ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏

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第2章「月下に煌めく箱庭」

31話 月下の語らい(2)

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「あ、あんた……アスタ!?」
「やあ、ユキ。偶然だね。元気そうで何よりだよ」

 ソルが言っていたのは本当のことだった。箱庭と箱庭の間は、神でさえ移動できないはずなのに。
 確かに、目の前にいるのは私の命の恩人だった。

「っ、何が偶然よ! あんた、私のストーカーでしょ!? 帰れ!!」
「やだ! ユキが心配なんだもん!」
「なら堂々と出てきなさいよ!!」

 シオンとソルの話だと、彼らに会った時もアスタは二人の後をつけていたそうだ。どうしてちゃんと姿を現さないのだろうか。
 こんな風に偶然を装って出てこられても、ちゃんと信用できなくなるだけだからやめてほしい。

「……何者だ? 答え次第では斬り捨てる」

 シュノーは刀を抜こうと身構え、アスタを警戒する。当然の反応であった。
 しかし、アスタは抵抗する素振りを見せることなく、シュノーへ視線を移す。

「ボクのことはどうだっていいよ。ユキが無事であるなら、それに越したことはないからね」
「……ユキアに付きまとっているのか?」
「付きまとってるわけじゃないよ。彼女に死なれたら困る、ただそれだけ」

 ここまでのアスタの話を聞いて、少しわかった気がする。
 私は、クレーに命を狙われている。なのに、邪魔が入ったせいで、私を殺せなくなったと言った。その邪魔というのは、もしかしたら────

「とりあえず、元気そうでよかったよ」
「結局、あんたは私のストーカーを辞める気はないわけね……」
「クレーをどうにかできるまでは勘弁してほしいな。気を悪くしないでおくれよ」

 もはやストーカーであることを否定していない。そもそも、ストーカーがいると知っていて気分が悪くならないわけがない。
 だが、私が未だに殺されずに済んでいる理由にアスタが関係しているとするなら、無下にするのは逆効果な気がする。

「魔物に関しては、ボクにはどうにもできないからね。頼んだよ」

 意味深な言葉を残し、私たちに背を向けて歩き出す。それからまもなく花畑の向こうに姿を消した。
 本当に、素性のわからないストーカーだ。敵ではないことなのは確かだが、味方かどうかは限らない。
 信じたくても、信じ切ることができないのが歯がゆい。

「…………」

 シュノーはしばらく、その場で俯いていた。
 あまり動いていないと、身体が寒くなってくる。もう戻りたい。

「……ねえ、シュノーは寒くないの?」
「え? このくらいがちょうどいいけど?」
「寒くなってきて無理……もう戻ろう?」
「わかった」

 庭園を一蹴してシュノーと一緒に、館の中へ戻った。
 すると、メアたちとレノが割り当てられた部屋へ戻ってくるところに鉢合わせた。

「あーっ、シュノー! 一体どこに行ってたのだ?」
「ごめんね、レノ。メアたちもありがとう」
「私たちは別に何もしていないが……」

 自室に戻ったのか、フローリアさんとルルカさんの姿はない。
 ふと、メアの隣にいたレノが、シュノーに近づいて手を引っ張る。

「そういえばシュノー、ルルが呼んでたのだ」
「ルルカが? ……わかった。レノは先に休んでて」
「わかったのだ。じゃあユキ、みんな、レノはおやすみするのだ」
「あ、おやすみー」

 シュノーは私たちと別れ、去っていった。レノも自分の部屋に入っていった。
 ルルカさんがシュノーに用だなんて……何だろう、気になる。

「まあいい。ユキア、今日はもう遅いし寝よう」

 尾行しようとしたらメアにそう声をかけられた。さすがにだめだったか。
 どうやら、食堂から出てそれなりに時間が経っていたようだ。最近は環境が変わってばかりだから、休めるときに休んだ方がいいかもしれない。
 シュノーとレノの隣の部屋が、私とメアが借りられる部屋だった。

「そういや、オレたちの部屋ってどこだ?」
「え?」

 言われて気がついた。シオンとソルは途中から合流してきたから、部屋の割り当てを聞いていない。
 ……二人の泊まる部屋、なくない?

「部屋はどうするんだ?」
「……ルルカさんにこっそり聞いた。ユキアとメアの部屋の隣も空いてるから、そこ使ってって」
「あ、ソル聞いてたんだ……」

 とりあえず、部屋の問題はこれで解決できた。お風呂も夕飯もすませたことだし、今日はもう寝よう。
 私たちはそれぞれの部屋に分かれて、一日を終えることにした。
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