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第8章「神智を超えた回生の夢」
193話 救うためなら、なんだって(3)
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「えっ……どうして、あなたが……!?」
シファによって生み出されただけの偽物が、信じられないと言いたげな目で僕たちを凝視していた。僕も正直、今の光景を信じ切れていない。
アリアを暴走させていた原因であるアストラルを取り除いた直後、アリアは意識を失っていた。それからまもなく、僕とヴィータだけシファによって場所を転移させられたから、どんな状態だったかわからなかった。
僕を支えるアリアの両手から、ほんのりと優しく白い光が溢れてくる。その光は僕を温かく包み込んでくれて、身体中の痛みがゆっくりと引いていく。右目を軽く拭った手が若干赤く染まっていたので、また出血したようだがすでに止まっているみたいだ。
「セルジュにはデウスプリズンにいてもらってるよ。あの子、いつの間にかすごく大きくなってたね。私、びっくりしちゃった」
「それより、アリア……目が覚めたばかりなら、無理は……!」
「クリムがいないって気づいて、行かなきゃいけないって思ったから来たんだ。私も、あの子には言いたいことがあるの。立てる?」
アリアがそう言ったときには、僕の身体の痛みは消えていた。右目はまだ痛んでいるけれど、出血は完全に止まっている。アリアも僕を翼で包み込むのをやめて、僕の手を掴んで立たせてくれた。手放してしまっていたガラスの剣を再び拾い上げ、しっかりと握り直す。
彼女は自分の武器を召喚することもせず、僕の前に立ち塞がる。もう一人の自分──偽アリアに、勇敢にも対峙してみせたのだ。白銀の翼が生えた彼女の大きな背中は、まさに僕がずっと憧れて追い続けてきた優しい天使の証だった。
「よくも、私の身体で百年間も嘘ばらまいてくれたわね」
そう切り出したアリアの口調は厳しいものだった。偽アリアは不思議そうに首を傾げる。
「でも、私に身体を貸してくれたのは、他でもないあなたじゃない」
「違う! デミ・ドゥームズデイのときは変な力に抵抗するのに必死だったから、あなたに構ってる余裕がなかったの! そうこうしてるうちに意識がなくなっちゃうし、気づいたら百年経ってたし……! あなたがいなかったらこんなにこじれたりしなかったわよ、絶対!!」
少し言葉を荒げながら、偽アリアを指さすアリア。二人の会話から、なんとなく当時の状況が見えてきた気がする。
偽アリアは、自分のことを「デミ・ドゥームズデイでばらまかれたアストラルから生まれた魔物」と言っていた。彼女がアリアの中にいたことが、暴走を伴う黒幽病の原因になっていたという事実は確かだろう。
アイリス様がアリアにリミッターをかけていたとき、彼女は以前とは若干違う性格になって周囲に振る舞っていた。僕や他のアーケンシェンみたいにアリアをよく知る者以外は気づけなかったくらい、本当に若干の違いしかなかった。そのくらい、魔物のなり損ないはアリアに「擬態」できていたわけだ。僕たちだって、ただの「後遺症」で済ませてしまっていた。
「ていうか、あなたはなんで百年間もクロウを忘れたフリをしてたの? そんな嘘吐く理由、どこにもなかったでしょ!?」
「その方がクリムに都合がいいかもって思ったから。私、クリムのことはなんだって知ってるよ。自分が殺した存在のことを忘れたかったことも、本物のあなたを助けるために一人で頑張り続けてたことも。最初から知ってたけど、必死に頑張る姿が可愛かったから知らないフリをしてたんだ」
偽アリアが浮かべたのは、無邪気でにんまりとした笑顔だった。今まで見たことのない笑い方だったので、思わず後ずさりしてしまう。そんな僕の様子を見てか、アリアは僕の前に立ったまま両手を広げる。
「でも、クリムが私を好きになることはなかった。最初に思い切り拒絶されちゃったし。だから、あとは適当に色々な男の子が好きなだけのおねーちゃんを装ってた。その方が自然にクリムに触れられるって思ったから。浮気性に思われたかもしれないけど、私はずっとクリム一筋だから許してくれるよね?」
