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第2話 ようこそ! 霊乂探偵事務所へ

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「説明してくれる?」
「……」
「あやめ、お母さんに黙って家を抜け出して、大怪我をしたって病院から連絡が来て、どんなに心配したかわかる?」
「……うん」
「じゃあ、ちゃんと説明して。何があったの?」
「……ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃないの! ちゃんと説明してって言ってるの! わかってる? あやめ、右目がなくなってるのよ!?」
「……ごめんなさい」


 病院のベッドの上で目が覚めて、しばらくしてからお母さんがやってきた。泣きながら、私をきつく抱きしめた。息ができないくらい締め付けられて、お母さんの気持ちがたまらなく伝わってきた。

 私の右目はなくなっていた。視力を失ったのではなくて、言葉通り眼球がなくなっていたのだ。何が起きたのかは分からない。けれど、きっとあの黒いヤツが原因だ。それだけは間違いない。
 みかが教えてくれたこれに至るまでの経緯によれば、あの夜、私が気絶した後に突然廊下の窓ガラスが割れて外から彼女が入ってきたという。探偵と名乗った赤毛の女の子だ。彼女は1枚のお札のようなものを床に貼り付けた。そしてしばらくしてから病院へ連絡を入れてくれたらしい。
 何をしたのか分からないけれど、彼女は私達を助けてくれたのだ、きっと。みかはお札のようなものと言った。つまりは、彼女はあれが視えていたのだろうか。そしてお祓いをしてくれたのだろうか。



 数週間が経ち、私は退院することとなった。
 お母さんに連れられ家に帰った。あれ以来、お母さんとはまともに会話をしなくなった。きっと、何を聞いても私は事情を説明しないと察したからだろう。
 家に帰ると心配そうにお父さんがこちらを見つめてくるけど、私は首を振ってお母さんを見てあげてと目で合図を送った。ちゃんと分かってくれたようで、お父さんはお母さんの元へと向かった。

 部屋のベッドに仰向けになり、眼帯を外した。手をかざしているのに何も見えない。真っ暗だった。左目を頼りにスマホ画面を開き、カメラの自撮りモードで自身の姿を映す。真っ直ぐ見る限りでは普通の姿だった。右目にはちゃんと眼球がある。そう、義眼だ。けれど、義眼の為に右目だけは黒目が動かない。だから普段は眼帯を着けるようにしている。
 訳が分からないうちに片目を失い、そして今はその状態に慣れ始めてしまっている。最初はまだまだ長いこの人生、どうしたらいいのかなんて絶望的に考えていたけれど、今ではお洒落な眼帯をネットで検索していたりしている。過ぎたことを気にしたところで意味はないのだから。
 それでもやっぱりふとした時にため息が洩れてしまう。ショックなことには変わりないから。今も自然にため息が洩れてしまっている。
 と、スマホが震えていることに気がつく。画面を見ると、みかからの着信だった。

「もしもし?」
『あやめ? もう家? 今日だったよね、退院』
「うん。今帰ってきたとこ」
『そっか。気分はどう? 元気?』
「まあぼちぼちかな。今はお洒落な眼帯探してたとこ」
『眼帯か~。やっぱり黒のアイパッチとかがいいよ』
「なんかヒーロー映画に出てきそう」
『あははっ、たしかに。…………あやめ』
「ん?」
『…………ごめんなさい』
「……え? え、何急に気持ち悪い」
『うちがこっくりさんやろうなんて言ったから、こんなことに』

 みかは私が右目を失ったことに責任を感じていた。
 たしかに夜の学校で遊び半分で降霊術なんてしたことが今回のことを招いた原因なのかもしれない。けれど、私も私で生半可な気持ちで行なっていたことに変わりはないし、むしろ私自身がみかを危険に晒したことに責任を感じている。

