亡国の王、幼なじみDomと癒され再会ラブ

切羽未依

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暗殺者

探り合い

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 セイフのやしきからの迎えの馬車を、ウェリスは降りた。

 タートルネックの薄紅のシフォンシャツ、細身の黒いズボンに、ブーツ。


 海の前に、セイフのやしきは、横に長く建っていた。
 なめらかな白壁しらかべ屋根やねには濃淡の異なる茶色のかわら細々こまごまと敷き詰められた平屋ひらや


 壁は石積みが剥き出しのまま、石の床に絨毯じゅうたんも敷いていない、王城とは大違いの、かわいらしい家を、ウェリスは見渡す。


――視線を感じた。


 透視魔術に気付いたあかしに、ウェリスは「視線」と目を合わせた。

 多少は、魔術が使えることは見せておいた方がいいだろう。


 ウェリスの国では、魔力を持つ者がほとんどだが、クウィム王国は、魔力を持つのは貴族だけだと、ビズーイから聞いた。貴族でも、魔力を持たずに生まれると、「平民」というものに落とされるそうだ。


 視線を合わせたまま、肌をまさぐられる感覚があった。


 解析かいせき魔術だ。


 僭王せんおうが、ウェリスに、何か魔術を仕掛けていないかと、探っているのだ。
 ウェリスは解析魔術に気付いた証に、唇を微かに歪めて、不快を示した。


 どんな魔術が仕掛けられているのか、解析する魔術は、相手に気付かれることなく、発動しなければ、意味がない。相手に魔術を解析されていると気付かれれば、すぐさま対抗する魔術を発動されてしまうからだ。

 解析魔術を「くすぐったい」とドニが感じるのは、実は、稀有けうな能力だった。

 ドニのように、はっきりとした感覚ではないが、ウェリスも、何となく感じることはできる。
 しかし、今は、わざと、ウェリスの肌に感じられるように、解析魔術を発動しているように思われた。


 くにっ、と、解析魔術が、を押し開いた。

 ! ウェリスは、喉の奥に、声を押しとどめた。


――この男は、男の抱き方を知っている。


 はっ、と息を吐き、ウェリスは、視線に向かって、笑ってみせる。

「そんなところまで開いて、確かめずにはいられないほど、僭王をおそれているのですか?」

 解析魔術が消え失せた。









 空間移動魔術でセイフは、ウェリスの前に現れた。
 麻のシャツにズボン、サンダルという、支度前したくまえに慌てて、出て来たようだった。
 ゆるやかに波打つ長い赤毛は、無造作むぞうさに、ひとつに束ねている。

僭王せんおうは、あなたの体の中にだって、恥知らずな狡猾こうかつな仕掛けを隠しかねない」
 ゆったりと、嘲笑を含んだ低い声で言う。


 解析魔術が消えてから、空間移動魔術で現れるまでの時間の長さで、セイフの魔力の強さを、ウェリスははかっていた。

 早くはなかった。魔力が弱いと見せかけるために、わざと空間移動魔術の発動を遅らせた可能性もあるけれど。


「僭王のせいで、あなたに不快な思いをさせてしまった。お許しください」
 セイフは、ウェリスの肩を抱いた。そして、邸の扉を開いた、もちろん手ではなく、魔術で。
「さあ、どうぞ」

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