「……クリムが許しても、私が許せないんだけど? ねぇ?」
今、アリアがどんな顔をしているのかはわからなかった。しかし、翼と身体が小刻みに震えていて、声も怒ったものに聞こえた。偽アリアの方は逆に、にっこりと満面の笑顔を浮かべる。
「あなただって、クリムのことは気に入ってたんでしょ? それなら、別に結果オーライじゃない」
「ほんっと勝手な子ね! 私はただ、あなたが私の身体で好き勝手してたのが許せないの!! クリムやティアルたちにも嘘を吐き続けて、私からクロウの存在を抹消しようとしたあなたなんか、絶対に許さないから!!」
アリアが怒鳴りながら、薄桃色の大剣を召喚した。その刃は刃こぼれだらけなことに気づき、彼女はえっ、と僅かに狼狽える。
「外野はすっこんでろ、『《Xeno Alis》』!!」
「────アリア!!」
遠くから声が聞こえたと同時に、右目が一際強く痛んだ。僕はその痛みで弾かれるように動き出し、アリアに飛びついてその場に転がり込んだ。僕たちがちょうど立っていた場所に、黒結晶の鋭い欠片が突き刺さったのが見えた。
僕は昂る感情に任せて、結晶でできた翼で宙に浮かぶシファを睨みつけて叫んだ。
「シファ! 僕はいいけど、アリアに攻撃するな!!」
「どうせ同じ敵なんだから普通だろ! バカじゃねーの!」
「あなたの相手はこちらです、シファ! 『《Gladiolus Fortia》』!」
シファが攻撃を仕掛けようとしたとき、ヴィータが銀色の長剣のようなものを召喚して、高く飛び上がりながら牽制した。今まで制限していた力を解放したゆえなのか、僕も見たことがない星幽術を使って戦っているようだ。
向こうの戦況も気になるが、今はアリアを守るのが優先だ。
「アリア、大丈夫?」
「特に怪我はしてないけど……いつの間にそんな無茶するようになったの、クリム?」
一緒に転がり込んだアリアを起こしたとき、少し咎めるような口調でそう言われた。はっとした僕は、必死なあまりかなり危険な行動をとったと気づかされる。
「ご、ごめん。アリアが危ないって思ったら、身体が勝手に……」
「別に怒ってるわけじゃないよ。でも、クリムに何かあったら、困るのは私たちなんだからね」
アリアは、身を縮ませてしまう僕に苦笑いしていた。僕にとって、これは胸が痛くなるほどの優しさだった。今はまだ、そんな大事なものを向けられても困ってしまう。
「ところで、あの子たちは誰?」
「覚えてないの? 僕たちの味方のヴィータと、敵のシファ。アリアはシファのせいで大変だったんだよ」
「そうなんだ。覚えてはいないんだけど……あとでお礼を言わなきゃ」
「────こっちのこと忘れないでよっ!!」
叫び声とともに殺気を感じ、とっさに片手を突き出して魔法陣型の障壁を展開した。すぐさま大きな衝撃が腕から伝わってくる。偽アリアが鬼のような形相で、僕たちに向かって大剣を振り下ろしてきたのだ。
もう片手で握っていたガラスの剣で、偽アリアの懐へと刃を差し込もうとした。しかし、彼女もまた僕の行動に気づいて飛び退き、一度僕たちから距離をとった。
「本物がいたら、私のことなんてどうでもよくなっちゃうじゃない! 今度は私のことも見てよ! 私はずっと、あなたのために頑張ってきたのに!!」
人目もはばからず怒鳴り散らした偽アリアの身体から、金色の光が溢れ出す。普通の光の魔力に見えるが、これまでの経緯を考えれば放たれている力はアストラルと見た方がいいだろう。
僕はアリアの前に歩み出て、ガラスの剣を構え直した。
「アリアは下がってて。あのひととは僕が戦う」
「わ、私も戦う! クリムにばかり無理させるわけにはいかないよ!」
「アリアの武器、使い物にならなくなってたでしょ。それに僕としても、あのアリアとはけじめをつけなきゃいけないと思ってたから」
覚悟を決めて駆け出すと同時に、偽アリアもまた僕めがけて大剣を振りかざそうとしてきた。僕は翼を広げ、偽アリアの頭上へ飛び上がる。彼女の死角から剣を突き立てようとしたが、寸でのところで彼女が振り返った。
