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18章 大切なひと(前編)
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しおりを挟む‥ハァ―‥‥‥
なんのごめんだよっ‥//‥
例え消しても耳に残る──
晴樹はベッドに腰掛け自分の頭をクシャクシャに掻き乱した
どうしようもない苛立ちと苦しい胸の疼きに成すすべもない‥‥
晴樹は再びベッドに戻るとすがりつくように女を抱きしめた──
「晴樹?
どうしたの‥‥///‥」
普段の俺様的な態度の晴樹とどこか違う。
そんな晴樹の弱々しさになんとなく母性をくすぐられ、女は晴樹を優しく抱きしめていた──
苗からメールの受信もたくさんあったが開く気にもなれなかった‥‥‥
苗の名前を見ただけで気がめいる‥
閉じた携帯はもう光らない──
晴樹は携帯の電源を切ってジーンズにしまっていた‥‥
「リエ‥‥‥」
「なに?晴樹‥//‥」
普段、お前でしか呼ばない晴樹に名前を囁かれ女は浮かれ始めていた
1日に違う女二人抱いても気持ちは埋まらない‥
苗のごめんの言葉が頭に残る‥‥
「リエ‥」
「‥//‥‥ァン‥──!」
「‥‥リエッ──!」
晴樹は頭に残る苗の声を掻き消すように、女の名前を囁き再び覆い被さった…
・
「ねぇ晴樹?
今日は学校どうする?」
「ぅ‥ん‥
休む‥‥今、何時?」
「7時ちょい過ぎ‥」
リエに起こされ時間を確認した晴樹は携帯で村井に連絡を入れた‥
「もしもし‥村井?今日、学校休むから適当に理由つけて連絡いれてて」
『わかりました‥
今、どちらに?』
「ダチんとこ居るから‥じゃあ頼むな」
―プツ―ツ―
晴樹は用件だけ伝えると携帯を切った‥
‥また、不良に逆戻りかな?
村井は切れた携帯を手にしてそう思っていた。
そして、その日の放課後‥
夏休みに入ると直ぐに合宿が始まることもあり、今日の水泳の部活は合宿の為の説明会のみで早目に終わっていた‥
「ごめん!苗!待たせたな」
「だいじょびだょ!!」
苗と夏目は今日も一緒に帰る約束をしていたようだ‥
そして、携帯を握っていた苗の手に夏目は気づく──
「あれ‥‥いつから携帯持ってたんだ?」
「ん?
あぁコレ?
この前、図書館に勉強行った日に兄さんがくれたんだょ!」
「先輩が?‥‥へぇ──」
・
夏目はそう呟き何か言いた気に苗を見る‥
「兄さんがね‥
由美と家族以外番号教えちゃダメだってゆーんだょ…
月の支払いも全部兄さん持ちだからさ‥‥ごみんね。
あ、でもメールだったらパケ放題だからお金かかんないしいいと思う!!」
‥いや、苗‥‥‥
お金の問題じゃないと思うけど…
晴樹の気持ちも解らなくはないが、それでも携帯でやり取りできれば夏目も嬉しい‥‥
「苗‥‥
だったらさ‥‥携帯だって俺からかければ通話料金かかんねぇじゃん‥//‥」
「‥あ、それもそだねっ」
夏目の言葉にのせられて、さっそく苗は携番とメアドを夏目と交換した──
‥うは、メル友が増えたっ!
苗はウキウキして増えたアドレスを見つめている。
夏目は彼氏のはずなのにメル友扱いだった。
そしてニコニコしながら帰る高校生カップルを後ろからゆっくりと付け狙う黒塗りのベンツに二人は気づかずにいた‥‥‥
夏目は苗とお喋りしながら苗を見つめた。
‥どうやって夏休みのデートをきりだそう……
夏目はSummerStory第2だんを実行する
「‥苗‥//‥
合宿から帰ってきたらさ‥」
──バタン!!
夏目がそう言いかけた時だった──
・
後ろから忙しい足音が近づき、二人の恐もての男に口を塞がれた苗と自分に向けて銃口を構える男が一人、目の前に立ちはだかる。
「え──‥‥‥」
‥な‥ んだ‥‥
コイツら……
ゴクッ‥
夏目は銃を構えた男を前ににして反射的に両手を上げていた‥
‥苗?!‥‥
男からチラチラと視線を反らし、苗を見るとグッタリとなった苗を二人の男が手早く車の後部座席に押し込み車に乗り込む!
それを確認すると銃を向けた男は言った
「‥おいガキ!
警察に言ったらどうなるかわかってんだろぅな‥‥
鬼頭の総代に伝えろ!!
余計なことしてくれんじゃねぇってよ!!」
―バタン!!
言った男は素早く助手席に乗り車は走り去った。
‥鬼頭‥‥‥
‥なんだよそれ?‥
苗──!?
意味の解らない伝言だけを残し立ち去ったヤクザ風の男の言葉が頭の中で繰り返される。
夏目はその場で我に返ると元の道を全力で走り学校へ向かった──
頭の中は混乱していた。
‥鬼頭つったらテレビでよく耳にする極道一家じゃねぇかよ!!?
そいつらになんで苗が!?
──…っ…ちくしょーー!!
・
ダダダダ──ッ
「拐われたーーーーッ!!
はぁはぁ‥グッ‥はぁッ‥」
「‥‥‥
ど、どうしたの夏目クン」
ドアを壊す勢いで開けて、いきなり教員室に飛び込んで来た夏目に向かって残っていた教師達が驚きながら問掛けた
「拐われた‥って
どういうことだね?」
夏目は息も絶え絶えに、さっき目の前で起こったことを叫びながら必死に訴えた。
「‥なに‥それは本当か!!?──…っ急いで理事長に報告を!!」
教員室の中が慌ただしくなる。そして、連絡を受けた理事長は頭を抱え考えていた‥
‥むぅ‥‥‥
わしの苗ちゃんを……
‥鬼頭の跡目が確か、晴樹の友達だったはずだ‥
じゃあ、それ絡みで苗ちゃんは拐われてしまったと言うことか?
…ムムゥ〰晴樹のアホクソバカは何をやっとるんだ!!
秘蔵っ子の晴樹を酷く罵りながらお爺は晴樹の携帯に連絡を入れた。
―プツ
[お掛けになった番号は電源が‥‥]
「──‥ぬぅぅっ…」
お爺は怒りで震えながら別ところに電話をかけた。
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