一話完結ミステリー

愛と裏切り

「彼が……彼が！」
　通報を受け、サイレンを鳴らした警察車両が一軒家の前に停車した。

　家の中には、床に倒れている男性と通報者の女性の姿があった。
「通報者は、佐藤彩さん、被害者の、松原直樹さんと、お付き合いしており、この家に同居していたということです」
　佐藤彩から話を聞いた刑事は、警部に、話の内容を伝えた。
「どうして……どうして……」
　佐藤彩は、両手を手に当て、涙を流している。
「佐藤彩さん、お気持ちは大変わかりますが、現場発見の様子をお教えしていただけませんか」
　警部は、佐藤彩が落ち着くよう、やさしい口調で言った。
「は、はい……私は、三十分前、今日の夕食のため、近所のスーパーに買い出しに行ってました……そして帰ってきたら、ただいまといっても返事がなっかたため、リビングに行ったら、この状況だったということです」
「なるほど……ありがとうございます」
　警部はそういうと立ち上がった。

　すると、刑事が警部のもとに駆け付けた。
「死因は、刃物で腹部を刺されたことによる出血死、そして、庭の花壇のほうから、犯行に使われたと思われる包丁が見つかったということです」
　すると鑑識が警部のもとに駆け寄った。
「花壇から見つかった包丁から、佐藤彩さんの指紋が検出されました」

　警部は鑑識の言葉を聞くと、佐藤彩のほうに詰め寄った。
「どういうことですかね？」
「私は知らない！」
　佐藤彩が返す声は少し裏返っていた。
　じゃあそちらのほうも鑑識にまわしていいですよね？
　佐藤彩は警部が指さした方向を見た。
　そこには、黒い、血痕のついた自分が今履いているスリッパがあった。
　佐藤彩はしばらく無言になった。そして、話し出した。
「あいつが悪いのよ……浮気してそしてあんなこと言うから……」

　～事件当日の朝～
「ちょっとこれってどういうことよ？」
「あぁ？うるせぇなぁ……お前がそんなんだからだろ……」
「は？」
「だから……お前がそんなんだから浮気されて当然だろって言ってんの」

「それからのことは怒りで、あまり覚えてないけど気づいたら……」

　佐藤彩はそういうと、無言で両手を前に出した。