「もう終わりにしてよ、クリムッ!!」
大剣をガラスの刃にぶつけられると同時に、まばゆい光が弾けた。爆風と衝撃によって、僕は空へ吹き飛ばされる。力が抜けてしまいそうだったが、剣は絶対に手放さないようグリップを握る。修理されたばかりなゆえか、ガラスの刃はまだ折れていない。吹き飛ばされながらも翼を広げ、空中で浮遊し自分の動きを制御する。
「〈風よ、我が敵を斬り裂け〉!!」
刃に風の魔力をまとわせて、偽アリアへ風の刃を飛ばした。しかし、やっぱり剣で斬られ消滅させられる。それでも、自分の中の魔力を剣に流し込み続け、一気に複数の風の刃を放った。とにかく、攻撃の手数を増やすためにありったけの魔力を飛ばした。
案の定、偽アリアはひたすら剣を振りかざし、自分に飛んでくる風の刃を必死に斬り潰していた。どれだけ攻撃を防がれようと、僕も剣に魔力を込めては刃を振りかざし続ける。
しばらくはそんな泥仕合を続けていたが、だんだんこちらの魔力が少なくなってくる。逆に、偽アリアの方は動きがほとんど鈍っていない。
「いくら攻撃したって無駄だよ、クリム! 私は魔物……疲れ知らずなんだから!!」
「くっ……なら、一気に決着をつける!」
夜空へとガラスの剣を掲げ、自分の中に残る魔力をすべて注ぎ込む。どこまでも広がる空の下なら、この力ですべてを終わらせることだってできる。
「罪深き魂よ、我が断罪の剣の前にひれ伏せ。すべての罪を贖わせる為、奈落の底へと突き落とさん────!」
僕の身体が青白い光に包まれ、滾る魔力で満たされていく。できる限り早口で詠唱して、偽アリアに向けて複数の魔法陣を召喚した。
すでに風の刃を放つのをやめていたので、当然向こうにも動く隙が生まれていた。僕の動きに気づいた偽アリアが、詠唱を止めようとしているのか翼を広げる。
「クリムの邪魔をしないで! 〈光よ、我が敵を斬り裂け〉!!」
偽アリアの意識が僕に向いていたからなのか、アリアが放った光の刃を回避する猶予はなかった。死角から襲いかかってきた光の魔力には対抗できず、偽アリアは体勢を崩した。
────もう一人の自分に攻撃されてもなお、僕に注意を戻すことができていたなら、偽アリアにも勝てるチャンスは残っていたかもしれない。
「『天帝天誅』!!」
掲げた剣を振り下ろし、生み出した魔法陣から青白い光を一斉に解放させた。夜の草原にまぶしい光の海が生まれ、宵闇を白く埋め尽くしていく。
身体が軋むように痛みを発している。息切れが激しく、汗も止まらない。僕の魔力はすべて出し切ってしまい、肩で呼吸しないとすぐに胸が苦しくなりそうだ。
やがて、光がどんどん薄くなって消えていく。今にも力が抜けそうだったが、せめて墜落しないように翼に力を入れて、ゆっくりと地面へ近づいてから降り立とうとした。しかし、地面に足をつけようとする前に意識が揺らぎ、身体がふわりとバランスを崩した。
そこに、誰かが駆けつけてくれた。昔から知る、懐かしい甘い匂いが僕の鼻をくすぐった。
「よく頑張ったね、クリム。お疲れ様……って、こんな言葉だけじゃ足りないよね」
空から落ちた僕を、アリアが優しく受け止めて抱きしめてくれた。それだけじゃなくて、僕の頭を優しく、優しく撫でてくれる。大きく華奢な手がとても懐かしく、頭だけじゃなくて心まで温かくなるような気がした。
「百年間、私のために頑張ってくれていたんでしょ? 私は正直『もうダメだ』って思って、生きるのを諦めてたのに……クリムは諦めなかったね。あなたは私以上に優秀で、優しい神様だよ」
泣きたくなるくらい優しい労いに、返す言葉を見つけられなかった。憧れていたひとに、こんな言葉をかけられる日がくるなんて思っていなかったのだ。
いつもなら、「大したことじゃない」と淡々と返せたはずだった。僕は、自分が思う以上に気を張り続けていたのかもしれない。そうでなかったら、言葉を失うほど感情を揺さぶられたりしない。
「そう……私も、クリムのそういうところが好きになっちゃったの」
そんな声が聞こえたとき、アリアがはっと息を飲んだ。僕が少しだけアリアから離れると、神幻術を受けてボロボロになった偽アリアが佇んでいるのが見えた。向こうも、さすがに高エネルギーを直に受けたら無事でいられるはずもなかったようで、フラフラになっている。
「私、アリアの中に入って自我を得ちゃったの。自我を得て最初に見たのは、アリアの記憶だった。その中にクリムとの尊い記憶があったんだ。優しい女神と、女神に憧れる天使……私も二人みたいになりたかった。たとえ、自分がただの魔物だとわかっていても」
偽アリアの手に大剣はない。ふと、彼女の背後を見ると、薄桃色の大剣の実体が薄くなり、光の粒となって消えかかっている。
傷だらけになり、翼も使えなくなった彼女もまた、武器と同じように光の粒をまとい始めた。彼女はぽろぽろと涙をこぼして、僕たちを切ない表情で見つめていた。
「だけど、私はアリアにはなれなかった。私はただの偽物でしかないから、どう頑張ったって本物にはなれないんだ。本当は気づいてた。でも、クリムのことをどうしても諦めきれなかったの……!」
彼女には、もう戦う意思はないみたいだった。ひたすら涙をこぼして、だんだん気持ちが昂ってきたのか、その場で泣き崩れてしまっている。
僕はアリアから離れ、もう一人のアリアの方へ近づいた。アリアは一瞬だけ僕を引き留めようとしたけれど、僕のやろうとしていることを察したのか無理やりには止めなかった。
泣き崩れるもう一人のアリアの前に立った僕は、彼女の目線に合わせてゆっくりとしゃがみ込む。それに気づいた彼女は、目を真っ赤にしながら顔を上げた。
「今までありがとう、アリア」
「え……どうして?」
「デミ・ドゥームズデイでアリアが致命傷を負ってから、彼女はアストラルに対抗し続けて暴走した状態になっていた。でも、君はアリアとして周りに振る舞い続けることで、みんなにとってのアリアを守ってくれた。それに、どんな形であれ僕を支えてくれていたから……お礼くらいは言っておかないとって」
僕がそう言ったとき、もう一人のアリアが感極まった表情を浮かべて、僕に勢いよく抱き着いてきた。後ろにひっくり返りそうになったところをなんとか踏ん張って、地面に倒れるのは避けた。
彼女は、僕を抱きしめながら大声を上げて泣くばかりだ。身体が光に包まれて、どんどん薄くなっていっているのに。
「やっぱり、クリムは優しいね。私は自分の思いばっかり押し付けちゃったのに。私の力、あなたに全部あげる。自我が消えてしまったって、私はずっとあなたを忘れないから……!」
実体が光の粒となって消えていき、抱きしめられる感覚がなくなっていく。温もりも姿も、すべて薄っすらとした光へ変わってしまった。
光の粒はすぐに霧散せず、なぜか僕の右目に飛び込んできた。あまりのまぶしさに目をつぶったがすでに遅く、何か温かいものが右目に染み渡る。それと同時に、僕を苛んできた右目の痛みが、ゆっくりと引いていった。
血も流れていないし、普段と何も変わらない状態だ。戦闘中、ほぼずっと痛みに耐えていたのが嘘のようだった。
「私の身体に入ったから、魔物でも自我が芽生えたって……そんなこと、本当にありえるのかなぁ?」
呆然としていた僕に歩み寄りながら、アリアがそんなことを呟いた。僕は立ち上がりつつ、見えなくなってしまった彼女のことを思い返しながら言った。
「ありえなくはないと思うよ。魔物自体、アストラルでできた存在らしいし。僕も、他の神に乗り移った魔物を見たことがあるから」
「へ、へぇ……? 私、百年分は猛勉強しないとまずいかも」
若干青ざめているアリアだったが、僕は逆に安心感で満たされていた。もう一人のアリアが頑張ってくれていたから、こうして本来の彼女を取り戻すことができたのかもしれない。
「それより、アリア。ずっと言いたかったことがあるんだ」
「え? 改まってどうしたの?」
アリアの前に立った僕は、高揚感を内に秘めたまま彼女を見上げた。彼女が戻ってきたら、必ず言おうと思っていたんだ。
「────長い間待ってたよ。おかえり、アリア」
「……うん! ただいま、クリム!」
できる限りの笑顔で告げた僕に、アリアもまた満面の笑顔を返してくれた。
その直後、僕たちが笑い合う横に何かが勢いよく落ちてきて、すさまじい風と土煙が巻き起こった。
シファによって生み出されただけの偽物が、信じられないと言いたげな目で僕たちを凝視していた。僕も正直、今の光景を信じ切れていない。
アリアを暴走させていた原因であるアストラルを取り除いた直後、アリアは意識を失っていた。それからまもなく、僕とヴィータだけシファによって場所を転移させられたから、どんな状態だったかわからなかった。
僕を支えるアリアの両手から、ほんのりと優しく白い光が溢れてくる。その光は僕を温かく包み込んでくれて、身体中の痛みがゆっくりと引いていく。右目を軽く拭った手が若干赤く染まっていたので、また出血したようだがすでに止まっているみたいだ。
「セルジュにはデウスプリズンにいてもらってるよ。あの子、いつの間にかすごく大きくなってたね。私、びっくりしちゃった」
「それより、アリア……目が覚めたばかりなら、無理は……!」
「クリムがいないって気づいて、行かなきゃいけないって思ったから来たんだ。私も、あの子には言いたいことがあるの。立てる?」
アリアがそう言ったときには、僕の身体の痛みは消えていた。右目はまだ痛んでいるけれど、出血は完全に止まっている。アリアも僕を翼で包み込むのをやめて、僕の手を掴んで立たせてくれた。手放してしまっていたガラスの剣を再び拾い上げ、しっかりと握り直す。
彼女は自分の武器を召喚することもせず、僕の前に立ち塞がる。もう一人の自分──偽アリアに、勇敢にも対峙してみせたのだ。白銀の翼が生えた彼女の大きな背中は、まさに僕がずっと憧れて追い続けてきた優しい天使の証だった。
「よくも、私の身体で百年間も嘘ばらまいてくれたわね」
そう切り出したアリアの口調は厳しいものだった。偽アリアは不思議そうに首を傾げる。
「でも、私に身体を貸してくれたのは、他でもないあなたじゃない」
「違う! デミ・ドゥームズデイのときは変な力に抵抗するのに必死だったから、あなたに構ってる余裕がなかったの! そうこうしてるうちに意識がなくなっちゃうし、気づいたら百年経ってたし……! あなたがいなかったらこんなにこじれたりしなかったわよ、絶対!!」
少し言葉を荒げながら、偽アリアを指さすアリア。二人の会話から、なんとなく当時の状況が見えてきた気がする。
偽アリアは、自分のことを「デミ・ドゥームズデイでばらまかれたアストラルから生まれた魔物」と言っていた。彼女がアリアの中にいたことが、暴走を伴う黒幽病の原因になっていたという事実は確かだろう。
アイリス様がアリアにリミッターをかけていたとき、彼女は以前とは若干違う性格になって周囲に振る舞っていた。僕や他のアーケンシェンみたいにアリアをよく知る者以外は気づけなかったくらい、本当に若干の違いしかなかった。そのくらい、魔物のなり損ないはアリアに「擬態」できていたわけだ。僕たちだって、ただの「後遺症」で済ませてしまっていた。
「ていうか、あなたはなんで百年間もクロウを忘れたフリをしてたの? そんな嘘吐く理由、どこにもなかったでしょ!?」
「その方がクリムに都合がいいかもって思ったから。私、クリムのことはなんだって知ってるよ。自分が殺した存在のことを忘れたかったことも、本物のあなたを助けるために一人で頑張り続けてたことも。最初から知ってたけど、必死に頑張る姿が可愛かったから知らないフリをしてたんだ」
偽アリアが浮かべたのは、無邪気でにんまりとした笑顔だった。今まで見たことのない笑い方だったので、思わず後ずさりしてしまう。そんな僕の様子を見てか、アリアは僕の前に立ったまま両手を広げる。
「でも、クリムが私を好きになることはなかった。最初に思い切り拒絶されちゃったし。だから、あとは適当に色々な男の子が好きなだけのおねーちゃんを装ってた。その方が自然にクリムに触れられるって思ったから。浮気性に思われたかもしれないけど、私はずっとクリム一筋だから許してくれるよね?」
「……クリムが許しても、私が許せないんだけど? ねぇ?」
今、アリアがどんな顔をしているのかはわからなかった。しかし、翼と身体が小刻みに震えていて、声も怒ったものに聞こえた。偽アリアの方は逆に、にっこりと満面の笑顔を浮かべる。
「あなただって、クリムのことは気に入ってたんでしょ? それなら、別に結果オーライじゃない」
「ほんっと勝手な子ね! 私はただ、あなたが私の身体で好き勝手してたのが許せないの!! クリムやティアルたちにも嘘を吐き続けて、私からクロウの存在を抹消しようとしたあなたなんか、絶対に許さないから!!」
アリアが怒鳴りながら、薄桃色の大剣を召喚した。その刃は刃こぼれだらけなことに気づき、彼女はえっ、と僅かに狼狽える。
「外野はすっこんでろ、『《Xeno Alis》』!!」
「────アリア!!」
遠くから声が聞こえたと同時に、右目が一際強く痛んだ。僕はその痛みで弾かれるように動き出し、アリアに飛びついてその場に転がり込んだ。僕たちがちょうど立っていた場所に、黒結晶の鋭い欠片が突き刺さったのが見えた。
僕は昂る感情に任せて、結晶でできた翼で宙に浮かぶシファを睨みつけて叫んだ。
「シファ! 僕はいいけど、アリアに攻撃するな!!」
「どうせ同じ敵なんだから普通だろ! バカじゃねーの!」
「あなたの相手はこちらです、シファ! 『《Gladiolus Fortia》』!」
シファが攻撃を仕掛けようとしたとき、ヴィータが銀色の長剣のようなものを召喚して、高く飛び上がりながら牽制した。今まで制限していた力を解放したゆえなのか、僕も見たことがない星幽術を使って戦っているようだ。
向こうの戦況も気になるが、今はアリアを守るのが優先だ。
「アリア、大丈夫?」
「特に怪我はしてないけど……いつの間にそんな無茶するようになったの、クリム?」
一緒に転がり込んだアリアを起こしたとき、少し咎めるような口調でそう言われた。はっとした僕は、必死なあまりかなり危険な行動をとったと気づかされる。
「ご、ごめん。アリアが危ないって思ったら、身体が勝手に……」
「別に怒ってるわけじゃないよ。でも、クリムに何かあったら、困るのは私たちなんだからね」
アリアは、身を縮ませてしまう僕に苦笑いしていた。僕にとって、これは胸が痛くなるほどの優しさだった。今はまだ、そんな大事なものを向けられても困ってしまう。
「ところで、あの子たちは誰?」
「覚えてないの? 僕たちの味方のヴィータと、敵のシファ。アリアはシファのせいで大変だったんだよ」
「そうなんだ。覚えてはいないんだけど……あとでお礼を言わなきゃ」
「────こっちのこと忘れないでよっ!!」
叫び声とともに殺気を感じ、とっさに片手を突き出して魔法陣型の障壁を展開した。すぐさま大きな衝撃が腕から伝わってくる。偽アリアが鬼のような形相で、僕たちに向かって大剣を振り下ろしてきたのだ。
もう片手で握っていたガラスの剣で、偽アリアの懐へと刃を差し込もうとした。しかし、彼女もまた僕の行動に気づいて飛び退き、一度僕たちから距離をとった。
「本物がいたら、私のことなんてどうでもよくなっちゃうじゃない! 今度は私のことも見てよ! 私はずっと、あなたのために頑張ってきたのに!!」
人目もはばからず怒鳴り散らした偽アリアの身体から、金色の光が溢れ出す。普通の光の魔力に見えるが、これまでの経緯を考えれば放たれている力はアストラルと見た方がいいだろう。
僕はアリアの前に歩み出て、ガラスの剣を構え直した。
「アリアは下がってて。あのひととは僕が戦う」
「わ、私も戦う! クリムにばかり無理させるわけにはいかないよ!」
「アリアの武器、使い物にならなくなってたでしょ。それに僕としても、あのアリアとはけじめをつけなきゃいけないと思ってたから」
覚悟を決めて駆け出すと同時に、偽アリアもまた僕めがけて大剣を振りかざそうとしてきた。僕は翼を広げ、偽アリアの頭上へ飛び上がる。彼女の死角から剣を突き立てようとしたが、寸でのところで彼女が振り返った。
「もう終わりにしてよ、クリムッ!!」
