亡国の王、幼なじみDomと癒され再会ラブ

切羽未依

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暗殺者

権謀術数

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 お互い、言いたいことを言えないまま、向かい合って、沈黙していたビズーイとドニは、石の床を駆けて来る足音の方を見た。

 緋色の正装で、銀髪を揺らし、透き通った水晶のような瞳を輝かせて、笑顔でウェリスが、真新しい黒いブーツで、足音もかろやかに駆けて来る。

「すごいね、ビズーイ。全部、昨日、言ってた通りだ」
 ビズーイとドニの前まで来て、ウェリスは、ないしょ話をする時の、こそこそ声で言う。


 ドニは、琥珀色の瞳を細める。
 なつかしかった。子どもの頃から、ウェリスと、こそこそ、ないしょ話をして、イタズラをして、数えられないほど、いっしょに怒られた。


「セイフに、明日の昼食、やしきに誘われた」
「何だと?!」
 ドニの回想は、ウェリスの発言に、ブチ壊された。

「本当に、ビズーイの言う通りだね。ぼくが、僭王せんおうに反抗する態度を見せれば、『必ず接触して来る』って。」
「お触り禁止!!指一本、触らせちゃダメだからね!!」
 ドニは叫ぶ。



――昨日、ビズーイは、ウェリスに、二つのことを頼んでいた。

 ひとつは、僭王ドニ宰相ビズーイが広間から出て行った後で、王たちが区割りについて、何を言っていたかを、教えて欲しい。


「そんなの、俺の『Say言え』で、済むだろ」
命令コマンドで言わせたら、『嫌だ』って言うに決まってる」
命令コマンドで言わせたら、『嫌だ』って言うに決まってるだろ」
 ドニに、ビズーイとウェリスは同時に言い返した。

 ウェリスは、声と考えが合ったことに、うれしそうに微笑んで、視線で、ビズーイに説明をゆずった。


 ウェリスは、ビズーイに対して、ドニの幼なじみであることを見せつけることもなかったし、王らしく振る舞うこともなかった。


 ウェリスの気遣きづかいに、苛立いらだちのようなものを感じてしまう自分が、ビズーイは嫌だった。


 わざわざ譲ったりしないで、バカにした態度で、えらそうに説明すればいいのに。



命令コマンドだと、本当の気持ちを言ってしまうんだろ。本当の気持ちじゃなく、表向き、どういうことを言うか、知りたいんだよ」
 ビズーイは苛立ちを無表情の下に押し込めて、説明した。



「ビズーイが言ってた通り、3区と4区は、文句は言ってなかった」
 ウェリスは、昨日、ビズーイに言われた通り、報告してくれる。


 3区と4区にまとめた小国は、僭王の軍に対抗するため、それぞれ同盟を結んだ国々だった。
 しかし、ビズーイが、文句を言わないと予想した理由は、同盟を結んでいたからではない。


「でも、区割りのことだけじゃなく、何にでも、うなずくだけだよね…」
 ウェリスが報告に、感想を付け足す。



 どちらの同盟も、僭王の軍より、魔術師も兵も圧倒的な数がありながら、各国の連携れんけいが全くなく、まとめて征服される結果に終わった。
 連携が全くなかった理由を、ビズーイは、各国の王が自分勝手な指揮をしたせいだと思っていた。
 しかし、王たちと会って、わかった。――誰も、指揮について自分の意見を言わなかったからだ。
 同じように、区割りについても、王たちが自分の意見を言わないことは、まちがいなかった。



「ビズーイの言った通り、セイフが、あれこれ、文句、言って来るから、ぼく、おかしくて、思わず笑っちゃった」
 ウェリスは思い出して、笑ってしまう。


 多額の税金をむしり取っていた港と商店や倉庫が立ち並ぶ区域を、王都として、クウィム王国から、削り取られたのだ。
 直接、文句を言うのではなく、その区域を削り取るために、王都が不格好ぶかっこうな横に延びたかたちになったことに、セイフ王が文句を言って来るとは、ビズーイも予想できなかったが。


 ウェリスの、きらきら、透き通った水晶のような瞳に、ビズーイは深緑の瞳を覗き込まれた。
「笑っちゃったの、ごまかしたけど…だいじょうぶだったかな?ヘンじゃなかった?」
「だいじょうぶでしょう」
 ビズーイは、ウェリスを見返していても、瞳を合わせてはいなかった。



 あの笑顔が、あれこれ文句を言い続けるセイフのものだった円卓の支配を、一瞬で奪い取ったのだ。
 Normalノーマルであるビズーイでさえ、円卓の支配が奪い取られた瞬間、ぞわっと、全身に鳥肌が立った。



「ぼくの『僭王に反抗する態度』は、どうだった?」
 一番、ビズーイが聞かれたくないことを、ウェリスが聞いて来た。



 昨日、ビズーイがウェリスに頼んだ、もうひとつは、僭王に反抗する態度を取って欲しい。
 そうすれば、まだ僭王に反抗心を持つ王が、接触して来る。


「すご~い!!本で読んだみたい。権謀術数けんぼうじゅっすうだ。」
 はしゃぐウェリスの方に、顔を向けていてもビズーイは、視線を逸らしていた。


 権力争いを「本で読んだみたい」と言うのは、他人をだますことも、疑うこともなく、今まで生きて来たからだ。


「俺が『王にふさわしくない』とか、直接的なのは、無しな…」
 ドニが、ぼそぼそ、言うのを聞いて、ビズーイとウェリスは、吹き出してしまった。



「『僭王に反抗する態度』、一生懸命、考えたんだけど…やっぱり、ダメだった?」
 ウェリスが、もう一度、聞いた。

 ウェリスが、自分に向かって聞いていると、ビズーイは、わかっていた。
 けれど、「ウェリスは、ドニに聞いているのだ」と自分に言い聞かせて、ビズーイは黙っていた。ドニが、何か答えればいいと思っていた。


 ビズーイは答えたくなかった。
 ウェリスの『反抗する態度』は、カレンダ王国の弱点を的確に言い当てていた。
 武力で、国を征服することはできるが、国を治めることはできない。


 ドニは、ウェリスがビズーイに聞いているのに、自分が答えたら、怒られると思ったので、黙っていた。


 ウェリスにもう一度、聞かれて、ビズーイは答えるしかなかった。弱点を言い当てていたことには、触れずに。
「よかったですよ。セイフお」
『王』と言いかけてしまった口を、閉じ合わせた。27年間、クウィム王国で生きて来て、敬称を付けることが、当たり前すぎた。
「誘われたのですから」

「他の男に誘われて、うきうきしてるの、ムカつく~」
 ドニが石の床の上、地団駄を踏む。
滋養じようのある物、食べさせてくれるって。何かなあ」
 うきうき、ウェリスが言う。


 他の国から来たドニとウェリスは、知らない。
 Domドムであるクウィム王国のセイフ王は、プレイの相手として、Subサブの男性を好んでいる、らしい。という噂があることを。



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