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不思議な力
18話
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私たちが目を開けると…
「アリス!」
一人の少女が凄い勢いで飛びついて、力一杯私を抱き締める。
少女の胸で息が出来なくなる。
「リリア…ちょっと苦しい…」
「ごめん…」
リリアは申し訳なさそうに抱き締めるのをやめる。
「ずっと…寂しかった…頑張る…約束したから…」
今度は私からリリアを優しく抱き締めて頭を撫でる。
「よく頑張ったね。見違えるほどに強くなったのがわかるよ。」
「うん…すごく…強くなったよ…」
リリアはどことなく嬉しそうな声で言う。
「おーい!リリアー!アリスー!早くこっち来いよー!」
広間の方から黒いドラゴンを連れたエルフの女性が楽しげに私を呼ぶ。
「リリア、私たちも行こっか」
「うん!」
最後にリリアと私が皆の元へ戻る。
黒いドラゴンがエルフの女性に言う。
『ママ、あの人たちはだぁれ?』
「獣人の方はアリス、人間の方はリリアだ。」
『わかった。』
ドラゴンが私たち二人の前に来る。
『アリス、リリア、ボクはドラゴンです!こんにちわ!』
リリアは私の後ろに隠れる。
とは言っても、リリアの方が少しだけ背が高いので、少しはみ出ているが…
ドラゴンはリリアの様子を見て首を傾げていた。
私はドラゴンの目線に合わせて腰を屈める。
「はい。こんにちわ。ドラゴンさんはとてもいい挨拶をしますね。」
ドラゴンは褒められたと認識したのか嬉しそうに羽をパタパタとさせて喜ぶ。
『エヘヘッ!褒められちゃった嬉しいな~』
リリアが少しだけ私の顔の後ろから顔を出す。
「こ、こんにちわ…」
『リリア、こんにちわ!』
エルフの女性が楽しげにこちらに来る。
「よっ!相変わらず元気そうだな。」
「サリアさん!お久しぶりです!」
「おう。久しぶりだな。クレアと茉莉もお前を待ってるぜ。」
サリアがドラゴンと移動をした直後、私の元へ見た事もない少女が寄ってくる。
リリアはサッと私の後ろに隠れる。
「あんたがアリス?」
「はい。私がアリスですけど…」
「あっそ。」
少女はそれだけを言うとくるっと回って後ろを向く。
「アタシはフィリア。あんたのパーティに入るつもりだから、しっかり覚えておきなさい。」
そのままフィリアは壁の方まで歩いて行く。
その方向にはクレアらしき少女とキツネの獣人らしき少女もいた。
私たちが2人に近づくとクレアらしき少女がこちらに気づいて大きく手を振る。
「アリスー!こっちじゃよー!」
キツネの獣人らしき少女は小さく手を振っていた。
私たちはそのまま2人の所へ行く。
すると、キツネの少女が私の目の前で礼儀正しく頭を下げる。
「私は姓を本間、名を茉莉と言います。よ、よろしくお願いします!」
私は少しだけ恥ずかしそうにモジモジしている茉莉の眼を見る。
「茉莉さん、こちらこそよろしくね。私はアリス・アルフェノーツです。」
茉莉はそれを聞くと少し嬉しそうに言う。
「アリスさんの事はクレアさんからよく聞いてます。例えば、山のようなドラゴンを己の身一つで投げ飛ばしたり、拳を叩きつけるだけでドラゴンのブレスも無力化したんですよね!私は戦うのはあまり得意では無いので凄く憧れちゃいます!」
私はクレアらしき少女を見る。
少女はギクッと言う音が聞こえそうなほど、身体をビクッとさせていた。
少女の反応から、少女がクレアである事は間違いなさそうだ。
それにしても、進化するなんて羨ましい…
クレアはわちゃわちゃと慌ただしく手を振りながら言う。
「だ、だって、茉莉が楽しそうに聞いてくれるんじゃもん!私も少しだけ調子に乗って話し過ぎたけど、楽しそうに聞いてくれる相手に途中で話を辞めるなんて出来ないのじゃ!わかってくれるよな?な?」
「はぁ…」と私は大きくため息をつく。
クレアは少しだけ逃げ腰だった。
「クレアはそう言う人だったね…」
リリアも私の後ろでうんうんと頷いていた。
