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☆*:.。. o番外編o .。.:*☆
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・
バッサリと晴樹に言い切られ、苗のクリクリ目は涙にしょぼくれた。
もう…逃げらりないなりよ…
顔を見ただけで苗の哀しい心の嘆きが聞こえてきそうだ。
「うぅっ…」
苗はうつ向き諦めの嗚咽を漏らした。
「バスタブにお湯はってくるから」
「うぅ…」
晴樹は苗の頭をぽんと撫でる。包み込む手の平はとても優しく温かい。嗚咽と共に頷きながら苗は晴樹を見送った。
大人二人がゆったりと浸かれる程のバスタブ。お湯を捻れば大きな蛇口からは勢いよくお湯が流れ出していた。
慣れない苗のためにと少しばかり照明を落とす。最新式のバスルームにはプラネタリウムの星空が浮かび上がっていた。
気合いは上々 ムードは満点 室内も満天。
「よしっ…」
呟きながら晴樹は腰の位置で小さなガッツポーズを決める。そんな晴樹の耳に大きな物音が聞こえた。
・
「……!?」
耳を向けると立て続けに何かが倒れ廊下を引きずる音がする。晴樹は慌ててバスルームから飛び出した。
まさか──!?
開けっ放しの玄関がいきなり目に飛び込む。家の中を駆けた晴樹は空になった寝室を前にして唖然としていた。
誰かさんが蹴っ躓いた証拠に寝室の戸口に置いてあった晴樹のトランクケースが入り口を塞ぐように倒れている…
「苗ぇ──っ!」
大惨事だ…
新婚初夜に奥さんに逃げられるってありかよ!?
呆然と立ち尽くす。吠えた晴樹の耳に、
「ピピ──…お湯はり完了しました」
そんなデジタル音声が聞こえてきていた…
・
「あの…オポンチ娘っ」
晴樹は携帯1つだけ握り締めるとマンションから駆け出した。
長い足が回転率を上げて動き出す。晴樹はマンションの直ぐ隣の木造二階建て、築32年の一軒家へ豪速球で向かった。
「すみませんっ!」
相変わらず立て付けの悪い引戸の玄関をガタガタと叩く。ここにはインターホンなんて洒落た呼鈴は見当たらない。家の者を呼ぶには夜だろうが外から叫ぶしかなかった。
「すみませんっ!俺ですっ…」
呼び掛ける声に少しばかりの焦りが窺える…
間を置いて引戸の磨りガラス越しに同じ背丈の小さな人影が三つ映っていた。
「兄ちゃんどうしたんだ?」
ガタガタと音を立てて開いた玄関から三つ子が声を揃えて尋ね返した。
「あの…めちゃめちゃ聞きにくいことなんだけどな…」
「………」
「苗…が、帰って来てたりしないか…」
気まずい表情で苦笑う。
「なんだ…新婚早々、痴話喧嘩か?」
「いや…ケンカではないんだけど…はは…」
はっきり言ってそれよりもタチが悪い。笑いながら自分自身が情けなく思えてきた。
・
「ここには来てないぜ?」
「来てない…か…」
たくっ…どこいったんだあのオポンチはっ!?
晴樹は眉間に皺を寄せて顎に手を当て考え込む。
「姉ちゃんもしかして逃げたのか?」
「え?…っ…いや、あ…」
毎回鋭い突っ込みをくれる。そんな空の言葉に晴樹は一瞬あたふたと口隠っていた。
「なんで逃げるんだ?」
鈍い陸が空に聞いていた。
「母ちゃんが気にしてたから…“まさか逃げやしないだろうねあの子は…”って」
「まじで!?」
反対に晴樹が目を見開く。
…苗のおふくろさんには読まれてたワケか…
情けない笑いが込み上げて来ていた。
「いつ逃げたんだ?」
「いつ…って、つい今さっき…」
「姉ちゃん足遅いぞ。兄ちゃんの足で追い付けないはずないじゃん!」
「そうは言っても…」
実際、辺りには影も形も見当たらない…
「なら確実にあそこだな……」
三つ子は声を揃えて怪しんだ。
「あそこ…って」
どこだよ!?
