27 / 108
不思議な力
18話
しおりを挟む
私たちが目を開けると…
「アリス!」
一人の少女が凄い勢いで飛びついて、力一杯私を抱き締める。
少女の胸で息が出来なくなる。
「リリア…ちょっと苦しい…」
「ごめん…」
リリアは申し訳なさそうに抱き締めるのをやめる。
「ずっと…寂しかった…頑張る…約束したから…」
今度は私からリリアを優しく抱き締めて頭を撫でる。
「よく頑張ったね。見違えるほどに強くなったのがわかるよ。」
「うん…すごく…強くなったよ…」
リリアはどことなく嬉しそうな声で言う。
「おーい!リリアー!アリスー!早くこっち来いよー!」
広間の方から黒いドラゴンを連れたエルフの女性が楽しげに私を呼ぶ。
「リリア、私たちも行こっか」
「うん!」
最後にリリアと私が皆の元へ戻る。
黒いドラゴンがエルフの女性に言う。
『ママ、あの人たちはだぁれ?』
「獣人の方はアリス、人間の方はリリアだ。」
『わかった。』
ドラゴンが私たち二人の前に来る。
『アリス、リリア、ボクはドラゴンです!こんにちわ!』
リリアは私の後ろに隠れる。
とは言っても、リリアの方が少しだけ背が高いので、少しはみ出ているが…
ドラゴンはリリアの様子を見て首を傾げていた。
私はドラゴンの目線に合わせて腰を屈める。
「はい。こんにちわ。ドラゴンさんはとてもいい挨拶をしますね。」
ドラゴンは褒められたと認識したのか嬉しそうに羽をパタパタとさせて喜ぶ。
『エヘヘッ!褒められちゃった嬉しいな~』
リリアが少しだけ私の顔の後ろから顔を出す。
「こ、こんにちわ…」
『リリア、こんにちわ!』
エルフの女性が楽しげにこちらに来る。
「よっ!相変わらず元気そうだな。」
「サリアさん!お久しぶりです!」
「おう。久しぶりだな。クレアと茉莉もお前を待ってるぜ。」
サリアがドラゴンと移動をした直後、私の元へ見た事もない少女が寄ってくる。
リリアはサッと私の後ろに隠れる。
「あんたがアリス?」
「はい。私がアリスですけど…」
「あっそ。」
少女はそれだけを言うとくるっと回って後ろを向く。
「アタシはフィリア。あんたのパーティに入るつもりだから、しっかり覚えておきなさい。」
そのままフィリアは壁の方まで歩いて行く。
その方向にはクレアらしき少女とキツネの獣人らしき少女もいた。
私たちが2人に近づくとクレアらしき少女がこちらに気づいて大きく手を振る。
「アリスー!こっちじゃよー!」
キツネの獣人らしき少女は小さく手を振っていた。
私たちはそのまま2人の所へ行く。
すると、キツネの少女が私の目の前で礼儀正しく頭を下げる。
「私は姓を本間、名を茉莉と言います。よ、よろしくお願いします!」
私は少しだけ恥ずかしそうにモジモジしている茉莉の眼を見る。
「茉莉さん、こちらこそよろしくね。私はアリス・アルフェノーツです。」
茉莉はそれを聞くと少し嬉しそうに言う。
「アリスさんの事はクレアさんからよく聞いてます。例えば、山のようなドラゴンを己の身一つで投げ飛ばしたり、拳を叩きつけるだけでドラゴンのブレスも無力化したんですよね!私は戦うのはあまり得意では無いので凄く憧れちゃいます!」
私はクレアらしき少女を見る。
少女はギクッと言う音が聞こえそうなほど、身体をビクッとさせていた。
少女の反応から、少女がクレアである事は間違いなさそうだ。
それにしても、進化するなんて羨ましい…
クレアはわちゃわちゃと慌ただしく手を振りながら言う。
「だ、だって、茉莉が楽しそうに聞いてくれるんじゃもん!私も少しだけ調子に乗って話し過ぎたけど、楽しそうに聞いてくれる相手に途中で話を辞めるなんて出来ないのじゃ!わかってくれるよな?な?」
「はぁ…」と私は大きくため息をつく。
クレアは少しだけ逃げ腰だった。
「クレアはそう言う人だったね…」
リリアも私の後ろでうんうんと頷いていた。
「ちょっと待つのじゃ!我、どんなヒトだと思われてんのじゃ?!」
