ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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19章 大切なひと(後編)

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「‥‥なえ…」



晴樹が苗からのメールを眺めているとセンター預かりのマークが片隅で点滅している。



電源が切れていた為にちゃんと届かなかったメールのマークが──



晴樹は慌てて通信を行なった…



受信―7件―



その内の2件が苗からのメールだった。



晴樹は苗からだけのメールを開く‥



1通目は写メ付きのメールだった…






[題]
〔 苗と仲良し兄さん〕

〔兄さんおはょ~

じゃじゃーん!
温泉旅行の時の写メだょん

兄さんに送るって言ってて忘れてたょ、ごみんね!〕




「‥写メ…」


添付欄にアクセスすると、そこに映し出されたのは‥


明け方朝日が射す部屋の中でぐっすり眠る自分の隣に添い寝をし、そして顔をぴったりと寄せてカメラ目線にVサインを決めた苗との二人の写真だった‥





「──…っ…」

‥コイツっ‥‥‥


いつの間にっ!?






晴樹はその写メを見つめていた──

胸が疼く

嬉しくて仕方がない。


信じられない──


晴樹は速る鼓動を抑えるように緩む自分の口元を手で覆い隠す‥

でも、それもほんの一瞬のことだった──



切ない想いで胸が張り裂ける──



息苦しさと胸の痛みに晴樹は一気に顔を歪めた。



画像の中のアイツはこんなにも近く、傍にいるのにっ‥





今はッ‥






アイツは俺の傍にはいないッ!!






もちろんさっきから携帯に連絡を入れても出ない


出れる状況じゃないのもわかってるッ‥

もしかしたら二度と出ないかもしれないッ‥



二度と‥



声さえもッ‥‥‥






でも、もしかしたら‥‥





晴樹は絶望を感じながらも一縷(いちる)の望みに想いを託す──




「よし、晴樹、行くぞ‥」


準備を終えた貴志と数人の組員達に促され、晴樹は重い腰を上げ車に乗り込んだ──



車は、最初の電話で取引き場所に指定されていた組員の支部に向かっていた。





そこにいなければ‥‥‥


もう苗は何処にもいない‥



役に立たなきゃゴミ同然‥‥‥


ヤツラは人の命なんてなんとも思っちゃいない‥

思ってたら‥極道なんてやってられないから‥‥‥


隣にいる貴志だってそうだ。
もし、上からの命令が下ればコイツだって俺を殺ることを拒まないだろう…




『極道がいちいち人に情けなんかかけてりゃ、自分の命が幾つあっても足んねぇって!! ハハ…』




こいつは笑いながらサラッと言って退ける──


ただ、コイツは根っからの極道一家に生まれたヤツ‥
家を出た親父サンから離れ結局、自らこの道に戻って来たくらい奇特なヤツだ‥



命なんて、とうの昔に捨てたって言い切るぐらい、いつでも覚悟が出来ている──











でも、アイツはッ‥




苗はッ‥




普通の高校生でッ




貧乏でッ




家族思いでっ‥




初めての彼氏ができたばっかりの‥‥‥普通の‥







俺のッ‥













俺の大好きな‥女の子ッ‥だったのにッ‥




俺が巻きこんだ!!




俺と知り合わなきゃッ‥





こんなことにはッ‥













そして‥

俺もお前と知り合わなかったら‥‥






こんな思いもっ‥

──…クソッ!







自分の気持ちのやり場に戸惑い強く噛み締めた唇からは少し血の味がしてくる‥


そして、晴樹は最後の苗からのメール二通目にカーソルを合わせた──

メールを開封した途端に晴樹の口から嗚咽が漏れる。



「‥フッ‥‥ッ‥」


クッ‥なえッ──!





逢いたいッ‥!!



逢って‥っ抱きしめて‥








俺だって傍に居たかった!!








でも、お前が夏目を選んだんだろッ‥






お前がッ‥俺よりも夏目をッ──









‥晴樹、

悪かったな‥俺のせいだ…


開いたままの携帯を握り締め、片手で顔半分を覆いながら肩を震わせ嗚咽する晴樹に貴志は心で詫びた──



こんな時に下手に言葉はかけない方がいい‥


貴志はそう思っていた‥





瞼を覆い隠した晴樹の手の下からは幾つもの涙の雫が伝い落ちる──





“兄さん‥

苗の傍にいて…

苗は兄さんいないとダメだょ…


後でまた、電話するから今度はちゃんと出てね。”




苗が今日の放課後に部活の夏目を待ちながら教室で晴樹宛に打った最後のメールだった──






苗ッ──…


電話はどうしたッ?‥


後でかけるんだろッ‥




今度はッ‥






今度はちゃんと出てやるからッ‥




頼むから‥‥‥









今度はちゃんと待ってるから‥っ‥‥


電源だってもう切らない──…



声が聞きたくて‥
いつも繋がっていたい‥

そう思って苗に渡した携帯だったのに‥










今はどんなに、こっちからかけても苗は携帯に出てはくれなかった──




「晴樹‥ついたぜ


ココがヤツラのシマだ‥


龍極会系 藤代組 
(リュウゴク  フジシロ)

幹部の青木の事務所だ。

──…無理すんなよ晴樹? 大丈夫かよお前…俺に任してくれりゃ‥」


「あぁ、大丈夫だ‥俺が一番に迎えに行ってやらなきゃ‥」


心配そうに貴志は顔を覗き込む。晴樹は目頭を強く押さえると無理矢理に涙を止め、貴志から預かり腹に仕込んだ銃を手にして車から降りた──



‥苗‥‥

迎えに来たから‥



お前が傍に居て欲しいなら‥



俺はいくらでも傍に居てやるッ!!





お前の居ない場所は俺には耐えられないから‥



お前の居る場所に俺が行くよ…






その方がずっと一緒に居られる──



「よし、行くぞ‥」


貴志の合図に他の組員達も鋭い目つきに変わり始める──

常に命掛け‥

そんな世界でしか生きていけない不器用な男達の‥

小さな戦争が始まろうとしていた──

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