ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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☆*:.。. o番外編o .。.:*☆

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部屋の片付け時とは打って代わり、普通に接していた悟は隣の苗を向いた。

「──…夏目、って苗の友達?」


「二日だけ付き合った元彼ぴ…」


苗は周りに聞こえないようにカレーのスプーンをくわえボソッと教える。

「……ああ、前にそんな話ししてたな……」


悟はそういいながらカレーを口に運ぶ。

……夏目、か──


去年の夏に彼氏の有無を聞いた悟は苗からの報告を思い出していた。

「でもせっかく剣道強いのにこっちで活かせないって勿体ないわね。一成さんも高校までは手元に置いておきたかっただろうに…よくこっちに来ること許してくれたわね?」


悟の上京にさりげなく触れたオカンに悟はスプーンを動かす手を止めた。

「──…条件付けられました…」

「条件?」

苗に聞かれて悟は頷く。

「三年間、学年で首席獲り続けろって──」


「──っ…うひゃあ…厳し…っ」

苗は絶句した。

「……あと、…どれかスポーツでも首位を獲れって…できなきゃ途中でもすぐ向こうに戻ることになる」


「さすが一成さんね…言うこと厳しいわ…家もそのくらいしようかしら」

オカンの呟きに田中家ご子息達はヒィ!と青ざめた




「だいじょびなの?どっちも首位って…」

苗はカレーを食べ始めた悟を心配そうに覗き込む。
そんな苗に悟はニッコリと答えた。

「たぶん大丈夫!東郷家次期当主なら文武両道当たり前だってのがあの人の口癖だから──
どこに居てもその条件は変わらない。昔からそうだったし…」


「そう…悟クンが結城受けるって聞いた時、オバサンは結城が剣道有名なのかと思ったわ……」

黙って口を動かす悟にオカンは突っ込んだ。

「どうして結城選んだの?」


「うん、オカン。苗もそれ聞きたかっただょ」

衣替えなら地元の高校で充分できる。なのになぜ、わざわざ一人暮らししてまで結城なのか──

聞きたいと言い出した隣の苗を悟はふと見ていた。


「こっちに来たのは──」


苗は聞きながらカレーをこん盛りよそったスプーンを頬張る。


「苗の傍に、居たかったから──」


「──…ぶほっ!!」

苗は頬張ったカレーに噎(む)せていた。


まるで剣道で試合前の挨拶をするように、姿勢を正し、両膝に手を置いた悟はオカンに真っ直ぐに伝えてくる。



「あらあら…それは困ったわね…」


そんな言葉とは裏腹に、どこかしら楽しそうな笑みを浮かべるオカンとは対称的に、苗はダラダラと冷や汗をかきまくった。


…せっかくカレー食べてんだからもっと代謝のいい汗かきたいだょっ…


そんな苗の叫びも知ってか知らぬか、悟は自分の言葉に満足した笑顔を苗に向けていた──



夕刻までの間、食材整理をして空になった冷蔵庫の補充の為に、買い物に出掛けたオカンと苗を待ちながら、悟は田中家の二階で三つ子達とアルバムを広げていた──


悟は苗と離れてからのアルバムの年代別に目を通す。

三つ子達とばっかり写った写真。こっちに来てからの自分と同じ様な幼馴染みみたいな奴は見当たらない。

そのことに悟は少しホッとしていた。

元気に笑う苗の写真、悟はネガはあるのかと三つ子に尋ねた。


隙間を埋めたい──


苗と離れていた時間の隙間を…


せめて写真だけでもいいから──



悟は欲しい写真をネガの中から探し出すと焼き回しする為に大事にしまった。



「ただいまー!荷物取りにきちくりー」

玄関の開く音と買い物から帰ってきた苗の呼ぶ声がする。




晴樹からもらった社用のタクシーチケットのお陰で大量の買い出しも楽に出来る。


悟の親からも食費を預かっているため、田中家の家計はだいぶゆとりを持てるようになっていた。

二階から降りてきた三つ子達に買い物袋を一つずつ渡すと苗は段ボールに詰めたジャガイモを抱える。

悟は苗からそれをヒョイッと取り上げた。

「その袋も上に乗せていいよ」


「だいじょび?重いだよ?」

「余裕」

悟はそう言うとジャガイモの箱を片手で抱え、躊躇う苗から肉の入った袋を取り上げた。


「いつの間にか男になったわね…」

「うん…」

悟の後ろ姿を見つめる苗にオカンはタクシーのトランクから最後の荷物を取り出しながら言った。


“苗の傍に居たかったから──” 


「……」 


苗は立ちすくむ。オカンはそんな苗に買い込んだトイレットペーパーを半分持たせると苗を肘で小突いた。


「もう、悟“ちゃん”って呼ぶのはやめたほうがいいかもね!」


戸惑う苗にオカンはそう言い残して家に入った。



──────



「はあ……」

切ない溜め息が聞こえてきていた──

NYのオフィス街。

窓から見える景色は高層ビルで埋め尽くされている。その一角にあるビルの24階。クライムカンパニー社所有のビルの一ヶ所を間借りして、晴樹達は新規事業の準備に取り掛かっていた。

「どうかしましたか?」

村井はデスクに腰掛けた溜め息の主の若社長に目を向けた。


「はやく苗とヤリたい…」


「ブッ──…」

口から噴き出したコーヒーを拭きながら村井は周りに目を配る。

「なんてことを口に出すんですか社長っ…──」


「どうせわかんねえよ日本語なんだからっ」

やけっぱちに晴樹は答える。

確認書類を持ってくる部下達に英語で声を掛けながら、晴樹は本心を日本語で呟いていた──

パーティ会場でのレセプションは予定どうりで問題ない。

しかし、取引先への挨拶が厄介だ。

先方のスケジュールもあり、中々数をこなして行くことが出来ない。会食をしながら行う為に、各社それぞれに時間を執られ思うように事が運んでいかなかった──


「一週間では終わらねえな…」

「終りませんね」

諦め口調のボヤキにはっきりと返した村井。晴樹はグッと喉を詰まらせていた。

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