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18章 恋の行方
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しおりを挟むコーヒーを口にして一息つくと晴樹はやっと携帯を手にする‥
……っ…!? 苗?
苗からの着歴に驚きながら晴樹は電話を掛けた。
「もしもし?苗?
何かあったのか?」
電話を掛けてくること自体が珍しい苗からの連絡‥
晴樹は気に掛けながら問いかけるのだが・・・
『あ、兄さんっ
今ドコにいるの?』
コスプレ店で探しても見当らなかった晴樹に苗は尋ねる。
「どこって‥
今、アキバに居るけど‥」
『アキバ?苗ね、のりちゃんに兄さんの居場所訊いて“アニショット”なんて店に居るんだけどさ。
兄さん居ないんだよね?』
「アニショット!?💧
なんでまた‥
何か用があったのか俺に?‥」
‥なんでコイツは今さら‥
そう思いながらも諦めていた想いが疼き出す
自分の想いは決して通じることはないのだと、歯がゆい思いを何度とさせてくれた張本人からの電話。
もう関わらないと決めた矢先だったのに‥
押し殺した想いがむず痒く疼く
「‥なんの用だよ──」
上擦る声を抑え口を開くと晴樹は無意識の内にぶっきらぼうに聞き返していた
・
‥・・・💧
はれ‥兄さんなんだか機嫌悪い?‥‥💧
『あ、あの‥
ちょっと‥大根が・・・💧』
「大根がなんだよ?」
晴樹に返され苗は戸惑った。
正直言って用は何もない‥苗は何も考えず晴樹に会いに来たのだから…
苗は口をもごもごさせながら機嫌の悪そうな晴樹に言った
『大根が・・・💧
すごく重くて‥‥💧』
「‥‥‥💧」
‥なんだ‥買い物かよ💧?
「わかった‥
そこでちょっと待ってろ。」
晴樹はため息をつきながら携帯を切って席を立つ‥
そしてリディに苗が来てることを伝えた。
「ここに!?💧なんで!?」
「村井に居場所訊いたって💧‥とにかくちょっと行ってくる。直ぐ戻るから‥」
「ほんとに直ぐ戻って来てよっ?」
リディに言われ苦笑いを浮かべながら晴樹は地下の店に向かった
エレベーターを出て直ぐの店の隅にしゃがみ込む苗を発見する‥
‥大根が重いって・・💧
そんだけ買えば重いっつーのっ!
しゃがんでる横に大ぶりな大根の束を見て晴樹は心でツッコミながら傍に寄る
「大根のフルコースでも作るのか今日は?」
下を向いていた苗に晴樹はそう話かけていた
・
「買い物はこれで終りなんだろ?」
「‥‥」
晴樹の問いに苗は無言で返す。
「‥‥‥
なんだ、まだあるのか💧?」
「‥‥買い物は、これだけ‥‥‥」
「‥そか、
じゃあ外でタクシー拾ってやるから‥」
‥え?
タクシー!?
大根を持って前をスタスタと歩きながら言った晴樹の言葉に苗は目を見開く。
「に、‥兄さん!
兄さん車で来てないの!?」
「‥?
車だけど?‥なんでだ?」
後を追いかけ隣に並んだ苗に晴樹は反対に聞き返した。
「‥な、なんでって‥ 兄さんの車で送ってくれるんじゃないの?‥」
晴樹の歩幅に合わせ大股で息を上げながら苗は言った
「‥‥‥俺は‥
まだ、ちょっと用があるから…
タクシー代はやるから心配するな‥」
そう言って晴樹は足を止めて苗に笑いかける。
そしてふと、寂し気な目をした…
ほんとは送ってやりたい‥
アメリカに行くまでに出来るだけ一緒に居れればどんなに嬉しいか…
でも、そんなことして結局辛い思いをしなきゃならないなら‥
苗は再び歩き出した晴樹の後ろ姿を見つめていた。
・
‥まだ‥
まだ、用があるんだ‥
なんだ‥‥そ‥か。
前を行く晴樹の後を苗は足取り重くついていく‥
「兄さんも‥
大変だね…」
ボソリと背中で呟く苗を晴樹は振り返った‥
「大変って?」
「大事なお客さんだからって、学校休んでまで相手しなきゃいけないって大変だょ‥」
「‥‥‥
ん、‥まぁ大変は承知の上だしな‥
でも、そこまで気は遣わないし慣れりゃあ楽だよ。
妹だと思えば我が侭も可愛いもんだろ?」
「‥!?」
‥い、もうと‥?
可愛い‥‥?
リディのことをそう庇護する晴樹。苗はショックを露に声を詰らせていた‥
「な‥苗もっ‥」
「あぁ、ほらタクシー来た。‥ん?どうした?」
苗が必死に右脳を使い押し問答している間に晴樹はタクシーを拾っていたらしい‥
何かを言い掛けた苗だったが、止まってくれたタクシーに乗るよう促す晴樹に背中を押され、苗は大人しく車に乗り込んでいた
「あの、兄さ‥」
「あぁ、そうだ苗!‥‥」
晴樹は再び苗の言葉を遮る
「‥あ、と‥やっぱいい‥」
「‥?」
・
「ハハ‥たいしたことじゃないからいいわ、別に‥」
きょとんとする苗に晴樹は額を掻きながら苦笑いを浮かべて見せる。
遠慮しながらも何度か口を開きかけた晴樹だったが結局何かを諦めたようにため息を吐くと今度は寂し気な笑みを向けていた‥
「じゃあ、な‥」
言いたい言葉があった‥
伝えたい想いもあった‥
考えて見れば今日が最後だったのかもしれない‥
苗に会えるのは…
でも、わざわざ伝える程のことじゃない‥
俺がアメリカに行くことも、もしかしたら‥もう、日本に戻らないかもしれないことも‥
苗には関係のないことだから‥
だから‥
わざわざ伝える程のことじゃ‥
「じゃあ‥車出してください。」
晴樹は運転手にそう伝えると、車から離れた。
バタンと自動で閉められたドアの音に諦めた胸が一瞬きゅっと軋む‥
全てを締めくくられた‥
晴樹にはそんな風に感じられていた‥
諦めたくはなかった‥
でもこればっかりは‥
「‥しょうがないよな…」
クスッと悲しい笑みを溢しながら諦めの言葉を晴樹は呟く。
そして、ふと顔を上げると閉められたドア越しに自分を見つめる苗と目があった‥
・
「───‥ッ‥」
走りかけた車内から、携帯を手にして口パクで何かを言おうとしている姿が見える。
晴樹はそんな苗に頷きながら手を振っていた‥
「‥‥‥もしもし‥」
苗の乗ったタクシーを見送り晴樹は携帯を手にする。
「村井?ちょっと頼みがあるんだけど‥」
晴樹は村井に電話をかけ、何かの頼みごとをしていた…
「ただいま。‥頼みごとはどうなった?」
リディと外食を済ませ帰ってきた晴樹は早速、村井に尋ねていた。
「ああ、社用のタクシーチケットですね。直ぐにお届けして起きましたよ」
「そうか。じゃあ、もう安心だな‥
俺のしてやることはこれでなくなった‥」
「‥?‥晴樹さん?」
リビングのソファに腰を降ろし、晴樹はぽつりと呟く‥
‥買い物はタクシーがあれば出来る…
あとのことはお爺に頼めばいい‥
肘掛けについた手で頬杖つきながら晴樹は遠くを見つめていた‥
‥俺がアメリカに行っても苗が困らないようにはしてやりたい‥
ただ、こう考えてみると俺の代わりって‥誰でもいるんだな…
───…
ふっ‥なんだ、俺ってマジでたいしたことねえじゃん‥
晴樹は自分自身を嘲笑っていた…
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