「……みか」
『……うん』
「今度スイパラ行こう。みかの奢りで」
『……え』
「それでチャラ。私もみかを危険に晒した。反省してる。ちゃんと話すべきだった。私が隠していることを」
『隠していること? 霊が見えること?』
「……っ、気づいてたんだね」
『当たり前じゃん。どれだけ親友やってると思ってるの』

 ああ、そっか。みかは気がついていたのか。それでいて、私と親友を続けてくれていたのか。
 嬉しいな。本当に、嬉しいな。

『それでさ、あやめ』
「うん?」
『うちらを助けてくれた赤川さんがね、あやめが退院したら事務所に連れてきてほしいって言ってたんだ』

 赤川……、あの赤毛の女の子のことか。事務所ということは、彼女は本当に探偵らしい。私が目を覚ました時にみかの後ろにいて、そしてその後お母さんが来るとスッと病室からいなくなってそれきりだった。けどどうやらみかとはその後も交流があったらしい。

「分かった。場所、教えて」


「……ここ、か」

 家から徒歩10分、路地に入った古い建物が建ち並んだ場所に溶け込むようにしてその事務所はあった。
 思っていた以上にご近所さんだったことに驚いた。
 幽霊でも出てきそうなほどぼろぼろなアパートだったが、それらしいものはいなかった。外階段の横にポストが並んでいて、204と書かれたポストに走り書きのような字で『霊乂探偵事務所』と書かれていた。

「れい……め? 探偵事務所……」
「『れいがい』って読むんだって。赤川さんが言ってた」

 後ろからみかが言った。思わずため息を洩らした。

「なんでみかまで来るの」
「いいじゃん! うちだって関係者なんだもん」

 ぷくっと頬を膨らませてぶりっ子ポーズを見せるJKみか。
 まったくこの子は……。と言いつつも心の中ではホッと安堵していた。気まずい雰囲気は全くなくていつも通りの私達にちゃんと戻っていた。

 外階段を上り、一番右奥のドアの前まで来る。ドアにはこれまた走り書きで『霊乂れいがい探偵事務所』と書かれていた。これは本当に営業しているのだろうか。誰がどう見てもただの人の家だ。
 インターホンは見当たらず、仕方なくドアをノックしようとしたその時、まるで来たのがわかったかのタイミングでドアが開いた。中から赤毛の女の子が顔を覗かせた。

「いらっしゃい。どうぞ」

 みかと目を合わせ、そして私達は霊乂探偵事務所の中へと入った。

 玄関があり、その先に短い廊下、右側は小さなキッチンスペース、左側にはドアがあり、『トイレ』と走り書きのされた紙切れが貼られていた。そのドアの右隣にももうひとつドアがあり、その中はどうやら脱衣所と浴室があるよう。廊下の突き当たりにもドア、その先におそらく洋室があるのだろう。
 まあ、ひとことで言うならば1Kのアパートの一室だ。ただひとつ違うのは……、

「あ、ここ土足解禁してるから普通に上がって」

 土足だというところだった。
 普段靴を脱ぐところを靴のまま上がるというのはどうも落ち着かなかったけど、新鮮で外国気分を味わえた。みかも「おぉ」と感心したような声をあげていた。

 先日と同じライダースジャケットにだぼだぼジーンズの赤川さんは、突き当たりのドアをそっと開けた。すると……、

「なにこれ」

 思わず声が洩れてしまった。
 ドアの先は大体6、7畳くらいの部屋で、部屋の奥には窓があり、窓を背に横広のデスクがドンと置かれていた。校長室にあるような高価そうなブラウンのデスクで、この部屋に似合わないほど大きかった。デスクと窓を挟んで、きっとデスクとセットなのだろう椅子もあり、誰か座っていた。デスクに突っ伏していて男性か女性かどうかも分からない。部屋の右側にはソファーが置いてあり(2人掛けくらいの大きさ)制服を着た男の子が仰向けで眠っていた。きっと私達と同じ高校生だろう。床はグレーの絨毯じゅうたんで、ところどころに観葉植物が置いてあった。左側の空いているスペースには、明らかに学校で使っていただろう勉強椅子が3つほど並んでいた。
 色々とツッコミどころが多くて、目が回りそうだ。

「とりあえずそこ座ってて」

 赤川さんに言われるままに勉強椅子にみかと並んで座る。妙に緊張してしまい、きっと2人共姿勢がめちゃくちゃ良くなっているだろう。

「なんか飲む?」
「あ、お構いなく!」

 みかがそう返すと、赤川さんは口をへの字に曲げて廊下に出ていった。
 沈黙が怖く、みかと目配せをするけどお互い首を横に振るだけで沈黙を破ることはなかった。デスクに突っ伏した人は動く気配がないし、ソファーに寝ている男の子は寝息に混じって時々鼻を啜る音が聞こえていた。
 しばらくして赤川さんが飲み物をお盆に乗せて持ってきてくれた。

「カルピスしかなかったわ。薄かったらごめん」

 お互い掠れる声でお礼を述べ、両手でグラスを持つ。ひと口すすり、息をく。

「おいしぃ」

 原液と水の配合は完璧だった。おいしい。
 男の子の寝ているソファーの肘掛けに腰を下ろした赤川さんは、私達に目を向けた。

「さてと、それじゃあ改めて自己紹介をしようか。あたしは赤川凛子。霊乂探偵事務所の所長代理をやっている。まあ見ての通り、小さな会社だけどな」

 外人のような手振りでこの場を指し示す。所長代理ということは、所長が不在なのだろうか。それとも、デスクに突っ伏しているあの人が所長で、ポンコツだから代わりに……とか?
 赤川さんは私達に顎をしゃくる。あんた達も名乗れという意味だろうか。

「うちは烏丸からすまみかです」

 先にみかが名乗り、次いで私も名乗った。

遠藤えんどうあやめ、です」

 赤川さんは、うんと頷くと話を続ける。

「まずは、なんで遠藤さんをここに呼んだのか。それは……烏丸さん、この前話してくれたこと、説明してくれる?」

 突然みかが指名されて、隣のみかはスッと姿勢を整えた。

「えっと、今月に入ってからうちらの学校でふたりの男子生徒が急に難聴になったんだよね。たしか3年の人」
「難聴?」
「うん、いや難聴どころか耳が聴こえなくなってるっぽい」
「……そう、なんだ」

 難聴、耳が聴こえなくなった生徒。それが私がここにいる理由に繋がるのだろうか。と、表情に出ていたらしく赤川さんは舌打ちをした。

「まあ分かってないのも無理はないけど。単刀直入に言う。男子生徒が難聴になった理由は、あんた達を襲ったヤツが原因だよ」
「……えっ」
「そして、あの黒いヤツは少なくともあんた達があの夜にやろうとした所為せいで凶暴になった」

 先月、6月の終わりに私とみかが夜の高校で行なった儀式、それは考えるまでもなく『こっくりさん』のことだ。そして、それが原因で難聴になった生徒がいるのだとすれば、私達は取り返しのつかないことをしてしまったということだ。
 赤川さんが視える前提で話しているところからしても、その信憑性しんぴょうせいはかなり高い。

「視えてるんですか? アレのこと」
「視えてるよ。はっきりと」

 みかの方を恐る恐る見てみる。けれど、みかは動揺することもなく困惑することもなく真剣な眼差しで赤川さんの方を見つめていた。
 私が入院している間にどうやら赤川さんとみかは色々と話をしていたのだろう。だから、みかも少なからず私達の見ている世界のことを理解してくれているのかもしれない。

 今日、みかが私についてきたのもきっと自分を責めているからに違いない。
 霊乂探偵事務所、名前から多少の想像はできていたけど、おそらくここは心霊探偵のたぐいのそれなのだろう。
 赤川さんは腕を組み、それらの説明も含め、私が知らない世界の全てを教えてくれた。


「ここにはふたつの世界が存在している。ひとつは『現世うつしよ』。あたし達が今いるこの場所のことだ。そしてもうひとつ『幽世かくりよ』という世界がある。この幽世に存在しているのは『あやかし』という異形の生き物」
「妖って、妖怪のことですか? 河童とか天狗とか」
「まあ、俗に言うそれらと同じだな」
「けど、それってただの都市伝説じゃ……」
「あんたは恐竜の存在をただの都市伝説だって言えるのか?」
「……え、それは」
「それと同じだよ。恐竜だって実物を見たわけじゃないのに存在したとされている。それは地層だったり化石だったりそういう過去の痕跡があったからだ。じゃあ河童とか天狗ってのも同じだよ。ただ現世じゃなくて幽世に生息していた生き物だから痕跡も幽世でしか発見されないだけだ。さてと、話を戻すぞ。さっき、ここにはふたつの世界が存在しているって言っただろ? それは言葉通りの意味でだ」
「言葉通り?」
「現世と幽世は全くの別世界。本来は干渉するはずはないんだ。けれど、このふたつの世界は別世界でありながら重なって存在している」
「それってパラレルワールドみたいなもの?」
「んー、ちょっと違うけど、まあ意味合い的にはその解釈でいいよ。要するに物理的に干渉することはできない世界だと思ってくれればいい」
「天国とかとは違うんですか?」
「現世で死んだものが行く場所だという意味ではそうなんだが、幽世にいるのは現世で死んで未練を残した魂の具現体だってこと」

 話がややこしくなってきた。少なくとも、幽世というのは未練を残して死んだ人の行く場所だってことは分かった。つまり、死んだ人達のことを妖と呼ぶってこと? 天狗や河童も元々は人?

「幽世に行くのは人、だけなんですか?」
「ううん、死んだ人が行くんじゃなくてが行くんだ」
「じゃあ犬や猫も妖になり得る?」
「そうだね。けれど、妖のほとんどは人だよ。視える遠藤さんは分かると思うけど、遠藤さんが霊と思ってるのは全てが妖だ。そして遠藤さん、あんたは今までに人以外の霊を見たことはほとんどないはずだ」

 たしかに、彼女の言う通りだ。私は死んだ人しか見たことがない。気づいていないだけなのかもしれないけど、少なくともそういったものの気配を感じたことは一度もない。

「どうして人だけなんですか?」
「幽世に行くのは未練を残して死んだものだけ。人間だけなんだよ、未練を残して死ぬのは。他の生き物は未練を残さない。生き物の気持ちが分かるってわけじゃない。けど、妖のほとんどが元人間だというのが何よりの証拠なんだよ」

 私が見てきたものの根源を見たような気がした。私が霊だと思っていたそれらは妖と呼ばれる人の死後の姿、それも未練を残した人。それが本当だとしたら……、

「あの黒いヤツ……妖も、元は人なんですか」
「その可能性は高い。さっきも言ったけど、妖は魂の具現体そのものだ。肉体を離れた魂は自身で姿を形づくる。その姿が恐ろしければ恐ろしいほどそのものの残した未練は大きいんだ」
「じゃああの黒い妖は……」
「うん。相当どす黒い未練を残したんだろうな。だからこそ、危険なんだ。特に視えるあんたは」

 私はあの黒い妖に右目を奪われた。それは今までにはなかった初めての経験だったのだ。

「今まで、妖に直接危害を加えられたことはありませんでした。だからてっきり、彼らは私達には触れることができないのだと思ってました」

 赤川さんはかぶりを振った。そしてじっと私の瞳を見つめる。

「いいか、よく聞けよ。現世と幽世は本来干渉するはずのない世界だ。だけどな、重なっている所為か時々干渉してしまうものがいるんだ。幽世の世界が視えるあんたやあたしは『目』が幽世と干渉している。干渉しているということは繋がっているということだ。繋がりがあれば奴らはそこを突いてくる。つまり、
「視えるものの目に触れられる……。だから私は目を奪われた?」
「そういうことだ」
「けど、なんで襲ってくるんですか? 私はその妖とは関係ないはずです」
「関係があるかどうかは知らないけど、未練がある奴らはどうにかして未練を晴らそうとしているんだ。未練が残ったままだと苦しいからな。その為には現世と幽世とを繋ぐ架け橋がないといつまでも未練が晴らせないんだ。だから妖はあたし達みたいな干渉している者『干渉者』を捜しては接触を試みている」
「もしかして、私って接触するために目を奪われたんですか!?」

 もしもそうなら、そんなの勝手すぎる。自分の未練を晴らす為に私の目を奪ったなんて。
 赤川さんは腕を組み直して目を閉じた。

「未練の内容による。たとえば、それがなのだとすれば、接触する為ではなくて殺す為に干渉者を捜しているだろうね」

 背筋が凍るような悪寒が走った。妖が人を殺す? その為に幽世と干渉している人を襲っているだとすれば……。
 先月のニュースを思い出す。自宅で亡くなった眼球のない人。もしもあれも干渉者だから妖が襲ったんだとするなら、あの黒い妖もきっと。

「黒い妖は人に何らかの恨みを抱いて干渉者を捜している?」

 赤川さんは頷いた。
 と、そこでハッとする。

「もしかして、突然難聴になった人も!?」
「そう。その子達も干渉者だ。もっとも彼らは視えるんじゃなくて、幽世の音が聴こえる子達だったんだろうね。そして、干渉者が襲われたということは結界が破られたってことだ」
「結界?」
「遠藤さんが襲われた時に学校に結界をはった。妖が現世に干渉できなくなる結界だ。だけど、それが破られたから学校で再び被害が出た」

 みかが言ったお札のようなものとは、やっぱりそういう力があるものだったんだ。

「だからこれから奴を……、っといいタイミングで帰ってきたな」

 赤川さんは、突然上を見上げて何かを見つめ始めた。すると、部屋の天井からスルッと何かが降りてきた。

「え、何!?」
「どうしたの? あやめ?」

 みかは視えていない。妖だ。

「おかえり、リオン」

 それは小さな生き物だった。赤川さんの足にスリスリとしているそれは、4足歩行のもふもふとした動物だった。

「か、かわいい」

 思わずそんな言葉がこぼれるほどに、その生き物は可愛かった。

「あの、その子は……」
「リオンだよ」

 そう答えたのは赤川さんではなく、その隣でさっきまで仰向けで眠っていた男の子だった。むくっと上体を起こして眠そうに目をこすっている。
 突然のことに言葉を失っているのはみかも同じだった。もちろんこのもふもふの生き物のこともそうだけど、それよりも彼の姿に不意をつかれたのだ。
 背丈は170くらいだろうか、座っているからちゃんとは分からない。寝癖がついた髪はほんのり焦げ茶に染まっていて、容姿に関してはこれといった特徴は特にない。ただひとつ、彼には左腕がなかった。

 固まって動けない私達を見かねてか、赤川さんは両手をパチンと叩いた。

「大丈夫か? こいつの紹介しないとだな。こいつはリオン。イタチの妖だ」

 てっきり男の子のことを紹介するのかと思ったら、その妖のことをしてくれた。男の子も自分を紹介してくれると思っていたようで、目をまん丸に見開いていた。

「凛子、僕は?」
「あ? ああ、こいつは矢神やがみ真琴まこと

 紹介してくれてホッとした彼は私達に「よろしく」と頭を下げた。

「さてと、じゃあこれからのことを説明する」

 突然話を切り出した赤川さんは、腕を組んで私達を見回した。

「え、これからって……」

 困惑する私に対して「決まってるだろ」とニタリと笑う。

「あの黒い妖をぶん殴りに行く」
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