ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏

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第3章「海と大地の箱庭」

53話 共にいる時間

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 *

 地上に戻って、船を返してきた。
 海から離れたところで、再び情報収集をすることにしたのだが────

「アスタぁ!! つべこべ言わずに僕の研究に付き合ってぇ!!」
「うわあぁぁー!! やめて追わないでぇー!!」
「ったく、ソルの奴……! ユキア、メア! お前らはあっちの方で聞き込みしろ! 広場で集合なー!」

 ソルが全然落ち着かないまま、アスタを追い回し始めてどこかに行ってしまった。シオンも二人を止めに行ってしまったので、その場に私とメアだけが取り残された。

「……ここにいても仕方ない。私たちで情報収集しよう」

 メアに促され、二人で街を歩きつつ、シュノーとレノについての情報を集める。昨日、誰に話を聞いたかは大体覚えている。それ以外となると、今日話を聞く人の数は結構限られてくる。だから昨日のように半日以上使うことはないだろう。

「あの、すみません。人を探しているんですけど……」
「────うーん。そのような子は知らないな。すまないね」
「そうですか……」

 メアと一緒に歩きつつ、姉妹の特徴を伝えて居場所を知らないか尋ねてみるものの……確かな答えを返してくれる者は誰一人としていなかった。
 一度、例の噴水のある公園に来て一休みすることにした。

「……全然見つからないな。二人とも」
「そうだね……」

 赤レンガの敷かれた道を進んでいると、涼しげな格好をした観光客や住人たちと常にすれ違う。ここに来てからやけに暑いのだが、やはり箱庭ごとに気候も異なるらしい。
 もう少し聞き込みをして何も成果が得られなかったら、街の外に行ってみようか。外はどうなっているのか気になるし、この街にいても二人を見つけられない気がする。

「……こうして二人でゆっくりできる時間は、本当に少なくなったな」

 ぼうっと空を眺めていた私の隣で、メアはそう呟いている。
 気づけば私も、昔のことを思い出していた。毎日のようにメアと遊んで、楽しい日々を過ごしていた。一緒に暮らしていたシオンや、シオンの繋がりで知り合ったソルよりも仲がよかった。
 もちろん嫌なことだってあった。けれどすべて乗り越えることができたのは、心の支えである大切な親友がいたから。
 大人になってからも長い時間一緒にいた。それなのに、こんなことになって……最近は、そんなことばかり考えている。

「私は……この事件に巻き込まれている中で、ユキアを失う恐怖に何度も苛まれた。もう限界に近いんだ」
「メア……」

 メアは、いつも私のことばかり考えている。幼い頃からそれは変わらない。追い詰められた状況になると、基本私や私に近しい者しか見えなくなるのだ。
 シオンもソルもそれをわかっているから、普段通りに接することで気休めを図ろうとしていると思う。こうやって二人きりにさせたのにも、もしかしたら理由があるかもしれない。

「……メア。私は簡単にはいなくならないよ」
「なぜそう言えるんだ、ユキア」
「私だって、メアを失うのは嫌だよ。死にたくない。だから精一杯生きなきゃいけないの」
「……昔から、お前は強いな。幼い頃に何度も私を助けてくれたときと、全然変わっていない」

 自分が強いなどとは思っていない。打ちひしがれたことだって、守れなかったものだってあった。そんな私を肯定してくれるから、彼女は私の親友でいてくれるのだろう。
 やっぱり、よき理解者は大切にしたいものだ。

「大丈夫だよ、メア。私たちならできるよ。シオンもソルも、アスタもいるんだから」
「アスタは微妙なところだが……少なくとも敵ではないからな。それに、レノとシュノーを見つければ、二人の力も借りられる」
「そうだよ! だから悲観的になることなんてない。みんなで戦えば大丈夫」

 ありきたりな励ましだけど、このような言葉に私は何度も救われてきた。だから、私も力強い言葉で誰かを支えたい。
 ……さて。そろそろ情報収集に戻らなきゃ。二人で立ち上がり、まだ話を聞けていない人を探す。

「……ユキア。あの人に声はかけたか?」

 トントンと肩を叩かれ、指し示される。相手は、私たちよりも背の高い青年だ。
 暑い中なのに、白いローブをまとっている。ピンクゴールドの短い髪に黄金の瞳を持っており、何より端正な顔立ちだった。
 ……確かに、見たことがない気がする。

「あの、すみません。お聞きしたいことがあるのですが」
「おや。何でしょうか?」

 近づいて声をかけると、私たちに優しく笑いかけてくれる。爽やかな印象で、ちょっと魅力的に感じた。

「このくらいの背で、水色と桃色の双子の姉妹を見かけませんでしたか?」

 青年にもわかるように身振り手振りで尋ねてみる。だが、まもなく青年は困ったような笑みを浮かべた。

「すみません、そのような子はこの辺りでは見かけませんでした。お力になれず申し訳ございません」
「そうですか……」

 やはりこの街にはいない可能性が高いかもしれない。
 青年は踵を返し、去り際にこちらを振り返った。爽やかな微笑みを向けている。

「それでは、ぼくはこの辺りで失礼します。見つかるといいですね」
「あ、はい! ありがとうございます」

 コツコツと歩き去っていく背中をしばらく見守っていた。
 不覚にも、ちょっとかっこいいと思ってしまった。優しそうだったし。

「そろそろシオンたちと合流するか。情報共有もしたいところだし────」
「きゃああああぁぁぁ!!」

 二人で歩き出そうとした瞬間、街中に女の人の悲鳴が響き渡った。周囲の人々の間にどよめきが走る。
 私の身体は、考える前に動き出した。

「ユキア! ちょっと待て!」

 悲鳴の聞こえた方へ走り出す私を、メアは慌てて追いかけてきた。
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