32 / 34
暗殺者
告白
しおりを挟む
ドニが魔術を使う時に、ビズーイは、いつも付いて行くことはなかった。
魔力がない自分は役立たずだからだ。
だから、セイフを邸に蟄居させるドニたちに付いて行かなくても、何とも思われていない。
この間に、ビズーイは消えてしまうつもりだった。
ビズーイは、広間から外へ出る扉を必死に押し開けようとしていた。
「ご都合主義な封印魔術だなあ。跳ね返されるかと思ったら、入れちゃった」
つぶやきに、ビズーイは振り返った。
緋色の正装のウェリスが、円卓の前、立っていた。
花は、誰からも愛され、褒め称えられ、大切にしてもらえる。
雑草は、誰の目にも止まらず、名も与えられず、毎日、踏み付けにされていることさえ、気付いてもらえない。
ビズーイは開かない扉に、ぐったり、もたれると、ウェリスを見つめて言った。
「君は、美しい」
「えっ!どうしたの?いきなり。」
美しい水晶のような透き通った瞳を見開き、ウェリスは驚く。
ビズーイは、厚い唇の口角を、ひらめかせて笑った。
「俺は、カレンダ王国の建国王をかばって死んで、英雄として歴史に名が刻まれるはずだった」
どうしてビズーイが本物の短剣を、自分に渡したのか、ウェリスは知らされて、どうして刃が消去魔術で消されたのか、わかった。
「セイフも、排除できる。やっぱり、あんたが、自分の国を奪われたことを恨んでて、本物の短剣にすり替えたんじゃないかって、ちょっとでも、ドニに疑わせることもできるかもしれない。――素晴らしい権謀術数だろ?」
ビズーイの深緑の瞳が、怒りに満ち満ちる。
「なのに!どうして助けたんだよ?!」
「どんなに、ちゃんとした理由があったって、自殺なんかして欲しくないからだよ」
ビズーイに、ウェリスは即答した。
「もう、生きてる理由なんかないんだよ!!」
「いきなり、何、言ってるんだよ?何があったの?」
吐き捨てるビズーイに、ウェリスは駆け寄る。
「お前のせいだ!!」
ビズーイに怒鳴られて、ウェリスの足は止まった。
何にもわかっていない、悲しい表情のウェリスに、ビズーイは苛立つ。
「ドニは、あんたを宰相にするつもりだ」
さらさらと、美しく銀髪を揺らして、首を横に振り、ウェリスは否定する。
「ドニは、そんなことしないよ」
「何度も、ぼくに言いかけてる」
「そんなこと……――」
ウェリスは、言葉に詰まり、うつむいて、そして、顔を上げた。
「もし、ドニがそんなことしようとしてるなら、命令されたって、ぼくは断る」
ビズーイは、せせら笑って、ウェリスに聞き返した。
「俺のためか?俺に気を遣って?」
「ちがうよ。カレンダ王国は、君たちが創った国だもの。――ぼくは、何にもしてない」
最後に付け足した言葉を言う時に、ウェリスは、声が震えてしまった。
「それでも、ドニは」
言いかけたビズーイが、突然、ぐらりと後ろへと倒れ込んで、ウェリスは手を伸ばした。
「ぅおっと。ビズーイ」
外から扉を引き開けたドニは、扉に背中を押し付けるようにして、やっと立っていたビズーイが後ろ向きに倒れ込そうになったのを、片腕に抱えた。
「やっぱり気になって……」
ビズーイは、心配顔のドニの黒い瞳を見上げ、胸に手をついて、押しのけ、自分で立った。
「短剣、やっぱり本物じゃなかったよ。壊れて、刃が出なくなっちゃっただけ」
ウェリスは言った。
「そうか……」
ドニは安心した顔になって、ビズーイの頭を見下ろした。そして、そっぽを向いた。
「あのぉ~、こんな時だけど、ビズーイ、………………」
ドニは、そっぽを向いて、言い出して、結局、沈黙した。
ウェリスは、腕組みをした。
「今までも、これからも、カレンダ王国の宰相は、ビズーイだよな?」
聞くと、ドニは、ウェリスを見て、きょとんとして、うなずいた。
「うん。そうだよ。何、突然、言ってんの?ウェリス」
「今、ビズーイに、何か、言いかけて、やめたよね?何だよ?ドニ。」
「あ~…それは、う~ん、……………」
ウェリスに聞かれても、ドニは、もごもご、言って、結局、沈黙してしまう。
「Say」
ウェリスは、ドニに命令した。
ウェリスの命令に、ドニは、ブーツの踵を巡らせて、ビズーイと、真っすぐに向かい合うと、言った。
「俺っ、ウェリスと、お付き合いしてますっ!!」
「お前、ビズーイに言ってなかったのか?!」
ウェリスは、今さら宣言されると、恥ずかしすぎて、顔を覆って、背中を向けてしまった。
「お付き合いって……」
呆然とビズーイは、ドニを見上げて、聞き返した。
「幼なじみじゃなく、恋人になりましたっ!」
茹で上がったカニのような真っ赤っかな顔で、ドニは答えた。
ビズーイは笑い出した。――それは、やがて泣き声に変わった。