わちゃわちゃと両手を振りながら、食い気味に言うクレアを横目に茉莉に聞く。
「他になにか言ってたりしてませんか?例えば、身長の話とか!」
「確か進化してから、自由になった身体でアリスをからかってやるのじゃ!みたいな事を言ってたような気がします。」
「ほう?」
私はクレアを睨む。
クレアはわかりやすいほどに滝汗をかいていた。
茉莉は「そうだ!」と何かを思い出した様子で言う。
「クレアさんはアリスさんの事をとても強くて頼れる存在だとも言ってましたよ。私に対しても、アリスに任せれば全て大丈夫なのじゃ!と嬉しそうに言ってましたよ。」
「頼れる存在ねぇ…」
今度はリリアがイタズラな笑みを浮かべてクレアを見る。
クレアは顔を真っ赤に染めながら、そっぽ向く。
「べ、別に!我の主の事なのじゃから、当然の事を言ったまでじゃ!」
余程恥ずかしかったのか、文字通りに頭から湯気が出ていた。
私はクレアの目の前まで歩いて行き、背伸びして頭を撫でる。
「な、なんじゃ!?」
クレアは驚いた表情で言う。
「ふふっ♪クレアは大きくなってもクレアで良かったと思っただけよ。」
「…当然じゃろ。」
クレアがポツリと言う。
「ドゴォォォォォォォォ!」と地響きとともに轟音が響き、壁の一部が壊れる。
「きゃうん!」
「な、なに?!」
茉莉が突然の轟音に驚いて私に抱きつく。
私も驚いたが、リリアが呆れた様子で言う。
「マリアとグレンが戦ってるの…とても…うるさい…」
「そ、そうなんだ…」
そう言えば、よく聞くとさっきからずっと戦闘音が聞こえるなと思ってたところなのだった。
「喰らえ!炎王流星!」
「雫よ!魔法剣!」
再び爆音と共に激しく剣をうち合う男女の声が聞こえる。
「あぅぅぅ…」
茉莉がすっかり怯えてしまって抱き締める力が段々強くなる。
「ちょ…苦しい…」
「アカン!これは完璧に決まっとるやつや!」
その様子を見ていたクレアが思わず遥か東洋の言葉使いになる。
リリアがオロオロと私と茉莉を交互に見る。
「いったいわね…」
瓦礫の中からブチ切れたと言いたげなフィリアが這い出てくる。
フィリアは穴が空いた方を向く。
「この…」
フィリアが光属性の魔力を展開する。
「ちょ?!待ってくれ!」
少年の悲痛な叫びが聞こえたと共にフィリアが言う。
「アホンダラァァァァァァァァァァ!!!!!」
極太の光のレーザーが放たれる。
数秒の眩い光と灼熱の高温が辺りに満ちる。
「…キレイに焦げてるわね。」
おそらく、マリアの声と思われる少女の声が聞こえる。
茉莉は抱き締める力が弱まる程に呆然と見ていた。
「し、死んだかと思った…」
そんな事を私が言ってる隙に完全にブチ切れたフィリアが言う。
「もっと周りを見やがれ!てめぇらが暴れ回ってくれたおかげでこっちにまで被害が出てんだよ!脳筋バカも大概にしやがれ!」
その声量で目の前の壁が吹き飛ぶほどには凄い勢いだった。
飛んで行った破片の一部が二人の頭に当たる。
「すんませんでした…」
「ごめんなさい…」
かなり距離があるにもかかわらず、2人とも土下座しながら若干震えていた。
「全く…」
フィリアは呆れた様子で言う。
私はフィリアにお礼を言う
「フィリアさんのおかげで助かりました…ありがとうね。」
フィリアは顔をプイっと背けると言う。
「別に…あのバカどもがうるさかっただけだし…」
茉莉がフィリアの手を握って言う。
「あ、あの…ありがとうございます!」
「…」
フィリアは驚いた表情で茉莉を見ると顔が真っ赤になる。
そんな様子を知ってか知らずか、グラディオスがやって来る。
「おう!お前ら、元気か…って、なんだなんだ?壁にでっけぇ穴空いてるし、なんかめっちゃ空気重くね?!」
ダリアンがその後ろから言う。
「そんな事より、アリスのパーティーも集めなくても良いのかしら?」
「おお!そうだったぜ!」
外からマリアと少年が戻ってくる。
「後はお前らだけだからな。もう皆集まってるから、さっさとブリーフィングルームに行くぞ。」
私たちはそれを聞いて素早く移動する。