「ちょっと待つのじゃ!我、どんなヒトだと思われてんのじゃ?!」
わちゃわちゃと両手を振りながら、食い気味に言うクレアを横目に茉莉に聞く。
「他になにか言ってたりしてませんか?例えば、身長の話とか!」
「確か進化してから、自由になった身体でアリスをからかってやるのじゃ!みたいな事を言ってたような気がします。」
「ほう?」
私はクレアを睨む。
クレアはわかりやすいほどに滝汗をかいていた。
茉莉は「そうだ!」と何かを思い出した様子で言う。
「クレアさんはアリスさんの事をとても強くて頼れる存在だとも言ってましたよ。私に対しても、アリスに任せれば全て大丈夫なのじゃ!と嬉しそうに言ってましたよ。」
「頼れる存在ねぇ…」
今度はリリアがイタズラな笑みを浮かべてクレアを見る。
クレアは顔を真っ赤に染めながら、そっぽ向く。
「べ、別に!我の主の事なのじゃから、当然の事を言ったまでじゃ!」
余程恥ずかしかったのか、文字通りに頭から湯気が出ていた。
私はクレアの目の前まで歩いて行き、背伸びして頭を撫でる。
「な、なんじゃ!?」
クレアは驚いた表情で言う。
「ふふっ♪クレアは大きくなってもクレアで良かったと思っただけよ。」
「…当然じゃろ。」
クレアがポツリと言う。
「ドゴォォォォォォォォ!」と地響きとともに轟音が響き、壁の一部が壊れる。
「きゃうん!」
「な、なに?!」
茉莉が突然の轟音に驚いて私に抱きつく。
私も驚いたが、リリアが呆れた様子で言う。
「マリアとグレンが戦ってるの…とても…うるさい…」
「そ、そうなんだ…」
そう言えば、よく聞くとさっきからずっと戦闘音が聞こえるなと思ってたところなのだった。
「喰らえ!炎王流星!」
「雫よ!魔法剣!」
再び爆音と共に激しく剣をうち合う男女の声が聞こえる。
「あぅぅぅ…」
茉莉がすっかり怯えてしまって抱き締める力が段々強くなる。
「ちょ…苦しい…」
「アカン!これは完璧に決まっとるやつや!」
その様子を見ていたクレアが思わず遥か東洋の言葉使いになる。
リリアがオロオロと私と茉莉を交互に見る。
「いったいわね…」
瓦礫の中からブチ切れたと言いたげなフィリアが這い出てくる。
フィリアは穴が空いた方を向く。
「この…」
フィリアが光属性の魔力を展開する。
「ちょ?!待ってくれ!」
少年の悲痛な叫びが聞こえたと共にフィリアが言う。
「アホンダラァァァァァァァァァァ!!!!!」
極太の光のレーザーが放たれる。
数秒の眩い光と灼熱の高温が辺りに満ちる。
「…キレイに焦げてるわね。」
おそらく、マリアの声と思われる少女の声が聞こえる。
茉莉は抱き締める力が弱まる程に呆然と見ていた。
「し、死んだかと思った…」
そんな事を私が言ってる隙に完全にブチ切れたフィリアが言う。
「もっと周りを見やがれ!てめぇらが暴れ回ってくれたおかげでこっちにまで被害が出てんだよ!脳筋バカも大概にしやがれ!」
その声量で目の前の壁が吹き飛ぶほどには凄い勢いだった。
飛んで行った破片の一部が二人の頭に当たる。
「すんませんでした…」
「ごめんなさい…」
かなり距離があるにもかかわらず、2人とも土下座しながら若干震えていた。
「全く…」
フィリアは呆れた様子で言う。
私はフィリアにお礼を言う
「フィリアさんのおかげで助かりました…ありがとうね。」
フィリアは顔をプイっと背けると言う。
「別に…あのバカどもがうるさかっただけだし…」
茉莉がフィリアの手を握って言う。
「あ、あの…ありがとうございます!」
「…」
フィリアは驚いた表情で茉莉を見ると顔が真っ赤になる。
そんな様子を知ってか知らずか、グラディオスがやって来る。
「おう!お前ら、元気か…って、なんだなんだ?壁にでっけぇ穴空いてるし、なんかめっちゃ空気重くね?!」
ダリアンがその後ろから言う。
「そんな事より、アリスのパーティーも集めなくても良いのかしら?」
「おお!そうだったぜ!」
外からマリアと少年が戻ってくる。
「後はお前らだけだからな。もう皆集まってるから、さっさとブリーフィングルームに行くぞ。」
私たちはそれを聞いて素早く移動する。
…
私はブリーフィングルームの扉を開ける。
「遅れてごめんなさい!」
この場には見慣れない騎士の人も居た。
リリアは相変わらず私の後ろに隠れながら、おっかなびっくりしている。
クレアと少年は堂々と歩いてくる。
マリアは背筋を伸ばしている。
フィリアはめんどくさそうについてきていた。
茉莉は私の隣で楽しげにキョロキョロと辺りを見回していた。
ダリアンは如何にもダルそうに浮いていた。
グラディオスが皆の前に出て言う。
「さて、国防騎士隊の皆は言いたい事は山ほどあるだろうが、一先ずそれは水に流して、自己紹介をしてやってくれ。」
国防騎士隊側は5人。
男性が4人と女性が1人だ。
男性はそれぞれ違う色の重そうな兜に鎧で身を固めていたが女性の方は鎧に身を包んでいながら、黄金に輝く長い髪に凛と整った顔がよく見える。
1人目の赤い鎧の国防騎士隊が鋭い眼光を携えて自己紹介する。
「俺は国防騎士隊第三部隊隊長、グランディア・アスタレトだ。」
2人目の青い鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら言う。
「僕は国防騎士隊第二部隊隊長のレヴリールです。よろしくお願いします。」
レヴリールは礼儀正しくお辞儀をする。
彼の長く美しい青髪と青い瞳がキラキラと輝く。
3人目の紫の鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら眠そうに言う。
「わたしは…国防騎士隊…第一部隊…隊長…アンドレウス・ノイマンです…」
緋色の短い髪に赤みがかかった眼がどことなくノワールを連想させる。
ノイマンと言う名前も共通している事から、多分ノワールの親族の人だ。
偶然隣にいたノワールが耳打ちする。
「分家の人だよ。今の私がここに居られるのも彼のおかげ。」
ノワールの一族は皆、眠そうな感じになるんだそう。
4人目の黒い鎧の国防騎士隊がどことなく恥ずかしそうに言う。
「オレは国防騎士隊第四部隊隊長のアルフォティー…」
最後に黄金に輝く髪を揺らしながら、国防騎士隊が言う。
「私は国防騎士隊特別部隊隊長のカレン・アルフェノーツだ!」
そして、私たち冒険者側も自己紹介をすませる。
グラディオスから簡単な依頼内容の確認とルートの説明がされる。
「そして、お前たち、それぞれの担当する班にここの5人を含めた国防騎士隊が補佐役として最低でも一人は着く事が義務づけられているから、仲良くしてやってくれ。それぞれの担当する班が大丈夫だと思ったら、合格を出しても良しとする。逆に不合格にするのもありだ。ただし、補佐役の国防騎士隊も決める事が可能である為、よく相談して決めるように。以上!」
私はリリアとカレンの要望もあって、最高の成績を収めた6人の候補の隊ともう一つの6人の隊を担当する事になった。
さらにカレンが茉莉を指名して私たちは4人で二つの隊を担当する事になった。
カレンが言うにはこちらは特別部隊の候補なので死なせたくないそうだ。
こうして、私たちの大掛かりな依頼が始まったのだ。
この後、各隊との顔合わせの為に各自で移動する事になっている。
私たちもその顔合わせの為に移動をしていた。
その移動の最中、カレンが嬉しそうに…って言うか、めっちゃウッキウキで言う。
「まさか、私と同じセカンドネームを持ってる人がいたなんてね。それもこんな可愛いお嬢さんときたもんだ。嬉しい事この上ないよな!」
リリアが私の後ろでうんうんと頷いていた。
茉莉はピコピコと耳を動かしながら、興味深そうに周りを見ていた。
…
しばらくして、金属製のある扉の前でカレンが立ち止まる。
よそ見していた茉莉が扉にぶつかって痛そうに顔を抑えて蹲る。
茉莉がぶつかった事で扉から「ゴーン」と大きな音が出て、眠そうにしていたリリアがびっくりしていた。
カレンはチラリと痛そうにしている茉莉を見て言う。
「…ここが私たちの担当の隊がいる部屋だな。」
茉莉が立ち直ったのを見てカレンが扉を開ける。
「アリス!」
一人の少女が凄い勢いで飛びついて、力一杯私を抱き締める。
少女の胸で息が出来なくなる。
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「ずっと…寂しかった…頑張る…約束したから…」
今度は私からリリアを優しく抱き締めて頭を撫でる。
「よく頑張ったね。見違えるほどに強くなったのがわかるよ。」
「うん…すごく…強くなったよ…」
リリアはどことなく嬉しそうな声で言う。
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広間の方から黒いドラゴンを連れたエルフの女性が楽しげに私を呼ぶ。
「リリア、私たちも行こっか」
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『ママ、あの人たちはだぁれ?』
「獣人の方はアリス、人間の方はリリアだ。」
『わかった。』
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『アリス、リリア、ボクはドラゴンです!こんにちわ!』
リリアは私の後ろに隠れる。
とは言っても、リリアの方が少しだけ背が高いので、少しはみ出ているが…
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私はドラゴンの目線に合わせて腰を屈める。
「はい。こんにちわ。ドラゴンさんはとてもいい挨拶をしますね。」
ドラゴンは褒められたと認識したのか嬉しそうに羽をパタパタとさせて喜ぶ。
『エヘヘッ!褒められちゃった嬉しいな~』
リリアが少しだけ私の顔の後ろから顔を出す。
「こ、こんにちわ…」
『リリア、こんにちわ!』
エルフの女性が楽しげにこちらに来る。
「よっ!相変わらず元気そうだな。」
「サリアさん!お久しぶりです!」
「おう。久しぶりだな。クレアと茉莉もお前を待ってるぜ。」
サリアがドラゴンと移動をした直後、私の元へ見た事もない少女が寄ってくる。
リリアはサッと私の後ろに隠れる。
「あんたがアリス?」
「はい。私がアリスですけど…」
「あっそ。」
少女はそれだけを言うとくるっと回って後ろを向く。
「アタシはフィリア。あんたのパーティに入るつもりだから、しっかり覚えておきなさい。」
そのままフィリアは壁の方まで歩いて行く。
その方向にはクレアらしき少女とキツネの獣人らしき少女もいた。
私たちが2人に近づくとクレアらしき少女がこちらに気づいて大きく手を振る。
「アリスー!こっちじゃよー!」
キツネの獣人らしき少女は小さく手を振っていた。
私たちはそのまま2人の所へ行く。
すると、キツネの少女が私の目の前で礼儀正しく頭を下げる。
「私は姓を本間、名を茉莉と言います。よ、よろしくお願いします!」
私は少しだけ恥ずかしそうにモジモジしている茉莉の眼を見る。
「茉莉さん、こちらこそよろしくね。私はアリス・アルフェノーツです。」
茉莉はそれを聞くと少し嬉しそうに言う。
「アリスさんの事はクレアさんからよく聞いてます。例えば、山のようなドラゴンを己の身一つで投げ飛ばしたり、拳を叩きつけるだけでドラゴンのブレスも無力化したんですよね!私は戦うのはあまり得意では無いので凄く憧れちゃいます!」
私はクレアらしき少女を見る。
少女はギクッと言う音が聞こえそうなほど、身体をビクッとさせていた。
少女の反応から、少女がクレアである事は間違いなさそうだ。
それにしても、進化するなんて羨ましい…
クレアはわちゃわちゃと慌ただしく手を振りながら言う。
「だ、だって、茉莉が楽しそうに聞いてくれるんじゃもん!私も少しだけ調子に乗って話し過ぎたけど、楽しそうに聞いてくれる相手に途中で話を辞めるなんて出来ないのじゃ!わかってくれるよな?な?」
「はぁ…」と私は大きくため息をつく。
クレアは少しだけ逃げ腰だった。
「クレアはそう言う人だったね…」
リリアも私の後ろでうんうんと頷いていた。
「ちょっと待つのじゃ!我、どんなヒトだと思われてんのじゃ?!」
わちゃわちゃと両手を振りながら、食い気味に言うクレアを横目に茉莉に聞く。
「他になにか言ってたりしてませんか?例えば、身長の話とか!」
「確か進化してから、自由になった身体でアリスをからかってやるのじゃ!みたいな事を言ってたような気がします。」
「ほう?」
私はクレアを睨む。
クレアはわかりやすいほどに滝汗をかいていた。
茉莉は「そうだ!」と何かを思い出した様子で言う。
「クレアさんはアリスさんの事をとても強くて頼れる存在だとも言ってましたよ。私に対しても、アリスに任せれば全て大丈夫なのじゃ!と嬉しそうに言ってましたよ。」
「頼れる存在ねぇ…」
今度はリリアがイタズラな笑みを浮かべてクレアを見る。
クレアは顔を真っ赤に染めながら、そっぽ向く。
「べ、別に!我の主の事なのじゃから、当然の事を言ったまでじゃ!」
余程恥ずかしかったのか、文字通りに頭から湯気が出ていた。
私はクレアの目の前まで歩いて行き、背伸びして頭を撫でる。
「な、なんじゃ!?」
クレアは驚いた表情で言う。
「ふふっ♪クレアは大きくなってもクレアで良かったと思っただけよ。」
「…当然じゃろ。」
クレアがポツリと言う。
「ドゴォォォォォォォォ!」と地響きとともに轟音が響き、壁の一部が壊れる。
「きゃうん!」
「な、なに?!」
茉莉が突然の轟音に驚いて私に抱きつく。
私も驚いたが、リリアが呆れた様子で言う。
「マリアとグレンが戦ってるの…とても…うるさい…」
「そ、そうなんだ…」
そう言えば、よく聞くとさっきからずっと戦闘音が聞こえるなと思ってたところなのだった。
「喰らえ!炎王流星!」
「雫よ!魔法剣!」
再び爆音と共に激しく剣をうち合う男女の声が聞こえる。
「あぅぅぅ…」
茉莉がすっかり怯えてしまって抱き締める力が段々強くなる。
「ちょ…苦しい…」
「アカン!これは完璧に決まっとるやつや!」
その様子を見ていたクレアが思わず遥か東洋の言葉使いになる。
リリアがオロオロと私と茉莉を交互に見る。
「いったいわね…」
瓦礫の中からブチ切れたと言いたげなフィリアが這い出てくる。
フィリアは穴が空いた方を向く。
「この…」
フィリアが光属性の魔力を展開する。
「ちょ?!待ってくれ!」
少年の悲痛な叫びが聞こえたと共にフィリアが言う。
「アホンダラァァァァァァァァァァ!!!!!」
極太の光のレーザーが放たれる。
数秒の眩い光と灼熱の高温が辺りに満ちる。
「…キレイに焦げてるわね。」
おそらく、マリアの声と思われる少女の声が聞こえる。
茉莉は抱き締める力が弱まる程に呆然と見ていた。
「し、死んだかと思った…」
そんな事を私が言ってる隙に完全にブチ切れたフィリアが言う。
「もっと周りを見やがれ!てめぇらが暴れ回ってくれたおかげでこっちにまで被害が出てんだよ!脳筋バカも大概にしやがれ!」
その声量で目の前の壁が吹き飛ぶほどには凄い勢いだった。
飛んで行った破片の一部が二人の頭に当たる。
「すんませんでした…」
「ごめんなさい…」
かなり距離があるにもかかわらず、2人とも土下座しながら若干震えていた。
「全く…」
フィリアは呆れた様子で言う。
私はフィリアにお礼を言う
「フィリアさんのおかげで助かりました…ありがとうね。」
フィリアは顔をプイっと背けると言う。
「別に…あのバカどもがうるさかっただけだし…」
茉莉がフィリアの手を握って言う。
「あ、あの…ありがとうございます!」
「…」
フィリアは驚いた表情で茉莉を見ると顔が真っ赤になる。
そんな様子を知ってか知らずか、グラディオスがやって来る。
「おう!お前ら、元気か…って、なんだなんだ?壁にでっけぇ穴空いてるし、なんかめっちゃ空気重くね?!」
ダリアンがその後ろから言う。
「そんな事より、アリスのパーティーも集めなくても良いのかしら?」
「おお!そうだったぜ!」
外からマリアと少年が戻ってくる。
「後はお前らだけだからな。もう皆集まってるから、さっさとブリーフィングルームに行くぞ。」
私たちはそれを聞いて素早く移動する。
…
私はブリーフィングルームの扉を開ける。
「遅れてごめんなさい!」
この場には見慣れない騎士の人も居た。
リリアは相変わらず私の後ろに隠れながら、おっかなびっくりしている。
クレアと少年は堂々と歩いてくる。
マリアは背筋を伸ばしている。
フィリアはめんどくさそうについてきていた。
茉莉は私の隣で楽しげにキョロキョロと辺りを見回していた。
ダリアンは如何にもダルそうに浮いていた。
グラディオスが皆の前に出て言う。
「さて、国防騎士隊の皆は言いたい事は山ほどあるだろうが、一先ずそれは水に流して、自己紹介をしてやってくれ。」
国防騎士隊側は5人。
男性が4人と女性が1人だ。
男性はそれぞれ違う色の重そうな兜に鎧で身を固めていたが女性の方は鎧に身を包んでいながら、黄金に輝く長い髪に凛と整った顔がよく見える。
1人目の赤い鎧の国防騎士隊が鋭い眼光を携えて自己紹介する。
「俺は国防騎士隊第三部隊隊長、グランディア・アスタレトだ。」
2人目の青い鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら言う。
「僕は国防騎士隊第二部隊隊長のレヴリールです。よろしくお願いします。」
レヴリールは礼儀正しくお辞儀をする。
彼の長く美しい青髪と青い瞳がキラキラと輝く。
3人目の紫の鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら眠そうに言う。
「わたしは…国防騎士隊…第一部隊…隊長…アンドレウス・ノイマンです…」
緋色の短い髪に赤みがかかった眼がどことなくノワールを連想させる。
ノイマンと言う名前も共通している事から、多分ノワールの親族の人だ。
偶然隣にいたノワールが耳打ちする。
「分家の人だよ。今の私がここに居られるのも彼のおかげ。」
ノワールの一族は皆、眠そうな感じになるんだそう。
4人目の黒い鎧の国防騎士隊がどことなく恥ずかしそうに言う。
「オレは国防騎士隊第四部隊隊長のアルフォティー…」
最後に黄金に輝く髪を揺らしながら、国防騎士隊が言う。
「私は国防騎士隊特別部隊隊長のカレン・アルフェノーツだ!」
そして、私たち冒険者側も自己紹介をすませる。
グラディオスから簡単な依頼内容の確認とルートの説明がされる。
「そして、お前たち、それぞれの担当する班にここの5人を含めた国防騎士隊が補佐役として最低でも一人は着く事が義務づけられているから、仲良くしてやってくれ。それぞれの担当する班が大丈夫だと思ったら、合格を出しても良しとする。逆に不合格にするのもありだ。ただし、補佐役の国防騎士隊も決める事が可能である為、よく相談して決めるように。以上!」
私はリリアとカレンの要望もあって、最高の成績を収めた6人の候補の隊ともう一つの6人の隊を担当する事になった。
さらにカレンが茉莉を指名して私たちは4人で二つの隊を担当する事になった。
カレンが言うにはこちらは特別部隊の候補なので死なせたくないそうだ。
こうして、私たちの大掛かりな依頼が始まったのだ。
この後、各隊との顔合わせの為に各自で移動する事になっている。
私たちもその顔合わせの為に移動をしていた。
その移動の最中、カレンが嬉しそうに…って言うか、めっちゃウッキウキで言う。
「まさか、私と同じセカンドネームを持ってる人がいたなんてね。それもこんな可愛いお嬢さんときたもんだ。嬉しい事この上ないよな!」
リリアが私の後ろでうんうんと頷いていた。
茉莉はピコピコと耳を動かしながら、興味深そうに周りを見ていた。
…
しばらくして、金属製のある扉の前でカレンが立ち止まる。
よそ見していた茉莉が扉にぶつかって痛そうに顔を抑えて蹲る。
茉莉がぶつかった事で扉から「ゴーン」と大きな音が出て、眠そうにしていたリリアがびっくりしていた。
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さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
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