニが、突然、言い出した。
ビズーイは、ドニを見上げることができずに、前を向いていた。
背が低いビズーイが見上げない限り、背が高いドニとは、目を合わせずに済む。
「………………」
ドニは言い出したのに、沈黙してしまう。最近、こんなことが、何度も繰り返されていた。
「ウェリスを宰相にしたいんだろ」
ビズーイは、自分から言ってしまおうとして、言えなかった。
仇名じゃない、本物の宰相。
何の魔力もない、Domでもない、Subでもない、Normalの自分なんかより、ドニにふさわしいのは、強い魔力を持ち、Domで、王様で、幼なじみのウェリスだと、わかっていても。
「痛えって!離して!」
腕を強く掴んで引っ張り続けるビズーイの手を、びたびた、ドニは叩く。
ビズーイは、立ち止まり、ドニの腕を離した。ドニは腕をさする。
「お前、力、強いんだからさぁ」
ビズーイが小肥りに見えるのは、実は筋肉だった。
「俺が会議を終わらせてなかったら、お前、ウェリスに5区を治めさせてただろ…」
そう言うビズーイの綿毛のような金髪を見下ろして、ドニは、とても答えられなかった。
――ビズーイが会議を終了していなければ、ウェリスを円卓に引きずり上げて、
幻惑魔術が発動してしまいそうで、ドニは続きを考えることも止めた。
ドニの沈黙に、ビズーイは、それ以上、何も言えなかった。
ビズーイが『宰相』と呼ばれているのは、仇名だ。
世の中で、ドニが『僭王』と呼ばれ始めて、
「ドニが王様なら、ビズーイは『宰相』だ」
仲間たちが、ふざけて呼び始めたのだ。
ドニは、クウィム王国の商店の倉庫で、いっしょに働いていた仲間だった。
学校を出て、16歳から働いていたビズーイは、ドニの年下の先輩だった。
その頃から、ドニは「幼なじみが、故郷の王国の王太子で、もう王様になっちゃってるかも。」と言っていた。
ビズーイは、全く信じていなかった。
クウィム王国では、国王や王妃や王太子は、新年に宮殿の高く遠いバルコニーにお出ましになるのを見上げるだけの存在だ。
王太子が、同じ学校で勉強するとか、遊ぶとか、イタズラがバレて、いっしょに怒られるとか、有り得なかった。
でも、本当にドニの故郷の王国の王様が、幼なじみだった。
幼なじみに王国を奪われたショックで、ウェリスは、ひどく落ち込んで、見るからに、ドニに対して「お前なんか、幼なじみなんじゃない」と拒絶の態度だった。
それでも、あれこれ、ドニは世話を焼きまくっていた。
「逆効果だから、やめとけよ」
ビズーイは言っていたのだが、半月ほど前に、二人は、いきなり仲直りしていた。
ドニに、どうやって仲直りしたのか、ビズーイが聞くと、やたらと、もじもじして、
「カニ、食って、海、見て、――…………そんだけだよ」
茹でたカニのように真っ赤になってた。
最終的には、二人の問題なので、ビズーイは、それ以上、何も聞かなかった。
「あの~、ビズーイ、」
ずっと沈黙していたドニが、突然、言い出した。
ビズーイは、ドニを見上げることができずに、前を向いていた。
背が低いビズーイが見上げない限り、背が高いドニとは、目を合わせずに済む。
「………………」
ドニは言い出したのに、沈黙してしまう。最近、こんなことが、何度も繰り返されていた。
「ウェリスを宰相にしたいんだろ」
ビズーイは、自分から言ってしまおうとして、言えなかった。
仇名じゃない、本物の宰相。
何の魔力もない、Domでもない、Subでもない、Normalの自分なんかより、ドニにふさわしいのは、強い魔力を持ち、Domで、王様で、幼なじみのウェリスだと、わかっていても。
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