…
私はブリーフィングルームの扉を開ける。
「遅れてごめんなさい!」
この場には見慣れない騎士の人も居た。
リリアは相変わらず私の後ろに隠れながら、おっかなびっくりしている。
クレアと少年は堂々と歩いてくる。
マリアは背筋を伸ばしている。
フィリアはめんどくさそうについてきていた。
茉莉は私の隣で楽しげにキョロキョロと辺りを見回していた。
ダリアンは如何にもダルそうに浮いていた。
グラディオスが皆の前に出て言う。
「さて、国防騎士隊の皆は言いたい事は山ほどあるだろうが、一先ずそれは水に流して、自己紹介をしてやってくれ。」
国防騎士隊側は5人。
男性が4人と女性が1人だ。
男性はそれぞれ違う色の重そうな兜に鎧で身を固めていたが女性の方は鎧に身を包んでいながら、黄金に輝く長い髪に凛と整った顔がよく見える。
1人目の赤い鎧の国防騎士隊が鋭い眼光を携えて自己紹介する。
「俺は国防騎士隊第三部隊隊長、グランディア・アスタレトだ。」
2人目の青い鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら言う。
「僕は国防騎士隊第二部隊隊長のレヴリールです。よろしくお願いします。」
レヴリールは礼儀正しくお辞儀をする。
彼の長く美しい青髪と青い瞳がキラキラと輝く。
3人目の紫の鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら眠そうに言う。
「わたしは…国防騎士隊…第一部隊…隊長…アンドレウス・ノイマンです…」
緋色の短い髪に赤みがかかった眼がどことなくノワールを連想させる。
ノイマンと言う名前も共通している事から、多分ノワールの親族の人だ。
偶然隣にいたノワールが耳打ちする。
「分家の人だよ。今の私がここに居られるのも彼のおかげ。」
ノワールの一族は皆、眠そうな感じになるんだそう。
4人目の黒い鎧の国防騎士隊がどことなく恥ずかしそうに言う。
「オレは国防騎士隊第四部隊隊長のアルフォティー…」
最後に黄金に輝く髪を揺らしながら、国防騎士隊が言う。
「私は国防騎士隊特別部隊隊長のカレン・アルフェノーツだ!」
そして、私たち冒険者側も自己紹介をすませる。
グラディオスから簡単な依頼内容の確認とルートの説明がされる。
「そして、お前たち、それぞれの担当する班にここの5人を含めた国防騎士隊が補佐役として最低でも一人は着く事が義務づけられているから、仲良くしてやってくれ。それぞれの担当する班が大丈夫だと思ったら、合格を出しても良しとする。逆に不合格にするのもありだ。ただし、補佐役の国防騎士隊も決める事が可能である為、よく相談して決めるように。以上!」
私はリリアとカレンの要望もあって、最高の成績を収めた6人の候補の隊ともう一つの6人の隊を担当する事になった。
さらにカレンが茉莉を指名して私たちは4人で二つの隊を担当する事になった。
カレンが言うにはこちらは特別部隊の候補なので死なせたくないそうだ。
こうして、私たちの大掛かりな依頼が始まったのだ。
この後、各隊との顔合わせの為に各自で移動する事になっている。
私たちもその顔合わせの為に移動をしていた。
その移動の最中、カレンが嬉しそうに…って言うか、めっちゃウッキウキで言う。
「まさか、私と同じセカンドネームを持ってる人がいたなんてね。それもこんな可愛いお嬢さんときたもんだ。嬉しい事この上ないよな!」
リリアが私の後ろでうんうんと頷いていた。
茉莉はピコピコと耳を動かしながら、興味深そうに周りを見ていた。
…
しばらくして、金属製のある扉の前でカレンが立ち止まる。
よそ見していた茉莉が扉にぶつかって痛そうに顔を抑えて蹲る。
茉莉がぶつかった事で扉から「ゴーン」と大きな音が出て、眠そうにしていたリリアがびっくりしていた。
カレンはチラリと痛そうにしている茉莉を見て言う。
「…ここが私たちの担当の隊がいる部屋だな。」
茉莉が立ち直ったのを見てカレンが扉を開ける。
「アリス!」
一人の少女が凄い勢いで飛びついて、力一杯私を抱き締める。
少女の胸で息が出来なくなる。
「リリア…ちょっと苦しい…」
「ごめん…」
リリアは申し訳なさそうに抱き締めるのをやめる。
「ずっと…寂しかった…頑張る…約束したから…」
今度は私からリリアを優しく抱き締めて頭を撫でる。
「よく頑張ったね。見違えるほどに強くなったのがわかるよ。」
「うん…すごく…強くなったよ…」
リリアはどことなく嬉しそうな声で言う。
「おーい!リリアー!アリスー!早くこっち来いよー!」
広間の方から黒いドラゴンを連れたエルフの女性が楽しげに私を呼ぶ。
「リリア、私たちも行こっか」
「うん!」
最後にリリアと私が皆の元へ戻る。
黒いドラゴンがエルフの女性に言う。
『ママ、あの人たちはだぁれ?』
「獣人の方はアリス、人間の方はリリアだ。」
『わかった。』
ドラゴンが私たち二人の前に来る。
『アリス、リリア、ボクはドラゴンです!こんにちわ!』
リリアは私の後ろに隠れる。
とは言っても、リリアの方が少しだけ背が高いので、少しはみ出ているが…
ドラゴンはリリアの様子を見て首を傾げていた。
私はドラゴンの目線に合わせて腰を屈める。
「はい。こんにちわ。ドラゴンさんはとてもいい挨拶をしますね。」
ドラゴンは褒められたと認識したのか嬉しそうに羽をパタパタとさせて喜ぶ。
『エヘヘッ!褒められちゃった嬉しいな~』
リリアが少しだけ私の顔の後ろから顔を出す。
「こ、こんにちわ…」
『リリア、こんにちわ!』
エルフの女性が楽しげにこちらに来る。
「よっ!相変わらず元気そうだな。」
「サリアさん!お久しぶりです!」
「おう。久しぶりだな。クレアと茉莉もお前を待ってるぜ。」
サリアがドラゴンと移動をした直後、私の元へ見た事もない少女が寄ってくる。
リリアはサッと私の後ろに隠れる。
「あんたがアリス?」
「はい。私がアリスですけど…」
「あっそ。」
少女はそれだけを言うとくるっと回って後ろを向く。
「アタシはフィリア。あんたのパーティに入るつもりだから、しっかり覚えておきなさい。」
そのままフィリアは壁の方まで歩いて行く。
その方向にはクレアらしき少女とキツネの獣人らしき少女もいた。
私たちが2人に近づくとクレアらしき少女がこちらに気づいて大きく手を振る。
「アリスー!こっちじゃよー!」
キツネの獣人らしき少女は小さく手を振っていた。
私たちはそのまま2人の所へ行く。
すると、キツネの少女が私の目の前で礼儀正しく頭を下げる。
「私は姓を本間、名を茉莉と言います。よ、よろしくお願いします!」
私は少しだけ恥ずかしそうにモジモジしている茉莉の眼を見る。
「茉莉さん、こちらこそよろしくね。私はアリス・アルフェノーツです。」
茉莉はそれを聞くと少し嬉しそうに言う。
「アリスさんの事はクレアさんからよく聞いてます。例えば、山のようなドラゴンを己の身一つで投げ飛ばしたり、拳を叩きつけるだけでドラゴンのブレスも無力化したんですよね!私は戦うのはあまり得意では無いので凄く憧れちゃいます!」
私はクレアらしき少女を見る。
少女はギクッと言う音が聞こえそうなほど、身体をビクッとさせていた。
少女の反応から、少女がクレアである事は間違いなさそうだ。
それにしても、進化するなんて羨ましい…
クレアはわちゃわちゃと慌ただしく手を振りながら言う。
「だ、だって、茉莉が楽しそうに聞いてくれるんじゃもん!私も少しだけ調子に乗って話し過ぎたけど、楽しそうに聞いてくれる相手に途中で話を辞めるなんて出来ないのじゃ!わかってくれるよな?な?」
「はぁ…」と私は大きくため息をつく。
クレアは少しだけ逃げ腰だった。
「クレアはそう言う人だったね…」
リリアも私の後ろでうんうんと頷いていた。
「ちょっと待つのじゃ!我、どんなヒトだと思われてんのじゃ?!」
わちゃわちゃと両手を振りながら、食い気味に言うクレアを横目に茉莉に聞く。
「他になにか言ってたりしてませんか?例えば、身長の話とか!」
「確か進化してから、自由になった身体でアリスをからかってやるのじゃ!みたいな事を言ってたような気がします。」
「ほう?」
私はクレアを睨む。
クレアはわかりやすいほどに滝汗をかいていた。
茉莉は「そうだ!」と何かを思い出した様子で言う。
「クレアさんはアリスさんの事をとても強くて頼れる存在だとも言ってましたよ。私に対しても、アリスに任せれば全て大丈夫なのじゃ!と嬉しそうに言ってましたよ。」
「頼れる存在ねぇ…」
今度はリリアがイタズラな笑みを浮かべてクレアを見る。
クレアは顔を真っ赤に染めながら、そっぽ向く。
「べ、別に!我の主の事なのじゃから、当然の事を言ったまでじゃ!」
余程恥ずかしかったのか、文字通りに頭から湯気が出ていた。
私はクレアの目の前まで歩いて行き、背伸びして頭を撫でる。
「な、なんじゃ!?」
クレアは驚いた表情で言う。
「ふふっ♪クレアは大きくなってもクレアで良かったと思っただけよ。」
「…当然じゃろ。」
クレアがポツリと言う。
「ドゴォォォォォォォォ!」と地響きとともに轟音が響き、壁の一部が壊れる。
「きゃうん!」
「な、なに?!」
茉莉が突然の轟音に驚いて私に抱きつく。
私も驚いたが、リリアが呆れた様子で言う。
「マリアとグレンが戦ってるの…とても…うるさい…」
「そ、そうなんだ…」
そう言えば、よく聞くとさっきからずっと戦闘音が聞こえるなと思ってたところなのだった。
「喰らえ!炎王流星!」
「雫よ!魔法剣!」
再び爆音と共に激しく剣をうち合う男女の声が聞こえる。
「あぅぅぅ…」
茉莉がすっかり怯えてしまって抱き締める力が段々強くなる。
「ちょ…苦しい…」
「アカン!これは完璧に決まっとるやつや!」
その様子を見ていたクレアが思わず遥か東洋の言葉使いになる。
リリアがオロオロと私と茉莉を交互に見る。
「いったいわね…」
瓦礫の中からブチ切れたと言いたげなフィリアが這い出てくる。
フィリアは穴が空いた方を向く。
「この…」
フィリアが光属性の魔力を展開する。
「ちょ?!待ってくれ!」
少年の悲痛な叫びが聞こえたと共にフィリアが言う。
「アホンダラァァァァァァァァァァ!!!!!」
極太の光のレーザーが放たれる。
数秒の眩い光と灼熱の高温が辺りに満ちる。
「…キレイに焦げてるわね。」
おそらく、マリアの声と思われる少女の声が聞こえる。
茉莉は抱き締める力が弱まる程に呆然と見ていた。
「し、死んだかと思った…」
そんな事を私が言ってる隙に完全にブチ切れたフィリアが言う。
「もっと周りを見やがれ!てめぇらが暴れ回ってくれたおかげでこっちにまで被害が出てんだよ!脳筋バカも大概にしやがれ!」
その声量で目の前の壁が吹き飛ぶほどには凄い勢いだった。
飛んで行った破片の一部が二人の頭に当たる。
「すんませんでした…」
「ごめんなさい…」
かなり距離があるにもかかわらず、2人とも土下座しながら若干震えていた。
「全く…」
フィリアは呆れた様子で言う。
私はフィリアにお礼を言う
「フィリアさんのおかげで助かりました…ありがとうね。」
フィリアは顔をプイっと背けると言う。
「別に…あのバカどもがうるさかっただけだし…」
茉莉がフィリアの手を握って言う。
「あ、あの…ありがとうございます!」
「…」
フィリアは驚いた表情で茉莉を見ると顔が真っ赤になる。
そんな様子を知ってか知らずか、グラディオスがやって来る。
「おう!お前ら、元気か…って、なんだなんだ?壁にでっけぇ穴空いてるし、なんかめっちゃ空気重くね?!」
ダリアンがその後ろから言う。
「そんな事より、アリスのパーティーも集めなくても良いのかしら?」
「おお!そうだったぜ!」
外からマリアと少年が戻ってくる。
「後はお前らだけだからな。もう皆集まってるから、さっさとブリーフィングルームに行くぞ。」
私たちはそれを聞いて素早く移動する。
…
私はブリーフィングルームの扉を開ける。
「遅れてごめんなさい!」
この場には見慣れない騎士の人も居た。
リリアは相変わらず私の後ろに隠れながら、おっかなびっくりしている。
クレアと少年は堂々と歩いてくる。
マリアは背筋を伸ばしている。
フィリアはめんどくさそうについてきていた。
茉莉は私の隣で楽しげにキョロキョロと辺りを見回していた。
ダリアンは如何にもダルそうに浮いていた。
グラディオスが皆の前に出て言う。
「さて、国防騎士隊の皆は言いたい事は山ほどあるだろうが、一先ずそれは水に流して、自己紹介をしてやってくれ。」
国防騎士隊側は5人。
男性が4人と女性が1人だ。
男性はそれぞれ違う色の重そうな兜に鎧で身を固めていたが女性の方は鎧に身を包んでいながら、黄金に輝く長い髪に凛と整った顔がよく見える。
1人目の赤い鎧の国防騎士隊が鋭い眼光を携えて自己紹介する。
「俺は国防騎士隊第三部隊隊長、グランディア・アスタレトだ。」
2人目の青い鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら言う。
「僕は国防騎士隊第二部隊隊長のレヴリールです。よろしくお願いします。」
レヴリールは礼儀正しくお辞儀をする。
彼の長く美しい青髪と青い瞳がキラキラと輝く。
3人目の紫の鎧の国防騎士隊が兜を脱ぎながら眠そうに言う。
「わたしは…国防騎士隊…第一部隊…隊長…アンドレウス・ノイマンです…」
緋色の短い髪に赤みがかかった眼がどことなくノワールを連想させる。
ノイマンと言う名前も共通している事から、多分ノワールの親族の人だ。
偶然隣にいたノワールが耳打ちする。
「分家の人だよ。今の私がここに居られるのも彼のおかげ。」
ノワールの一族は皆、眠そうな感じになるんだそう。
4人目の黒い鎧の国防騎士隊がどことなく恥ずかしそうに言う。
「オレは国防騎士隊第四部隊隊長のアルフォティー…」
最後に黄金に輝く髪を揺らしながら、国防騎士隊が言う。
「私は国防騎士隊特別部隊隊長のカレン・アルフェノーツだ!」
そして、私たち冒険者側も自己紹介をすませる。
グラディオスから簡単な依頼内容の確認とルートの説明がされる。
「そして、お前たち、それぞれの担当する班にここの5人を含めた国防騎士隊が補佐役として最低でも一人は着く事が義務づけられているから、仲良くしてやってくれ。それぞれの担当する班が大丈夫だと思ったら、合格を出しても良しとする。逆に不合格にするのもありだ。ただし、補佐役の国防騎士隊も決める事が可能である為、よく相談して決めるように。以上!」
私はリリアとカレンの要望もあって、最高の成績を収めた6人の候補の隊ともう一つの6人の隊を担当する事になった。
さらにカレンが茉莉を指名して私たちは4人で二つの隊を担当する事になった。
カレンが言うにはこちらは特別部隊の候補なので死なせたくないそうだ。
こうして、私たちの大掛かりな依頼が始まったのだ。
この後、各隊との顔合わせの為に各自で移動する事になっている。
私たちもその顔合わせの為に移動をしていた。
その移動の最中、カレンが嬉しそうに…って言うか、めっちゃウッキウキで言う。
「まさか、私と同じセカンドネームを持ってる人がいたなんてね。それもこんな可愛いお嬢さんときたもんだ。嬉しい事この上ないよな!」
リリアが私の後ろでうんうんと頷いていた。
茉莉はピコピコと耳を動かしながら、興味深そうに周りを見ていた。
…
しばらくして、金属製のある扉の前でカレンが立ち止まる。
よそ見していた茉莉が扉にぶつかって痛そうに顔を抑えて蹲る。
茉莉がぶつかった事で扉から「ゴーン」と大きな音が出て、眠そうにしていたリリアがびっくりしていた。
カレンはチラリと痛そうにしている茉莉を見て言う。
「…ここが私たちの担当の隊がいる部屋だな。」
茉莉が立ち直ったのを見てカレンが扉を開ける。
1
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる