ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏

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第2章「月下に煌めく箱庭」

27話 庭師ルルカ

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 色々話していたら、窓の外はすっかり暗くなっていた。庭園の花を見に行くのはまた明日以降の方がよさそうだ。
 夜の花もきっと美しいのかもしれないけれど、この辺りは何より寒い。

「あら、シュノーさん。おかえりなさい」
「フローリア、ただいま」

 廊下を歩いていると、車椅子に乗ったフローリアさんにばったり会った。
 ちょうどいい、話をしようと思ったところ、もう一人の人物の存在に気づく。日中は一人だったフローリアさんだったが、今は彼女の車椅子を押している人物がいた。

「あっ。ルルなのだ!」
「レノ様、シュノー様。お夕飯の準備ができたそうですよ」

 フローリアさんよりもかなり背の高い、大人の女性だった。肩につくくらいの長さである短い髪は青紫色。俗にいうメイド服などではないが、外での活動に動きやすそうな服装をしていた。

「こちらが新しいお客人……ユキア様と、メア様ですね」
「はい。あと、さっき合流した幼なじみ二人もいます。無断でお風呂に入れちゃったんですけど……」
「構いませんよ。お二方の知り合いでしたら、問題ありません」

 一通り紹介が終わったところで、女性は私たちの方を向いて、小さく微笑みかけた。髪と同じ青紫の瞳が綺麗だ。
 私たちも礼を返す。

「改めまして。ルルカ・エターニアと申します。永久庭園の庭師として、お嬢様にお仕えしています」
「あっ、ということはお風呂を沸かしてくれた人……?」
「はい。お湯加減はいかがでしたか?」
「ああ。気持ちよく入れた」
「それは何よりです」

 先程のフローリアさんの話に出てきた庭師ということだが、礼儀正しくて優しそうな人だ。
 時間があれば、庭園について色々と話を聞けるかもしれない。

「先程も申しました通り、お夕飯の用意ができましたので、よろしければご一緒にどうぞ」

 ちょうどそのつもりだったからありがたい。
 ルルカさんは近くのドアを開けて、再び車椅子を押していく。私たちも後に続く。
 部屋に入ってすぐに、香ばしく温かい香りが鼻をくすぐった。

「わっ、広い!」
「食堂でございます。バイキング形式になっておりますので、お好きな料理を召し上がってください」

 食堂には、ルルカさんの他にも使用人が四人ほどいた。そちらはメイドやシェフのような格好をしている。男女二人ずつだ。
 ポテト、ステーキ、スクランブルエッグ……料理の種類も選り取り見取りだった。ここまで豪華なのはまったく想定していなかった。
 あの女性の作った料理は美味しかったが、こっちも全然負けていなさそうだ。

「シュノー、シオはまだなのかー?」
「さっきお風呂に入ったばかりだから、まだだよ」
「レノ、シオと一緒にご飯を食べて仲良くなりたいのだ! もちろん、ソルやユキたちとも仲良くなるのだ!」
「それは素晴らしいことだとは思うが……」

 仲良くなるだけなら、わざわざ大食いをセレクトする必要なんてない気がするけれど。それがレノちゃんの解釈している「仲良くなる方法」なのだろうか。
 そもそも、バイキング形式とはいえ、大食い競争なんてやったらすぐに料理が枯渇しそうだ。

「そうだ、フー! お願いがあるのだ?」
「あら、何でしょう?」
「レノ、シオと大食い競争をするのだ! フーにも見て楽しんでほしいのだ。やってもいいか?」

 少し考える仕草を見せたものの、フローリアさんは車椅子に座ったまま小さく笑っていた。
 レノちゃんの行いをやめさせようという意図はまったくもって見当たらない。むしろ、この状況を楽しんでいるように見えた。

「全然構いませんよ。食事は楽しいのが一番ですから。むしろ、私も混ざりたいくらい」
「フローリア、それはだめ。吐く」
「あはは……そうですよね~」

 シオンといい、レノちゃんといい、どうしてそんなにみんな一気に物を食べられるんだろう。私もそれなりには食べられるけど、平均くらいだ。

「とりあえず、シオンとソルが来るのを待った方がいいな」
「そうだね。メア、今のうちに料理見て回っていようよ」
「ああ、わかった」
「私、料理担当の人に料理を追加するように言っておきますね」
「それは私が伝えておきます。お嬢様は、皆様とご一緒で大丈夫ですよ」
「そう……わかったわ。それじゃあルルカ、お願いね」

 私たちがバイキングの料理が並ぶ場所へ向かう際、ルルカさんとフローリアさんの会話が耳に入った。
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