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4章 恋慕

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‥なえってなに…女の名前?

リエは電話の声に聞耳を立てた‥


携帯から響いてくるのは間違いなく女の声‥‥‥



今更、晴樹の携帯に女から連絡入ったって驚くことはない‥

それよりもリエが驚いたのは‥
今まで、見たこともない表情と聞いたこともない声音で話す晴樹の応対の仕方だった―――


まったく素のままに表情をころころと変え、話し方も弾んだり不機嫌になったり慌ただしい‥


そして、着信音が鳴った時のあの表情――


リエが初めて見た冷静な晴樹の嬉しさに高揚した姿だった‥



せっかく自分の方を向いてくれたと思ったら、あの日学生の男が乗り込んできて自分を突き飛ばした‥‥


訳もわからず、その後晴樹と貴志が店を出て行きその学生の子も出て行った‥それっきり晴樹に連絡しても返事は返ってこなかった―――


そういえば‥‥あの時も学生の子が、なえ なえ!って叫んでたような気が‥‥



リエは携帯を耳に当てムキになって受け答えしている晴樹を見つめた。













「苗?
なんか周りがうるさいけど何処にいるんだ?」


『今ねぇ、駅にいるだょ!!』


「駅!?なんで!?」



『今から夜行列車で田舎に帰るからさ!
もしかしたら携帯繋がらないかもと思って

兄さん、苗が携帯取らないと怒るじゃん!
だから、一応知らせとこうって。
お土産買ってくるからね♪んじゃ。』


「ちょっと待て〰っ…
お前、自分の言いたいことだけ言って切るんじゃねぇ!!」

とに、コイツは…っ…
人がどんな想いして待ってたと思ってんだよッ


『え、なに?何かあるのかね?!』


「ぃ、いつ帰って来るんだ?」


『‥とねぇ…16日!!』


「――‥16!?」

‥何だよソレ‥まだ、8月にだって入ってねぇぞ💧

2週間以上もあるじゃねぇか!?


『ぁ‥兄さん!!もぅいい?列車来ちゃったからっ…
じゃ、お土産楽しみしててね!!』プツ―



「ツ――――――」

……っ…


晴樹の携帯からは不通の通信音だけが寂しげに響いていた


‥2‥週間?


マジかよ💧



ちょっと‥



耐えらんねぇーって‥



晴樹は額に手を当て考え込む‥


2週間はちょっと辛過ぎだろ?!

4日で限界きてんのにッ‥

クソッ!!始めから知ってりゃこんなくだらない意地なんて張らなかったのにっ…




晴樹は自分から連絡しなかった事を後悔していた‥

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