魔力がない自分は役立たずだからだ。
だから、セイフを邸に蟄居させるドニたちに付いて行かなくても、何とも思われていない。
この間に、ビズーイは消えてしまうつもりだった。
ビズーイは、広間から外へ出る扉を必死に押し開けようとしていた。
「ご都合主義な封印魔術だなあ。跳ね返されるかと思ったら、入れちゃった」
つぶやきに、ビズーイは振り返った。
緋色の正装のウェリスが、円卓の前、立っていた。
花は、誰からも愛され、褒め称えられ、大切にしてもらえる。
雑草は、誰の目にも止まらず、名も与えられず、毎日、踏み付けにされていることさえ、気付いてもらえない。
ビズーイは開かない扉に、ぐったり、もたれると、ウェリスを見つめて言った。
「君は、美しい」
「えっ!どうしたの?いきなり。」
美しい水晶のような透き通った瞳を見開き、ウェリスは驚く。
ビズーイは、厚い唇の口角を、ひらめかせて笑った。
「俺は、カレンダ王国の建国王をかばって死んで、英雄として歴史に名が刻まれるはずだった」
どうしてビズーイが本物の短剣を、自分に渡したのか、ウェリスは知らされて、どうして刃が消去魔術で消されたのか、わかった。
「セイフも、排除できる。やっぱり、あんたが、自分の国を奪われたことを恨んでて、本物の短剣にすり替えたんじゃないかって、ちょっとでも、ドニに疑わせることもできるかもしれない。――素晴らしい権謀術数だろ?」
ビズーイの深緑の瞳が、怒りに満ち満ちる。
「なのに!どうして助けたんだよ?!」
「どんなに、ちゃんとした理由があったって、自殺なんかして欲しくないからだよ」
ビズーイに、ウェリスは即答した。
「もう、生きてる理由なんかないんだよ!!」
「いきなり、何、言ってるんだよ?何があったの?」
吐き捨てるビズーイに、ウェリスは駆け寄る。
「お前のせいだ!!」
ビズーイに怒鳴られて、ウェリスの足は止まった。
何にもわかっていない、悲しい表情のウェリスに、ビズーイは苛立つ。
「ドニは、あんたを宰相にするつもりだ」
さらさらと、美しく銀髪を揺らして、首を横に振り、ウェリスは否定する。
「ドニは、そんなことしないよ」
「何度も、ぼくに言いかけてる」
「そんなこと……――」
ウェリスは、言葉に詰まり、うつむいて、そして、顔を上げた。
「もし、ドニがそんなことしようとしてるなら、命令されたって、ぼくは断る」
ビズーイは、せせら笑って、ウェリスに聞き返した。
「俺のためか?俺に気を遣って?」
「ちがうよ。カレンダ王国は、君たちが創った国だもの。――ぼくは、何にもしてない」
最後に付け足した言葉を言う時に、ウェリスは、声が震えてしまった。
「それでも、ドニは」
言いかけたビズーイが、突然、ぐらりと後ろへと倒れ込んで、ウェリスは手を伸ばした。
「ぅおっと。ビズーイ」
外から扉を引き開けたドニは、扉に背中を押し付けるようにして、やっと立っていたビズーイが後ろ向きに倒れ込そうになったのを、片腕に抱えた。
「やっぱり気になって……」
ビズーイは、心配顔のドニの黒い瞳を見上げ、胸に手をついて、押しのけ、自分で立った。
「短剣、やっぱり本物じゃなかったよ。壊れて、刃が出なくなっちゃっただけ」
ウェリスは言った。
「そうか……」
ドニは安心した顔になって、ビズーイの頭を見下ろした。そして、そっぽを向いた。
「あのぉ~、こんな時だけど、ビズーイ、………………」
ドニは、そっぽを向いて、言い出して、結局、沈黙した。
ウェリスは、腕組みをした。
「今までも、これからも、カレンダ王国の宰相は、ビズーイだよな?」
聞くと、ドニは、ウェリスを見て、きょとんとして、うなずいた。
「うん。そうだよ。何、突然、言ってんの?ウェリス」
「今、ビズーイに、何か、言いかけて、やめたよね?何だよ?ドニ。」
「あ~…それは、う~ん、……………」
ウェリスに聞かれても、ドニは、もごもご、言って、結局、沈黙してしまう。
「Say」
ウェリスは、ドニに命令した。
ウェリスの命令に、ドニは、ブーツの踵を巡らせて、ビズーイと、真っすぐに向かい合うと、言った。
「俺っ、ウェリスと、お付き合いしてますっ!!」
「お前、ビズーイに言ってなかったのか?!」
ウェリスは、今さら宣言されると、恥ずかしすぎて、顔を覆って、背中を向けてしまった。
「お付き合いって……」
呆然とビズーイは、ドニを見上げて、聞き返した。
「幼なじみじゃなく、恋人になりましたっ!」
茹で上がったカニのような真っ赤っかな顔で、ドニは答えた。
ビズーイは笑い出した。――それは、やがて泣き声に変わった。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる