207 / 255
18章 恋の行方
4
しおりを挟むコーヒーを口にして一息つくと晴樹はやっと携帯を手にする‥
……っ…!? 苗?
苗からの着歴に驚きながら晴樹は電話を掛けた。
「もしもし?苗?
何かあったのか?」
電話を掛けてくること自体が珍しい苗からの連絡‥
晴樹は気に掛けながら問いかけるのだが・・・
『あ、兄さんっ
今ドコにいるの?』
コスプレ店で探しても見当らなかった晴樹に苗は尋ねる。
「どこって‥
今、アキバに居るけど‥」
『アキバ?苗ね、のりちゃんに兄さんの居場所訊いて“アニショット”なんて店に居るんだけどさ。
兄さん居ないんだよね?』
「アニショット!?💧
なんでまた‥
何か用があったのか俺に?‥」
‥なんでコイツは今さら‥
そう思いながらも諦めていた想いが疼き出す
自分の想いは決して通じることはないのだと、歯がゆい思いを何度とさせてくれた張本人からの電話。
もう関わらないと決めた矢先だったのに‥
押し殺した想いがむず痒く疼く
「‥なんの用だよ──」
上擦る声を抑え口を開くと晴樹は無意識の内にぶっきらぼうに聞き返していた
・
‥・・・💧
はれ‥兄さんなんだか機嫌悪い?‥‥💧
『あ、あの‥
ちょっと‥大根が・・・💧』
「大根がなんだよ?」
晴樹に返され苗は戸惑った。
正直言って用は何もない‥苗は何も考えず晴樹に会いに来たのだから…
苗は口をもごもごさせながら機嫌の悪そうな晴樹に言った
『大根が・・・💧
すごく重くて‥‥💧』
「‥‥‥💧」
‥なんだ‥買い物かよ💧?
「わかった‥
そこでちょっと待ってろ。」
晴樹はため息をつきながら携帯を切って席を立つ‥
そしてリディに苗が来てることを伝えた。
「ここに!?💧なんで!?」
「村井に居場所訊いたって💧‥とにかくちょっと行ってくる。直ぐ戻るから‥」
「ほんとに直ぐ戻って来てよっ?」
リディに言われ苦笑いを浮かべながら晴樹は地下の店に向かった
エレベーターを出て直ぐの店の隅にしゃがみ込む苗を発見する‥
‥大根が重いって・・💧
そんだけ買えば重いっつーのっ!
しゃがんでる横に大ぶりな大根の束を見て晴樹は心でツッコミながら傍に寄る
「大根のフルコースでも作るのか今日は?」
下を向いていた苗に晴樹はそう話かけていた
・
「買い物はこれで終りなんだろ?」
「‥‥」
晴樹の問いに苗は無言で返す。
「‥‥‥
なんだ、まだあるのか💧?」
「‥‥買い物は、これだけ‥‥‥」
「‥そか、
じゃあ外でタクシー拾ってやるから‥」
‥え?
タクシー!?
大根を持って前をスタスタと歩きながら言った晴樹の言葉に苗は目を見開く。
「に、‥兄さん!
兄さん車で来てないの!?」
「‥?
車だけど?‥なんでだ?」
後を追いかけ隣に並んだ苗に晴樹は反対に聞き返した。
「‥な、なんでって‥ 兄さんの車で送ってくれるんじゃないの?‥」
晴樹の歩幅に合わせ大股で息を上げながら苗は言った
「‥‥‥俺は‥
まだ、ちょっと用があるから…
タクシー代はやるから心配するな‥」
そう言って晴樹は足を止めて苗に笑いかける。
そしてふと、寂し気な目をした…
ほんとは送ってやりたい‥
アメリカに行くまでに出来るだけ一緒に居れればどんなに嬉しいか…
でも、そんなことして結局辛い思いをしなきゃならないなら‥
苗は再び歩き出した晴樹の後ろ姿を見つめていた。
・
‥まだ‥
まだ、用があるんだ‥
なんだ‥‥そ‥か。
前を行く晴樹の後を苗は足取り重くついていく‥
「兄さんも‥
大変だね…」
ボソリと背中で呟く苗を晴樹は振り返った‥
「大変って?」
「大事なお客さんだからって、学校休んでまで相手しなきゃいけないって大変だょ‥」
「‥‥‥
ん、‥まぁ大変は承知の上だしな‥
でも、そこまで気は遣わないし慣れりゃあ楽だよ。
妹だと思えば我が侭も可愛いもんだろ?」
「‥!?」
‥い、もうと‥?
可愛い‥‥?
リディのことをそう庇護する晴樹。苗はショックを露に声を詰らせていた‥
「な‥苗もっ‥」
「あぁ、ほらタクシー来た。‥ん?どうした?」
苗が必死に右脳を使い押し問答している間に晴樹はタクシーを拾っていたらしい‥
何かを言い掛けた苗だったが、止まってくれたタクシーに乗るよう促す晴樹に背中を押され、苗は大人しく車に乗り込んでいた
「あの、兄さ‥」
「あぁ、そうだ苗!‥‥」
晴樹は再び苗の言葉を遮る
「‥あ、と‥やっぱいい‥」
「‥?」
・
「ハハ‥たいしたことじゃないからいいわ、別に‥」
きょとんとする苗に晴樹は額を掻きながら苦笑いを浮かべて見せる。
遠慮しながらも何度か口を開きかけた晴樹だったが結局何かを諦めたようにため息を吐くと今度は寂し気な笑みを向けていた‥
「じゃあ、な‥」
言いたい言葉があった‥
伝えたい想いもあった‥
考えて見れば今日が最後だったのかもしれない‥
苗に会えるのは…
でも、わざわざ伝える程のことじゃない‥
俺がアメリカに行くことも、もしかしたら‥もう、日本に戻らないかもしれないことも‥
苗には関係のないことだから‥
だから‥
わざわざ伝える程のことじゃ‥
「じゃあ‥車出してください。」
晴樹は運転手にそう伝えると、車から離れた。
バタンと自動で閉められたドアの音に諦めた胸が一瞬きゅっと軋む‥
全てを締めくくられた‥
晴樹にはそんな風に感じられていた‥
諦めたくはなかった‥
でもこればっかりは‥
「‥しょうがないよな…」
クスッと悲しい笑みを溢しながら諦めの言葉を晴樹は呟く。
そして、ふと顔を上げると閉められたドア越しに自分を見つめる苗と目があった‥
・
「───‥ッ‥」
走りかけた車内から、携帯を手にして口パクで何かを言おうとしている姿が見える。
晴樹はそんな苗に頷きながら手を振っていた‥
「‥‥‥もしもし‥」
苗の乗ったタクシーを見送り晴樹は携帯を手にする。
「村井?ちょっと頼みがあるんだけど‥」
晴樹は村井に電話をかけ、何かの頼みごとをしていた…
「ただいま。‥頼みごとはどうなった?」
リディと外食を済ませ帰ってきた晴樹は早速、村井に尋ねていた。
「ああ、社用のタクシーチケットですね。直ぐにお届けして起きましたよ」
「そうか。じゃあ、もう安心だな‥
俺のしてやることはこれでなくなった‥」
「‥?‥晴樹さん?」
リビングのソファに腰を降ろし、晴樹はぽつりと呟く‥
‥買い物はタクシーがあれば出来る…
あとのことはお爺に頼めばいい‥
肘掛けについた手で頬杖つきながら晴樹は遠くを見つめていた‥
‥俺がアメリカに行っても苗が困らないようにはしてやりたい‥
ただ、こう考えてみると俺の代わりって‥誰でもいるんだな…
───…
ふっ‥なんだ、俺ってマジでたいしたことねえじゃん‥
晴樹は自分自身を嘲笑っていた…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる