ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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☆*:.。. o番外編o .。.:*☆

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早く帰りたい…


寧ろ、早く苗に逢いたい…


そして、めいいっぱい
苗を抱きたい──



「性欲溜まるぜチキショーっ…」


「はは!社長、今のは日本語ですか?」

「そう、俺は頑張るぜっって意味!」

「オー!なるほど」

返した書類を受け取りながら尋ねた部下に晴樹は笑顔でデタラメを教えていた。

いい事を聞いたと笑いながら部下は立ち去っていく──

「社長…程々にしてくださいよ…」

「余程の音感なきゃ一回聞いたくらいじゃ憶えねえよ」

「彼はギターマンですよ…」


──なに!?


強気で返した晴樹を村井がたしなめた直後、オフィスのドアが開いた。


──!はっ…
ヤバいっ──…


日本かぶれのリディの父親、リチャードの登場に晴樹は焦る。

様子を見に来たリチャードはオフィスに入ってくるなり明るく言った。

「やあ、諸君。頑張ってるかい!」


「ホゥッ!セヨクタマルゼ.チキショー!!」


「ん、なんだと!?」




はは…あちゃ…──

頭を抱えた晴樹の横で村井は「社長…」そう小さく呼び掛けていた……




怪訝な顔で部下を振り返りながらリチャードは晴樹のもとまで来る。

「晴樹──…いや、社長。調子はどうだ?」


「今のところは順調。残るは挨拶周りかな」

「うむ、君は兄さん達と違って弁がたつ。そこでどうだ──今夜、三社合同での会食を予定しようと思うが…」

晴樹はリチャードの提案に目を見張った。

「そりゃ願ってもないことだリチャードっ」

そう言った晴樹にリチャードはこっそりと耳打ちした。

「早く帰りたいだろ?愛しいワイフのもとへ…」

リチャードは笑ってウインクをする。ニヤリと返した晴樹に会食の時間を告げるとリチャードは颯爽と出口へ向かった。


そしてリチャードは急に立ち止まる。

「ヘイ、ユー!そんなに溜まってるなら早く彼女を作れっ──それともSサイズの搾乳器をプレゼントしようか?ん?」

「……?」

ギターマンの部下に日本語で返して肩を叩くとニッコリ笑う。そんなリチャードに部下は肩をすくめ、首を傾げていた。




「さすが智晴氏のパートナーですね。相変わらずユーモアたっぷり」

「ブラックジョークだろあれは……でも、話しのわかる人だから助かる」


晴樹は軽いステップを踏み立ち去っていくリチャードの背中を見送っていた。



ただ──

それでも苗と約束した一週間で帰国するというのは厳しいようだ。

晴樹は髪をかきあげて疲れたため息を零す。

そんな晴樹に村井はパソコンを弄りながら話し掛けた。

「そう言えば晴樹さんが去年行ってた例のリゾートホテル、結城の買収が決まったそうです」

「──……ああ、あれか」

晴樹は思い出していた。苗の田舎に行った際、予約した似非5つ星のホテル──

晴樹の睨んだ通り、経営は火の車だったようだ。

バブル崩壊前に建てられたばかりで瞬く間に不況の煽りを受けてしまったらしい。まわりのゴルフ場も無人のまま放置状態だった。

「買収の話を持ち掛けたら、所有者の権利がそこの大地主の方で東郷って──」

「東郷!?」

「はい、田中家の御友人か御親戚で披露宴にも来ていらっしゃいましたねたしか…」

「ああ」

なるほど…
あの田舎の土地ほとんど所有してるなその分じゃ──

晴樹は一度だけ行ったことのある東郷家のバカでかい屋敷を思い浮かべた。




「買収も是非にと、直ぐに話がまとまったようです。買収値もかなり安値だったと…」

「へえ…」


「安値の代わりに観光地として活性化させて欲しいと条件付きだそうですが」

「そんなこと態々条件付けなくてもホテル業ならやるさ」

「ですね」

村井は相づちを打つと付け加えた。

「──…あと、社長からのご提案だったので、全責任を社長に委ねるそうです…」

「………」

村井の言葉に晴樹は無表情だった顔を激しく崩した。

「げっ…──マ、ジに!?」

「はい、昨日…可決したそうです」

村井はそう言って弄っていたパソコンを晴樹に見せていた。


「うわ、やられた──っ」

送られてきたメール読んで頭を掻く。


「気負わずやってみたらどうですか?」

「他人事だな村井は!?」

さらりと言って退ける村井に反論する。


くそっ──!!
この仕事が一段落したら苗との新婚生活と学生生活を楽しもうと思ったのに──

なんでこう、次から次へと持ち込むんだよ!?


晴樹はカリカリしながらやる気をなくしていく。

「たぶんこれからの事に大いに役立つと思いますよ。苗さんと一緒に取り組んでみては?」

「苗と!?」

「ええ」

「苗とどう取り組むんだよ?只でさえ一風変わった感覚してんのに…」




──…!


そう言った自分の言葉に晴樹はふと気がついた。


「よそと同じことしてては繁盛しませんからね」

村井はにこやかに返した。

「確かにな…」

あのホテルで見直すことと言えば…

値段 従業員の教育──ホテルそのものは勿体ないくらいいい造りをしていた。

それに地域イベントに三万発なんて花火大会もある──

集客イベントとしてはそれはかなり目玉だ。

夏の花火大会以外の客寄せが何かあれば──


晴樹は次第にワクワクした表情を浮かべる。


「ふ……苗と一緒に何かやるのも面白いかもな──」 

晴樹はそう小さく呟いていた。







「お嬢、こっちです!!」

小さな店が建ち並ぶ通りでガタイのいい男が手を振っていた。

「あっ?タケちゃん!?」


「お久し振りです」

元、龍極会系藤代組

幹部の近藤 武──

今や鬼頭組若頭付きとなった武はある一軒の店で苗を待っていた。

「ささ、中へどうぞ。親爺さんが楽しみにしてますよ」

小さな花を抱えた苗は武に言われるまま店の中へと入っていった。

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