魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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大罪覚醒

70話

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「…」

私は目の前の男を睨みつける。

「おお、怖い怖い。」

異形の男はニヤニヤしながら、大袈裟に怖がる。

(この鎖さえなければ、今すぐにでもぶん殴ってやるのに…)

私の身体は大の字に広げられて、魔鉄の梁に魔鉄の鎖で四肢を固定されていた。

この魔鉄は私の魔力を奪って硬度を上げているので、私の力では破壊が出来ないと男も言っていた。

男が舐めるように私の体を見ながら、ゆっくりと歩いてくる。

「テメェ!それ以上近寄るな!」

私と同じく銀の梁に銀の鎖で四肢を固定された悪魔が鎖に括りつけられたまま殴りかかろうとするが、銀の鎖が悪魔の動きを阻害する。

男が悪魔の身体を銀の鎖の鞭で叩く。

「ガッ!」

悪魔の身体が赤く腫れ上がる。

悪魔に対して銀は絶大な威力を発揮するのだ。

「悪魔風情が俺様に指図するな。」

男は冷たく言い放つと私の方を向いて言う。

「裏切り者の貴様が好いてる女を俺様が可愛がってやるんだから、感謝しろよな!」

男はそう言うと再び私の元へと歩き始める。

男は私の目の前で立ち止まると嫌な目つきで頭の先から股のところまでを舐めるように見る。

そして、その手が私の体に伸びる。

「いや…」

か細い声が小さく零れる。

「安心しろよ。すぐにイかせてやる。」

男はそう言うと私の腹に手を乗せて、そのまま下の方に動かす。

「…ッ!」

私は目をギュッと閉じる。

(誰か…助けて…!)

そんな私の想いも虚しく男の手が私のズボンに触れた瞬間だった。

「怒…号ッ!」

私のすぐ横の壁が壊れると同時に何者かが男をぶん殴って吹き飛ばす。

「アリス…助け…来た…」

「…ヴァティア!」

ヴァティアは私を魔鉄の鎖から解放する。

「あーあ、せっかくのお楽しみが台無しだぜ。」

異形の男がヴァティアにも私に向けたのと同じ嫌な目線を送っていた。

「…」

ヴァティアは何も言わずに着ていたローブで身体を隠した。

私は魔力を使って悪魔の銀の鎖を外す。

「アリス様っ!」

悪魔は即座に私の隣に来る。

「ヴァティア、あいつは異形に魂を売ったレグレスよ。異形の力は私たちの能力とは比べ物にならないわ。特にあの左手は私たちの能力を使えなくしてくるから、気をつけるのよ!」

ヴァティアはそれを聞くと静かに頷く。

「ブレイサ、貴方には感謝してるわ。そして、私からの最初で最後の命令よ。アレを全力でぶっ潰しなさい!」

ブレイサと呼ばれた悪魔は私が名を呼ぶ事によってさらに能力が強化される。

「任せろ!アリス様に与えた屈辱も含めて、たっぷりと利子をつけてぶん殴ってやるよ!」

ブレイサが赤の悪魔スカーレットの力を解放する。

「…怒り…そして、憎しみよ…我が声に応えよ…憤怒の波動オーガ・ヴォイス!」

ヴァティアが自身の能力と大罪の能力を利用して味方陣営の強化をする。

「ハッ!その程度で俺様に勝てるとでも思ってんのか?おもしれぇ!遊んでやるよ!」

レグレスはゲラゲラと下品に笑うと魔鉄の鎖を取り出す。

「あの鎖で繋がれると魔力を奪われるわ。」

私がヴァティアに言うとヴァティアはニヤリと笑う。

「大丈夫…怒り…止まらない…」

ヴァティアが拳を構えて先制攻撃を仕掛ける。

「怒号!」

「ダークショット!」

ヴァティアの左拳とレグレスの右拳がぶつかる。

「馬鹿め!」

レグレスがそう言うと同時に無数の鎖が全身から出て来て、ヴァティアを捕らえる。

「ヴァティア…!」

私が助けに行こうとするとレグレスがヴァティアを捕まえたまま言う。

「おっと。大人しくしねぇとこいつの命はねぇぞ?」

ヴァティアは力無く四肢を垂れて、レグレスの左手で頭を鷲掴みにされていた。

(このままでは…またさっきの状態に逆戻りだわ…)

私はなんとかしてヴァティアを取り戻そうと思考する。

「………」

ヴァティアが何かを言った気がした。

「あん?」

レグレスがヴァティアを睨んだ瞬間。

憤怒ふんぬ!」

ヴァティアの身体から強烈な黒い爆炎が広がり、レグレスの左手と鎖を消失させる。

さらに再生出来ないように傷口には消えない黒い炎が燃えていた。

「グワアアアア!俺様の…俺様の手がああああああああぁぁぁ!」

ヴァティアが「ざまあみろ」と言いたげに頭を払いながら、こっちに戻ってくる。

「湧き上がる怒り…その力…何人たりとも…邪魔は出来ない…」

「このクソアマァァァァァァァァァアアアアア!」

レグレスが右手でヴァティアを殴ろうとする。

「うるせぇ!」

ブレイサがその横から赤を纏った拳をレグレスに叩き込む。

「グアア!」

レグレスが吹き飛ばされる。

「この裏切り者風情ガァ!」

レグレスが銀の鎖を召喚してブレイサを捕らえようとする。

「させない!」

私はブレイサの前に立って、銀の鎖を全て叩き壊す。

「邪魔ヲスルナァ!」

レグレスの姿がみるみるうちに異形のものへと変化し、不気味な姿へと変貌する。

「来て…憤怒の弾丸サタン・バレット!」

ヴァティアは大罪の銃を両手に召喚する。

「俺の力、まだまだこんなもんじゃねぇぞ!赤の世界ルージュ・ワールド!」

赤の悪魔の力でブレイサが強化される。

「二人の力、借りますね。」

私は二人の溢れ出る力と私の魔力を織り交ぜる。

「顕現せよ!赤き憤怒の魔王ルージュ・ドラゴン!」

小さく赤い龍が私の創り出した魔法陣から現れる。

『アレを殺せば良いのだな?』

小さな赤い龍が私に言う。

「そうよ。貴方なら、その姿でも十分よね?」

私がそう言うと龍は堂々とした態度で言う。

『ふん。当然だ。我はその辺の雑種とは違うのだよ。』

龍が王の力を少しだけ使い、私たちの力を桁違いに底上げする。

「来て…エクスカリバー!」

私はエクスカリバーを手に持つ。

レグレスが完全に暗い青色の禍々しい角の生えた腕が6本ある異形の化け物に変化したところを見計らって言う。

「皆!あいつをぶっ潰すわよ!」

「やったるぜ!」
「ただ…焼き尽くすだけ…」
『久々に暴れてやるわい!』

レグレスが息を吸い込んで限りなく暗い青のブレスを放つ。

「湧き上がる怒りの鉄槌を…憤馬の弾道ユニコーン・バレット!」

ヴァティアの放った羽の生えた馬の形をした弾丸が爆発しながらブレスを無力化する。

『遊んでやろうぞ。赤石の吐息ルビーブレス!』

龍の口からルビーの様に輝く炎が放たれる。

「俺の魔法も使ってくれ!赤の真炎ルージュ・フレア!」

龍の炎とブレイサの赤の魔法が混ざってさらに赤く輝く炎がレグレスの足を燃やす。

「死ネェ!スマッシュ!」

レグレスが全ての拳で叩き潰そうと殴り掛かる。

「エクスカリバー!」

私がエクスカリバーで全て受け止める。

「つ、強い…」

エクスカリバー越しに伝わるレグレスの力が強い事を感じ取る。

「でも…」

私はエクスカリバーに魔力を注ぐ。

「私は…私たちは負けられないっ!」

エクスカリバーの刀身が眩く輝く光を放ってレグレスを吹き飛ばす。

「ハッ!少シハヤル様ダナ!」

レグレスがニヤニヤとした気味の悪い笑みを浮かべる。

レグレスは足元で燃える赤の炎を気にかける事もなく地面に4本の腕を突き刺す。

『…!皆の者!我に捕まれ!』

赤の龍がそう言った瞬間、ブレイサとヴァティアは赤の龍に捕まる。

「龍よ!上がりなさい!」

私が命令すると龍はすぐに急上昇する。

「オラァ!」

レグレスが思いっきり地面を持ち上げる。

「せーのっ!」

私は不安定な足元に特殊な魔力を織り交ぜた破壊の拳を叩きつけて、持ち上げられた地面を木っ端微塵にする。

「今だ!やれー!」

私が落ちながら叫ぶと龍が二人を連れて急降下する。

『行くぞ!』

龍がそう言うと同時に二人が龍から手を離して離れる。

『終焉を告げし赤き怒りは世を焼く一対の炎となりて界を照らさん!赤龍の審判ドラゴニック・ジャッジメンタ!』

龍が自身すらも焼き尽くす炎を纏って突撃する。

「邪魔ダ!ダークブレイク!」

レグレスの闇属性の魔力を纏った右ストレートが龍と正面から激突する。

激しい魔力のぶつかり合いがあたりの温度を上昇させる。

猫女ねこおんな!俺に合わせろよ!」

ブレイサがヴァティアに言う。

「猫女…違う…ヴァティア…」

ヴァティアはそう反論しながら魔力を高める。

「悪ぃな!そんじゃ、行くぞ!」

「うん。」

ブレイサが着地と同時に赤の魔力を纏いながら突撃する。

ヴァティアはそのまま着地と同時に銃を変形させて、火力に特化した形にする。

ルージュ…」
憤怒サータン…」

「「ストライク!」」

二人の左右からの強力な攻撃がレグレスの両足に直撃し、レグレスの体制が崩れる。

『一気に畳み掛けるぞ!』

そのまま龍が押し込み、宙に居る私を吹き飛ばしながら巨大な灼熱の火柱を上げる。

文字通りに龍は燃え尽きた。

「はぁ…はぁ…」

私の目の前まで飛ばされたブレイサが肩で息をしながら見ていた。

「痛い…」

着地に失敗したヴァティアが情けなく転がってきて、痛そうに左肘を抑えていた。

「これで決まってるといいのだけれど…」

私は感知を使いながら動きを見る。

「やっぱ、そう簡単にはいかないわよね…」

私がそう言うと同時に火柱が吹き飛び、腕が4本に減って2匹の大蛇ののような形の何かを広げるレグレスの姿があった。

「俺様にこの姿を取らせるとはな…正直予想外だったぜ。」

禍々しいオーラを放つレグレスがニヤニヤとこちらを見る。

「力…出ない…?」

体制を整えたヴァティアが少し苦しそうに言う。

「あのオーラのせいか…」

私はエクスカリバーの光のおかげで影響はほとんど出ていなかったが、ブレイサもどことなく苦しそうな表情をしていた。

「アリス様、ここは一旦引こうぜ…俺は力が出過ぎて余計なもんまで壊しそうだ。」

私は2人にやつには聞こえないくらいの小さな声で言う。

「ヴァティアは退路の確保をブレイサはヴァティアの援護をしなさい。あいつの足止めは私がやるわ。」

私はエクスカリバーに送る魔力をさらに強める。

エクスカリバーが輝くと同時に二人が行動を始める。

「ハッ!仲間割れか?ざまあねぇな!所詮、裏切り者はその程度ってわけだ!」

レグレスはバカにしたような笑みを浮かべる。

「アンタと一緒にしないでちょうだい。あの子たちにはあの子たちの役目があるのよ。」

私はエクスカリバーを構える。

「アンタの相手は私一人で十分よ。」

「ガッハッハッ!さっきまでの俺様に苦戦していたような雑魚が?俺様を一人で相手にするだぁ?おもしれぇ事言うじゃねぇか!」

レグレスはそう言うと両手を広げてバカにした気味の悪い笑みわしたまま言う。

「来いよ。テメェに格の違いってやつを見せてやる。」

私はエクスカリバーの光を自身に移し、エクスカリバーを鞘に入れる。

「じゃあ、お望み通り、ぶん殴ってやるわよ!」

私は縮地法でやつの正面に一瞬で移動し、そのまま妖精の光とエクスカリバーの光を纏わせた拳をレグレスの腹に勢いよく叩きつける。

「ふん。思った通りだな。」

レグレスは微動だにしないまま私を見下した目で見ていた。

私は再び縮地法でレグレスから距離をとる。

「アンタがバカで助かったわ。」

私はエクスカリバーの光をレグレスの魔力に結びつけたのだ。

これによってレグレスが出していた禍々しいオーラを打ち消していた。

「ハッ!俺様のオーラを封じたからっていい気になるなよ?」

レグレスがさらに背中の蛇の数を増やし、6匹の蛇が背中から生えていた。

「今度は俺様がぶっ殺す番だぜ。」

蛇がレグレスの言葉に反応して体を伸ばして噛みついてくる。

「はっ、よっ…」

私はわざと蛇の攻撃をギリギリで回避していた。

「ほらほら!さっさと反撃しねぇと死んじまうぜぇ?」

レグレスはさらに蛇の勢いを速くする。

私はそのままギリギリで回避するのを続ける。

「…しまった!」

私は一瞬判断が遅れて蛇に食われる。

「ハッ!あれだけ大口を叩いたわりにはあっけねぇな!」

勝ち誇っているが、やつは気づいていなかった。

もうここには誰も居ないと言うことを…
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