三つ子達の意味深な笑みが気に掛かる──
・
平静を装いながらも狼狽える晴樹を三匹のホームズ達はニヤニヤと見上げていた…
「なあ苗、来たなら荷ほどき手伝ってよ」
「……う…苗は引っ越し手伝いに来た訳じゃないだょ…」
段ボールに囲まれた隅でプチプチと音がする。
苗はパソコンを包んでいたビニールの保護クッションの粒をプチプチと潰しながら口を尖らせていた。
「引っ越しの手伝いじゃなかったら何しに来たんだよ」
すらりとした足で荷物の山を避けながら片付けていく。部屋の片隅で段ボールに埋もれ床に踞るクリボウの様な後ろ姿の苗を見付けると、悟は思わず吹き出していた。
「だけど…まさか新婚初夜で逃げてくるとはね…」
呆れてしまうがそんなところがさすが苗だと手放しで讃えたくなってしまう。
一体、何を思って逃げてきたのか…
「今日はまさか戻らないつもり?」
「…う……」
悟の問い掛けに苗は蹲ったまま一文字だけで唸る。
すこしばかり荷物が片付いた部屋で先に組み立てて貰ったベットに腰掛けると悟は苗の後ろから語り掛けた。
バッサリと晴樹に言い切られ、苗のクリクリ目は涙にしょぼくれた。
もう…逃げらりないなりよ…
顔を見ただけで苗の哀しい心の嘆きが聞こえてきそうだ。
「うぅっ…」
苗はうつ向き諦めの嗚咽を漏らした。
「バスタブにお湯はってくるから」
「うぅ…」
晴樹は苗の頭をぽんと撫でる。包み込む手の平はとても優しく温かい。嗚咽と共に頷きながら苗は晴樹を見送った。
大人二人がゆったりと浸かれる程のバスタブ。お湯を捻れば大きな蛇口からは勢いよくお湯が流れ出していた。
慣れない苗のためにと少しばかり照明を落とす。最新式のバスルームにはプラネタリウムの星空が浮かび上がっていた。
気合いは上々 ムードは満点 室内も満天。
「よしっ…」
呟きながら晴樹は腰の位置で小さなガッツポーズを決める。そんな晴樹の耳に大きな物音が聞こえた。
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「……!?」
耳を向けると立て続けに何かが倒れ廊下を引きずる音がする。晴樹は慌ててバスルームから飛び出した。
まさか──!?
開けっ放しの玄関がいきなり目に飛び込む。家の中を駆けた晴樹は空になった寝室を前にして唖然としていた。
誰かさんが蹴っ躓いた証拠に寝室の戸口に置いてあった晴樹のトランクケースが入り口を塞ぐように倒れている…
「苗ぇ──っ!」
大惨事だ…
新婚初夜に奥さんに逃げられるってありかよ!?
呆然と立ち尽くす。吠えた晴樹の耳に、
「ピピ──…お湯はり完了しました」
そんなデジタル音声が聞こえてきていた…
・
「あの…オポンチ娘っ」
晴樹は携帯1つだけ握り締めるとマンションから駆け出した。
長い足が回転率を上げて動き出す。晴樹はマンションの直ぐ隣の木造二階建て、築32年の一軒家へ豪速球で向かった。
「すみませんっ!」
相変わらず立て付けの悪い引戸の玄関をガタガタと叩く。ここにはインターホンなんて洒落た呼鈴は見当たらない。家の者を呼ぶには夜だろうが外から叫ぶしかなかった。
「すみませんっ!俺ですっ…」
呼び掛ける声に少しばかりの焦りが窺える…
間を置いて引戸の磨りガラス越しに同じ背丈の小さな人影が三つ映っていた。
「兄ちゃんどうしたんだ?」
ガタガタと音を立てて開いた玄関から三つ子が声を揃えて尋ね返した。
「あの…めちゃめちゃ聞きにくいことなんだけどな…」
「………」
「苗…が、帰って来てたりしないか…」
気まずい表情で苦笑う。
「なんだ…新婚早々、痴話喧嘩か?」
「いや…ケンカではないんだけど…はは…」
はっきり言ってそれよりもタチが悪い。笑いながら自分自身が情けなく思えてきた。
・
「ここには来てないぜ?」
「来てない…か…」
たくっ…どこいったんだあのオポンチはっ!?
晴樹は眉間に皺を寄せて顎に手を当て考え込む。
「姉ちゃんもしかして逃げたのか?」
「え?…っ…いや、あ…」
毎回鋭い突っ込みをくれる。そんな空の言葉に晴樹は一瞬あたふたと口隠っていた。
「なんで逃げるんだ?」
鈍い陸が空に聞いていた。
「母ちゃんが気にしてたから…“まさか逃げやしないだろうねあの子は…”って」
「まじで!?」
反対に晴樹が目を見開く。
…苗のおふくろさんには読まれてたワケか…
情けない笑いが込み上げて来ていた。
「いつ逃げたんだ?」
「いつ…って、つい今さっき…」
「姉ちゃん足遅いぞ。兄ちゃんの足で追い付けないはずないじゃん!」
「そうは言っても…」
実際、辺りには影も形も見当たらない…
「なら確実にあそこだな……」
三つ子は声を揃えて怪しんだ。
「あそこ…って」
どこだよ!?
三つ子達の意味深な笑みが気に掛かる──
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平静を装いながらも狼狽える晴樹を三匹のホームズ達はニヤニヤと見上げていた…
「なあ苗、来たなら荷ほどき手伝ってよ」
「……う…苗は引っ越し手伝いに来た訳じゃないだょ…」
段ボールに囲まれた隅でプチプチと音がする。
苗はパソコンを包んでいたビニールの保護クッションの粒をプチプチと潰しながら口を尖らせていた。
「引っ越しの手伝いじゃなかったら何しに来たんだよ」
すらりとした足で荷物の山を避けながら片付けていく。部屋の片隅で段ボールに埋もれ床に踞るクリボウの様な後ろ姿の苗を見付けると、悟は思わず吹き出していた。
「だけど…まさか新婚初夜で逃げてくるとはね…」
呆れてしまうがそんなところがさすが苗だと手放しで讃えたくなってしまう。
一体、何を思って逃げてきたのか…
「今日はまさか戻らないつもり?」
「…う……」
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