大剣をガラスの刃にぶつけられると同時に、まばゆい光が弾けた。爆風と衝撃によって、僕は空へ吹き飛ばされる。力が抜けてしまいそうだったが、剣は絶対に手放さないようグリップを握る。修理されたばかりなゆえか、ガラスの刃はまだ折れていない。吹き飛ばされながらも翼を広げ、空中で浮遊し自分の動きを制御する。
「〈風よ、我が敵を斬り裂け〉!!」
刃に風の魔力をまとわせて、偽アリアへ風の刃を飛ばした。しかし、やっぱり剣で斬られ消滅させられる。それでも、自分の中の魔力を剣に流し込み続け、一気に複数の風の刃を放った。とにかく、攻撃の手数を増やすためにありったけの魔力を飛ばした。
案の定、偽アリアはひたすら剣を振りかざし、自分に飛んでくる風の刃を必死に斬り潰していた。どれだけ攻撃を防がれようと、僕も剣に魔力を込めては刃を振りかざし続ける。
しばらくはそんな泥仕合を続けていたが、だんだんこちらの魔力が少なくなってくる。逆に、偽アリアの方は動きがほとんど鈍っていない。
「いくら攻撃したって無駄だよ、クリム! 私は魔物……疲れ知らずなんだから!!」
「くっ……なら、一気に決着をつける!」
夜空へとガラスの剣を掲げ、自分の中に残る魔力をすべて注ぎ込む。どこまでも広がる空の下なら、この力ですべてを終わらせることだってできる。
「罪深き魂よ、我が断罪の剣の前にひれ伏せ。すべての罪を贖わせる為、奈落の底へと突き落とさん────!」
僕の身体が青白い光に包まれ、滾る魔力で満たされていく。できる限り早口で詠唱して、偽アリアに向けて複数の魔法陣を召喚した。
すでに風の刃を放つのをやめていたので、当然向こうにも動く隙が生まれていた。僕の動きに気づいた偽アリアが、詠唱を止めようとしているのか翼を広げる。
「クリムの邪魔をしないで! 〈光よ、我が敵を斬り裂け〉!!」
偽アリアの意識が僕に向いていたからなのか、アリアが放った光の刃を回避する猶予はなかった。死角から襲いかかってきた光の魔力には対抗できず、偽アリアは体勢を崩した。
────もう一人の自分に攻撃されてもなお、僕に注意を戻すことができていたなら、偽アリアにも勝てるチャンスは残っていたかもしれない。
「『天帝天誅』!!」
掲げた剣を振り下ろし、生み出した魔法陣から青白い光を一斉に解放させた。夜の草原にまぶしい光の海が生まれ、宵闇を白く埋め尽くしていく。
身体が軋むように痛みを発している。息切れが激しく、汗も止まらない。僕の魔力はすべて出し切ってしまい、肩で呼吸しないとすぐに胸が苦しくなりそうだ。
やがて、光がどんどん薄くなって消えていく。今にも力が抜けそうだったが、せめて墜落しないように翼に力を入れて、ゆっくりと地面へ近づいてから降り立とうとした。しかし、地面に足をつけようとする前に意識が揺らぎ、身体がふわりとバランスを崩した。
そこに、誰かが駆けつけてくれた。昔から知る、懐かしい甘い匂いが僕の鼻をくすぐった。
「よく頑張ったね、クリム。お疲れ様……って、こんな言葉だけじゃ足りないよね」
空から落ちた僕を、アリアが優しく受け止めて抱きしめてくれた。それだけじゃなくて、僕の頭を優しく、優しく撫でてくれる。大きく華奢な手がとても懐かしく、頭だけじゃなくて心まで温かくなるような気がした。
「百年間、私のために頑張ってくれていたんでしょ? 私は正直『もうダメだ』って思って、生きるのを諦めてたのに……クリムは諦めなかったね。あなたは私以上に優秀で、優しい神様だよ」
泣きたくなるくらい優しい労いに、返す言葉を見つけられなかった。憧れていたひとに、こんな言葉をかけられる日がくるなんて思っていなかったのだ。
いつもなら、「大したことじゃない」と淡々と返せたはずだった。僕は、自分が思う以上に気を張り続けていたのかもしれない。そうでなかったら、言葉を失うほど感情を揺さぶられたりしない。
「そう……私も、クリムのそういうところが好きになっちゃったの」
そんな声が聞こえたとき、アリアがはっと息を飲んだ。僕が少しだけアリアから離れると、神幻術を受けてボロボロになった偽アリアが佇んでいるのが見えた。向こうも、さすがに高エネルギーを直に受けたら無事でいられるはずもなかったようで、フラフラになっている。
「私、アリアの中に入って自我を得ちゃったの。自我を得て最初に見たのは、アリアの記憶だった。その中にクリムとの尊い記憶があったんだ。優しい女神と、女神に憧れる天使……私も二人みたいになりたかった。たとえ、自分がただの魔物だとわかっていても」
偽アリアの手に大剣はない。ふと、彼女の背後を見ると、薄桃色の大剣の実体が薄くなり、光の粒となって消えかかっている。
傷だらけになり、翼も使えなくなった彼女もまた、武器と同じように光の粒をまとい始めた。彼女はぽろぽろと涙をこぼして、僕たちを切ない表情で見つめていた。
「だけど、私はアリアにはなれなかった。私はただの偽物でしかないから、どう頑張ったって本物にはなれないんだ。本当は気づいてた。でも、クリムのことをどうしても諦めきれなかったの……!」
彼女には、もう戦う意思はないみたいだった。ひたすら涙をこぼして、だんだん気持ちが昂ってきたのか、その場で泣き崩れてしまっている。
僕はアリアから離れ、もう一人のアリアの方へ近づいた。アリアは一瞬だけ僕を引き留めようとしたけれど、僕のやろうとしていることを察したのか無理やりには止めなかった。
泣き崩れるもう一人のアリアの前に立った僕は、彼女の目線に合わせてゆっくりとしゃがみ込む。それに気づいた彼女は、目を真っ赤にしながら顔を上げた。
「今までありがとう、アリア」
「え……どうして?」
「デミ・ドゥームズデイでアリアが致命傷を負ってから、彼女はアストラルに対抗し続けて暴走した状態になっていた。でも、君はアリアとして周りに振る舞い続けることで、みんなにとってのアリアを守ってくれた。それに、どんな形であれ僕を支えてくれていたから……お礼くらいは言っておかないとって」
僕がそう言ったとき、もう一人のアリアが感極まった表情を浮かべて、僕に勢いよく抱き着いてきた。後ろにひっくり返りそうになったところをなんとか踏ん張って、地面に倒れるのは避けた。
彼女は、僕を抱きしめながら大声を上げて泣くばかりだ。身体が光に包まれて、どんどん薄くなっていっているのに。
「やっぱり、クリムは優しいね。私は自分の思いばっかり押し付けちゃったのに。私の力、あなたに全部あげる。自我が消えてしまったって、私はずっとあなたを忘れないから……!」
実体が光の粒となって消えていき、抱きしめられる感覚がなくなっていく。温もりも姿も、すべて薄っすらとした光へ変わってしまった。
光の粒はすぐに霧散せず、なぜか僕の右目に飛び込んできた。あまりのまぶしさに目をつぶったがすでに遅く、何か温かいものが右目に染み渡る。それと同時に、僕を苛んできた右目の痛みが、ゆっくりと引いていった。
血も流れていないし、普段と何も変わらない状態だ。戦闘中、ほぼずっと痛みに耐えていたのが嘘のようだった。
「私の身体に入ったから、魔物でも自我が芽生えたって……そんなこと、本当にありえるのかなぁ?」
呆然としていた僕に歩み寄りながら、アリアがそんなことを呟いた。僕は立ち上がりつつ、見えなくなってしまった彼女のことを思い返しながら言った。
「ありえなくはないと思うよ。魔物自体、アストラルでできた存在らしいし。僕も、他の神に乗り移った魔物を見たことがあるから」
「へ、へぇ……? 私、百年分は猛勉強しないとまずいかも」
若干青ざめているアリアだったが、僕は逆に安心感で満たされていた。もう一人のアリアが頑張ってくれていたから、こうして本来の彼女を取り戻すことができたのかもしれない。
「それより、アリア。ずっと言いたかったことがあるんだ」
「え? 改まってどうしたの?」
アリアの前に立った僕は、高揚感を内に秘めたまま彼女を見上げた。彼女が戻ってきたら、必ず言おうと思っていたんだ。
「────長い間待ってたよ。おかえり、アリア」
「……うん! ただいま、クリム!」
できる限りの笑顔で告げた僕に、アリアもまた満面の笑顔を返してくれた。
その直後、僕たちが笑い合う横に何かが勢いよく落ちてきて、すさまじい風と土煙が巻き起こった。
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